第10話 富士山を下りる 5
羽を切ったのに気づいてすらなさそうだ
......痛覚なさそうだな。まぁ無かったところで変わらないが
「
「上手く移せたなら今の
「そうか、やってみる」
「本来戦闘中に試すことじゃないし、刀に移したらその分身体強化が疎かになるぞ」
「そっか、身体強化が疎かになるか...」
まぁどうにかなるだろ
どうせ、そうでもしないと攻撃が通りそうにないしな
「祐樹よ」
「なんだ?」
「刀に力を集中させるなら身体強化を足に集中させろ」
「わかった、足に集中させるんだな」
「ただし絶対に
「それは怖――って、危ないな!?」
神楽と話していたら黒蛾が待ってられないとばかりに突っ込んできた
「ふぅ、刀にもっと力を移して...」
移した力を研ぐイメージで固める
そして足に身体強化を集中させて黒蛾に向けて走り出す
黒蛾は羽の破片を飛ばしてきたが足に身体強化を集中させているので当たらない......なんてことはなく普通に狙ってくるので最低限を刀で弾きながら黒蛾に近づく
「はっ!」
黒蛾に向かって刀を振る
硬い......が切れる
「よっしゃ、これなら戦える」
「身体に攻撃が当たったら弾け飛ぶけどな」
「え...怖」
「ほれ、来ているぞ」
黒蛾が突っ込んで来たのでまた切ってやろうと刀を構える
しかし黒蛾は近づいた時に止まり、羽でこっちを殴ってきた
神楽に攻撃は絶対に食らうなと言われているので咄嗟に足で受ける
「くっ...」
そうして俺は20メートルぐらい飛ばされた......が痛みは無い
上手く守れたみたいだ
「そんなんじゃ死なないぞ!」
蟲に言葉が通じないのはわかっているがそんなことを叫ぶ
「本当に死ななくてよかったな。今のはそれなりに危なかったぞ」
そう神楽が言ってきた
...神楽が居るのは知っていたがさすがに叫んでいるのに反応されると少し恥ずかしい
「とりあえずその羽落としてやるよ!」
そう言って黒蛾に向かって走りる
そうすると黒蛾が羽を飛ばしてきたがしっかりとすべて弾く
そうして羽の付け根を狙い刀を振る
「当たれよ!」
もちろん黒蛾も簡単には狙い通りに当てさせてくれない
「そんな簡単に当たるわけ無いだろう」
「じゃあ当たるまで狙ってやるよ」
黒蛾が突っ込んできたら避けたり刀を構えて切る
羽を飛ばしてきたら避けて、刀で弾く
そして黒蛾に向かって刀を振る
そんなことを数分繰り返す
そんな時にチャンスは来る
黒蛾が突っ込んでくるので刀を構えるが直前で止まり羽を飛ばしてこようとする
「それは悪手だっ」
俺は全力で羽の付け根に刀を振るう
少し避けられたがそれでも黒蛾の左下の羽を切り落とした
......ん?まだ飛んでる?
「よく今の力で黒蛾の羽を落としたものだな」
「いや、羽は切り落としたけど何も変わらず飛んでるんだが...?」
「せめて左側の羽を全部落とさなければ飛んでいるだろうな」
ということは羽を切り落とした時に左上の羽も一緒に切っておきたかったな
今から言っても仕方ないか......
「じゃあ黒蛾、左上の羽も狙わせてもらう!」
そう言って黒蛾に向かって跳び、斬りつける
もちろん避けられるが、避けられることを想定していたら対応できる
空振ったが着地した時にそのまま跳び上がり黒蛾を斬り上げる
そしてしっかりと残っている左の羽の根元に当たる......が切れない
「ああ、もうっ!威力が足りなかった!」
上手く行ったと思ってたのに切れないのはかなり悔しい
――――――――――――――――――――
黒蛾の攻撃を避け、弾き、斬りつけながら戦っていたら1つ案が思い浮かんだ
......これなら行けるんじゃないか?
