~シン・やさしいマネー革命「やさしい経済学」お金と経済がわかる ~元・全国新聞紙投書有名人の僕が、経済書のベストセラー100冊を研究して『最強の経済学本』を作りました。

長尾景虎

第1話 シン・やさしいマネー革命「経済の基礎からのすべてを学ぼう」

~シン・やさしいマネー革命「やさしい経済学」お金と経済がわかる

~元・全国新聞紙投書有名人の僕が、経済書のベストセラー100冊を研究して『最強の経済学本』を作りました。~これがChatGPTには予測できない経済学の基本と未来への処方箋~

2025-2026

~そうだったのか!長尾景虎の学べるマネー学校(第一弾)、グローバル新・国富論! 陽はまた昇る!~


経済政治危機の『マネー革命』時代の羅針盤!

噴出する貧困などの資本主義終末期の矛盾、機能しない民主主義の世界。

1%の富裕層だけが潤うデジタル封建制度か、サイバー独裁制度しか行き着く先がないのか?

人類の未来に私たちの選択が絶対的な違いを生む『マネー革命』時代の最高峰の知性が、危機から脱する戦略戦術を教え尽くす!


                  ~経済危機からの再生~

                  total-produced &presented& written by

                        NAGAO Kagetora

                       長尾景虎


   …… 〝金貨が鳴れば、「悪口」は静まる〟

                   タルムード……



     あらすじ

 この物語は小説ではなく、ノンフィクションの経済書である。最近のグローバリズム経済やITやAIに対するデジタル通貨経済、アメリカや日本国やEUや中国などの「世界経済の減速」。5GやGAFAや『貿易摩擦』や為替や金融政策のイロハ。経済の基本から細部の経済理論まで。この本で、必ず経済通になれる、経済を勉強する基礎の基礎。経済の教科書であり、ハウツー本であり、経済の本。

経済のことが4時間できっと学べる。経済の経済による経済のための基礎の基礎。日本人・人類共通の〝経済書〟いよいよ刊行!!


まえがき「国際情報・経世済民篇」


 長尾景虎『草莽崛起(そうもうくっき)宣言(日本改革案)』国民の皆様へ


 確かに、わたしは専門家でもないし評論家でもない。が、僕は十数年前に、全国新聞紙で何回も投書が掲載されて全国に情報やこの国の危機を発信し有名になり、あの週刊文春までもが僕を取材した実績と経験を持つ。いわば素人ではあるが最強の知性の〝はしくれ〟―――――だが、この著作を一読すれば、どれだけ研究や勉強に長い時間がかかったか、とわかるはずだ。百冊の経済書のベストセラーを研究し、それを一冊分の本にまとめました。まさに決定版の初刊である。

 まあ、それだけ価値がある、ということ。

みなさんはこのような経済の知識を持っていますか? ただやみくもに経済本を読んでいても経済の知識の不足は解決できると思っていたかもしれませんが、それではうまくいかないですよね? 今回、わたしが提示する経済の知識の本は、この課題を解決する最適な方法で、100冊のまとめで作った本というという方法です。この方法の画期的な点(斬新さ・メリット)は、100冊の知識が一辺にすべて学べるという点です。なぜ私がこの方法を知っているかというと、私は学問好き・本好きだからです。この方法はすでに数万人の人が試して成功しています。こういう知識を習得すると、人生が劇的に変わります。良いことだらけです。みなさんがこの方法を知らなかったとしても無理はありません。なぜならプロには当たり前でも、素人にはわからない知識だからです。この方法は、時間がなくしかし知識を得たい人達におすすめです。さあ、この本を読みましょう。

 政治は国民のものだ。人と人が寄り添うぬくもりのある社会をつくりたい。保守とは度量の広い中庸な、温かいもの。地域の歴史や伝統、文化を次の世代に受け渡しながら、新しいものを加えていく。

世の中を便利にしたり、新しい価値を生み出したりすることを邪魔する仕組みやシステムと戦おう。為政者の実行力に任せたい。

 22兆円のGDP(国内総生産)ギャップがあり、埋めていかなければならない。未来につながる投資をする。子育て世帯に支えるというメッセージを送っていく。子育ての支援にまずお金を使わなければならない。

 再生可能エネルギーを入れるため必要な投資を政府が率先するべきだ。送電網の整備、洋上風力(発電)や太陽光などだ。再生可能エネルギー100%で日本のエネルギーを回すのも絵空事ではない。(但し、現在は再エネだけでは必要量の電力は賄えない)

 何よりもやらなければと思っているのは年金の改革だ。今の制度で(給付額を抑制する)マクロ経済スライドを発動していったら、将来もらえる年金の金額はいくらになるのか。 

守るべきは年金制度ではない。

 

――――(注意)この書は特定の銘柄の株や投資商品や投機筋などを推奨するものではありません。投資行為は『自己責任』でお願い致します。損失分の補償や賠償金・寄付金などの相談には一切、応じませんのですべて『自己責任』で完結させてください。―――

   (第一部の文章や説明はほぼ池上彰氏の著作からの引用がだいぶ多くなりました。いろいろなひとが経済学の素晴らしさを学ぶ必要性からそうしました。是非、池上彰先生にはこの引用を認めて頂きたいのです。すべての国民が経済の魅力を知るために是非、許可願えればと思う次第です。すべて自分の文章に加筆訂正いたしましたが、それでも駄目だというなら有料版での印税の一パーセントを池上先生にお支払いしたします。もし、引用がまかりならん、というのであれば、後で、すべて自分の文章にもっと加筆訂正いたしますのでご了承ください。)(この書は一部、古くなった内容が含まれていますが、出版有料化版のときに最新データ及び文章内容に加筆・推敲する予定です。興味を持たれた出版社の方やライターの方、どうかよろしくお願いします)


第一部  シン・やさしいマネー革命「お金と経済のしくみがわかる」




         まえがき


 『ジャパン・アズ・ナンバーワン』かつて、日本の経済力は物凄いものであった。

世界一の技術大国・経済大国―――――――

あの狂乱のバブル経済を知る世代にとってはまさに日本は誇れる大国で、あった。

 しかし、それも儚い夢物語である。

 世界一の超大国のアメリカ合衆国の次のナンバー2の経済大国だった日本国は、2017年に中国(中華人民共和国)に抜かれて三位に、さらに2023年にドイツに抜かれて四位に。さらに2026年ごろにはインドに抜かれて五位になるんだとか。

 給料もこの三十年というもの上がらなかったし、物価も株価も地価も全部デフレ……しかもデフレスパイラル状態。バブル崩壊以降は、日本国は安い、いや、安すぎる国になった。

 まあ、凋落、である。

 世界的なインフレで物価高に更に〝泣きっ面に蜂〟の円安。

 昔、誰かが『国が死ぬ』とか言ったが、本当に日本は終わってしまったかのようだ。

 だが、処方箋はある。ネタバレみたいになるが、結論から書くと、インバウンド(訪日外国人)需要での『観光大国』と、金利を上げての景気対策、である。

 それは後で詳しく述べる。

 だが、それにしても―――である。

 日本の給料では、海外生活はキツイ。例えば、アメリカに旅行に行き、現地で豚骨ラーメンと餃子を食べ、店員にチップを払えばしめて五千四百円なのだ。

 だが、しかし、アメリカが極端に高いのではなく、(まあ、円安もあるのだが)日本が三十年前から安いままだ、ということである。

 ちなみに、さまざまな物価が上昇する。これぞ「インフレ」です。

 バブル経済崩壊後、長期にわたって不況が続き、物価は上がらなくなった。給料も上がらない。これが「デフレ」。いまの若い世代は、物心がついた頃からデフレが常識になっていました。それだけにインフレが始まると、生活の不安が高まってしまいます。

 ですが、その分だけ給料が上がったり、年金の支給額が高くなったりすればいいのです。

 が、そうはならない。給料も年金も上がらないのに物価などだけが高騰する。これが「悪いインフレ」ということ。逆に給料も年金も上がって物価も上がるのを「良いインフレ」といいます。

 確かに、日本は安い国になった。

 だが、それでも日本人は沢山のお金を持っています。

 日本人の個人金融資産は2100兆円。企業の内部留保は560兆円・国富は四○○○兆円くらいです。

 要は、日本人は貯めこむだけで、さっぱり消費・浪費に使わない。

 大前先生は『低欲望社会』と名付けたが、確かに、日本人全体が「将来の不安に備えるために」と、貯め込むだけ貯め込んでいる。

 その結果、亡くなるときにおよそ三千万円ほど残していくのが日本人であるらしい。

 まあ、相続先がなければ全部国庫に納められますけど……。

 僕自身もその「将来の不安に備える」という気持ちは理解できる。

 確かに、お金がなければ老後はどうなるのか? と思う。

 国が運営している限り、「年金が貰えない」等あり得ない。

「年金が払えない」というのは国が滅んだときだけだ。だが、支給額は減るだろう。

 その支給額が〝おこずかい〟程度だったら? という不安である。

 これは本当に切実な心配だと思う。困ったときに役に立つのはお金だ。

 どんな綺麗ごとを言ったところで、お金がなければパン一個も買えない。飢え死にだ。

米国発の金融恐慌とはならなかったが、欧米系の銀行がバタバタと潰れた。大量の失業者と倒産という訳ではないけど世界はインフレ一色、日本のゼロ金利(2024年3月ゼロ金利を日銀が解除)と派遣切り……そのリーマンショックから数十年、新型コロナから数年、今の世界はトランプ米国大統領(当時)に代表される『自国第一主義』である。自己中女の如く「わたし(の国)が! わたし(の国)が!」……そして、トランプ氏が再び大統領になる可能性が高くなった。

 米中関係は貿易摩擦というより貿易戦争、貿易冷戦、と言う具合に報復関税のやり合い。節度がない。だが、日本はアメリカとはたった百六十年の付き合いでしかないが、中国とは千年もの付き合いがある。

 日本は米国との貿易摩擦というより貿易戦争の経験があるのだ。

 なら、その経験やスキルを中国に提供する外交があってもいい。

 なお、この書は経済学の基本を学ぶ本です。バブル崩壊から平成、から、令和へ。世界も日本も大きく変わりました。しかし、経済のしくみは、時代がかわっても意外にそんなに変化はないものでしょう。共産主義・社会主義のマルクス経済学が廃れて、新自由主義や新たな経済学のようなものが出てきた程度です。新型コロナにウクライナ侵攻にイスラエルのガザ侵攻―――――経済は低下。国際的な貿易額も縮小しましたが。

 生活の変化としてはスマートホンや生成AIなどのハイテク商品でしょうか。

 石油からEVの時代へ。

 原子力も見直されているようです。

 ですが、「経済学」ときくと多くのひとは「難しそう」「わからなそう」と難色を示しますが、毎日、駅で電車に乗るときのカード認証のピッ、もそれで料金を払っている。これも経済。ネットで観た商品を注文する。これも経済。好きなアーティストの音楽CDを買う。これも経済――――であるのです。毎日、わたしたちは経済活動をしている。

 そう考えれば、「経済学」が大学の授業での学問ではなく、生活の知恵であることに気付くのではないでしょうか? ウクライナ侵攻などや世界経済の減速やインフレで物価高や円安……

 まずはそういうことの「基礎のき」を学ぶことにしませんか?

 儲かる、とか、いい投資先を…とかそういうんじゃないけど経済学のきほんを学んでおいて損はありません。きっとそれでその知識で、いつか報われるかも知れない。

 そう思って読んでみてください。きっとあなたの役には立つ。では。ハッピー・リーディング!

       まえがき おわり



第一章 お金とは何か? 貨幣の誕生

  そもそもお金とは何であるのか? 紙の紙幣やコイン、そうした「お金」はそもそもどうやって誕生して、そのシステムを作り上げていったのか? お金のきほんのき、です。


 お金がお金である理由


 ここに、日銀発行の紙幣があるとします。一万円や五千円、千円と書いてあり、肖像画も印刷していて、例えば一万円なら日本国中どこにいっても一万円分の商品やサービスと交換してくれます。でも、これはただの紙切れですよね? でも、私たちは誰もがお金として使用している。何故か? これはそれを発行している政府・国家や中央銀行(日本では日本銀行)を信用しているからです。

 逆に、信用もしていない国の紙幣など誰も欲しくない。何故なら、その国の政府が倒れれば、すぐにでも「ただの紙切れ」になる可能性があるからです。

 また、日本国内でEUの公式通貨のユーロも韓国のウオンも使えない。

 ユーロやウオンが信用できないというんじゃなくて、あくまで日本国内での使用ですが。でも、例えば北朝鮮の紙幣……持ちたいですか? そういうことです。

お金っていうのは共同幻想であるからなんです。

 世界中でアメリカのドルが価値が高い、とか、今、物凄い円安ですが、これも世界中で円の価値が安いと思っているから円安になる。まあ、為替相場な訳ですが。

 では、どうして紙幣やお金・硬貨などができたのか?

 それは意外と単純なことです。

 お金が発明されてないときに、わたしたちはどうしていたか?

 物々交換をしていた訳です。

 山とかに住んでいた人は獲物を取り、肉を食べていた。でも、たまには魚も食べたい。逆に、海の近くに住んでいるひとは魚ばかり食べていた。たまには、肉も食べたい。そこで、それぞれ魚や肉を持ち寄って、物々交換をした訳です。それが市場に市、であったわけです。

 ですが、考えてください。

 肉も魚もすぐに交換しないと腐りますよね? 冷蔵庫もない時代ですから。

 そこで、最初は稲が交換のために使われだした。

 稲のネが、のちに値、値段に変化します。

でも、中国ではきれいな貝(子安貝・こやすがい)を加工したのを通貨の替わりに使っていた。そして、布の紙幣(「紙幣」の幣は「布」のこと。貝から買・貴・貯・財・資・貧の言葉が生まれた)―――――でも、稲もいつかは腐る。布も汚れたり破れたりする。貝もいっぱいとれれば価値が値崩れする。

そこで、稲や布や貝に替わって、金や銀や銅や宝石が使われだしたのです。

昔の戦国時代とかの日本は世界一銀のとれる国だったので、世界中の商品が買えたと言いますね。また、紙幣や通貨を塩で払っていたのが古代ローマ帝国です。

塩がサラリウム、そしてサラリー(給料)へと言葉が変化したという。

また、紙幣が出始めたときも、通貨が出始めたときも、その紙幣や通貨は金と繋がっていて、この紙幣ではいくらの金と交換できる――――というのが信用になっていた。

そういう交換する商売が、両替商。これがやがて銀行にかわる訳ですね。

 両替商は「預かり証」を発行してその価値を保障した。預かり証が紙幣へと発展する。

 いつでも金と交換できる紙幣を兌換紙幣(だかん・しへい)といい、そういうシステムを金本位制度と呼びます。

 ですが、金と交換する程度の紙幣しか印刷できないのも不便です。経済が発展してくると、より沢山の紙幣が必要になります。世界中でも金の埋蔵量はそんなにないですから、これからは金と交換しない紙幣にしよう、ということになりました。

 つまり、兌換制度・金本位制度をやめた訳です。それが日本では1934年(昭和七年)のことです。これで、今の日本銀行券である(金と交換できない・不換紙幣・ふかん・しへい)紙幣ができたのです。

 まさに、紙ですが、これが我々が信用している限り、お金として流通し、使用していくことになる。まさに、これこそがお金です。

 ちなみに、紙幣は日本銀行券で、日本銀行(日銀)が発行しているのですが、硬貨(補助貨幣ともいう。紙幣では足りない分を補助する貨幣という意味で、あくまで補助のためが硬貨)は日銀ではなく日本国と書いてある通り、政府が発行しています。具体的には大阪の造幣局でつくられています。春は桜並木がきれいな名所で有名な場所ですね。五百円硬貨を一枚つくるのに42円かかり、その差額が造幣局の利益になります。

 また、2024年は新紙幣(新日銀券)発行年でもありました。

 新しい一万円札(紙幣・肖像画は日本経済の父・渋沢栄一)と五千円札(紙幣・肖像画は女子教育者のパイオニア・津田梅子)と千円札(紙幣・肖像画は破傷風菌の治療薬の医学博士・北里柴三郎)が新しいデザインで登場しました。

 何故、数年おきに紙幣のデザインを新しくするのか? まずは紙幣の偽造防止というのもありますね。まあ、偽造の割合は10000枚に1枚というのですが。

 それでも、偽造紙幣などつかまされたら大変ですし。

 紙幣偽造はかなり重い罪なんですが。

 それとタンス預金対策というのもあります。タンス預金の紙幣を新しくするのに流通させる。つまり、経済を回していくということです。貯め込まれているだけでは経済が回らないので。何故、肖像画というか人の顔なのか? については、人間は人の顔の微妙な変化にはすぐに気付くからだといいます。つまり、偽札の不自然さを気づきやすいようにという配慮なんですね。よく考えていますよね。

 


  需要と供給はどのようにして決まるのか?


