第9話 富士山を下りる 4

「3日ですんで良かったな」


目覚めてから少ししてから神楽かぐらがそう言ってきた


「3日は良くねえだろ」

「初めての時なら3日なんかですんでいないだろう」

「いや、そうだけど...で、あの黒蛾こくがはどうするんだ?治癒力の強化ができればできるって言ってたけど」

「前は身体強化の力を集めると言っていたが今度はそれを刀に纏わせて強化する」

「刀に纏わせる?」

「この前は治癒力を強化していたが、それを刀に纏わせて切る。そうしたら黒蛾ぐらいなら貴様でも切れるはずだ」

「あんなに硬い黒蛾が切れるのか!?最初からそれをやればよかったんじゃないか?」

「治癒力の強化ができれば多分できると言ったな。それは刀に力を纏わせるだけだと切れないからだ。纏わせた力を鋭く切れるようにしなければ切れない」

「それが治癒力の強化に似てるってことだな」

「ああ、そういうことだ。...貴様は治癒力の強化はできなかったからできるかどうかはわからないがな」

「一回やってみるよ」


集中して俺は身体強化を使う

まずは右手に力を集める...

そしてその力を刀に少しづつ移す...

「できているぞ、その調子だ」


そうして力を移し終えた

「神楽、これはできたんじゃないか?」

「ああ、それなりに移せているな。まさか最初からできるとは思ってなかった」


あれ?全部移せたような感じがしたんだがそれなりにぐらいかよ


「で、これをどうやって鋭くするんだ?」

「その前に1個助言をしておこう」

「助言?」

「力をそんなに刀に移す必要はまったくないぞ」

「そうなのか!?」

「そもそも大量に力を移したら身体強化も切れて戦えないであろう」

「あ、確かにそうだわ」

「気づくのが遅いわ...」

「じゃあどれぐらいがいいんだ?」

「うむ...妾の感覚でしか無いが戦闘で使う1〜2割と言ったところか」

「1〜2割か...そんなに力を移さないでもいいんだな」

「そもそもの話になるがそんなに大量に力を込めたとしても上手く使えないだろう」

「あー、たしかにそうだな。全く持って使える気がしないな」

「ほら、わかったのだから早くやるのだ」


神楽がそう言ってきたので早速やってみることにする


「じゃあどうやって鋭くするの教えてくれ」

「そうだな、鋭くしようと思うよりも刃物を研ぐようなイメージでやってみろ」

「研ぐようなイメージか...」


刀に移した力を削り、研ぐイメージで動かしていく...


「おお、かなりできているな」

「できているのか?」

「ああ、治癒力の強化の時に失敗してばっかりだったから不安だったが、祐樹はこっちのセンスはありそうだ」


センスがあると言われているので本当にできているようだ

...少し、いやかなり嬉しい

治癒力の強化をうまくできなかったから余計に...


「ほれ、試し切りしてみろ」


そう言って神楽はまた2メートルぐらいの岩を運んできた


......今更だけど神楽の力強すぎないか?

岩を持ち運んでるんだが


「その状態なら本当に軽く切るだけでいいとおもうぞ」


そう神楽に言われたからほとんど力を入れずに刀を振る

すると岩に刀が入っていく。豆腐...とまでは言わないが簡単に切れた


「この岩柔らかすぎないか?」

「そう思うなら殴ってみたらいいんじゃないか?」


そう言われたので全力で岩を殴った......が


「―――ッッッ!」


骨が折れたのではないかと思うほど痛かった


「祐樹...なんで身体強化を解いたんだ」

「柔らかいと思ってたからだよ!」

「これで岩が柔らかいわけではないのはわかったな。そもそも岩が柔らかいわけがなかろう」

「ああ、そうだな!」

「...で、これで黒蛾を切れるのか?」

「これだけなら傷をつけるぐらいだろうが、祐樹がやってたように黒蛾自体の速さを使えば切れるかもな」

「あれをやらないと切れないのかよ」

「切れるだけましだろう?」

「それはそうなんだけどさぁ」

「荒削りだがそれがあれば黒蛾と戦えると思うぞ」

「勝てるか?」

「わからん。勝てなかったら戻ってくればいい」

「そうだな」

「じゃあ行くぞ」

「おう」


――――――――――――――――――――


「ついに...ここに来るのは2回目だな...」

「1週間も経っていないぞ?」

「......神楽、そういうのは突っ込まなくていいんだ」

「そうなのか?」


黒蛾を目の前にしてなぜかそんなことを話していた


「ほれ、早く準備して行かんか」


そういって神楽に急かされたので戦う準備をする

身体強化を使い刀にも力を移す。妖炎を使って刀を覆う。

そして黒蛾に向かって跳ぶ


「はぁぁ!」


俺は黒蛾に上から刀を突き刺す

ガッ!と音がして黒蛾の羽に傷がつき破片が飛ぶ

そうして着地して黒蛾の目の前に立つ


「ふぅ、数日ぶりだな」


黒蛾が羽の破片を飛ばしてくる

5個は避け、残りの2個を刀で弾きながら黒蛾に近づく


「はっ!」


思いっきり黒蛾を突く

前回戦ったときと違ってしっかりと傷がつく

......傷が付くだけだが


「前回と違って一応傷はつくみたいだな」


―――ッ!


「あっぶな!?」


黒蛾がほとんど初動が無いのに羽の破片を放ってきた


「って!?ちょっと!?危ないって」


黒蛾は連続して羽の破片を放ってきている


「黒蛾、おまえそれ以外できないのかよ?」


そう言って俺は黒蛾が放ってくる破片を刀で弾き、避けながら黒蛾に向かっていく

途中破片が頬をかすめて血が出たが気にしないで黒蛾に突っ込んでいく

黒蛾の下まで行き黒蛾の羽に刀を振るう......がやはり切れない


「知っててけど!切れろよ!」


すると黒蛾が目も開けられないぐらいの強風を吹かせてきた


「その攻撃は知ってるよ」


俺はしゃがみながら刀を立てる

すると刀に力が加わる


「やっぱり突っ込んできたか」


顔を上げて黒蛾を見てみると右上の羽が少し切れていた

あそこから刀に突っ込んできたみたいだ

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