題名にあります「たなごころ」と言う単語は、漢字で表すと「掌」、本編でも触れられていますがお釈迦様の掌(てのひら)と同じものになるそうです。
その中で暴れん坊の猿が衝撃的な事実を知る事になった、と言う物語がありますが、それを知る前はずっとその猿は自らを誰にも負けない存在だと思っていました。ですが、彼は単に「たなごころ」と言う言葉の持つもう1つの意味のごとく、お釈迦様には手も足も出ない結末を迎えました。
今回の作品で描かれている「読者」と言う視点だからこそその歪さが浮き彫りになるのですが、登場人物は皆それがごく普通、自らの考えだと認識している……果たしてこれは楽園なのかどうか、それは「たなごころ」よりも上からの目線を持つ読者の中でそれぞれの回答を持つしかないのかもしれません。