 私たちが普段口にする食べ物。そうですね、例えば牛肉の値段はどうやって決まるのか?

 例えば、牛肉を食べたい人が増えると供給側(売る方)は高い値段で売ることが出来ます。また、牛肉を食べたい人が増えなくても飼育問題とかで牛肉の取る分(売る分)が少なくなるとやはり値段は高くなります。逆に、牛肉が多すぎたり、牛肉を食べたいひとが減ると値段は下がる訳ですね。

 需要とは「欲しい・買いたい」と買い手が思うことで、供給とは「提供します・売ります」と売り手が思うことで、これがいわゆる経済活動です。

 経済には「需要曲線と供給曲線」というものがあります。

 ものを売る側からすれば、値段が安い時は作って売っても儲からないので、あまり作りません。これは供給が少ないということ。でも、欲しいという需要が増えると、値段が高くても買う人が出てきます。すると、高く売れるならもっと生産を増やそうと考え、供給が増えていく。

 一方で、ものを買う側で考えると、何か欲しい物があっても、値段が高いときには買う人は少ない。これは「需要が少ない」状態。でも、値段が下がると、その値段でなら買いたいというひとが増える。これが「需要が多い」状態です。

 この需要と供給が釣り合うところで「物の値段」というのが決まるということですね。

 日本経済もこの需要と供給で読み解くことができます。

 経済をどうにかするには金利の上げ下げとお金じゃぶじゃぶの政策しかない。

 逆に言えば、経済政策は結局、このふたつしかない。

 つまり、金融政策と財政政策です。

日本経済の回復の足を引っ張ってきたのが「需要ギャップ(ズレ)」でした。

 最近まで日本はデフレで、物価が安く、インフレターゲット目標が2%とか言っていたが、世界的なインフレや物価高、また、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻などで物価が上がってきている。また、記録的な円安で、日本人による海外旅行などでは割高になり「当分の間、海外旅行も国内旅行も無理だ」みたいなフェーズ(笑)になったりしている。

 逆に、円安で「安い」と、インバウンド(訪日外国人)需要で日本への観光客が増加の一方である。日本経済の回復にはこのインバウンドが重要になっていますね。

(あとで説明いたしますので諦めないで)

 「需要ギャップ(ズレ)」に話題を戻します。

 工場で製品をいっぱい作っても「それが欲しい」という需要がないと売れませんから、工場は生産を減らしたり、そこで働く従業員の仕事がなくなり、リストラにあうかも知れません。失業者が増えれば景気も悪化するのです。

 供給を減らす、または需要を増やす……逆に言えば、そうすることによって需要と供給をぴたっと一致させれば経済は上手くいく訳ですね。

 こういう需要ギャップを何とかする解消する方法を考えるのが政府の仕事であったりします。例えば、公共事業で道路や橋をつくることで、その作業をする人の雇用は増え、消費は増える。だから、馬鹿な政治家、アイデアのない政治家ほど公共事業ばかりする訳です。経済政策など何もわからず、取り合えず公共事業さえすれば、雇用も消費も増えるのですから。供給を減らすときは工場を閉鎖する企業に補助金を出したり、失業者に補償金を渡したり、再教育を施すなどする政策になる訳ですね。

 こうして「需要ギャップ」を解消する策を講じる訳です。


  決算とは何だろう?


 毎年三月になると企業の決算のことが話題になる。その企業にとっての通信簿のようなものだけど、その決算について学んでみよう。

 企業が一年ごとに収入と支出を計算し、利益(または損失)を算出することを「決算」といいます。企業は毎年の義務として「決算書」をつくらねばなりません。

 上場企業は決算(年に一度)のほか、中間決算(半年に一度)や四半期決算(三か月に一度)を発表する義務があります。上場企業は決算書を作ることで、「今期はここまで努力して結果を出しました。でもまだこれだけ課題もあります」と情報をオープンにして、「どうかうちの会社に投資してください」と、投資家にアピールするわけですね。

 日本は四月から新年度ですから、三月に決算をまとめる企業が多いです。決算が三月だと、株主総会の準備に二か月くらいかかるので、六月に一斉に株主総会が開催されるというカラクリです。

 企業の一定の儲けを表すのが「損益計算書」です。決算書と一口に言っても、実際は「損益(そんえき)計算書(会計の期間中にどれだけ儲けたか)」「貸借(たいしゃく)対照表(決算日時時点での企業の財務状況・「資産の部」「負債の部」のバランス具合)」「キャッシュフロー計算書(一定期間にどれぐらいの現金が入り、いくらの現金がでていくか)」という三つの書類(「財務三俵(さんぴょう)」)に大きく分かれています。

 しかし、計算方法は難しい、というか企業の会計係や財務課などのひとがやればいいことですので、詳しく計算方法が知りたいひとは専門書(会計説明本)を買いましょう!

 ここではつまり、説明を省く、ということです。がっかりしましたか?

でも、何もかもすべてわかるひとなどいないように、この記事群も何でもかんでもわかるようなオールマイティな記事ではないということ。それは当たり前のことでしょう?


紙幣発行の手順


 日本の紙幣は日本銀行券ですが、これは「借用証書」なんです。

 銀行は担保(お金を借りた)として、社債や手形、国債などを日本銀行に渡す(借金の担保)、すると、日本銀行は国債や手形、社債、などを預かった「借用証書」として、紙幣を銀行に渡します。その紙幣が世の中に回って、経済が動いているということですね。

 銀行はお金を預金者から預かって、その金で、会社に投資したり、国債を買ったり、投資してお金を増やします。日銀は最後の貸し手。最後は日銀が何とかする。

 日本銀行券は「借用証書」だけども、おカネとして日本国中で使えます。

 前の項目でも書きましたが、我々、日本人がこの紙幣を信じているからどこででも使えるんですよね。だって、日本国内で、EUのユーロ紙幣は使えないでしょ?

 そういうことが紙幣のおカネの仕組みであるのですよね。

 あと、ここで『機会費用』という経済用語の言葉を紹介します。わたしたちはその都度、何かの選択をしています。そうして生きていくんです。例えば、高校を卒業して、四年制大学に入学する。もし、その選択をしなかったら、大学に行かないで高卒で働いたら四年間仕事をして、一千万円稼げたかもしれない。大学の四年間で例えば、授業料を八百万円払うかも……つまり、その選択をしたことで、しなかった分の費用の一千八百万円を払ったことになる。常に我々は機会費用を払っている。

 これが選択しなかった分の機会の費用を払う『機会費用』という考え方です。

 つまり、そうして経済活動を知らずにしているのです。

 

   戦後の日本の経済発展は「インフラ整備」で?


 当時の池田勇人首相は一九六○年、「所得倍増計画」を打ち出した。国民所得を一〇年で倍にするという計画であった。大蔵大臣に田中角栄を起用し、計画は大胆であったが、一○年の目標を待たずに七年で達成しました。どんなことをしたのか?

 道路の整備がまずはです。道路を整備しなければ、物資の運搬(モノを運ぶ)のに非常に時間がかかってしまう。そこで道路の舗装をすることを、経済の発展の第一歩にした。

 全国の港湾も整備し、貨物船が港につけられるようにした。これで国内で生産したものを海外に輸出できるようになりました。

 国民に必要な不可欠な公共施設の整備のことを、社会資本整備(インフラ整備)といいます。社会資本、つまりインフラ(インフラストラクチャー)には公園や上下水道、病院などの生活関連施設と、港湾や道路などの産業の関連の施設などがあります。

 日本はまず産業関連の施設を整備し、経済発展をしようと考えたのです。その結果、物流(モノの流れ)がうまくいき、国内の物資をうまく運び、工場の製品を大量に生産、運搬し、海外に輸出できるようになりました。

 一九六四年には、東京オリンピックの開催に合わせて、東海道新幹線が開通させた。新幹線事業は、資金を世界銀行から融資(おカネを借りた)を受けた。

 世界銀行は、一九四四年のブレトンウッズ協定に基づいて設立された「世界の銀行」のような存在です。このときに借りた金を日本が返し終わったのが一九九○年代に入ってからでした。さらに、東名高速道路、名神高速道路も建設し、東京と大阪という二大都市を結ぶ高速道路が整備され、物流と人の流れが加速・圧政化し、経済が発展したのです。

 「3C」(クーラー、カラーテレビ、カー(自動車))も経済が発展して給料が増えて、消費活動で売れました(三種の神器、とも)。また、池田首相の『所得倍増計画』や田中角栄首相の『日本列島改造論』で、日本は世界第二位の経済大国にもなった。

 

   日本は借金でつぶれる?


 歳入の四割以上を借金する日本という現実があります。九〇年にバブルが弾けてから、日本の経済は長期低迷期に入りました。つまり、不景気やデフレ、リストラの生活です。

「日本は借金大国だ」と経済ニュースではしばしばいわれます。

 借金は一○○○兆円以上! 税収は六五・二兆円であり、歳入額は一〇七兆円。国債発行による歳入は三六・九兆円。家計にたとえると、年収が六五〇万円なのに、三七〇万円近くの借金をして、さらに二四〇万円近くを借金返済にあてながら、一〇七〇万円以上かかる生活を送っているようなものです。こんな生活ではいつか破綻してしまいますよね。

 国民一人一人だと借金は九九二万円といいます。

「池上彰は嘘を言っている。日本に借金はない。子供が親から借りているだけ……」という勘違い(というかMMT理論のペテンに騙されている)のようなトンデモ説、が本当ならどんなにいいでしょうか? でも、借金、は、どんなに目をつぶってもあるのであって…。

 まずは「現実を見て」といっときますね。

 どっちが嘘を言っているというのか……。




 第二章 天下の回りモノ「カネ」



    経世済民「経済」


 日本は幕末までほとんど鎖国をして国を閉ざしていたので、経済という言葉すらありませんでした。ですが、明治になって様々な情報や言葉が入ってくることになりました。

その時に、エコノミー、という言葉も入ってきました。

さて、「エコノミー」を日本語でどう訳すか? 中国に「経世済民」という言葉があるから、そこから「経済」という言葉が生まれました。

経済の「経」とは治める。経世というのは「世の中を納める」という意味です。「済民」とは「民を救う」。この四文字から「経済」となりました。また、「理財」という言葉も生まれました。「理」は「ことわり」、「論理」で、「財」は「財産」。今でも年配の方は「理財」という言葉を使う人がいます。

「経済学」とは、資源の最適配分を考える学問です。

ソ連が崩壊し、社会主義・共産主義が失敗・崩壊するまで、社会主義の「マルクス経済学」というのがありました。カール・マルクスが考えた経済学。それに対抗する形で、資本主義いわゆる「近代経済学」があった、という訳です。

資源の最適配分は、国家の一握りのエリート官僚が計画を立ててもうまくいかない。市場(マーケット)で、みんなが自由にものを交換することがうまくいった。

また、近代経済学では「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」という大雑把ですがこの2つがあります。マクロは、大きいとか、全体的なという意味で、ミクロは、小さいとか細かいという意味ですね。

ミクロで見て、経済の最小規模が「家計」ということです。

また、経済学には「資源の希少性」という考え方があります。限られた資源をどう使い、生かし、利用していくのか? それが希少性ということですよね。

また、市場ですが、魚や野菜などのセリ(取引)をやっているのは「市場(いちば)」ですが、金融取引や株取引は「市場(しじょう)」といいます。市場(いちば)のような具体的なもの(商品)を扱っているのではないからです。

さらに、経済を人間に当てはめると「合理的経済人(ホモ・エコノミクス)」というんですね。そうした行動で経済学を語るのを「行動経済学」ともいいます。300円と600円の商品があり、安い方を買いたい。でも、そこに同じような商品で900円の商品があれば我々は真ん中の600円の商品を選ぶ――――これはそば屋やうなぎ屋の「松・竹・梅」のようなもの。900円の商品があると600円の商品が安く見える。安い(過ぎる?)300円を選択しない。

経済はだから面白いんです。なかなか、人間の真理が影響している。まあ、景気の気は気分の気ですからね。

不景気になるとお父さんへの背広が売れなくなる。

高級ホテルのコーヒーは何故値段があれだけ高いのか? それはそれだけ払ってでもそこで飲みたい、という心理なんですね。ブランド品のバックや服を買うのと同じな訳です。

経済学の経済ニュースなどでグラフ図が出ると思うんですけど、まあ、データですね。その中で「国内総生産(GDP)」と「景気動向指数」が重要です。

「景気動向指数」には、「先行指数((景気に先行して動く)全11項目)(・新規求人数・新設住宅着工床面積・実質機械受注・東証株価指数 など)」や「一致指数(全10項目)(・商業販売額・有効求人倍率 など)」や「遅行指数(全9項目)(・家計消費支出・法人税収入・完全失業率 など)」があります。

毎月に内閣府が、発表していまして、景気がどれぐらい強いか、悪化しているのか、将来どうなるのか、の変化を示す「コンポジット・インデックス(CI)」の数字で発表しています。

また「完全失業率」というのがあります。

これは、労働人口の中で、就労者ではない仕事を求めている、仕事に就きたくて現在仕事を探しているひとたちのことです。でも、仕事に就きたいが、いい仕事が見つからずに、仕事探しを諦めると「潜在失業者」となり、失業者のカウントから外れます。また、学生や専業主婦や高齢者(働く意思がない)、それと十五歳未満は、そもそも失業者にはカウントされません。

仕事をしていたお父さんが失業するとお父さんは失業者になります。で、その妻で専業主婦をしていた奥さんが仕事を探し始めると失業者にカウントされ、今まで遊び惚けていた子供が仕事を探し出すとこの子供も失業者にカウントされるわけです。

不況になると失業率が上がるのはこういう仕組みですね。

ただ、不況でも失業率が下がることがあります。それは、仕事を探していたが、きちんとしたやりたい仕事がなくて仕事探しを諦めた。この場合も失業者にカウントされなくなる。

