聖女属性の勇者は疑うことを知らない・Take2

上田ミル

王子と魔女の襲来

 ――ダーナム王国・国王執務室――


「おい、そこの女!俺様と婚約しろ!!」


「はい?!」

 そこの女、こと勇者リンダ・カーライルは机に座り、膝に黒い子猫を乗せて書類を読んでいたのだが、突然扉を開けて入って来た男を見て目が真ん丸になった。魔王の使い魔である子猫はシャー!と威嚇した。


 リンダは気が小さい。

 敵意を真っすぐ向けて来る相手ならワンパンでぶっ飛ばすことができるパワーがあるのだが、それ以外の対応はダメダメちゃんだ。乱入男には敵意はないのでリンダは思考停止してしまった。


 男は自分の容姿に自信があるようで、モデルのようにポーズを決めている。金糸と銀糸、スパンコールで埋められた豪華な服を着、手入れされた金髪と青い瞳はそれなりに美形だったが、底意地の悪そうな表情がすべてを台無しにしていた。


「あのう、どちら様で?」

 困惑しつつ正直にリンダが問うと男は怒った。


「ああ?知らんのか?この国の!ダーナム王国のおう!である!!

 貴様が殺した国王の唯一の息子だ!!一年間隣国へ留学していたが、今帰った。


 貴様がクーデターを起こして我が国を乗っ取ったのは部下から聞いている。

 ならば、俺様と貴様が結婚し、統治権を俺様に戻せばすべて丸く収まるのだ。

 お前のおかげで俺様が国王だ!ふっはははは!


 どうせ遅かれ早かれあいつ《国王》は退位させるつもりだったが手間が省けた!そして勇者を妻にすればこの国は安全!安泰!大団円だ。さあ、皆の者、俺様の帰還に酔いな!!」


ミッ消えろ

 子猫が尻尾を一振りしただけで乱入男は消えた。


 シーン――


「静かになってよかったですわ。クロちゃん、今のなんだったのでしょう……」

 リンダは腕の中の子猫を撫でる。グッジョブである。なお、リンダはクーデターなど起こしていない。王子の情報はかなり間違っていた。


ニャー気にするな

 子猫はあくびをしながら鳴いた。


 クロちゃんは魔王の使い魔の黒い子猫のフリをしているが、実は魔王本人である。

 魔王は勇者リンダがあまりにも人を疑うことを知らないので、心配のあまり使い魔の子猫に化けて常に傍で見守っていたのだった。


「そうね、クロちゃんがそういうのなら気にしないことにするわ……」

 リンダはなぜかクロちゃんの言葉が理解でき、そして疑わなかった。全面的に信頼している。


 しかし、リンダは心の中では気になった。

 あの男が何なのか早口でよくわからなかったが、いきなり「婚約しろ」とかいうのはリンダ的には無し、である。こういう場合、出だしは「婚約を解消する!」が正しい。(※個人的な感想です)


 実は、リンダは日本からの転移者であり、ラノベ大好きガールだった。

 特に異世界転生ファンタジー恋愛ジャンルに大はまりしていた。

 紙で読む派だったので実家の本棚は書店なみにラノベで埋め尽くされていたくらいだ。あと、タイトルは長ければ長いほどいい。わかりやすいから。


 いきなり一行目から「婚約しろ」などという展開は今まで読んだことがない。

 もし、主人公の男性が魅力的であればそれはそれでおもしろそうだが、ああいう早口な男では読む気がそそられない。クロちゃんが飛ばしてくれてよかった。


 などと考えていた。

 リンダは日本でもこの世界でもちょっと感覚がズレている娘だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 このダーナム王国は、前国王のひどい圧制により疲弊しきっていた。