そうして俺は地面を殴った
軽い爆発のような音がして砂埃が舞う
それと同時に跳び上がる......それも身体強化をした全力で、だ
こんなに高く跳んだのは最初に使った時以来かな、なんて思いながら30メートルほど上空に跳ぶ
地面を殴るのとほぼ同時に飛び上がったから黒蛾はまだ俺が砂埃の中にいると思っているようでそちらを警戒している
刀を振り上げながら自由落下していく...
黒蛾が風を起こして砂埃を飛ばしたが
「遅いっ!」
黒蛾の2枚残っている右側の羽を両方切り落とした
落と、し、た、が...?
...は?
...はぁ!!??
「え...ちょ、え??」
そこには残っている羽1枚だけで飛んでいる黒蛾がいた
さすがにバランスが取れないのか旋回しながらだが
なんで飛べるんですか??それ
「フ、フフッ」
......なんか後ろで神楽が笑ってるんですけど
「神楽、あれどうゆう状況なんだ?ほんとに」
「こ、黒蛾は羽が片方でもああやって飛べるぞっ」
まだ笑ってるんですけれども...
「なにがそんなに面白いんだ?いや、あれは面白いけどそんなに笑うか?」
「ふぅ...普通黒蛾の羽を片方だけ落とすなんてしないからな」
「でも羽を切り落とさないでどうやって勝つんだ?」
「胴体を一突きで殺せるぞ」
「それ、教えてくれてても良かったんじゃないか?」
「自分で気付けるようになるんだ。それに今の祐樹じゃ胴体を狙っても逸らされて終わりだ。早く黒蛾にとどめを刺してこい」
「ああ、とどめをさしてくる」
黒蛾はいまだ旋回しながら飛んでいるし、定期的に羽の破片を飛ばしてくる...が大体の飛び方さえわかれば胴体を狙える
「覚悟しろ!黒蛾!」
そうして俺は刀を振り下ろした
だが胴体には当たらず代わりに羽の付け根に当たって切れた
「...覚悟しろとか言ったのが恥ずかしい。でもこれで終わりだ」
刀に体重をかけて地面に落ちた黒蛾の胴体に刀を突き立てる
ザクッ
そんな音を立てて刀は深々と地面に突き刺さった
......地面に?
ザザッ
そんな音がしたので向いてみると胴体だけになった黒蛾がなぜかすごい速度で移動している
「そろそろ死んでくれないかな???」
1回、2回、3回...黒蛾に向かって刀を振るが全部きれいに避けられる
「1メートルぐらいあるのになんで当たらないん―――あ、おま、逃げるな!」
そうして黒蛾が逃げ出したので追う
「こっちの方が速いのに当たらねえ」
「...祐樹、
「ああ、たしかに」
そういえば妖炎は一応飛ばせるぐらいには練習してたんだった
1メートルぐらいしか飛ばせないせいで忘れてたが
「当たれっ!」
妖炎を刀に全力で纏わせて左から右に向かって切る
そして刀を振った延長線上を妖炎が飛んでいく
黒蛾との距離は殆ど無いのでもちろん届く
さらに横向きに妖炎を飛ばしているから当たった
妖炎が当たり一瞬動きが止まった黒蛾に飛びかかる
「今度こそ!今度こそ終わりだ!」
そうして刀を突き刺す
ザシュッ
そう音を立てて今度はしっかりと黒蛾に刺さっている
もう殆ど黒蛾は動いていないが妖炎を燃やしながら何度か刺す
「祐樹、もう大丈夫だ、お前の勝ちだ」
「よかった...勝てて。疲れた、特に最後...」
――――――――――――――――――――
作者の勝手にQ&A
Q.黒蛾(胴体だけ)ってどれぐらいの速度で動くの?
A.時速30キロぐらい。大体普通の人が自転車を割と全力で漕いだらこれぐらいになります
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御使いの刀 ほたてん @yuma-ok
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