第四半話 玉森翠葉の現状レポートその一。


「面会は十分間です。」


警察の一人が、とある男の弁護士にそう言うと、


「やけに短いんだねえ。」


と、やさぐれた口調で警察の一人に返すが、何も返答がないまま、面会室の重たいドアは閉まった。


「君が…玉森翠葉さん…?」


弁護士の先にある透明な仕切り板の隔たり。

その向こうには、翠緑色の髪をした若い女性が両目に包帯をぐるぐると巻いて、姿勢良くパイプ椅子に座っていた。


「驚いたな…。こんな若い人だったとは。」


弁護士は額に少し出た冷や汗をハンカチで拭い、パイプ椅子へと腰掛けた。


「知ってると思うが、今回の事件であなたの弁護士を務める柳田です。」


弁護士の言葉に、静かにコクッと少し頷く翠葉。


「面会が十分だけなので、手短にいきます。」


また、静かにコクッと少し頷く。


「今回死亡した白嶺刹李さんなんですが…、」


「私は殺してないっ!!」


ダン!!とパイプ椅子を倒す勢いで立ち上がった翠葉を見て、ビクッと柳田は震えた。


「だ、大丈夫です!その為に私達弁護士はいます!あなたの無罪を主張できるように、情報を欲しいんです!」


「私が殺すはずだったのに!!私が殺さないと意味がなかった!!だけど…、誰!?誰が刹李君を殺したのよ!!」


ドン!ドン!と拳を机に叩きつけ、物凄い喧騒で弁護士を睨みながら叫ぶ翠葉を、弁護士は何とか落ち着かせようとしていた。


「落ち着いてください!刹李さんの死体現場には目玉が二つ落ちていました!一つは刹李さん本人のもの!そしてもう一つは踏み潰されていて人物の特定ができない状態になっていました!そして、あなたの目玉の一つは刹李さんの右目に移植されていました…。しかし、もう一つが見つかっていません…。ということは、踏み潰されていた目玉はあなたの今無い左目ですか?それとも別の第三者の目玉ですか?」


「何度もそう言い続けてるじゃない!!別の誰かが私がするはずだった事を全部やったの!泥棒猫!!私の目玉も奪っていったわ!!許さない!!絶対地獄に落としてやる!!いい!?私は死神なの!!私はいくらでも人の命なんて刈り取る事はできるのよ!!早くあの泥棒猫を捕まえて私に差し出して!!私の刹李君を返して!!」


「こ、これじゃ無罪の主張どころか…、責任問題の話にもなってくるよ…。」


そうして玉森翠葉は、白嶺刹李という単語を皮切りに、面会十分間は発狂し続けた。


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僕の幼馴染、玉森翠葉は本当に死神だったのだろうか? 蛸山 葵 @q21

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