泡沫と消える想いは千歳に巡り、遂に消え去る刹那には心へ深く蔵される



化生の女が人の男に懸想し、その主の咎をうける。

想い人と三度逢うと男のなかの女の記憶と姿が消える。

その咎は永代と続き、男の魂が後の世に宿った存在とも同様に逢い、また同じくすべてが消えるのだった。

しかし、その千歳の離別愛苦の果てに彼女は、ついに千載の至福を得る。

彼女がこの世から消え去る時が来たのだ。
それは同時に咎の軛が消え去る時。
男の記憶の中に存在を留められる時。

「このままいつ果てるとも知れぬ永劫の時を生きるより、刹那の時の間はざまを、共に生きましょう。

貴方様の記憶の中で」


最後の逢瀬の刹那、互い心に訪れた一瞬が永遠と等しくなる。

読み終えた後も心に残る。
儚く美しい救済の物語。

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