 自然災害や疫病の蔓延、盗賊団の横行、官僚と賄賂と癒着など、悪いことはすべて魔王のせいにし、勇者を異世界から召喚しては魔王を討つ旅に送り出していたが、それはすべて「問題解決に努力してる」ことを見せるだけのポーズであり、パーティメンバーに勇者を途中で暗殺させていた。転移者である勇者には戸籍がなく、死んだところで家族親類もいないので後腐れがない。


 それに、本当に魔王を倒されてしまうと、自分たちの悪事を魔王のせいにできなくなるから勇者を始末する、という非道っぷり。

 暗殺した後は勇者に渡した大金や高価な防具などはパーティメンバーに回収させていた。

 だが、その国王と悪徳官僚たちは魔王が排除した。もうこの世にはいない。


 現在は勇者リンダが国王となり、魔王の配下が政治を取り仕切り、国をまともに戻すため日々忙しく働いている、という状況である。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 リンダは日課にしている町の見回りに出発した。

 護衛が山ほど付くし、そもそも猫は家飼いにすべきであり外に出すと危ない、という考えの持ち主なので黒の子猫は留守番である。


 魔王は元の姿・足元まで届く銀髪に血のように赤い瞳と唇、尖った耳を持つ魔族の姿に戻り、執務室で宰相のアストリドと打ち合わせをする。


 この宰相、実は魔法配下の四天王の1人、水属性の魔法に長けた”水天のアストリド”と言う。

 四天王の内もっとも知能に優れ、智将と謳われている魔族で、魔王が直々にダーナム国の宰相に指名した。


 オールバックに撫でつけた灰色の髪、銀縁メガネの下にはアイスブルー色の瞳が冷たく光っている。人間でいえば20台後半くらい。鋭角的な顔立ちは美形の範囲だが表情はほとんど変わることがなく愛想はない。服装にはこだわるほうで、黒の宰相服を完璧に着こなしている。

(※ちょっとグルジアの民族衣装に似ていてリンダは気に入っている)


『あの野郎、勇者リンダに婚約しろ、だと?あんなワラジ虫にも劣るような男が汚らわしい。この手で殺してやりたかったが、今は不殺の誓いを立てておる。残念だ』

(※魔王様の音声にはリバーブがかかっております)


