第5話 見ていたのは

 最初に違和感を覚えたのは、友人と飲みに行って帰宅が遅くなった時でした。

 どこか違う――物の配置が変わっているかな、程度だったことは覚えています。

 しかし、それだけでは終わりませんでした。

 散らかっていた部屋が、戻ってくると綺麗に掃除されている。

 食事も準備されて、テーブルの上に置かれている。

 そんなことが何度も起こりました。

 警察に連絡しようかとも思ったのですが、警察が本気で動いてくれるかどうか――当時はまだストーカーという言葉が広まる前でした。

 とりあえず、友人に相談しました。

「ビデオカメラを仕掛けておいたらどうだ?」

 私は早速、わずかな隙間を作り、そこにカメラを仕掛けました。

 そして、帰ってくるとカメラを確認しようと持ち上げた時でした。


「そんなことをしても無駄。あなたのことをずっと見ている聞いている」


 下に丸っこい文字でそう書かれたメモが置かれていたのです。カメラは止められ、データも全て消されていました。

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400×5 異端者 @itansya

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