怪獣


あらすじ


《天災》より10 年。日本国に所属する海上都市「ツクバ」に来客が訪れる。遠い異国の地から来たその人間は、ヨーロッパからきたという。まだ生存者が残っているのだろうか。日本は《霧》の向こうへ探査船団を派遣することを決定する。が...それはインド洋、そして大西洋を超えることを意味する。明けることのない夜、そして長い長い戦いの始まりであった。







水没世界での怪物との戦闘を描いてみたかったんだけど、今まで二次大戦のしか書いていないし、知識も不十分なことに気づき、現代戦ってなんだっけ?ってなってあきらめた。


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「ソナーに反応あり、体長50mぐらいです!距離一五〇〇〇」


哨戒艦「こたか」のCICに報告が届く。


「50メートル?間違いじゃないのか?」


艦長は思わず聞き返した。


「いえ、本当です。ソナーに不調は無いです、間違いありません」

「そうか...50mクラスがこの海域で確認されたことは今まで無いはずだが...」


奴らは食欲旺盛だが、大きい個体ほどが薄い海域には入ることを本能的に嫌う。

日本群島は一部を除いて霧が無い光域だ。


20、30mクラスの小型種なら霧が薄くても生命活動を維持できるが、大型種は生存することが不可能なはずだ。


「あり得ないな」


艦橋内のスクリーンに映し出された数値では霧の濃度は基準値以下だ。

この海域で大型種が生きていける訳がなかった。


無人潜水艇AUV3号より、サーマルでの映像入ります」


スクリーンに写ったのは海中のサーモグラフィー映像だ。

ほぼ同時に上空の無人機からの映像も横に並ぶ。


「っ!?これは」


上空から捉えられたのは巨大なクジラの背中のようなものだった。

数年前ならただの大きいクジラということで片付けられたことだろう。


だがその背中は醜い紋様が刻まれた甲冑のような鱗で覆われていた。

なんともいえない禍々しさを持っている。


「種名、レヴァイアサン。推定53m。凡そ30ノットで北西に移動中」

「駆除しますか?」


副艦長が艦長に訪ねた。


「こたか」は元は1900トン級哨戒艦であり対潜装備などなかったが、《天災》のあと、破棄されたあさぎり型護衛艦の装備を移設してなんとか対潜戦闘を可能にした。

日本の食糧事情の全てを支えている中華圏との通商において、護衛艦艇は圧倒的に不足していたのだ。


「そうだな、まず調べなきゃいけないのは、あの海獣が何を追っているのかだ。いくら海獣でもあそこまで全速で航行するのなんて獲物を見つけたときぐらいだからな。...海獣がいるということはレーダーは使えんな。無人機を先回りさせることはできるか?」


艦長の言葉に副艦長はそこまで考えていなかった自分を恥じた。


「分かりました。至急無人機を向かわせます」


艦長の考えは当たった。

数分後、海獣の進路先に向かった無人機は一隻の船を発見した。

遠洋漁船よりも二回り以上大きく、全長は100m超えだ。

形状からして客船の類であろう。


ただ、送られてくる映像は画質が悪く船名や人が乗っているかどうかまでは分からなかった。


「動いてはいるようだな、ということは何かしら操縦している存在が居るということか」

「幽霊船ということは考えられませんか?」

「あれから6年も経ってるんだぞ、6年間も動き続けられる船がどこにあるんだ。米軍の原潜か空母ぐらいだろ」


副艦長が言いたかったのはそういうことではなかったのだが、反論する気力は無かった。


「識別番号は発していないんだな?」

「はい、海獣の付近なのでノイズが酷いですが、電波は一切発していません」

「となると中国の船でも無いのか。とりあえず所属を問ってみろ」


無人機はその不明船に対して所属を問う旨の通信を発した。


「海保もどきのことをやるなんて、何年ぶりだろうな」

「不審船も中国漁船も今は来ることすら無いですしね」


「こたか」は一応全速力で海獣の方に向かっているのだが、もとが哨戒艦というだけあって25ノットしか出せず、追いつくのは無理そうだった。


「返信来ました!こ、これは」


無人機の操縦士がなぜか読み上げるのを躊躇した。


「なんだ?」

「い、いえその、あまりにも内容が支離滅裂で」


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没小説集 波斗 @3710minat

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