■■小学校の図書室に眠る『ノロイの本』 ―BOOK OF SPELLS―

ハルヤマ ミツキ

■■小学校の図書室に眠る『ノロイの本』 ―BOOK OF SPELLS―

なつかしいなぁ。やっぱり噂ってちゃんと受け継がれていくものなんですね。


いやぁ……実物を見たことはありませんね。そもそもあるのかどうかも怪しいですけど。


だって、本当に呪われた本なんてものがあったら処分なり何なりすると思いません?あれだけ噂になっていれば司書さんもその本の存在に気付くだろうし。


え、ああなるほど。たしかに、一見何の変哲もないように思えるタイトルや内容だったら見つけることが難しいかもしれませんね。


うーん……それでも、やっぱり私は所詮ただの噂だと思ってます。





■■県F市の■■小学校にまつわる、ある噂。

それは現在も利用されている旧校舎の図書室に呪われた本が存在する、というものだ。

タイトル、そして内容ともに不明であり読むと不幸が訪れるといった曖昧な情報しか無く、某ネット掲示板にて実際に見かけたり読んだことがあるという者を複数人確認したが、その信憑性はかなり薄い。


読むと不幸が訪れるという『ノロイの本』は、本当に存在しているのだろうか。




もう、十年も前の話になりますかね。放課後に友人と旧校舎の図書室で、先にあの本を見つけた方が勝ちというゲームをしていたんです。


一時間近く探しましたがそれらしい本は見つからなくて、飽きた僕は友人にもうそろそろ家に帰らないかと提案したんです。


そしたら友人もとっくに飽きていたようで、床に座って本を読んでいました。


もうすぐ読み終わるから待ってくれと言われたので、仕方なく僕もその辺の本を手に取って読むことにしました。


それからちょっとして友人が突然『あっ』と声を漏らしたのでどうしたのか聞いたら、これを見てくれとさっきまで読んでいた本のとあるページを見せてきたんです。


そのページは黒く塗りつぶされていて、その上から白いペンで大きく【呪い】と書かれていました。


友人はすごく喜んでいました。当然ですよね。偶然手に取った本が、探していた『ノロイの本』だったんですから。


でも僕はその【呪い】という文字を目にした途端すごく不安になってしまって、目当てのモノを見つけたわけだしもう帰らないかと促してみたんですけど友人はもう発見したことに興奮していて聞く耳を持ってくれずその先のページをパラパラとめくっていました。だいぶ気に入った様子で、ついには持ち帰るなんて言い出したんです。


もちろん、止めました。止めましたけど……友人は絶対に持って帰るの一点張りで結局僕が根負けしてしまったんです。


僕の人生正直後悔ばかりですけど、これ以上の後悔はありません。


あそこでもっと真剣に止めていれば、友人はあんなことにならなかった……。


じつは、僕も【呪い】と書かれたページ以降の内容を見ているんです。なのに、僕は今もこうして生きている。


友人はあの本に呪われたんじゃない。友人自らあの本の呪いに触れてしまったんです。


きっと噂を広めた誰かは【呪い】と言う文字を見て勘違いしたんでしょう。あの本の正体は読んだら呪われてしまう『ノロイの本』ではなく、読み手に呪術的な力を与える『マジナイの本』のだったんです。


友人はあの本のせいで悲惨な死を遂げてしまった。お願いです。あなた方の力を使って、友人の死後どこかへと消えてしまったあの本を見つけ出していただきたい。彼のような被害者をこれ以上出さないために。

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■■小学校の図書室に眠る『ノロイの本』 ―BOOK OF SPELLS― ハルヤマ ミツキ @harumitsu33

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