他人は「毎日毎日何年も職安(職業安定所・ハローワーク)に通ったこと」さえ理解せず、「怠けている」といいますが…(笑)。

ですが、失業率は実際の数よりも低く産出されるんです。でも、その理由のひとつがこの「仕事探しを諦めた」ということも影響はしています。

経済のものさしのようなものが「経済成長率(GDPの前年比伸び率)」です。「GDP(国内総生産)」ですね。

昔は「国民総生産(GNP)」が使われていましたが、その当時は日本企業は日本国内にしか会社や工場がなかったので、国内での生産総数を利益で算出してたんですね。ですが、日本企業が海外に会社や工場を多く持つようになって、外国人の生産の利益も同じく計算するのはちがうんじゃないか? となり、「付加価値」で計算するGDPになったんです。

また、日本はGDPで、中国やドイツにも抜かれましたが、一人当たりの国民所得「GNI(国民総取得)」ではアメリカが一位ですが、中国やドイツに抜かれた日本人が二位です。

ですが、中国は14億人(世界一の人口のインドは15億人)もいるのですからそりゃあ、国民総所得が少なくともGDPでは二位になりますよね。

では、「付加価値」のしくみを簡単に説明します。

例えば自動車産業で、製鉄所が60万円で車のボディをつくり、それをメーカーに100万円で売ります。製鉄所は40万円の新しい価値をつけたことになりますね。これが付加価値というものです。で、メーカーはこの100万円の原材料を組み立てて150万円の自動車にして、ディーラーに売る。メーカーは50万円の付加価値をつけました。今度はディーラーが150万円で仕入れたものを、お客さんに200万円で売る。ディーラーは新たに50万円の価値を付けた。この付加価値を合計したものがGDP、その国の富ということです。

付加価値をあらゆる商品や業種で、計算してその合計でその国の富を計る。

実際はもう少し複雑な算出方法なんですが、ざっくり説明すればこういうことです。

また、世の中にはいろいろな会社があり、いろいろな商品があります。

ですが、この商品が出回る、それを買う、売る、というのはイコール経済ということ。カネは天下の回りモノ、ということ。商品を買うのは選挙で政治家を選ぶのにも似ています。

商品を買うなら、粗悪品……すぐに壊れる商品や企業の粗悪なサービスは避けて、いい商品やいい企業におカネを使いましょう。そうすれば粗悪な商品やサービスの会社は、市場原理によって淘汰され、潰れて消えていく。いい企業や商品だけが世の中に出回るようになる。それこそが経済であり、そういう社会が誰にとってもいい社会になるんです。

我々もそういう経済活動をしなければなあ、と思うんです。

 

  景気とはそもそもなんでしょうか


 給料が上がったりボーナスが増えたりすると、私たちは「景気がいい」と感じ、逆に、給料が減ったりボーナスが少なくなったりすると「景気が悪い」と感じます。企業の場合は、商品やサービスの売り上げが上がって利益が増加すれば「景気がいい」、売り上げが落ちて利益が激減すれば「景気が悪い」ということですね。

国レベルで見れば、国民の所得が増えて税収が増えれば(税金が多く集まれば)「景気がいい」、逆に、国民の所得が減って税収が減れば(税金があまり集まらなければ)「景気が悪い」ということになるのです。

何度も言いますが景気の気は気分の気、です。

経済にはそういう人間の感情のようなものも含まれるんですね。

話がかわりますが、では、会社はどうなると倒産するのでしょうか?

「倒産」とは、要するに会社がつぶれることです。「債務(借りたお金を返す義務のこと。つまり借金)」の支払いが不能になった状態のことです。

取引先に支払わなければならない代金を企業が支払えなかったり、銀行からの借金が返せなくなったりの状態のことで「倒産」です。

例えば、企業が取引先から商品を買った際、「手形」で通常は支払います。「必ず支払います」という約束、これが「手形(てがた)」です。これには支払日が指定されていて、その支払日までお金を借りていることになります。これが「債務」というものなわけですね。

手形を受け取った企業は、その手形を銀行に持ち込んで、「現金に換えてください」と要求する。銀行は、手形発行の会社の銀行に持っている当座預金の口座から、その金額を引き落とします。これが「手形を落とす」ということ。

ところが、手形を発行した会社の口座に十分な預金がないと、手形を現金に換えることができません。これが「手形が落ちない」または「手形が不渡りになる」という状態です。

この不渡りが一回だけなら倒産になりませんが、一回目に不渡りを出してから六か月以内に二回目の不渡りを出すと、銀行取引が停止されてしまいます。

取引先は、「(手形ではなく)現金で払ってくれないと商品を納入しない」という態度になる。まだ、この状態でも会社がつぶれたとはいえないが、仕事ができなくなるので「事実上の倒産」ということになります。

倒産すると、会社は「もう一度チャンスをください」という要求を裁判官にだすことができます。

「会社更生法」では社長がクビになり、管財人が再生を図ることになります。

「民事再生法」では社長が辞めずにもう一度がんばるということですね。

「自己破産」の道を選らぶと会社は完全になくなります。

「金融」とはおカネを融通(ゆうずう)すること。

 では、話は変わりますが太平洋戦争に負けた日本は、どうやって復興したのでしょうか? 戦争に負けた日本はGHQ(連合国軍総司令部)によって統治され、経済発展策が計られます。具体的には、①「財閥解体(三井・住友・三菱・安田の財閥の解体)」②「労働組合の結成の自由」③「農地解放(地主から国が農地を買い上げて、小作人に安く売り渡した)」です。「朝鮮戦争」での特需も経済復興に役に立ちました。

また、選挙の女性の参政権や投票権利、女性の地位向上、なども戦後の改革の成果です。

また、話は変わりますが、90年代に崩壊した「バブル経済」、バブルというのは泡ということ。バブルでは、ドル安円高で、日本の土地が物凄い勢いで値上がりし、みんなが熱狂的に投資や投機、浪費に明け暮れていた経済状態のことでした。

みんな、浮かれて、夢のような生活をしていた。まあ、本当に儲かっていたひとは少数だったんですけど、おカネこそ力! みたいな狂気がバブル経済でした。

このバブル経済は二十五年に一度やってくる、といい、人々が忘れた頃に繰り返すのだそうです。最近で言えば、中国の「不動産バブル」が弾けて、中国経済は酷いことになった。

アメリカで言えば、最近の「生成AIバブル」ですね。

日本の「バブル経済」は、地価が高すぎてマイホームが持てない「地価対策をとれ!」と、大蔵省(現・財務省)が対策を取ったらバブルがはじけ飛んだ、という。

その後、三十年にも及ぶ不景気・不況が始まったのでした。



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近代経済学の父、アダム・スミス


「近代経済学の父」とアダム・スミスは呼ばれています。『国富論』(1776年発表)は、世界経済に大きな影響を与えました。『国富論』以外に翻訳がいくつか出ていて、『諸国民の富』という日本語訳の題名もあります。そもそも、彼が展開した理論は、私たちにとって財産や富とは何だろうか、そしてその富はどのようにして増えていくのかということを考えたものです。それを進めればいい。そのしくみがわかればですが。あるいはうまくいかないところをなくしていけば、みんなが豊かになれるであろう、それはどういうことなのかということを論じた理論です。

1723年にアダム・スミスはスコットランドで生まれました。

スコットランドは当時、イングランドに併合されて、大英帝国いわゆるイギリスの一部になっていました。イギリスの一部という認識が私たちにはありますが、スコットランドから見ればイングランドに無理やり併合されてしまったという思いがある。イングランドに対抗する心を持っていました。

そういった環境の中で彼は育ちました。その後スコツトランドに帰り(ロンドンで学んだこともあるが)、名門グラスゴー大学で、経済学ではなく「道徳哲学」の先生をしていました。そうした「道徳哲学」から「経済学」の知識やアイデアを彼は得ました。彼は人々の感情あるいは道徳的な行動を分析しました。人々が利己的な行動をするのは何故か?

つまり他人のことより自分の利益ばかり考えて働いているのに、なぜ世の中はうまくいくのかということを考えている。そのうちに、自分なりに経済学を考えるようになったのです。


社会秩序は「同感」の感情で保たれている


『道徳感情論』の中で彼が強調しているのは、「同感」という感情、人間の心の動きです。、「あなたの意見に同感する」というふうに使いますよね。あの「同感」です。

私たちはみんな自分のことばかり考えて行動する、もちろんそうでない人もいます。他人のことを考えるときもあります。でも、働くとなると自分の利益を考えます。

やっぱり儲けたいと思うから、自分の利益ばかりを考えて行動する。それでも社会的に秩序が成り立っている。自分のことや勝手なことばかりみんなが考えていたら、それこそ盗みや強盗がひっきりなしに起きてもおかしくなさそうですが、社会がばらばらになっていない。アダム・スミスは、それはどうしてなのだろうか? と考えた結果、ある観念に辿り着いたのです。そう、「同感」です。

まあ、真実が見えたんですね。自分の利益ばかり考えて行動しているように見えるけれども、家族を養うためだったり、金儲けでもこれくらいは許されるかな、だったり、自分だってやるもんなという同感を他人から得られたりすれば、その行動は許されるということです。

ここまでやったらやりすぎかな、ほかの人から同感が得られないなと逆に言えばそう思えることなら、自分の行動に自然とブレーキがかかる。

考え方が、だから社会の秩序は保たれているんだという。アダム・スミスのこの思想が、経済学に発展していくことになります。


輸出と輸入、どちらも国を豊かにする


題名が『国富論』というくらいですから、私たちにとってアダム・スミスは、そもそも、富とは何か、何が富に当たるのかを考えたひとでした。そしてこう定義します。

「富とは普段の労働で取得される必需品と便益品」。

富は生活必需品があってこそですよね。富がなければ非常に貧しい。便益品というのは言ってみればやや贅沢をする「もの」です。これを合わせて消費財と呼びます。

これこそが富で—とアダム・スミスは考えた。消費活動をいろいろする、それが富であると考えたんですよね。このような考え方をなぜしたのか。

実は当時最も一般的な考え方では、輸出をすれば金や銀や銅など貴金属が国に入ってくる、輸出することですばらしい貴金属が得られる。その金属こそが富なんだと考えます。

一方で輸入をすれば支払いに貴金属を使うことになる。国から貴金属が出ていってしまう。国を豊かにしないのが輸入という考えです。

つまり、富とは貴金属である、金や銀や銅こそが富であるから、それをため込むことが大事なんだ。どんどん輸出をして貴金属をためることはすばらしい。逆にものを輸入してしまうとためた貴金属を外国に払わなければならない、その分減ってしまう。これは富が減ることだ、ということです。

変な考え方かもしれませんよね。今考えれば。

アダム・スミスはこの考えを否定したんです。

彼の考えはこうでした。輸出をすることによって貴金属が国に入ってくることはもちろんいいことだ。その貴金属を使って、一方で、海外からいろいろなものを買う、輸入をすると、生活必需品や便益品などのさまざまな消費財が国内に入ってくる。

それは国民の生活をより豊かなものにする。だから輸出だけじゃなく輸入によっても私たちの暮らしは豊かになる、これこそが富なんだというものでした。

海外との自由な貿易を行う。富を増やすためです。つまり、それと同時に国内でも自由な経済活動をすることによって富が増えていく。これがアダム・スミスの考えだったのです。

単にどんどん輸入すればいいとは、だからといって言っていません。

いきなりたくさんの輸入を始めたら、国内の産業がそれによって壊滅的な影響を受けてしまう可能性があります。徐々に輸入を増やすことが必要なんだとだから考えました。



輸出奨励金では国は豊かにならない


輸出を増やすことによって国が豊かになることはアダム・スミスも認めています。

が、輸出を増やすために輸出を行う企業に国が補助金を出す「輸出奨励金制度」は批判的でした。金を与えることは、結果的に利益が得られない産業に富が使われていることになる。「資源の無駄遣いだろう、それは」と考えたのです。

国からの補助金を、また、目当てに生産性の低い産業に企業がどんどん参入したら、支払う補助金が増えていく一方で、生産性の低い産業に企業が集まってしまう。

それは国全体にとって決していいことではない。ほかの産業に自力で太刀打ちできなければそれは仕方がないことだ。人やお金が強い産業に流れていくことが、社会全体の資源配分の最適化に結果的につながるのではないか。アダム・スミスの考え方はこうです。

 資源の最適配分を考える学問が経済学でしたね。国が口を出したりしないでそれぞれ自由にやらせていれば、結果的に資源が最適に配分されるとアダム・スミスは考えた。

つまり市場〝マーケット〟を大事にするということです。さまざまなものの売り買いをして値段が決まっていく市場(シジヨウ)を大事にすれば結果的に経済が豊かになる、奨励金のような余計なものは不要だということです。

生産性を高めるために分業を考えた――――つまり、分業は相手への利他心ではなく利己心に働きかけて成立すると言ってます。

あなたがごはんが食べられる、ビールが飲める、ステーキが食べられる、それは米屋さんがあなたのために(農家も含めて)コメをつくってあげましょうと言っているわけではない。自分が儲けようとしている。でも利己心でコメを売る人がいるから、私たちはそれを買うこ

とができる。それによって経済が回っていく。利己心による分業により経済は動いていく。その結果、経済がうまくいくということになる。

ものの値段も利己心で決まる。たとえば八百屋さんとスーパーでそれぞれキャべツ一〇 〇個を売る例を考えてみよう。八百屋さんがキャベツを10 0個仕入れ、それを一個150円で売りました。80個売れましたが20個売れ残りました。大変だ、閉店間際だし、値引きして100円で売ってしまおうと100円にしたら見事に全部売れました。150円×80個=1万2 0 0 0円、10 0円×20個=2000円、合計1万4000円の売り上げです。

さて、スーパーでは、八百屋さんがキャべツ一個を150円で売っているのを知り、あれっと思いませんか。はじめ高い値段で売って、閉店間際に安くした八百屋さんのほうが、日頃ら安い値段で売ったスーパーよりも利益が上がっていますよね。八百屋さんが閉店間際にどんどん値段を下げていくのにはこのような戰略があり、買い物をする側から言えば閉店間際に行けば安く買えるという計画を立てることができる。

でもあまり閉店ぎりぎりに行くと売り切れて商品がなくなってしまう。売る側も買う

側も知恵を絞るわけですね。こうやって、値段をどうすればいちばん売れて儲かるかなということを常に考える、これがマーケットというものです。

大事なのが、八百屋さんもスーパーも、お客のためにキャベツの値段を決めて売っているわけではない、いくらで売ればいちばん儲かるかということを考えて値段を決めているということです。「さあ、サービスだよ」と言って値段を安くしていても、それはお客さんのためを思って値段を下げているわけではないんですね。

値段を下げたほうが売れて自分の利益になるから値引きをしているんだ、と、考えることが必要です。こうやってものの値段が決まっていくのです。

彼らはそうすることで他の多くの場合と同じく、「自分では意図していなかった一目的を促進することになる」

みんな自分の利得のことだけを考えて働いている。社会的経済活動にもでもそれはなっている。みんなが自分のことを考えて一生懸命やつていると、結果的に見えざる手に導かれて世の中がうまくいくのです。市場〝マーケット〟では個々の人が利益を求めて利己的に行動しても、見えざる手によって導かれ、結果として経済がうまく回っていくということです。

ものの値段がどうやって決まるのか。それは需要曲線と供給曲線が交わったところで決まるのでしたね。需要と供給とはそういうことです。

絶対に必要な政府の3つの役割

見えざる手によって。では、経済がうまく導かれるのであるなら、国は市場をただ放っておけばいいのでしょうか。アダム・スミス以後、自由放任にすれば、結果的にうまくいくという考え方が経済学ではずっと引き継がれていきました。でも、スミスがすべて自由放任を主張していたのかというと、必ずしもそうではありません。

