勇者一行に突然魔王が加入した件について

雨男

魔王と勇者一行の旅は始まる。

第1話 魔王襲来

「あともう少しで魔王城に到達だな。」


「ついにここまでたどり着いたわね!レベル上げも十分にやったし、負ける気がしないわ!」


「この街の道具屋で消耗品も十分に買い込んだし、装備も万全の状態に仕上げているわ。」


「俺、もっといい装備付けたいんだけど~。そういや前に行った商人の街『オラクル

』の近くの洞窟に、強い武器が眠っている噂聞いたんだよな~。」


「そんな暇、もうある訳ないでしょ。明日出発なんだから。」


「え~、テンション上がんねえな~。この装備じゃ物足りねえよ~。」


「ストーンが装備している武器は魔王に特攻がついている。魔王戦では大いに活躍してもらわないといけないからな。気合い入れていけよ。」


「まあそういうことなら?頑張ってあげなくもないかな~。」


「すぐに調子に乗るんだから!ちゃんと準備しておいてよね!」


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 勇者ライダ、賢者アルメア、戦士ストーン、僧侶メリーの4人は魔王の手から世界を救うために旅をしている。その旅の目的地である魔王城まで目前に迫っていた。魔王城の攻略のため、準備を万全にし、前日の夜を迎えていた。そして夜が明け…。


 「ここから魔王城まで移動魔法を使わずに進む。魔王城の近辺は魔力探知が各所にちりばめられているからな。それでは行こう!必ず魔王を倒すぞ!」


勇者の鼓舞により、パーティーの士気を上げ、勇者一行は歩き始めた。魔王城までは、夜明け前までには到着する予定であった。空は雲に覆われており、ときおり黒い雲が雷を鳴らしていた。


歩き出して程なく賢者アルメアが突然大きな声を挙げた。


「みんな止まって!この近くにいままで感じたことのない魔力を感知したわ!

 防御魔法をかけるからみんな防御に徹して!」


賢者アルメアが防御魔法をかける間もなく、果てしない魔力を持ったものが勇者一行

に襲い掛かった。


「テンペスト」


そう唱えると周りの木をなぎ倒し、あれくるう暴風が発生し、勇者一行を巻き込むように近づいてくる。


「みんな、とにかく防御だ!」


勇者一行は防御に徹したが、受けたダメージは深かった。僧侶が回復魔法で体制を立て直そうとしたとき


「この程度の力で俺を倒そうとしていたのか?まったくもって相手にならんな。

 一から出直してこい。」


目の前の暴風が収まり、目の前の敵が姿を現した。


「おまえは…まさか魔王エルドアか!?」


「いかにも。我こそが地上の支配者、世界に闇をもたらしたもの、魔王エルドアである。」


そう、まさに目の前に立っていたのは、勇者一行の旅の目的、魔王討伐のラスボスである魔王エルドアだった。


「なぜここに?」


「ひとまず貴様たちの力量を図るために奇襲を仕掛けたが、この程度の魔法にそれだけのダメージを負っているようでは、話にならない。この程度の力でどうやって我を倒そうと思っていたのか、疑問でならないな。」


「答えになっていない!」


「貴様らは勇者一行であるな。話すと長くなる。まず移動魔法を使い、貴様らが最初に訪れた街へ行くぞ。そこのお前、移動魔法を早く使え。」


「ふざないで!ここで終わりにしてあげ…! くっ!」


お前と呼ばれた賢者は激高し、立ち向かおうとするが、魔王に対抗できる状態ではないことは明白であった。


「いまのお前たちでは、俺を倒すことなど不可能だ。従え。」


やむなく賢者は最後の力を振り絞り、移動魔法「テレポーティング」を使用し、

始まりと出会いの街「マヌル」へ勇者一行及び魔王を移動させた。


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 「聞かせてもらいたい。話とは何か。なぜここへ移動してきたのか」


 勇者は、討伐を一度断念し、魔王の言うことに耳を傾けることにした。それは魔王のあふれ出る圧倒的魔力の前には、こうすることしかできないことを悟っており、ほかの仲間たちもそれを理解していた。


「我が魔王軍は、競争社会である。強いものであればだれでもすぐさま魔王になれるいわば下克上が可能な社会なのだ。いままでは我の圧倒的な力に及ぶものなど現れることなどなく何十年の時が経過していた。しかし、事態が変わった。魔王の下には魔王護衛直属魔兵が3匹存在する。そのうちの一匹『デルエルマ』に子供が誕生した。名前は『ディザベル』。その子供が生まれた瞬間に『こいつは我を超える存在になる。』そう思わざるを得ないほどに魔力が圧倒的だった。2年後には我を超え、数十年ぶりの魔王の下克上が実現する。」


「魔王を超える存在になる。それを理解したのは我だけではない。直属魔兵の3匹も生まれた瞬間にわかっておったであろう。その子が生まれた瞬間からデルエルマはほかの下級魔兵を少しずつ集め、下克上の準備を始めおった。さらに、ほかの直属魔兵もデルエルマ側についてしまった。我の力で粛清をすればよいと考えるかもしれないが、直属魔兵は魔王軍でも別格の強さを誇る。いかに我でも3匹を同時に相手することは困難なのだ。」


「そこで我は決断した。我を倒さんとする勇者一行の仲間となり、『ディザベル』が我を超える前に倒すこととしたのだ。」


「は?」


勇者一行は話を聞き終えたのち、しばらくして言葉を発した。


「話はなんとなく理解した。ただ、結論なんて言った?」


「我に二度も言わすな。貴様らの仲間になると言っているのだ。」


「いやありえないだろ!?」


「断れば貴様らを容赦なくつぶす。ほかに強いやつはいくらでもいるからな。たまたま貴様らが我を倒さんと向かってきているから都合がよかっただけだ。どうする?」


勇者一行に緊張が走った。今の状態で戦っても勝てる見込みは限りなくゼロだ。この場で決断せねばならない。ただ、少しでも時間が考える時間が欲しい。


「もう一つの質問、なぜここに移動をしたのかについて答えてもらっていない。」


勇者は時間稼ぎの目的で聞いた。ただ、魔王は無情にも


「それは貴様らが我を仲間にするといって初めて答える価値がある質問だ。

 早く決断しろ。」


仲間たちに目配せをする。もうほかの仲間たちも覚悟が決まっているようだった。ここで殺されるよりも、まず生き延びどこかでチャンスを作り、魔王を倒す。それしか今は打開策がない。勇者は決断する。


「わかった。魔王エルドアよ。仲間になってくれ。」


「我を仲間にできることを光栄に思うがいい。」


こうして勇者一行は魔王を仲間にした。空にはどんよりとした黒い雲が目立ち、やかましく雷鳴を轟かせていたのだった。







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