「魔王様、それではワラジ虫に失礼です。あのような存在は虫以下、カメの糞あたりが妥当かと。――では、魔の森へ?」

『そうだ。前国王と違って森のど真ん中へ放り出した。1人では生きては抜けられまい』

 恐ろしい魔物がうようよいる恐ろしい魔の森はゴミ箱になっていた。


「それはようございました。前王の血筋など生かしておいては面倒なことになります」

『うむ。それで新しく任命した官僚たちの様子は――』

 と魔王が聞こうとしたタイミングでその新官僚たちがドヤドヤと入って来た。

「「「失礼します!!」」」

「騒がしいな、何事だ?」


 官僚代表が青い顔で尋ねた。

「魔王様、ひょっとしてあの王子を王位に就けなさるという事は……」

『愚か者。そんなこと余がするわけがないだろう。せっかく建て直し始めた国が今度こそ滅ぶぞ』


 官僚たちは一斉にため息を付いて座り込んだ。

「よかった……もうあのサバイバル生活はこりごりだ……」

「給料3か月不支給とかもう嫌だあああ」

「その1年前から3分の1に減給されてたんですう」


『――よくそれで生きてたな?』

 魔王は呆れている。


「徹底的に生活費を切り詰めておりました」

「薪を買えないので風呂を沸かせなくて川で水浴びをしたり」

「近所の農家に野菜くずをもらいに行ったり」

「その辺に生えてるキノコを食べたらワライダケで死ぬかと思いました」


『お前たち……』

 魔王は右手の指先を額に当て、はーっ、と深いため息をついた。


『よく耐えた。だがもう心配はいらぬ。勇者リンダが王になったのだ、税はしばらくは取らない。あと、キノコは食うな』


 アストリドは眼鏡をくいっ、と上げて、魔王に続けて言った。

「給料はちゃんと出しますのでご安心を。王家が隠していた宝物を売って資金源は確保しました。

 異常に値を吊り上げていた商人ギルドのゴミ虫ギルド長は(魔の森に)追放しましたので物価もこれからは適正価格になります。

 街道に〇キブリのように沸いていた強盗団は偉大なる勇者にして国王リンダ様がすでに駆逐してくださっております。じきに物流も正常に戻るでしょう」


「「「おありがとうございますうう!!!」」」

 官僚たちはまるで小銭を投げられた物乞いのように土下座した。

 彼らは全員元下級役人で、前国王の暴政に耐え、国民の行政サービスのためにがんばっていたのだ。

 みなガリガリに痩せている。

 魔王は「腹いっぱい食えるようにしてやるからな……」と胸の内で誓った。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「畜生、ここはいったいどこだ?おのれええ、面妖な術を使いやがって!」

 王子は昼なのに暗い魔の森のど真ん中で剣を振るいながらあてもなく歩いていた。


「ぐるぅううううう」

 目を光らせた獣たちが周りを囲む。10頭はいるだろうか。

「ちっ、オオカミの群れか……おいこら、お前たち!!俺様はこの国の国王(予定)だ!不敬な真似をすると許さんぞ!」

 と、吠えたが多勢に無勢、彼の命は風前の灯火だった。

 しかし――


『ほほほ、言葉のわからない魔獣相手に虚勢を張るなんて面白い男ね、助けてあげましょうか?』

 突然、女の声が近くから聞こえた。ねちっこい、妖艶な声だった。

「だれだ?!」

 王子は悪運が強かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「魔王様、大変です!リンダ様が破産寸前の商人の連帯保証人になりそうです!」

 アストリドの使い魔の騎士が空間移動してきて報告した。


 魔王とアストリドは、ヒュッと息を飲んだ。

『わかった、すぐ行く』

 魔王は一瞬で子猫の姿に戻り、アストリドの腕の中に収まると同時に2人は現地へ飛んだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 アストリドと魔王はぎりぎり間に合い、ハンコを押す前の書類をクロちゃんが爪でビリビリに破いて消滅させた。その書類は隅っこに『国庫財産を自由に使わせる』と見えないほどの小さな字で書いてある悪質なものだった。商人は「ちっ」と舌打ちをして逃げた。この商人は永久入国禁止にした。


 アストリドは「ふう」と息を吐いて言った。

「リンダ様、人民を助けようとする貴方様のお気持ちはよくわかります。ですが、できればこのような時は我々にまずご相談ください」

 務めて穏やかに言ったが、魔界大戦に臨んだ時のように鼓動が速くなっていた。


「はい、ごめんなさい……」

 リンダは平謝りだ。あの実直そうな商人が嘘を付いているとはとても思えず、助けてあげたい気持ちのまま書類にハンコを押そうとしていたのだ。


 こんな風だから、日本でも同僚の仕事を代わってやって自分だけが残業し、訪問販売の偽物の健康器具を買い、上司にお尻を触られても「応援のためのスキンシップだよ」と言われて信じ、財布を忘れたから、とお金を貸し、それは二度と戻ってこないという、貧乏くじを常に引き続けていた。


 ただ、リンダは「世間ってこういうものなのね……」と思い込んでいる。

 リンダは人の笑顔が大好きである。少々自分が苦労しても人が笑顔になるところを見れば疲れも吹っ飛ぶ。


 だから、この異世界に召喚され、魔王様を見た時、眉間に皺が深く刻まれているのを見て、悩みがあるなら解決してあげたいと思ったし、自分を国外追放の危機から救ってくれた魔王様の笑顔が見たい、と常々思っていたのに失敗してしまった。辛い。


ニャーウ次から気をつけよ

「うん、ごめんね、アストリドさんにもクロちゃんにも心配かけちゃって」

 リンダの腕の中で頭を撫でられながらクロちゃんはリンダのほっぺを肉球でチョイチョイと撫でた。


(こんな初歩の手に引っかかるとは……なんという危険な娘か。やっぱり放っておけない。これからは外出の時もよく見張っておかねばならないな)