『国富論』をきちんと読めば、すべて自由放任にすればいいとは言っていないのです。

アダム・スミスが、これだけは絶対必要だと言っているものが3つあります。

|つは国防。国を守るということです。それから司法行政。裁判です。そしてもうIつが公共事業などの公共施設の整備です。みんなが使う道路は国がつくらなければなりませんよね。すべて放っておけばいいというわけではない。こういうことは政府がちゃんとやらなければいけないよということになるわけです。

自由な競争をすることによって、経済が効率化していく。でも、政府としては必ずやらなければいけないことがある。それ以外のことはなるべく政府が経済を市場に任せるということな訳ですね。

  (池上彰氏著作引用・加筆)


自由競争による資源の最適配分


自由な市場経済では、競争があります。競争することによって資源の最適配分が図られます。

    *****


携帯電話市場の競争を考えてみましょう。昔の携帯電話は非常に大きく、ショルダーフォンという肩に掛けて使う重いものでした。

携帯電話というのは高いものだから個人が買えるわけがない、というのが当時の郵政省(2000年12月まで存続した国の機関)の考え方でした。そのため、日本では携帯電話の販売は規制され、できませんでした。しかし、海外では携帯電話の販売が行われていました。そのため日本国内でも携帯電話を自由に販売できるように規制を緩和しようということになり、民間企業の参入でコストが下がっていきます。どんどん携帯電話が安くなっていく、安くなればますます売れる、という循環が始まります。

そうなると、携帯電話をもつと軽いものにしよう、片手で扱えるものにしようと技術開発され、どんどん進化していきます。いまあなたが使っている携帯電話は非常に軽量ですよね。プラスチックにしてもさまざまな金寓にしても、ごくわずかしか使われていません。

ということは、たくさんのさまざまな部品を使わないで済むようになった、限られた資源

を有効に利用できるようになったということです。

さらに電話をかけるだけではなく、メール、カメラ、ゲーム、インターネットなどさまざまな機能がプラスされました。

携帯電話の歴史

電話の歴史は規制緩和の歴史でもあります。1985年、日本電信電話公社の民営化により、NTTが設立され、同時に電気通信事業も自由化されました。しかし当時はまだレンタルのみで、携帯電話の販売は規制されていました。1994年、レンタルされていた携帯電話を利用者が買い取る売り切り制が始まると' 電話会社各社の販売競争が加速しました。携帯電話の加入数は、94年から右眉上かりに増え、2007年には1億人を突破しました。まさに規制緩和によって市場が活性化したのです。2019年には、世帯あたりの「スマートフォ

ン』の保有率が83.4%となり、8割を超えました。「パソコン69.1%、「固定電話」の所有が減り、そのデータで調べても、爆発的に普及した」のがわかります。本格的な携帯電話やスマホの普及です。(総務省「通信利用動向調査』より)。

いまから思えば、携帯電話なんて買手がどこにいるんですかと言ってその販売を禁止していた郵政省の役人の判断が間違っていたということがわかるわけです。—これはこうであるべきだ—なんて役所が決めることじゃない、自由な市場に任せておけば、うまくいけば売れるし、だめだったら消えていく。それでいいじゃないか? と、いうのがアダム・スミスの考え方です。もちろん、なんでも自由にすればいいと言ったわけではないのですが、ここから自由放任がいちばんいいんだという意識、考え方が生まれてくるようになったのです。(池上彰氏著作から引用)


市場の失敗

自由な市場〝マーケット〟がアダム・スミスは大事だといいいます。その通りです。

だが、だからと言って、何事も自由にすればすべてがうまくいくわけではありません。

ここからはアダム・スミスの理論ではないのですが、それをふまえたうえでお話しします。

まず、現代の私たちの状況はそんなに簡単なものではないということがわかっています。

自由な市場に任せればそれで経済はうまくいくとアダム・スミスは言いました。

ある程度はそのとおりです。でも放っておくとマーケットが暴走してしまう。勝手にすべて自由にしておけば失敗してしまうことが起きるんですね。市場の失敗とこれを言います。

「独占」がその一つです。激しい競争が行われると、経営体力の弱い会社は潰れていきます。経営体力の強い会社がどんどん勢力を伸ばしていき、吸収や合併をして大きくなっていく。ある市場が、ふと気がつくと、一つの企業の独占状態になっていることがある。

これは決していいことではないんですね。

例を挙げるとしましょう。大型スーパーがその周辺のライパルを全部潰そうとして、ものすごく安い値段でものを売るようになりました。あなたはどうしますか。他の店があっても大型スーパーに行けばはるかに安くものが買えるということになれば、そっちに行く人が多くなりますよね。昔からあった地域のお店は結果として次々に潰れていきます。

ライバルがいなくなったら、みんな大型スーパーで買わざるを得なくなったときにそのスーパーがものの値段をポーンとはね上げたらどうなりますか? ライバル店は全市場におぃて売り手は全部潰れてしまつたのですから、そこで買うしかない。安くものを買うためには、電車に乗って隣町まで行かなければならなくなる。隣町まで行く交通費と時間を考えたら大型スーパーで買ったほうが安いということになれば、結局は、以前より高い値段で買わざるを得なくなる。独占の弊害というものがこれなのです。

飛行機や路線バス・列車も同じことです。ある場所からある場所に一つの航空会社の飛行機しか飛んでいないとなると、サ丨ビスはよくない。しかし嫌なら利用するなと言われちゃう。その航空会社を利用せざるを得ないということになると、サ丨ビスが悪いだけではなく、航空運賃も相対的に高いものになっていきます。つまり本来自由放任で、市場で自由にやっていれば結局うまくいくはずが、独占企業ができてしまうと市湯が失敗してしまうのです。

また、多くの地方都市で、かつて賑わっていた駅前商店街がシャッター通りとなってしまう問題に直面しています。商店街では、大型スーパーの進出を阻止する動きがあって、1974年に「大規模小売店舗法(大店法)』という法律が施行されました。

この法律によって、店舗面積や年間営業日数が調整されたり、駅前に大型スーパーがつくれなくなったりしました。大型スーパーは、それで郊外に出店を始めたのです。

消費者は自動車で郊外の大型スーパーに買い物に行くようになった。

皮肉なことですが、小さな商店を守ろうとつくられた法律が、駅前商店街から逆に消費者を遠ざけてしまったのでした。

一方、大型スーパーができると目の前に八百屋さんができる光景を目にすることがあります。小判餃商法といいます。鮮度のあまりよくない野菜を売るスーパーの近くで、あえて八百屋さんを開き新鮮さをアピールして商売をする。いまにして思えば、商店街は大型スーパーを阻止しないで' 共存して大型スーパーに来る客を取り込むという戦略をとっていれば、もしかしたらうまくいっていたかもしれませんね。

独占禁止法で市場の失敗をカバーする

独占を防ごうとつくられたのが「独占禁止法」という法律です。

ある産業をひとつの企業が独占してしまうようなやり方を禁止したり、ある産業の中で2つの企業しか存在しないとき、その2つの企業が合併するようなことを認めなかったりする、独占禁止法に基づいた独占の防止がこれです。

この法律に基づいていろいろな監視をする役所が、「公正取引委員会」です。

テレビゲームの抱き合わせ販売というものがあります。人気のあるゲームソフトを人気のないゲームソフトとセットにしてしか売りませんよという「弱い者いじめ」のやり方です。その会社でしか買うことができないという独占的な立場を利用して、いじめをする。これは許されないことです。独占禁止法で禁じられています。

あるいは、大型スーパーが近くにある豆腐専門店を潰してしまおうと考え、その豆腐専門店の半額で豆腐を売り出す。当然のことながらみんながスーパーで豆腐を買う。そうすると、その豆腐屋さんは潰れてしまった。さあ、スーパーは安心して豆腐の値段を3倍にする、というのはいけないですね。正当な値段で安いならいいのですが……

こうしたことを禁止して、市場の失敗を防ごうとしているのです。

(池上彰氏著作引用・加筆)


市場の失敗2——外部性


市場の失敗の原因には「外部性」というものもあります。たとえばある化学物質をつくる。その過程で有害な化学薬品や化学廃棄物が出てきます。周辺が汚染されてもいいやと思って、川に流してしまう。本来ならば企業は環境を汚さないようにするために汚れた廃棄物が出ないようにしたり大気汚染物質を放出しないようにしたりしなければなりません。

だが、勝手に自由な経済活動をやらせていると、どんどん汚染物質の垂れ流しをしたり、有害物質を大気中に放出してしまったりする。そのほうが安いコス卜でものをつくることができるからそうしてしまう。これが負の外部性による市場の失敗ということ。

企業に勝手に自由な経済活動をやらせていると、コスト削減のためにこんなひどいことが起きてしまう。政府が大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの法律をだからこそつくって規制をし、企業が勝手なことをできないようにすることも必要なのです。

温室効果ガスの排出が地球温暖化を加速させている。自然災害が多発しているのも、世界の市場の失敗―――――ということです。

さらに市場の失敗には「情報の非対称性」によるものがあります。対称ではない、つまりお互いに同等の立場ではないということです。かつてアメリカでは中古車市場でよく見られた現象です。新車に不良品はあまりないですよね。もし新車で欠陥が見つかれば、リコール制度により無料で取り替えるというしくみがあります。しかし中古車の場合、前の持ち主が丁寧に使って新車同然の状態の中古車なのか、事故車を中古車販売店が外側だけきれいに直して売っているものなのか、見た目ではわからないですよね。

なかなか素人には判断できません。買い手にはわからない。でも売る側はわかっている。

だからこそ取引がなかなか成立しない。これが情報の非対称性による市場の失敗です。

消費者は一生懸命に選択します。しっかりとした建物を建てて、その中古車店がたくさんの投資をして大々的にお店をやっているのだということがわかれば、少なくともある程度は信用できますよね。とんでもない欠陥品を売って評判が悪くなったら潰れてしまうわけですから、これだけの投資をして営業しているのだから、大丈夫なのかなと思いますね。

すぐにでも店を畳んで逃げられるような店構えで中古車を安く売っていたら、逆に言えば、「ちよっと待てよ」、ということになります。そこで情報の非対称性という問題がある場合、消費者を守るという法規制が必要になってくるわけです。

消費者庁という役所が日本にはあります。また、それぞれの地方自治体には消費生活センターというのがある。で、消費者からのさまざまな訴えに応える消費者行政が成り立っているわけです。消費者への情報が十分ではない、非対称性がある、それを何とか保護してあげましょうというしくみがあるのです。

 (池上彰氏著作引用・加筆)

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レモンが市場を破壊する

アダム・スミスは「見えざる手」がうまく働くには、いくつか前提条件があります。その一つが市場で売買されるモノやサービスについての内容や特徴などすべての情報が完全であることです。ところが、実際には消費者がすべてを知るのは難しい。入手する情報が完全でないはかなさが取引のトラブルを招くことも多いのです。

経済活動をするにつけ、商品などの取引を行う当事者の一方が情報を相手は知らないという「情報の非対称性(情報の不完全性・市場の失敗)」という状況がしばしば起きます。この不完全情報のもとでの市場経済を分析する新しい経済学が発展し、多くの経済問題の解決策を提供しています。この分野を確立した代表的な論文がジョージ・アカロフの「レモン市場質の不確実性と市場メカニズム」(1970年)です。こうした経済分析などへの貢献で、アカロフは2001年、マイケル・スペンス、ジョセフ・ステイグリッツとともにノーベル経済学賞を受賞しました。米国の中古車市場を分析した論文のタイトルは、欠陥:を「レモン」と呼ぶことからきています。車の売り手は、欠陥(酸っぱさ)をよく知っているが、買い手は皮の厚い外見(色や香り)しかわからず、中身、品質を見分けることが難しい。情報が隠れているために、買い手の無知につけ込んで悪質な商品ばかりが増えてしまう。この現象を「逆選択」と言います。「レモンの原理」が働いて欠陥車ばかりが出回ってしまうと、まともな取引ができなくなり、極端な場合、市場そのものが消えてしまいます。保険や融資などでも似た現象が起きます。政府による新しいしくみの提供など、「逆選択」を防ぐ工夫も考えられています。

(池上彰氏著作から引用)



経済学は時代の処方箋である


いまの資本主義経済は、市場の失敗をカバーしながら成り立っているということになります。このように考えると、経済学というのは役に立つんだということがわかりますよね。

勝手な規制を国や政府がすると経済が発展しなくなる、余計な規制はやめる必要があるということが経済学によって解明できた。ですが、それでやってみたら、市場の失敗が起こることもまた経済学でわかる。経済学はこうして試行錯誤を繰り返すという部分があります。

この経済学の理論である時点ではうまくいくと思ってやったけれど、時代が変わってそれではうまくいかなくなることがある。 経済学はそのための新しい規制をつくる、あるいはそれの繰り返しです。そして、それをうまく説明する新しい経済学の理論が生まれてくるということです。

そのときそのときの対策としての処方箋を経済学では書きます。状況に応じて新しい経済学者が新しい処方箋を書くということを、繰り返してきたのです。

経済学というのは物理学や化学とはそういう意味でまったく違います。

物理の法則というのは、その法則がきちんと見つかれば、その法則に基づいてロケットを打ち上げることもできます。結局は生身の人間を相手にしているのが経済学であるわけです。経済学では合哩的経済人を想定していますが、実際、生身の人間はそのとおりにはいかない。だからうまくいっていた経済学(例えばマルクス経済学)もやがてうまくいかなくなることがある、じゃあまた新しい経済学を、と、この繰り返しです。それが経済学の歴史なんだということです。

日本経済はデフレが続いた。物価の値上がりにも思えるが、経済全体では何が起きているのか? よいインフレ(デマンドプル型インフレ)と悪いインフレ(コストプッシュ型インフレ)――――――そして、インフレとはどんな状態なのか?

