エピローグ

拝啓 ヨモツヒラサカchの皆様。


 突然の手紙で申し訳御座居ません。

 どうしても皆様に御礼申し上げたく、筆を取った次第です。


 先日の動画、拝見しました。

 孫に動画を見せられ、このホテルは私が働いていたホテルではないか、と聞かれ驚きました。時を超えて私の写真がインターネットで取り上げられるとは何とも不思議な心地です。


 昨日、当時の同僚から電話がありました。

 カズヤさんが■■さんへインタビューをされたとのことで、■■さんから私の連絡先を知っているか、と連絡があったそうです。

 その同僚から、もしあの写真について何か知っているのであれば連絡してあげたらどうか、と勧められ、この様に(孫に送り方を教えてもらい)メッセージを送らせていただいた次第です。


 あの写真が何故、縁もゆかりも無い方達のもとにあったのか、ということについて説明させていただきます。


 あの写真は、■■■ホテルの創業50周年の記念に従業員全員で撮った写真です。お察しの通り、後列右から三番目が私です。写真は数枚あり、一枚だけがあの様に気味の悪い写りとなっておりました。皆はきれいに写ったものを配られたのですが、女将さんが気を利かせて、私に「一枚だけこんな気味の悪い写り方をしていたから、お焚き上げでもしてもらったらどうか」と渡して下さったのです。その時、素直にお焚き上げに持って行けばよかったのですが、何だか面倒に感じて、お焚き上げに行くことはしませんでした。そうして、写真は私の手元に残りました。


 気味が悪いので、写真は引き出しの奥にしまい込みました。ですが、以来頭痛が止まらなくなり、悪い夢も見るようになったのです。今更お焚き上げに行くのは(おかしな話ですが)女将さんや御坊様に叱られてしまう気がして、考えた末、私は当時流行っていた「不幸の手紙」の手法で呪いを薄めてやろうと思いついたのです。ネガは持っていなかったので、写真をカメラで撮り、数十枚現像し、電話帳で調べた住所から適当に選んで写真を送りつけたのです。私はその作業を(今思えば)楽しんでさえいたように思います。全く、若気の至り。恥ずかしい限りです。


 ですが、私の思いついた方法は間違っていなかったようです。


 このたびは不特定多数の方へこの写真を広めて下さって有難う御座います。お陰様で、ようやく頭痛が治まりました。


 本当に、有難う御座いました。


敬具

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ヨコガミ @tou_tower

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