 魔王はリンダの聖女のように純粋な心根に惹かれている。

 初めて会った時も自分に対話を求めて来たし、その会話で魔王の荒んだ心がほぐれた。こんなことは500年生きて来て始めてだった。


 リンダは今も国民のために寝る間も惜しんで自分にできることを精一杯こなしている。

 彼女は単純に夜盗を蹴散らしたり、街道に巣を作っていたワイバーンをぶん殴って二度と来ないようにするのは得意なのだが、連帯保証人事件のように、人が弱みを見せて頼って来るととたんに聖女マインドを発揮して騙されてしまう。


(この娘は本当に……)

 何をするかまったく予想がつかない。魔王は、ほんの少しも目を離してはいけない、と思った。

魔具アクセサリを使って見張るか)

 もはやストーカーである。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 そろそろテーブルについてお茶の時間にしようかという時。


『……こんなしょぼい小娘だったとは……西の魔王様はご趣味が最悪ですこと!』

 部屋の真ん中にいきなり現れたのは――


「北の魔女……」

 アストリドはリンダの前に立つ。クロちゃんはアストリドの肩に乗り、臨戦態勢を取り、毛がぶわっ、と逆立った。


 魔女の黒くまっすぐな髪は腰まで届くほど長く、瞳はルビー色、付けまつ毛を何枚も重ねていて、赤い唇の横にあるほくろがチャームポイントの美魔女であった。(推定600歳)


 彼女も魔王と同じような黒のドレープがたっぷりとした長衣を纏い、さらに宝石がたくさん付いた腰布でウェストをキュっと締め、黒真珠とルビーの額飾りを付けていた。


「この部屋、変な人が次々と入って来るのは、どこかに穴が開いてるからかしら?」

 リンダは突っ立ったまま茫然としている。違うそうじゃない。


「魔法で移動してきたんですよ」

 とリンダに囁いてからアストリドは魔女に恭しく礼をし、対峙して言った。


「これはお年を召しても美しい北の魔女王様、いったい何事でしょうか?本日はご招待しておりませぬが――」


『女性の年齢に触れるなんて!!あいっかわらず失礼な水天ね!お前もヒキガエルになりたいの?!

 ――どうやら西の魔王様はいらっしゃらないのね……残念だわ。あの麗しいお顔を拝見したかったのに……まあいいわ。今日はね、魔王様のおそばをうろちょろしている小娘の顔を見に来たのよ』


 アストリドの肩に乗っているクロちゃんこそが魔王なのだが、魔力量を抑えているので魔女にはわからないようだ。

 魔女は魔王の前では淑やかな女だったが、本性を見た。恐ろしい。


 北の魔女はじろじろとリンダを足先から頭のてっぺんまでを見て、両手を広げてこれ見よがしにため息をついた。


『はーっ、不出来な女ね。髪もお肌の手入れもなってない。ボロボロじゃないの、こんなの女を捨ててるとしか思えないわ。爪にネイルチップもジェルネイルも付けてないし、化粧もド下手!みすぼらしいお前なんか、ファビュラスな魔王様には全然ふさわしくないわ!』


 クロちゃんは反論したかったが、自分の正体をリンダに知られたくなかった。この使い魔子猫が魔王本人だなんて知られたら、男慣れしていないリンダなら、頭なでなでも肉球ぷにぷにも、膝の上でお昼寝も、抱っこしてスリスリも全部してくれなくなるだろう。それは絶対に嫌だった。


「……」

 リンダはまくし立てられて呆気にとられていたが、心の中で

(悪役令嬢だわ!!現物を見るの初めて!!)