「デフレ」とは物価が下がること(デフレーション)。日本の経済ニユースでは、「デフレ脱却」のことばかり報じられてきました。ところが、過去に出た経済学の専門書を開いても、デフレについてはあまり触れられていません。、世界大戦後の世界経済は、インフレーションとどう闘うかが主な問題であった。デフレに苦しむことなど想定していなかったからです。日本は、そのデフレに、直面してきました。

デフレとは、和製英語です。正式には「デフレーシヨン」のことで、「縮んでいく」という意眯です。経済規模が小さくなっていくことを示しています。

日本政府の定義によれば、デフレとは「持続的な物価の下落Iということになります。つまり、ものの値段がずっと下がり続けている状態です。ちなみに、景気のいい.惡いに関係なく、ものの値段が二年連続して下がつていればデフレと呼ぶのです。

戦後の日本は物価の値上がりに悩まされてきただけに、物価の下落は、当初みんなに歓迎されました。けれども、商品の値段がなんでも下がっていくと、商品のメーカーや商店としては、自分のところでも安くしないと商品が売れない、ということになります。そこで値没を安くすると、売れても儲けは少なる。

値段を下げてもやっていけるようにするには? そう、経費を切り詰めなくてはなりません。商品のメーカーは、取引先の部品メーカーに「値段を下げろ」と交渉し、仕入れ価格を下げさせます。社員の給料を下げたり、ボーナスを減らしたり、という対策もとります。部品メーカーも、納入価格を引き下げられたら、社員の給料を下げる羽目になります。

いろいろな会社の給料がこのようにして下がっていきました。

みんなの給料が下がれば、新たに商品を買う意欲が低下します。物価がどんどん下がっているのだから「もつと値段が下がつてから買い物しよう」という人も増えます。

商品がますます売れなくなります。この状態を「デフレ・スパイラル」と呼びます。「スパイラル」とは螺旋階段のことです。下に向かつて降りていく螺旋階段をイメージしてみてください。デフレの経済では、みんなが螺旋階段を下に向かって降りていく、いや、落ちていくのです。デフレ・スパイラルは、一度はじまるとなかなか抜け出すことが難しくなります。その為に、日本経済最大の課題はデフレ・スパイラルから脱すること、となってきたのです。

「インフレ」とは物価が上がってくること。インフレ(インフレーシヨン)は、デフレとは逆に、物価がどんどん上がっていく状態をいいます。

需要と供給の関係を思い出してください。ほしいという人が多いからいまのうちに買っておこうという人が増えます。その結果、需要がさらに増えて、ものの値段も上がります。そうやって経済全体が膨らんでいく状態をインフレというわけです。

二〇一三年一月、政府と日銀は共同声明を発表し、「物価上昇率の目標(インフレターゲット)を二%とする」と述べました。|定の物価上昇率を定めて行う金融政策です。

目標値までインフレに誘導することで、デフレを脱却しようというものです。

二〇二四年にウクライナや中東ガザでの戦争と、世界的なインフレで日本でも物価高で、デマンドプル型インフレ(需要を引っ張るインフレ・よいインフレ)ではなく、コストプッシュ型インフレ(価格を押し上げるだけのインフレ・悪いインフレ)だけになっています。

給料や年金が上がらないのに、物価だけがどんどん上がっていく状態です。

まさに大打撃です。食料品を買うだけで一回で、一万円をすぐに超えてしまいます。

物価上昇率を判断する指数に「消費者物価指数」があります。二〇二一年の総合指数は二〇二〇年を一〇〇として九九.八。物価上昇率二%は、なかなか難しい目標とされてきました。

ところが二〇二二年に入り、ロシアによるウクライナ侵攻で原油や穀物が大幅に値上がりした影響で上昇率が二%を超える月も出ています。

しかし、みんなの給料が上がらない状況でのコスト高による物価上昇は、企業経営や家計を圧迫する。そういうおそれがあります。

税金はなんのために納めるのか? 毎月の給料から天引きされているから、ふだんは税金をあまリ意識していないという人も多い。税金はどう集められ、どう活用されているのだろう。

税金の使い道はどうなっている?

自分がいったいいくらの税金を払っているか知っているか? あなたはご存じでしょうか。また、自分たちの払った税金がどこに行って、どう使われているかわかるでしょうか。

たとえば公務員の給料は、私たちの税金でまかなわれています。総理大臣をはじめとする政治家たちの給料も、もちろん税金から支給されています。都道府県や市町村でも、私たちが納めた税金が使われています。道路を整備したり、橋を作ったり、学校を建てたりするの

にも税金が投入されています。

二〇一一年に発生した東日本大震災では、自衛隊が被災地の救援活動で活躍しました。この自衛隊の活動費用も、税金から支出されています。

かなり、さまざまな用途で税金が配分されていることがわかります。

税金について考えよう。

会社に勤務している人は、給料から会社が国に税金を納めた残りの額を手取りとして受け取っています。そのため、自分が税金を払っている実感に乏しい人が多いかもしれません。

会社を通して税金を徴収する制度は、日中戦争の最中の一九四〇年に作られました。戦争の資金を効率よく集めるために考えられたシステムなのです。

しかし、戦争が終わっても、このシステムだけは残り、現在でも続けられています。日本人が税金の使い道についてあまりとやかく言わないできたのは、背景にこのシステムがあるからです。大事なのは、私たち一人ひとりが義務として税金を払っているということをきちんと自覚するということです。

そして、税金の使い道に厳しい目を向けることです。そのためにはサラリーマン全員が自分で税金の手続きをして税金を払うシステムに変更するのが理想です。アメリカではそうなのです。税金の使い道について厳しく目を光らせる。

税金は果たして正しい方向で活用されているのでしょうか?

政治家や官僚は、「視察」と称する観光旅行や、無駄な道路や橋、公共施設などの建設に惜しげもなく税金を投入したりしてはいないでしょうか。私たちは、税金の無駄づかいに対して厳しい目を向けなければなりません。

選挙の際に、税金の使い方について自分と同じ意見を持つ候補者に一票を投じるのも有効な手段です。税金の無駄づかいを許さないためにも、私たちが自分で考えて行動していくことが求められるのです。



消費税はまだ上がる?


消費税が一〇%に増税されたのが二〇一九年のこと。増大する社会保障の費用をまかなうため、これから、消費税はどこまで上がるのだろうか?

衰退しつつある日本―――――日本はいま、急速に少子化が進行しています。合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの数の平均値)は、二〇二〇年の統計で一.三三。人口を維持するために必要とされる二.一を大きく下回っています。同時に高齢化も加速していて、高齢化率は世界一位の二九. 一% (二〇二一年)。国民の約三割が六十五歳以上ということになります。

高齢者が増えると、当然、医療費は増大します。年金も、高齢者が増えるだけ、若い世代に保険料の負担が重くのしかかります。

国の支出に占める社会保障関係費の割合は約五四% (二〇ニー年度)で、三五兆八四二一億円を計上しています。この社会保障関係費は、毎年一兆円ずつ増えていくといわれています。そうこうするうちに、国の借金は一二二〇兆円という大変な額に達したのです。

そこで、一つの手段として登場するのが「消費税の増税」です。なぜ、社会保障費を消費税でまかなう必要があるのか。消費税のような間接税は、景気の動向に左右されにくい特徴があるからです。

景気が悪くなると、企業の儲けが減るので法人税収が減ります。社員の給料も減りますので、所得税も減りますね。しかし、景気が悪くなったからといって、買い物をやめるわけではないので、消費税の税収はあまり落ち込まず、安定した収入が見込めます。そこで、社会保障を維持するうえで、財源として消費税が選ばれているのです。

消費税は、いったい何%必要?

日本では一九八九年四月に初の消費税(税率三%)が導入され、一九九七年に五%、二〇一四年に八%、二〇一九年一〇月に一〇%へと引き上げられました。当初は消費税に反対する人が多かったのですが、現在では当たり前のもののように受け止められています。

ただし、消費税は生活必需品にもかかるので、所得が低い人ほど増税は死活問題。そこで一〇%への増税時に、食料品など特定品目の税率を八%のまま据え置く「軽減税率」が導入されています。

政府は「消費税で社会保障費をまかなう」と言っています。そう聞くと、増税で社会保障が充実するように思うかもしれませんが、そうではありません。増税分は社会保障の維持に使われるだけであって、充実させるまでには至らないのです。

消费税の税収は、社会保障費の合計に足りていない現状があります。社会保障費の多くは国の借金で補われており、いまの社会保障を維持しつつ、国の借金を増やさないためには、消費税を二〇%にしないといけないくらいなのです。

世界的に見ると、たとえばイギリスの消費税は二〇%、イタリアは二二%、フランスは二〇%、ドイツは一九%。高負担高福祉で知られるスウェーデン、ノルウエー、デンマークなとの北欧諸国は軒並み二五%となっています。

金利とはなんだろう

銀行にお金を預けても、限リなくゼロに近い利子がつくだけなわけ。

夜や日曜にお金を引き出すのにも手数料が取られたリする疑問。

そもそも「金利」とはどういうものなのだろう。

金利とは「レンタル料」であり「我慢料」のこと。

大金を預けるときにもらったり、借りたりするときに払う利子。これがもとの現金に比ベてどのくらいの割合なのかを示したものが「金利」です。通常は、年利を「%」で示します。「年利」とは、「一年間預けたら何%」「一年間借りたら何%」という意味です。

この金利について、私はよく「お金を借りたときお礼に払うお金」と説明しますが、経済学的には「お金の使用料」と説明するのが一般的です。お金も商品の一つです。一定の期間にお金を借りて使う以上、その使用料を払わなければなりません。これが「お金の使用料」という考え方です。

洋服のレンタルサービスを利用するとき、レンタル料を払いますよね。お金についても同じと思えばいいでしょう(レンタル料金が安ければ、思わず洋服を何着も借りてしまいます。金利が低いとお金を借りやすいのです)。

一方、利子は「消費の我慢料」という考え方もあります。いま、あなたの手元にまとまった現金があるとしましょう。これで、いまほしい商品を買うか、来年まで待つか。買うのを来年まで待って銀行に預けておくとすると、そのあいだに利子がつきます。これが、あなたの消費の我慢料ということになります。

金利が高い、つまり我慢料が高ければ、買い物を少し我慢してお金を預けておいたほうが有利かな、という気持ちになるかもしれません。その分だけ消費が抑えられます。金利が低い、つまり我慢料が安ければ、来年まで待っても利子がたいしてつかないのだから、いまのうちにクルマを買ってしまおう、あるいは旅行に行こう、ということになって、消費が伸びる可能性があります。

我慢料の割合である金利を上下させることで景気を良くしたり、景気の過熱を抑えたりするのは日本銀行の仕事です。どういうことかはあとで説明します。

金融機関によって違う金利

この金利は、金融機関によって微妙に異なります。金融機関は、法律の範囲内で金利を自由に決められるからです。そうはいっても、お金を預ける場合は、そんなに極端な違いはありません。しかし、金融機関からお金を借りる場合は、借り手の経営状態によって、金融機関が金利に差をつけます。お金を貸した結果、不良债権になってしまっては困るので、リスク(危険性)に応じて、金利を変えているのです。経営状態が良ければ低い金利で借りら

れ、経営状態があまり良くないと、金利が高くなります。

経営状態が悪い企業ほど低い金利で借りたいと考えますから、企業にとって、こうした

動きは困りものですが、金融機関からすれば当然のことをしているだけ、となります。

(池上彰氏著作引用・加筆)


保険はどうやって成り立っている?

私たちが保険会社に払っている掛け金は保険会社によってどのように使われているのだろうか?

実は知らなかった、景気と保険の関係を知る。

みんなでプ—ルしたお金を何かあったときに活用


「保険」とは「リスクに備えた助け合いのシステム」のこと。私たちは病気や事故そして死へのリスクを抱えています。そこで、みんながふだんからお金を出し合っておき、誰かに何かがあったとき、その中からお金を払います。これが保険の一般的な考え方です

保険会社は、みんなから集めたお金を二つの方法で活用しています。一つは、加入者に万が一のことが起きたときの保障です。加入者が亡くなったときも、家族の誰かを受取人にしておけば、受取人の生活は保障されます。もう一つの活用法は、集めたお金の投資です。保険会社は、金融機関の銀行と同じく、株式投資や、土地を買ったり、国債を買ったりしています。ただ、保険会社と銀行が違う点は、お金の出入りが銀行より安定しているというところです。銀行の場合、預金者はお金を預けたいときに預け、引き出したいときに引き出すことができるので、お金の動きが予測しにくくなります。一方、保険は長期にわたって加入するものですし、毎月決まった掛け金が入ります。保険金として払うお金もある程度予測がつきます。そのため、保険会社は長期的な投資ができるのです。

「貯蓄型」と「掛け捨て型」、どちらが得する?

保険は大きく「貯蓄型」と「掛け捨て型」に分けられます。貯蓄型は払った掛け金が積み重なり増えていきます。日本人は、貯蓄型の保険が大好きです。

たしかに、景気が良く金利が高い時代には、戻ってくるお金も多くなります。でも、景気が惡いデフレ時には金利が下がるので、掛け金を積み立てる利点も薄れてしまいます。

貯蓄型より掛け捨て型のほうが掛け金は安く済みます。加入者から少しずつお金を集めて、困った人だけに使う、しくみだからです。保険に加入するときは、景気の動向に注意して、自分に合った契約をすべきなのです。

保険会社が抱える金利のジレンマ

景気がいい時代には、保険会社は高い金利の商品を提供します。しかし、不景気になると実際の資金運用の成果より高い利子を払わなければならないので、大きな負担となります。

かといつて、好景気だった時代に約束した金利を勝手に下げると、加入者との約束を反故にしたことになります。日本では、保険会社が過去に約束した金利を三%まで引き下げることができます。しかし、経営が苦しくなり金利を下げたいと言うと、「自分の会社の経営状態は悪い」と認めることになります。どの会社も金利の引き下げをなかなか言い出せないのです。

(池上彰氏著作引用・加筆)


WTOがよくわからない

貿易に関する経済ニュースで、かつてはガット・ウルグアイ機構、現在はWTOという言葉をよく見聞きする気がする。いつたいどういった機関なのだろうか?

〇お互いに貿易をすると利点が得られるしくみ

かつては、「GATT(General Agreement on Tariffs and Trade(関税および貿易に関する一般協定・貿易障壁(関税)(輸出入規制)をなくす))ウルグアイラウンド」―――。やがて、GATTよりも強い縛りのある国際機関を作ろう、ということになり、一九九五年には「WTO (World Trade Organization・世界貿易機関(サービスや知的所有権も統括・交渉の場を提供・GATTより強いルール作り))」へと発展します。WTOは、各国が自由にものやサ丨ビスなどの贸易ができるよ、国と国がつながるル—ルを定め、加盟国間の貿易交渉の場を提供しています。ものに限らずサービスや知的所有権を含めた世界の貿易を統括する国際機関でもあります。

本部はスイスのジュネーブに置かれ、二年に一回、参加国の閣僚会議を開催。二〇二〇年三月現在、一六四の国と地域が参加しています。

WTOでは、国際会議の場でさまざまなルールを決めてきました。代表的なものに、一九八六年から九四年にかけてのGATT「ウルグアイ・ラウンド」があります。

ウルグアイは南米の南東部に位置する国で、ラウンドは、会議や交渉を意味します。「ウルグアイでの会議で決まったこと」という意味ですね。この会議では、金融や投資、情報や通信、知的所有権、サービスなどの分野にもGATTの原則を適用することにしました。

日本では戦後から一貫して、米の輸入を禁止してきました。ウルグアイ・ラウンドでは、輸入の禁止はやめるという約束をしましたが、そのかわり、高い関税をかけて自国の産業を守ることは認められました。ただし、高い関税をかけると罰則を受けます。日本の場合は、「ミニマムアクセス米」と呼ばれる米を輸入することになりました。米農家を守るために高い税率をかけているのですが、そのために米を外国から買わされるというおかしなことになったのです。


経済ニユースに登場する「経済成長率」はどうやって出すのでしょうか。これは、GDP(国内総生産)の金額の潜加率を計算します。

一年間に国内で生産された商品やサービスの金額の総額です。「生産という言葉が入っていますが、具体的には、販売された商品の値段を合計したものです。

たとえば、あなたがスーパーで買い物をしたり、外食したり、美容院へ行ったり、映画を観たり、というさまざまな場面でお金を払う、つまり経済行動をするときの金額を合計したものがGDPです。もし、家族でファミリーレストランに行って食事をすれば、支払った金額がGDPに反映されます。

五人家族が一人二〇〇〇円分の食事をすれば合計で一万円になります。これに対して、自宅で料理して食べれば、食材を買った費用しかGDPには入りません。仮に一人五〇〇円の食材だったら、合計で二五〇〇円にしかなりません。自宅で食事するより外食したほうがGDPは増える、ということになります。

また、家事労働もGDPには入りませんが、家事代行を頼んでお金を払えば、GDPに計算されるのです。こうして具体的に見ると、いろいろおかしな点もありますが、国全体の「豊かさ」を計るには、結局はお金に換算して見るしかない、ということなのです。

〇経済規模が大きくなると成長率は低下する

戦後の日本がまだ貧しかったころ、経済の規模はとても小さかったので、わずかな経済の拡大でも成長率の数字は高くなりました。一九六〇年代初めには、日本の経済規模は二〇兆円程度でした。このころ、日本経済が一年間に二兆円分拡大すると、経済成長率は一〇%ということになります。

経済や政治は、私たちの生活に深く関わっています。

『経済成長率』は、企業の工場がフル稼働し、働いている人たちが勤務時間いっぱいに働いた際に達成される成長率のこと。持っている力をフルに生かしたときの能力です。

ところが、「商品を買いたい』といったときに、需要があまりなければ、工場が能力いっぱいに生産することはありません。つまり、実際の成長率は「潜在成長率」を下回ってしまうのです。これを「不景気」と呼びます。

〇不景気でも暮らしが悪くならなかった日本

たとえば、戦後日本の高度経済成長時代の潜在成長率が一〇%程度はあると考えられているときに成長率が八%だと、「不景気」ということになってしまいます。人々は、「経済はもっと成長していいはずだ。この程度しか成長しないのでは景気が惡い」と考えてしまうのです。

「不景気」というと、「前より暮らし悪くなったこと」だと考える人がいると思いますが、戦後の日本に限ってみれば、そんな状態になることはほとんどなかったのです。

日本のGDPは、いまアメリカと中国とドイツに次いで世界第四位。世界の中では豊かな国なのですが、「日本経済はダメになってしまった」といわれることも多く、安倍晋三元総理の「アベノミクス」など、経済成長を目指す政策をとってきました。

二〇二一年に就任した岸田文雄首相は、経済政策として「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」を掲げました。これは経済を成長させるだけでなく、働く人の給料を増やし、格差を少なくしていこうとする考え方です。


暗号資産とはどんなもの?

