第6話 神社の出来事

「ッたく…!!!」

俺、ユミーは相当キレていた。


何故か?

それは理由もわからず所長にこの神社を調査しろと命令が来たからだ。


「クッソが!!!V!!!」

俺はVに向かって手を伸ばした。


身長の小さい、餓鬼のVは、いつもの調子で肩から自身よりも一回り大きいブリースケースのようなものから、板チョコを1枚渡す。


そして俺は受け取ったチョコの包装を剥がし、齧り付く。


板チョコの溝なんて気にしないで食うのが1つのこだわりだ。


「てか…なんでこんな人多いんだよ」


俺は大分頭に血を上らせながら呟く。

そしてチョコに被りつくと、怒りは段々と薄まってきた。


ピリッ、モグモグモグ……


すると、俺のチョコとは別のチョコの匂いが風に乗ってやってきた。


「…チョコの匂いがするな…」


「わ、わかるんですか?巡査」


「チョコの匂いは事件の匂いだ…」


俺はチョコの匂いに導かれ、しばらく歩いていると、大きな鳥居から少し離れた所。


そこには、一人の少女が立っていた。


その少女は小さいチョコレートの袋を一つ、また一つ開けて口へいれる。


「あ、あの餓鬼だ!!!」

俺は、そのふらつき回っている餓鬼に歩み寄る。

「じゅ、巡査…?」


Vは俺に何か言いたげだが、気にしない。

所詮は子供の戯言だからな。


「お〜きなあっかーい鳥居はどこだろね〜♬

あれぇ?ここどこだろ〜?」


よくわからんことを呟きながら歩く餓鬼。

俺は少しだけ知らんフリをしてその少女に近づこうとすると…


「せんしょーさまぁ……ぅあ!?」

という感じに独りでに派手に転んだ。


そして、少女は個包装のチョコを地面にバラ撒いた。


「ラッキー!」

「じゅ、巡査!!」


俺は少女の所まで行き、さっと地面に散らばったチョコを1つ取る。


「このチョコ貰うぜ〜」

「じゅ、巡査!!人のものはかってにとっちゃだめですよ!!」

すると少女は、俺の事を見上げ、

「みーのちょこれいと見てた人だぁ。」

と呟く。

「は?おめぇ、何いってんだ?」

「巡査!小さな子にはやさしくしないとですよ!」


すると少女は、床に落ちたチョコを全て取ると、

「いいよぉ、あげる……。あ!大きな赤い鳥居に連れてって!!

そしたらチョコレートあげるから!」

と言った。


「まいご…ですかね?巡査!まいごを送り届けるのは警察官のおしごとですよ!」

と、睨むVと、少女のチョコを見ると、俺は舌打ちをした。


「ッたく…これだから餓鬼は嫌いなんだ…!!」


俺はそう呟くと、その少女とVに「行くぞ。」と、厳しい声で合図する。


Vは、その少女と目線を合わせた。


しばらくして、大きな鳥居へ歩いていると、唐突に少女が指を鳥居へ指し声を上げた。

「あ!せんしょーさまだぁ!」


そして少女は「せんしょーさまぁ!!」と言いながら、その鳥居へと向かった。


「はぁ…餓鬼が…」

俺はその餓鬼を鳥居に置いて帰ろうとしたが、Vが小さな体で俺の退路を塞ぐ。


「巡査!あのこのこと、ちゃんとみとどけないとですよ!」


俺はその眉のシワを中央に集め、口を膨らませるVに、はぁ…とため息を付くと、踵を返して鳥居に向かった。


「藍とみーをありがとうございました。僕は尖晶と申します。隠り世で遊郭を経営してまして…」


隠り世?一体こいつは何を言っているのか…


そして俺の隣に居る何故か布で作られた簡易的なコートをかたどったような服を着た少女。

年は大体14くらいか?


変な服を着た餓鬼も居るもんだな。


「お礼をさせていただきたいのですがっ――」


と、その目の前の│尖晶せんしょうと名乗る男はいきなり言葉を止めた。


なんだ?

と思いつつ見ていると、何故かその男の肩に白い手のような物が乗っているのが見えた。


そしてその白い手は、何か異常。

見えないようで見えているような不思議な感覚。


「おいっお前!!!!」


俺は慌てて木製の、その義手を前へ伸ばし吸い込まれていくような男の手を掴むが…


「くそっ!!!!引きずられる!!!!おい!!V!!!!」


隣の変な格好の少女も必死に手を掴み取っているが、それでも引きずられている。


「あ、はい!!!!」

そしてVも、俺の背中を引っ張るが、それでも全くもって止まる気配は無かった。


「くっ!!!!」


俺と、尖晶、そして少女と、Vはそのまま、白い手に引きずられ、鳥居の元から姿を消し去った。





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異世界特殊捜査隊第一課 最悪な贈り物 @Worstgift37564

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