イヴェールよ、お前はまさしく悪党だ!(Yver, vous n'estes qu'un villain!)

クロード・ドビュッシーが作曲した『シャルル・ドルレアンの3つの歌(Trois Chansons de Charles d'Orléans)』の中のひとつ。1909年4月9日初演。


イヴェール(Yver)は冬、エステ(Esté)は夏です。

原文と訳文を併記します。


————

Yver, vous n'estes qu'un villain!

Esté est plaisant et gentil,

En tesmoing de May et d'Avril

Qui l'acompaignent soir et main (Matin).


イヴェールよ、おまえはまさしく悪党だ!

エステは優しくて気持ちがいい

4月と5月が証人だ

朝と夜も、ともに手を取って慰めてくれる


Esté revest champs, bois et fleurs,

De sa livree de verdure

Et de maintes autres couleurs,

Par l'ordonnance de Nature.


エステは野原に森に花に

緑色の彩りを

色とりどりの衣装を着せる

自然の摂理が命じるままに


Mais vous, Yver, trop estes plain

De nege, vent, pluye et grezil ;

On vous deust banir en essil (Exil).

Sans point flater, je parle plain,

Yver, vous n'estes qu'un villain!


だがイヴェールよ、おまえは地味すぎる

雪に雨に風に霰(あられ)ばかり連れてくる

おまえは追放されなければならない

ひるまず、私は公明正大に告ぐ

イヴェールよ、おまえはまさしく悪党だ!

————



中世ヨーロッパの貴族らしく(?)領主裁判の判決文みたいなノリですね。


「4月と5月が証人だ」とか、「追放されなければならない」とか、

シャルル・ドルレアンさんおもしろすぎる。


どうやら、作者は冬が嫌いのようです。

しかし、現代日本人としては「エステ(夏)が連れてくる猛暑と台風は、間違いなく極悪人ですよ!」と主張したい。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽閉された悲劇の王族詩人シャルル・ドルレアン『獄屋の歌』 しんの(C.Clarté) @shinno3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