最近、ネットなどでしばしば目にする『暗号資産』―――

この、インターネットで使える暗号資産をどう見るかは、「お金とは何か?」という問題と関わってくるようだ。

〇世界共通のバ—チャルな通貨

暗号資産(仮想通貨)とは、インターネット上にしか存在しないお金のこと。電子化された現実のお金=電子マネーとは別物です。もともと「仮想通貨」といいましたが、法定通貨と区別するために、金融庁が「暗号資産」と呼ぶようになりました。

『資金決済に関する法律」で、暗号資産は次のように定義されています。

① 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相対的に5:5で交換できる。

② 電子的に記録され、移転できる。

③ 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)で利用できる。

インタ丨ネットで取引をするときに、バーチャル、つまり仮想の通貨で支払いができて、世界共通のお金として為替手数料もかからず使えて便利になる。こう考えた人たちがビットコインという通貨のしくみを作り、二〇〇九年ごろから普及したのが暗号資産の始まりといわれます。それが現実のお店でも使えるようになってきた、というわけです。

現在では六〇〇種類もの暗号資産が存在するとされ、ビットコイン以外にはイーサリアム、リップルなどが代表的なものとして知られています。

暗号資産は、金融庁.財務局の登録を受けた事業者が運営する交換所や取引所で、それぞれの国の通貨と交換して手に入れることができます。

政府が発行しているわけでもないのに、どうしてお金としての価値を持つのかというと「ブロックチェーン」とぃうしくみに理由があります。簡単にいうと、暗号資産の利用者たちのやり取りを監視しているシステム、と、なっているのです。

〇お金として認める人がいれば暗号資産は成立する

私たちは紙幣を「お金だ」と信じているからこそ、お金は流通しています。暗号資産も同じです。暗号資産はれっきとした通貨だと信用している人たちは、通貨としてやり取りをします。だから、暗号資産がお金として成立するのです。

一方で、暗号資産なんて信用できないという人は、あえて購入したり使ったりしようとは思わないでしょう。日本では自国の通貨である円を信用し、暗号試算を怪しげなものと見ている人もいます。

しかし、政情不安で通貨も不安定な国では、むしろ暗号資産が信用される事実もあります。

そう考えると、自然発生的な信用から生まれた暗号資産は今後もなくならないといえるのです。

キャッシユレスはどこまで進む?

最近は、コンビニや飲食店などで現金を使わずに支払いを行う人がだいぶ増えてきた。

今、どこまでキャッシユレスの比率は上がつていくのか?

〇多様化するキャッシュレス決済

「キャッシュレス決済」とは、紙幣や小銭などの現金を使わずにお金を払うこと。キャシュレスになるとお店などでスピーディーに会計ができますし、「いちいちATMでお金を

下ろす」といった手間もなくなります。

現在、キャッシュレス決済の手段は多様化しています。日本で以前からよく使われている

のが「クレジットカ—ド」です。一般社団法人日本クレシット協会の調査によると二〇二一年3月末時点のクレジットカード発行枚数は二億九五三一万枚。二〇歳以上では一人あたり二.八枚持っている計算です。

なので、基本となる知識を知っておくだけで、クレジットカードで買い物をすると、買い物の記録がクレジットカード会社のデータベースに記録されます。クレジットカード会社は社口手数料を取ったうえで、代金をお店に振り込みます。そして後でカードを利用した人の銀行口座から利用額が引き落とされます。

要するに、クレジットカードで買い物をしている人は、カード会社から一時的にお金を借りて買い物をしているということです。カード会社が、利用者とお店のあいだでお金のやり取りをしているので、このしくみを「三者間契約」といいます。

「電子マネー」は電子化されたお金であり、交通系などのカードがよく知られています。スマートフオンに10カードの機能をつけることで、スマホで買い物をしたり、交通機関を利用できたりします。近年、急速に普及してきたのがバーコードなどを利用したスマートフォン決済であり、「ペイペイ」や「楽天ペイ」などがあります。クレジット口座やスマートフォン専用の支払いアブリをインストールしてカードの情報を登録します。買い物をするときには、カメラのスキャナーでスマホで読み取る、アプリに表示したコ丨ドを読み取って、决済するしくみです。

経済産業省によると、日本のキャッシュレス決済の比率は二九.七% (二〇二〇年二〇二一〇年の二二.二%から年々増加傾向にあります。特に二〇二〇年から始まったコロナ禍を受け、非接触決済への関心が高まり、キャッシュレス決済を志向する人は増えています。

しかし、世界各国を見ると、韓国九四.七%、イギリス五七.〇%、アメリカ四七.〇%となっており、日本は依然として低い水準にあります。(二〇一八年時点)。

二〇二二年四月には交通違反金などの納付方法にキャッシュレス決済を認めるキャッシュレス法が可決、成立しました。

経済産業省は、二〇二五年の大阪関西万博に向けてキャッシュレス決済比率四〇%を目標としており、将来的には世界最高水準の八〇%を目指しています。

(池上彰氏著作引用・加筆)


ケインズの「景気対策』とは?

ケインズは、国家による財政支出で景気をよくするしくみを考えた。

世界恐慌に対してルーズべルト大統領は、ケインズ理論を使った「ニューディール政策」をとった。


ケインズ政策によって恐慌は回避されたが、ものの値段が上がるインフレや国家の財政赤字にもつなかった。資本主義というのは、大きな問題がある。景気はよくなったり悪くなったりするし、ものすこく悪くなれば失業者が大勢増えて、さまざまな問題が起きる。これは資本主義そのものに問題があるからだというのがマルクスの考え方でした。

それに対して、資本主義の欠陥を補う政策がとれれば、資本主萎でも十分やっていける。豊かになれる、失業者を減らすことができると考えたのがジョン・メイナード・ケインズです。ケインズの理論は世界中の政治に大きな影響を与え、これによって資本主義が生き延びたとも言われています。

日本でも景気が悪くなると、政府が赤字国債を発行して道路をつくったり橋を架けたりして公共事業を増やせば景気がよくなるという議論が行われますが、これはケインズ理論に基づいています。ケインズがこの理論を打ち立てるまでは、赤字国債を発するという発想はありませんでした。ケインズ理論により、景気対策には公共事業という考え方が生まれたのです。

ところで、経済学は役に立たない、金持ちになった経済学者はいないじゃないかと皮肉めいたことを言う人がいます。でも、最初の講義で説明したように、経済学は資本の最適配分を考える学問です。だから経済学者が金儲けに成功して金持ちにならなければおかしいという議論は、そもそも成立しないのです。

ところが例外的な人がいました。それがケインズです。ケインズは経済学者でありながら金持ちでもあったんですね。株取引などでかなり儲けたと言われています。博打が好きでカジノに入り浸り、モナコのモンテカルロのカジノではお金を全部すり、知り合いから借金をしてイギリスに帰った、なんていう話もあります。

ケインズ経済学のきっかけは世界恐慌だった

ケインズが彼の理論を考えるきっかけとなった出来事が、1929年から始まった世界恐慌です。アメリカで株の大暴落が起こり、それをきっかけに金融機関がばたばたと潰れました。金融機関が潰れていくと金融機関同士が疑心暗鬼になり、金融機関同士のお金の流れが止まります。やがてこれが世界に広がっていきます。日本でも昭和恐慌が起こりました。

世界恐慌が起きると、それぞれの国が自国の産業を守ろうとして、外国から入ってくる商品に高い関税をかけ、輸入を差し止めようとします。世界中の国が輸入を止めれば当然、輸出もできなくなるわけで、ますます経済が深刻な状態になっていきます。

また、この激しい恐慌をきっかけにファシズムが起こり、ドイツではナチスが台頭し、で、第二次世界大戦につながっていきました。

世界の国々では「均衡財政政策」という経済政策をとっていました。政府は、国民や企業が納めた税金の枠内のお金を使って国民のための仕事をしなさい、赤字なんかつくっちゃいけませんという考え方です。

そのような政策がとられる中、世界恐慌が起こったのです。労働者が次々に失業して所得がなくなり、税金を納める人が減ります。企業も赤字や倒産で納税ができなくなります。つまり、国の税収が激減するわけです。そうなると、国がお金を使おうとしても使えるお金が少ないので、さらに景気が悪くなっていくという状態になりました。

それでも、市場の原理を考え、ニューョークの株価が大暴落した最初の段階で対策をとっていれば、これほど深刻な状態にならなかったかもしれないのに、どうしたらいいのかわからないまま税収が減っていった。でも均衡財政政策では赤字は出せませんから、政府は支出を切り詰めます。その結果、どんどん景気が悪くなってしまいました。このような状況だからこそ、マルクスの思想が影響力を持ったのです。


古典派経済学における「失業」とは?

この世界恐慌による不景気と大量に生まれた失業者を何とかしなければなりません。

しかし、ケインズ以前の古典派と呼ばれる経済学では、大量の失業者が出るのは失業した労働者に問題があると考えていました。どういうことかというと、需要曲線・供給曲線を、労働者の市場にも同じように当てはめたんですね。

労働市場においては、需要量は労働者を雇う企業の採用数、供給量は労働力を提供する就職希望者の数、価格は賃金(率)です。まず、企業側から見てみます。失業者が多くいるということは、働きたい人が大勢いると考えられます。それでも企業が採羽しないのは給科が高すぎるからだと考えます。もっと給料を下げれば企業は労働者を雇用できるようになり、失業者が減ってくるだろう。つまり需要曲線でいえば、賃金が高いから需要が増えないということになります。そして給料が下がらないのは給料の引き下げ反対と言っている労働組合があるからだと考えました。

一方、労働者側から見ると、労働環境が悪化し賃金が切り下げられていく。さらにそうすると労働者を解雇して失業者が出る。このとき失業者が安い賃金で働いてもいいと思うならば仕事を得られるのに、失業者がたくさんいるということは安い給料で動くことを拒否しているからだ、高い給料でないと働かない者がたくさんいるから失業率が高いんだ、という考え方をします。つまり供給曲線でいえば、賃金が低いと労働力である供給量が下がるということになります。

このように古典派経済学の考え方では、失業率が高いのは給料引き下げに抵抗する労働組合があったり、安い賃金で働こうとしない労働者がいたりするからだと考えました。つまり景気が悪くなっていくのは労働者が悪いんだと考えたのです。

そこでケインズは、そうではない、非自発的失業者が存在するんだと言いました。

わざわざ「非自発的失業」という言葉を使ったということは「自発的失業」があると考えていた人たちがいたからです。自発的失業とは、安い給料で働こうとしないから自分で失業しているという状態を選んでいるということです。それに対し、ケインズは企業が採用を手空えて、働きたくても働けない非自発的な失業が存在すると考えました。だから非自発的失業者を救済するしくみをつくっていくことが景気をよくしていくことだと主張したのです。

ケインズが考えた失業対策

そこでケインズは、企業にお金がなくて従業員を雇えないのであれば、政府がお金を出して雇用が生まれるようなしくみをつくればいい。そのためには公共事業が必要だと考えました。

たとえば失業者が大勢いて景気が悪いときに、国が100億円の新しい財政支出をしたとします。国が100億円を使って大手ゼネコンに新しい道路をつくる注文をすると、ゼネコンは受け取った100億円の中から数社の建設会社に30億円ずつ発注して支出をします。今度はそれぞれの建設会社がコンクリートや砂利などを資材メーカ丨に発注する。資材メーカーの仕事が増えて利益が上がれば、従業員に給料を払うことができます。また工事用のトラクターや工事用機械の車も買えば、機材メーカーにもお金が入る。すると今度は機材メーカーがさらに機材の部品を発注し、部品メーカ丨の売り上げが増え、この従業員にも給料を支払うことができます。

このように政府が100億円を支出したことによって、次々にいろいろな企業の仕事が増え、それぞれの従業員の給料が支払われる。するとその社員たちの給料やボーナスが増え、買い物をしたりレストランで食事したりすることで消費が伸びていく。経済が回り、カネが回っていくことになります。

私たちはそれが当たり前だと思っているかもしれませんが、この考えはケインズによって私たちの常識になったのです。ケインズがこの理論を発表したときは、そんなやり方があるのかと世界中の経済学者がびっくりしたんですね。大変なショックを与えたので、ケインズ・ショックとも言われています。

でも、政府が新しいお金で仕事を注文すれば景気がよくなっていくのはわかりますが、現状は景気が悪いわけですから政府に入る税金は減っています。ではどうするか。

ケインズは政府が借金をすればいいと考えました。赤字国債を発行して金融機関や国民に買ってもらう。借金ですからいずれ返さなければいけないわけですが、国債を発行してお金を得て、そのお金で新しい公共事業をして景気がよくなっていけば、建設会社の利益が上がり税金を納めてもらえます。従業員に給料が入れば、税金を納めたり、買い物や外食をしたりすることによって商店やレストランにも現金が入る。商店なども税金を納める。こうして財政支出した現金が税金としてまた戻ってくる。その戻ってきたお金で国債の借金を返せばいい。一時的に財政赤字は出ますが、回り回ってやがて赤字が解消される、だから財政はやがて均衡するんだ、というのがケインズの考え方です。

(池上彰氏著作引用・加筆)


消費性向が高まれば乗数効果が上がる

ではそのとき、財政支出をしたらどれくらいの経済効果があるのだろうか。これを「乗数効果」と言います。乗数とは掛け算のことです。たとえば政府が公共投資を100億円行ったとします。道路工事を請け負ったゼネコンは下請けの建設会社に30億円ずつ発注、さらに建設会社は部品メーヵーなどに10億円支払うという具合にお金が流れると、各会社の社員たちに給料が支払われ、そのお金でさまざまなものが消費されます。仮にそれを100億円とします。投資した100億円に増えた需要を加えた合計が2 0 0億円になれば、乗数効果は2倍ということになります。投資額に対し、全体としていくらの経済効果があるか。これが乗数効果です。

