第2話 宝武具(トレジャーウェポン)

「では、聴かせてもらいたい。なぜこの街近辺へ移動してきたのか。」


 勇者一行は魔王の要求を飲み、魔王を仲間にした。魔王を超越する存在『ディザベル』の誕生。そして、反乱の機運が高まっている魔王城内の配下たち。その存在を受け、魔王は自ら動き、俺たちと接触してきた。そして、高らかにここへ移動をした目的を宣言した。


「貴様らをここに移動させたのは言うまでもない。この街の『宝武具トレジャーウェポン』を手に入れるためだ。」


宝武具トレジャーウェポン…?」


「そんなものの存在なんて聞いたことないわよ!」


 勇者一行は困惑した。聞きなじみがないゆえに、武器なのか、防具なのか、はたまた道具なのか。勇者が装備している「勇者のつるぎ」のような伝説の武器とも一線を画すものなのか。はたまた見当もつかなかった。


「本当にそんなものは実在するのか?」


「我が嘘をつくわけがなかろう。この宝武具トレジャーウェポンの存在はこの魔王エルドアとその街に住む住民とくまなくコミュニケーションをとったうえで紹介してもらえる『仲介人』しか知りえないがな。我はほとんどの街の宝武具トレジャーウェポンの存在する場所を知っている。」


「…!。ほかの街にもそのトレジャーウェポンとやらが存在するのか?」


「当たり前だ。この武具は貴様たちが装備している武器、防具等とはけた違いの性能を誇る。ゆえに、それを守る『番人』を倒し、各地のトレジャーウェポンを獲得するのだ。」


 にわかには信じがたい話であった。宝武具トレジャーウェポンの存在、それが各地に散らばっており、それを守る『番人』を倒す。今の自分たちで手に入れることができるのか?、そもそも『番人』はどの程度の強さなのか?

 疑問は尽きないが、勇者は根本的なところを魔王へ質問した。


「そもそも、なぜそんな情報を俺たちに教えてくれるんだ?俺たちは、魔王とは対極の存在、勇者一行なのだが?」


「愚問だな。我の最終的な目的は魔王の座を確固たるものにすること。それに貴様らを利用するためだ。だが、今の状態では、使い物にさえならない。ただ、宝武具トレジャーウェポンを手にした勇者一行であれば話は別だ。我と互角で渡り合える程度の力を手に入れることができるだろう。つまり、魔王&勇者一行VS魔王直属魔兵&ディザベルの構図で全面戦争をし、我々が勝利を目指すためだ。無論、その戦いが終わったのちには貴様たちも殺すことになるがな。」


 魔王と勇者一行がタッグを組んで、反魔王勢力と一大決戦を行うことを企み、それに勝利をすることを前提として、最終的に俺たちを殺し、再度自身の魔王として地位を復活させようとする。自分勝手な願望であるが、今の自分たちの力量では従うしか選択肢がない。


「最後に勝つのは我らが勇者一行だ。そのためにも宝武具トレジャーウェポンを手に入れようじゃないか。」


「ほざけ。まあやる気になったのならよいとしよう。死ぬ気でやれよ。貴様たち。」


 こうして、魔王とともに宝武具トレジャーウェポンを手に入れるため、マヌルの街中へと向かったのだった。







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勇者一行に突然魔王が加入した件について 雨男 @sinta1419

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