 などと思っていた。やはり彼女はズレていた。


 言い返して来ないリンダを見て魔女はますますイラついた。

「……拍子抜けね。貶されても否定してこない人間。目障りだわ――」

 魔女は右手をスッとリンダに向けた。


 その右手から赤黒く禍々しい光が生まれ、渦を巻きながらだんだん大きくなる。

「一生ヒキガエルとして暮らすといいわ。あなたにお似合いよっ!!災変咒厄ギレイン畦蛙斑プラーテ!!!」


 赤黒い光がリンダに向かって放たれた、しかし。


光輝反射盾ホーリー・カウンター

 右手を伸ばし、リンダは赤黒い光を受け止め同じ速度で跳ね返した。


「ギャアッ!!」

 悲鳴があがり、魔女の姿が消え、ボワン!と音がした。

 モワモワと煙が立ち上り、魔女がいた場所に一匹の体長15cmほどのヒキガエルが出現していた。

 そのヒキガエルはまつ毛が長く、口元にはホクロっぽい模様がついていた。

 水かきの付いた手で自分の顔をぺたぺたと触り、

「ぐげげっ!」

 と鳴いてぴょんぴょんした。


 アストリドは壁にかかった大きな姿見の鏡を外し、ヒキガエルに見せた。


「お似合いですよ、魔女王様」


グゲエエエエエお、覚えてなさいよ!!!ゲッ!ゲッお前もその女もゲギャアアアア絶対に殺す!!」

 ヒキガエルは意味不明にわめくと、シュッっと消えた。


「……どうしたのかしら、あの女の方……なにかこちらに向けて放っていたようだけど――」

 リンダは事態を理解できてなかった。彼女のホーリー・カウンターはフルオートで発動するため、魔女が自分をヒキガエルにしようと魔法を放ち、それが反射して魔女自身をカエルに変えたことがよくわかっていなかった。


「こうなると思ってましたよ……」

 アストリドは、先日この力でリンダに敗北したことを思い出して冷や汗をかいていた。

 魔王城へ魔王討伐にやってきた勇者リンダを最初に迎え撃ったのが水天のアストリドであったが、彼が放った最強の攻撃魔法を今のように反射され、自分の肉体が一瞬で吹っ飛んだのだ。


 幸い「魔核(魔族の魔力の源であり、精神が宿っている)」は破壊されていなかったのでもう一度魔王に新しい肉体を与えてもらって復活できたが、二度と勇者に歯向かおうとは思えなかった。


にゃうにゃうやっぱりな

 クロちゃんも結果を予想していたのであえて手出しはしていなかったのだ。


「自分の住処に帰ったようです。あのヒキガエルはただの使い魔ですよ、お気になさらず」

 アストリドはそういってリンダを安心させた。


「そうでしたか。お茶もお出ししていないうちに帰ってしまわれたのですね」

(あー本物の悪役令嬢に会えちゃった。やっぱり異世界ってすごいなあ)

 人(魔女)の悪意が通じない聖女属性の勇者は、ある意味大物なのかもしれない。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 北の魔女王は一週間かけて特効薬を作り、なんとかカエルからもとに戻った。

「おのれええええええ、あの小娘えええええ!!絶対に殺してやる!!あのドブスがああああ」

 魔女は本性を丸出しにして激怒した。


 直接攻撃が効かないのなら、絡め手から行く。こちらには魔の森で助け、手駒にしたダーナム王国の王子がいる。

 あの傲岸不遜な男を留学先だった隣国に送り届け、そこでダーナム王国を攻める準備をさせる予定だ。もちろん魔女の全面支援付き。


(今に見ていなさいよ、小娘!ダーナム王国ごと潰してくれる!)

 魔女は沈む夕日に向かって拳を握りながら誓った。


 しかし、魔女が助けた王子は頭が大変よろしくなく、隣国から返品された上に威張り散らすだけのタダ飯ぐらいとして魔女の城に不法滞在することになる。

 魔女は人を見る目がなかった。


 しばらくダーナム王国は平和だった。


 ――おわり――

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