乗数効果を大きくするためには、高い「消費性向」が必要になります。消費性向とは、お金をもらったら、そのうちのいくらを使うかということです。消費性向が高まれば乗数効果も上がるという関係です。たとえば10万円もらって9万円を消費すれば、消費性向は10分の9、つまり0.9。1万円しか使わなかったら消費性向は0.1ということになります。全部使えば一・〇です。

この消費性向が高まれば高まるほど景気はよくなるということです。もし10万円まるまる貯金してしまったら何もなりません。みんながすぐにお金を使えば、景気への効果が大きいことになります。消費性向を高めることを景気対策として考えれば、景気をよくすることができるようになるわけです。


貯蓄性向を抑えるための累進課税

入ってきたお金の何割を消費に回すか、これが消費性向ですが、どれだけ貯蓄に回すのかを貯蓄性向と言います。貯蓄性向は消費性向と対立します。たとえば政府が新しく公共事業をしたり、お金を給付したりして国民の収入が増えても、みんながそれを貯金して、貯蓄性向が一,〇ならば消費性向はゼロ、景気対策の効果はまったくないということになります。

貯蓄性向を下げ、人々が消費性向を高めていくように誘導すれば景気対策になります。

そのためにケインズが考えたのが、お金持ちから税金をたくさんとる「累進課税」です。累進というのは次第に増えていくという意味で、金持ちになればなるほどかかる税率が高くなります。

お金持ちはお金がない人に比べていろいろなものを買いますが、貯金もします。しかし貯蓄が増えるばかりでは景気のためによくありません。一方で景気が悪いと失業者が増えます。失業者は収入がないわけですから、支出をしません。消費が増えないということになります。このとき政府は、あまり消費をしないお金持ちからたくさんの税金を吸い上げ、そのお金を社会保障として失業者や生活に困っている人に渡します。そうすることで、食べ物や着るものを買う人が増えて、消費を伸ばすことができます。結果として社会全体の消費性向を高め、景気をよくすることができるのです。

ケインズ以降、日本をはじめ世界の多くの国でこの課税方法がとられています。

逆に言えば、最初からこのしくみがあれば景気が悪くなってもお金持ちから貧しい人へ社会保障費としてお金が回ることによって所得の再配分になり、それによって景気の悪化をくい止めることができます。不況が深刻な恐慌にまで発展する可能性が減り、不況を軽くすることができることになります。

(池上彰氏著作引用・加筆)



人間はみんなお金が好きである

経済学はそもそも人間はみんな合理的な経済活動をするのだということを前提にしていますね。合理的経済人だと、人間はみんなお金が好きだということになります。

世の中には「お金なんかいらない」という人もいるでしょうけれど、一般的に多くの人は正当に働いてお金を増やしたいと思っているに違いないということを前提に、ケインズの経済理論は組み立てられています。

これを「流動性選好」と言います。流動性を選り好みするという意味です。何で経済学はこんなに難しい言葉を使うんだろうと思いますが、流動性選好を私なりに言えば、現金が好きだということです。みんな財産や資産は欲しい。でも持っているお金で土地を買ってしまったあとお金が必要になったときに、その土地がいつでも売れるとは限りませんよね。

たとえばマンションを買ったとします。景気がいいときにはマンションはすぐ売れるかもしれません。でも景気が悪いとなかなか売れない。いざお金が欲しいというときに売れないとなると困るわけですよね。あるいは「なんでも鑑定団」に出せるような貴重な骨董品も、景気が悪くなると売れなくなってしまう。

結局、いちばんいいのは現金で持っておくことです。現金ならば、いつでも何にでも換えることができます。お金には流動性があるということなんですね。流動性があるとまた、いつでもそれをほかのものに換えることができるという意味です。

ところで、企業の経営者はどういうときにお金を使って新しぃ事業をするようになるのでしようか。たとえば2億円のお金があったとします。10億円を銀行に預けておけば利子がつきます。新しく事業を始めるなら、そこから得られる利子を銀行に預けているときの利子よりも高くないとやる気にならないでしよう。

つまり、経営者は銀行に預けているよりも儲けることができると考えたときに、新しい事業を始める。ケインズは、利潤率が利子率よりも高ければ企業は事業への投資を始めると考えました。利潤率とは金儲けの率です。人為的に利子率を下げるのです。


流動性の罠とは?

このように世界の多くの中央銀行が、金利を下げて景気をよくするという方法をとりました。ところが日本では1990年代にバブルがはじけたあと金利をどんどん下げ、ほとんどゼロという状態にしても景気は回復しませんでした。ケインズはまるで見越したように、当時これを「流動性の罠」と呼んでいました。金利がほとんどゼロでお金を借りられて、流動性が高まったにもかかわらず、企業の投資が全然伸びないのです。

つまり、いまのままでは先行きが不安で将来に展望がないから、みんなお金を使おうとしないのです。いくら金利が低くても、お金を借りて新しく何かをしようとは考えません。ケインズの時代にはそのようなことはなかったので、「理論的にその可能性がある」とだけ指摘していました。

ところが日本がまさにその状態に陥りました。流動性を高める、つまり金利をうんと引き下げても、日本の景気はなかなか回復しません。しかし逆に言えば、先行きが不安でみんなお金を使おうとしないのなら、これから世の中がだんだんよくなっていくんだとみんなが思えるようになれば、投資が増えて流動性の罠から脱出することができるわけです。

(池上彰氏著作引用・加筆)



「景気」の「気」は「気分」の「気」でもあるという話

経済の消費活動は「美人コンテスト」

流動性の買から脱出.

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将来に不安があるから流動性の罠から抜け出すことができない。

そうは言っても気分をどうするかなんていう話は政策になりません。日本経済がだれが見ても間違いなく発展するという道筋をきちんと示したり、有望な産業が出てこなければならない。みんながそこに投資をしたりするようにならなければ、景気回復のきっかけにはないのです。2012年から始まった当時の安倍内閣によるアベノミクスは、その試みの一つです。

なぜ日本は流動性の罠に陥ったのか

日本はなぜ流動性の罠にはまってしまったのか。きつかけはバブルの崩壊です。日本経済のバブルがはじけたあと、日本銀行は金利をどんどん下げました。それで景気がよくなると思ったら、ならなかった。日本の企業の多くが想像以上の深手を負っていたのです。

バブルのとき、日本の企業は金儲けのために大量の土地を買つた。バブルがはじけ、土地の値段が大幅に下がって企業は大損をし、企業自体が存続することに汲々として新しい事業を始めることができないような深刻な状態がずっと続いていました。その間、日本の経済はすつかり元気がなくなり、新しい産業や技術が生まれなくなったのです。新しい投資をしようという気が起きないまま景気が惡くなり、金利を下げても、やる気がないという惡循環に陥ったんですね。 低金利でもお金を借りない。投資もしない。そのバブル崩壊の後始末に30年以上かかっています。その30年で新しい産業を見い出し、日本経済に新しい展望が開けてくれば、復活できたはずなんです。でもそれができなかったということは、その30年は流動性の罠にかかった状態になっていたということです。

アメリカも同様な状態で、中央銀行にあたるFRBが金利をほとんどゼロにしているにもかかわらず、その低い金利でお金を借りた投資家たちがアメリカで新しい事業を始めようとしない。原油や、南米やアフリカのいろいろな原材料や資源を買い占めることに使われているため、アメリカ国内の経済が発展しないという状態が続いていました。グローバル社会においては、流動性の罠によって国内だけではなく、違う国にお金が逃げるということがあるのです。


ケインズの「美人投票」


株を買うときの有名なエピソードに「美人投票」があります。ケインズの時代、イギリスの大衆紙で美人投票を行い、いちばん投票が多かった美人に投票した人に抽選で景

品をあげるということをしました。ケインズは「あなたが株を買う行為は、「美人コンテスト」で投票するのに似ている」といいました。

 投票すれば人気が出る可能性が高くなる。株の投資も株を買うのも、経営も、その会社の人気が悪ければ、株価が下がって損をしてしまうかもしれな。だからみんなは好き嫌い、でなく、儲かりそうな、株価が上がりそうな企業を探して、その企業の株を買ってください。それによって株価が上がっていく。だから、株の投資は「美人投票」のようなやり方がいちばんいい、とケインズは言っています。ヶィンズはそうやって株投資で儲けたお金を美貌のロシア人パレリーナに貢いだ。

また、景気が悪くなりかけても、お金持ちからたくさん税金をとる累進課税のやり方で、低所得の人たちの社会福祉にお金を回していく、そして低所得の人たちの消費が落ち込まないようにして、景気が悪化するのを防ぐことができるようになるわけです。

このようなしくみによって、資本主義経済が好況と不況を繰り返しても深刻な恐慌に陥らないで済むようになりました。これを「ビルト・イン・スタビライザ—」と言います。日本語に直すと、「自動安定化装置」です。景気が悪くなっても、自然と自動的に景気がよくなるように戻っていくしくみがある。自動で安定化する装置は組み込まれている、という意味です。

あらかじめ経済の中やいろいろな政治体制の中に安定させるしくみが組み込まれているということです。

1929年当時、アメリカは共和党の大統領でした。共和党は大きな政府を嫌います。なるべく小さな政府がいい、民間の経済に政府が口を出すべきではないという考え方です。だから景気がどんどん悪くなっていっても国が勝手なことをやってはいけない、企業の力で景気がよくなるのを待っているべきだと考え、当時のフーバー大統領は景気対策に積極的ではありませんでした。それによってますます不景気が深刻化していきました。

その結果、選挙で共和党が負け、民主党のルーズベルト大統領が当選します。民主党はどちらかというと大きな政府、国民のためあるいは景気対策のためなら政府がちくいち計画を立てて、政府がたくさんのお金を使ってもかまわないというやり方です。

そこでルーズベルト大統領の時代に、ケインズ経済学の理論を使つた「ニューデイ丨ル政策」がとられました。ニューは新しい、ディールは何かをやるということなので、新規卷き直し政策ということですね。大規模な公共事業をアメリカの国内で展開させました。たとえば、政府の機関であるテネシー川流域開発公社を設立し、次々にダムや農地をつくったり、多くの若者たちを雇用して森に木を植えて森林を整備したりするなど、さまざまなことに税金を使って景気を立て直すというやり方をとりました。これ以降、アメリカでもケインズ政策がごく普通にとられるようになりました。

ただし、このニューディール政策によってアメリカの景気が本当によくなったかどうかということは、実は学者によって意見が分かれています。景気がよくなったという議論がある一方で、ニューディール政策ではなく、第二次世界大戦が始まったことによってアメリカは景気がよくなったんだという議論もあります。ひよっとすると両者相まってということなのかもしれません。

ニューディール政策については、評価がなかなか定まりませんが、不況になったら政府が財政支出を増やし、公共事業を増やすことによって景気をよくするというのが世界の経済政策の常識になったのは大きなことです。

企業にしても、社員の給料を下げると消費者としての消費が減ってくる。給料を引き下げるのは景気のためによくないことが次第にわかってきて、不況になったらすぐ労働者の給料を減らすのではなく、なるべく下げないようにする。あるいは景気がよくなってきたら労働者の給料を増やすようになりました。

ここで、給料が増えた分は商品の値上げをすればいいのだということになり、インフレの傾向が出てくるようになりました。ケインズ政策のもとでは、さまざまなものの値段が上がりやすいインフレ傾向となることが次第に定着していきました。


ケインズの誤算——増え続ける財政赤字

ケインズ政策には、うまくいかない部分もありました。それは政府の財政赤字が増えたことです。ケインズは、景気が悪くなったら政府が借金をして赤字国債を発行し、資金を集めて新たな事業に投資をする。企業の仕事が増えていけば儲かり、税金が入ってくる。その税金によって借金を返すことができて、財政は安定すると考えました。

しかし、そうはなりませんでした。これを実際に行うのが政治家だったからです。

政治家にはそれぞれ選挙区があります。その選挙区で公共事業をして新しい道路をつくったり橋を架けたりすれば、建設業者の仕事が増えます。そのため選挙運動のときに利権関係が生まれて、いらない公共事業ばかりが増えたのです。

しかし—もし、増えた税収で借金を返さなければいけないから「公共事業は打ち切ります」と言ったらどうなるでしょう。選挙を応援してくれていた建設会社は仕事が減るわけですから、次の選挙は応援してもらえなくなって落選するかもしれない。一方で、建設会社からは、税収が増えてゆとりが生まれたのだからそのお金でまた公共事業をすればいいじゃないかと言われる。

ケインズにしてみれば、政治家には理性と知性、教養があるから景気がよくても、税収で借金を返すものと思っていたのに、実際の政治家はそうではなかったのですね。こうして借金の返済は後回しになってしまい、財政赤字はどんどん増え続けていのです。


乗数効果が小さくなり、ますます膨らむ日本の財政赤字

ケインズ政策によって、世界のさまざまな国の政治家が同じことを行い、どこの国も赤字財政に苦しむようになりました。その典型的な例が日本です。日本ではとてつもない財政赤字になっています。

新しい道を作ることによってその地域の経済が発展していくという乗数効果――

しかし全国くまなく道路ができると、もう新しい道路をつくつても車の通行量は増えません。そんな道路に経済効果は望めません。道路ができただけで、乗数効果がほとんどないという状態になってきました。

昔は公共事業でちょっとお金を出すとすぐに景気がよくなりましたが、いまはいくらお金を注ぎ込んでもなかなか景気がよくなりません。新しい公共事業をしても、日本全国にたくさん生まれた建設会社が存続するのがやっとで、新しい仕事を創造するわけではありません。乗数効果が落ち、景気対策にならないという状態になります。このようにして「ケインズは死んだ」という言葉が生まれるようになりました。

世界経済が大変に深刻な状況になり、アメリカ経済はどん底に落ちて共和党に対する不満が高まりました。次の選挙で民主党のオバマ大統領が当選しました。

オバマ大統領は新しいニューディール政策、グリーン・ニューデイ—ル政策という再生可能エネルギーの技術開発を進めるため大金を注ぎ込みました。19 2 9年と同じことが200 8年に繰り返されたのです。

オバマ大統領は、たくさんのお金を使ってアメリカの経済を回復させようとしたため、ケインズがよみがえったという言い方がされました。ところが、大きな政府になり大きな財政赤字を抱えているのに景気がちっともよくならない。そのため共和党の候補者たちから、オバマ大統領のようなケインズ政策ではだめだという批判が大きく巻き起こりました。

なぜ、グリーン・ニューディール政策はうまくいかないのか。それは産業の規模が小さいからです。そもそもニューディール政策というのは、大規模な公共事業を行い、その結果、多くの雇用を生み出すものです。多くの人の収入が増える、それによってものを買う。それによって経済が回っていきましたよね。でも、再生可能エネルギーというのはまだまだ規模が小さいんです。そこから生まれる雇用は少ないんですね。だから、かけ声としては美しいんですけれども、景気をよくしていく力が不足しているということです。

ただ、再生可能エネルギーがもっと広がっていって市場が拡大していくと、それなりの効果が出てくるでしょう。中長期的には意味のあることだと思いますが、短期的な効果はあまり期待できないと思ったほうがよさそうです。

また、2009年、ヨォーロッパでもユーロの不安が広がりました。ヨーロッバも景気対策のために大変なお金を使いました。その結果、財政赤字が深刻になります。ヨーロッパの国々はこのままでやっていけるのだろうかという不安が広がつて、一時、ユーロが非常に安くなりました。これもケインズ政策の処方箋を使ったら副作用が非常に大きかったということです。

このように、ケインズ政策を導入することによって、少なくともマルクスが描いたような深刻な恐慌は起きなくなりました。その結果、社会主義革命は起こらなくなりましたが、ケインズ理論の処方箋にも副作用があるということがわかったのです。

(池上彰氏著作引用・加筆)


給料とボ—ナスはどう決まる?


業績好調で給料がアップした企業もあるという。

この流れが波及し、国民の多くが恩恵にあずかれるのか?

ここで、給料やボーナスのそもそもの基準を知る。

〇毎年給料がアップする定期昇給

ひと昔前の日本企業では、社員が仕事をしてもしなくても、年功序列で毎年給料が上がっていました。これを「定期昇給」といいます。定期昇給は四月に実施されるため、労働組合は、それに合わせて基本給そのものの底上げ(ベースアッブ「ベア」)を求めて企業と交渉しました。これが春に行われるので「春闘」と呼ばれました。

ボーナスも毎回数ヵ月分が支給されていた時代もあったのですが、いまではそんな企業はなかなかありません。不況が続いたことで、「働かなくても毎年給料が上がっていくのはおかしい。年齡が同じというだけで給料が同じなのは理不尽だ」という声が上がったのです。

そこで、「業績給」という考え方が生まれてきました。業績給では、まず「あなたにはこれだけの鋤きに対して、〇〇円の給料を支給します」と最初に決めておきます。その人が、期待以上の成果を出したら、翌年には給料が上がります。逆に、期待以下の働きしかできなかったら翌年の給料は下がるわけです。

「年俸制」という方式もあります。私も勤務していた時代、管理職になってしばらくしたら、年俸制になりました。仕事の成果によって、同じ年齢の社員でも給与に大きな差がつく方式です。また、二〇一九年四月には、収入が一定額以上の高度専門職について、労働時問に関係なく仕事の成果に賃金を支払う「高度プロフェッショナル制度」が導入されています。

〇インフレとデフレ、社員に有利なのは?

インフレになると「物価が上がったので給料も上げましよう」となりますが、給料が上がるまでには時間がかかります。そのため、インフレ時には実質的に給料は低下する傾向があります。たとえ給与額が増えても、インフレ率がそれを上回っていれば実質的に給料が目減りしていることにもなります。つまり、インフレは給料を支払う企業に有利なのです。

一方、デフレになると、物価が下がっているからといつて、給料はすぐには下がりません。そのため、給料の額は変わらなくても、実質的に給料が増えている場合が多くなります。

ボーナスは必ず支払われるものではない

ボーナスは本来、「今年は社員の頑張りで儲けが増えたので、その分をみんなに還元しましょう」という趣旨で、企業の業績に応じて支払われるものでした。ところが、毎年決まった時期にボーナス三ヵ月分が支払われていたとすると、社員は毎年給料を一五ヵ月分もらえるものと思うようになります。ボーナス返済を見越した住宅ローンを組む人も出てきます。

しかし、日本では不況が続いたことで、ボーナスをカットする企業も増えるようになりました。結果として、業績に応じて支払う本来の形に戻ったわけです。


年金制度は本当に維持できるのか

年金が破たんするかもしれない、といわれている。このまま年金制度にお金を払い続けても、戻ってこないのではと不安になるけれど、本当はどうなのか?

〇「二階建て」の公的年金制度

日本の公的年金制度は、「二階建て」でできているといわれます。まず、一階部分にあたるのが「国民年金」で、二〇歳以上六〇歳未満のすべての国民に加入義務があり、基礎年金ともいいます。国民年金の保険料は月額一万六六一〇円(二〇二一年度)で、年度ごとに見直しが行われます。

次に二階部分は、会社員と公務員が加入する「厚生年金」にあたります。会社員や公務員は、自動的に国民年金にも加入していることになります。厚生年金の保険料は給料の一八.五%(二〇二一年度末現在)で、勤務先が保険料の半額を負担しています。

公的年金に加入する人は、職業などによって三つの種別に区分されます。自営業者や学生、パートなどは第一号被保険者、ビジネスパーソンなど厚生年金の加入者は第二号被保険者、第二号被保険者に抉養される配偶者(専業主婦など)は第三号被保険者です。

年金制度は、さらに大企業が独自に導入している「企業年金」や公務員のために設けられている「退職等年金給付」、自営業者などが任意で加入できる「国民年金基金」、誰もが積み立てられる個人型確定拠出年金などがあります。

〇年金は「積立」ではない

年金は、いまの若い人たちが払ったお金を、いまのお年寄りに分配する制度(賦課方式)です。自分が払ったお金が自分に戻ってくるしくみ(積立方式)とは違います。

この赋課方式のメリットは、インフレの影響を受けないこと。物価が上がっても、保険料の調整で対応できるというわけです。

しかし、日本では少子高齢化が進行して、年金の受給者も増え続けています。二〇二〇年度末の年金支給総額は五六兆七八億円で、受給者(延べ人数)は七六六五万人。今後、年金を支払う世代の負担が増す一方なのは明らかです。

いまの若い人たちが歳をとったときは、さらに若い世代の人たちが年金の原資を払ってくれなければ、年金制度の維持は雖しくなります。つまり、日本の年金は若い世代への信頼関係で成り立つ制度なのです。

しかし現在、この信頼が揺らいでいるのも事実です。いま年金を受け取っているお年寄り世代は、平均寿命まで生きると、自分が払ったより多くの年金を受け取ることができます。でも、いまの若い世代は、自分が払い込んだ分よりも受け取る年金額のほうが少ないという事態が起きると予想されています。

まだまだ不安な年金制度

二〇二〇年度の国民年金の納付率は七七,二%。納付率は八年速続で上昇し、統計を取り始めてから最高値を記録しました。しかし、低所得などで保険料を免除・猶予される人は算出から除いているため、実質的には五〇%程度にとどまります。

若年屑を中心とする非正規雇用者数の増加や、新型コロナ・ウイルスの感染拡大による景

気へのダメージ、年金制度そのものへの不信感などが理由と考えられます。

現在、高齢者が受給している年金は、保険料に国庫からの支出を加えたものでまかなわれています。国庫からの支出は、二〇〇四年の制度改革によって二分の一に引き上げられました。財源不足の心配を解消するために税金を投入したのですが、当然のことながら、財源の確保が問題となります。財源確保の手段として消費税を引き上げたものの、まだ安定的な財源が確保できたとはいえず、年金制度の維持は大きな課題となっています。





フリードマンの

『新自由主義』とは?


ケインズ経済学を否定する形で生まれたのが、自由な市場を目指すフリードマンの新自由主義。—国家は市場に介入すべきではないとして、社会保障制度や医療保険制度も必要ないと主張した。日本でも銀行、証券会社、保険会社などの規制を取り払う政策がとられ、派遣労働の促進につながった。

新自由主義の旗手フリードマン

それぞれの時代に、さまざまな経済上の問題が起き、それに対して経済学者が解決策、いわば処方箋を出します。とりあえずそれでうまくいくことがあるのですが、やがていろいろな問題が出てきます。そのときに、それを解決するための新しい経済学が生まれる、それが経済学の歴史だったのではないかと私は思っています。マルクスのような考え方もあれば、ケインズのような考え方もあった。ケインズの政策によって、マルクスが予言したような恐慌は起きなくなりましたが、インフレーションの傾向が強まったり、各国が財政赤字に悩んだりという状態になってしまった。それではいけない、ケインズは間違っていたと主張したのが、ミルトン・フリードマンです。

フリードマンは、「新自由主義の旗手」と言われています。日本で言うと、2001年からの小泉・竹中路線がその典型です。政府は国民の自由を尊重しよう、経済活動を自由にすればいい、という主張をしました。どうしてそういった理論になるか、その結果どんなことが起きるのでしようか。

マネタリストとシカゴ学派

フリードマンは、新自由主義者であると同時に、経済をコントロールするためには〝お金の量〟を考えればいい、とする考えを打ち出しました。これをするひとを「マネタリスト」と呼ばれます。それ自体が「マネタリズム」です。マネタリズムというのは、ケインズの主張する公共事業や累進課税に否定的で、世の中を流れるお金の量さえコントロールしていれば経済はうまくいくんだよ、という考え方です。

彼はシカゴ大学の教授として、多くの弟子たちを育てました。彼とその弟子たちはシカゴ学派と呼ばれています。シカゴ大学は、フリードマンに代表されるような新自由主義、マネタリストの牙城になっています。

絶対自由主義・リバタリアン

人間にとっていちばん大事なことは自由である、と考える人のことを「リバタリアン」と言います。リバティは自由という意味で、その派生語です。フリードマンは、人に迷惑をかけない限り大人が自由に行動できる社会を主張しました。極端に言えば、たとえば麻薬を吸うのは個人の自由であり、取り締まる必要はない、何かあったらそれは個人の自己責任であるとしています。麻薬は禁止されているから、闇の世界で密売ということになっている。

その取り締まりをやめ自由な売買が行われるようになったら、その収益に税金をかければいいじゃないか、という考え方です。

かつてアメリカではお酒をつくるのも売るのも禁止とする禁酒法の時代がありましたが、アル・カポネに代表されるマフィアたちが酒を密売することによって犯罪組織が拡大してしまいました。禁止するから裏で闇世界がはびこるのだ、個人の責任で何でもやればいいじゃないか、これがフリードマンの考え方です。

(池上彰氏著作引用・加筆)


社会保障はいらない?

世界に影響を与えた新自由主義


フリードマンは、国の社会保障政策すら必要ない、と唱えました。

どのような老後を送るかは人々の自由に任せればいいんだ、国がわざわざ個人の社会保障に口を出して税金を集めるのは、自分のお金を自由に使うことへの侵害ではないか、と考えたのです。

彼の思想はアメリカやイギリスの政策に非常に大きな影響を与えました。

イギリスでは1979年に保守党のサッチャー首相が就任し、それまで労働党政権が行っていたさまざまな規制を次々と取り払いました。労働者が反発してストライキが多発しましたが、サッチャー首相はそれをはねのけて徹底した新自由主義を打ち立てました。

アメリカでは1981年に共和党のレ—ガン大統領が就任し、次々と規制緩和を行いました。これに反発し、全米の飛行機の離陸から着陸までをコントロールしている管制官たちが、規制緩和をすると空の安全を保てないとストライキを行ったのですが、レーガン大統領はストライキに参加した管制官を全員解雇しました。徹底したやり方で新自由主義を実践していったのです。フリードマンの思想は、レーガン大統領からジョージ・W・ブッシュ大統領に至るまで、共和党の大統領に強い影響力を持ち続けました。

『小さな政府」を提唱したフリードマンは基本原則があると言っています。まず、政府の仕事は国防であるということです。外国の敵から国を守ること、それから国内で同じ国民の暴力などから個人を守ること。アダム・スミスも、政府がやるべきことの中に、国防や司法行政の確立を挙げましたが、フリードマンもこれを第一の基本原則としました。

もう一つは、どうしても政府がやらなければいけないことがあれば、政府がやるのではなく、なるべく下の地方自治体に任せたほうがいいということです。行政は、国よりは州に、州よりは市町村に任せるべきだという考え方です。というのも、アメリカの国民が国の政策に対して「これは気に食わない」と思っても、アメリカを出ていくことはなかなかできない。でも市町村単位なら、自分の住んでいる市の政策が気に食わなければ、よその市に引っ越すことができる。またそれぞれかのフリードマンは、自由な市場経済は結果的に言論の自由をも守ることになる、と主張しています。その例として、東西冷戦時代にアメリカで起きた[赤狩り]の例を挙げています。1940〜50年代、アメリカでは[赤狩り旋風]が吹き荒れ、ハリウッド映画界でも、共産主義者と疑われる人物はみな追放されてしまったのです。

ところが10年後、[赤狩り]でハリウッドを追われた脚本家がアカデミー原案賞を受賞しました。その映画の監督は彼の経歴を知っていたけれども、その才能を買って仕事を依頼したということでした。フリードマンは「もしも雇用主が政府しかいなかったら告発された人々は路頭に迷うしかなかっただろう』と述べています。自由な市場経済があるからこそ、人々は自由な活動をすることができる、そう考えていたのです。

市町村にしてみれば、もし住民たちが反対するようなことをしたら、住民みんながその市町村から出ていってしまうかもしれない、そう考えたらうっかりしたことはできない、というのがフリードマンの考え方なんです。

フリードマンは著書『資本主義と自由』の中で、たとえばパンを買う人は、小麦を栽培したのが白人であろうと黒人であろうと共産主義者であろうと意識しないだろう、と述べています。パンを焼いたのが誰だろうと、おいしいパンは売れる、それでいいじゃないか。自由なマーケットがあれば、政治的、民族的な差別もなくなるのだという考え方なんですね。


14項目の「こんなものいらない」

さて、フリードマンは自著の中で「こんなものいらない14項目」といぅのを挙げています。ここからは、そのいくつかを紹介します。

その1農産物の買い取り保証価格制度はいらない

まず、農産物の買い取り保証価格制度です。アメリカやヨーロッパでは、農産物の値段が非常に安くなってしまったら、政府が買い上げるというかたちで農家を守ろう、という制度があります。日本でも民主党政権時代の農業者戸別所得補償制度という似たような政策がありました。

フリードマンの「こんなものいらない」14項目

1.農産物の買い取り保証価格制度

2.輸入関税または輸出制限

3.家賃統制、物価,賃金統制

4.最低賃金制度や価格上限統制

5.現行の社会保障制度

6.事業や職業に関する免許制度

7.営利目的の郵便事業の禁止

8.公営の有料道路

9.商品やサービスの産出制限

10.産業や銀行に対する詳細な規制

11.通信や放送に関する規制

12公営住宅および住宅建設の補助金

13也平時の徴兵制

14,国立公園


日本での民主党による似たような政策がありますが、米などを生産する農家が赤字になったら、政府が最低保証価格との差額を補償するという制度です。フリードマンはこういった政策を批判しています。

なぜ買い取り保証価格制度はいらないのでしょうか。まず、農産物を大量に出荷している金持ちの農家は、この制度によって余計儲けることができる。その一方で貧しい農家は、そもそも出荷している農産物が少ないわけだから、これを政府が買い取ったところで貧しい農家を助けることにはならないんだという考え方です。

また、その農産物を買い取るお金は国民から集めた税金です。つまり、消費者にしてみれば税金をとられたうえに高い農産物を買わなければいけない。だから、こんなものはいらない。これがフリードマンの主張です。

私たちは、食料自給率を高めなければいけない、そのためには農業が元気であったほうがいいと考えますね。そのとき、たとえばこの農産物の買い取り保証価格制度を打ち出せば、農家を守れるし、選挙で農家の支持が得られたりするかもしれない。でもそれを冷静に経済学的に考えると、あまり効果がないのではないかということです。

ただ私があなたに言いたいことは、このフリードマンの考え方が正しいと押しつけているわけではないということです。こういう考え方もあるんだということを知ったうえで、これが本当に正しいのかそうでないのか、ということはあなたが自分の頭で考えてくださいね。あるいは自分の頭で考えられるように、基礎的な勉強をしてほしいということです。

頭の体操になりますよね。フリードマンのような考え方があるんだということを、頭の体操論理の展開として知っておいてほしいと思います。


その2 輸入関税・輸出制限はいらない

輸入関税、または輸出制限について考えてみましょう。輸入関税というのはだいたい世界のどこにでもあります。外国からものが輸入されるとき、輸入側から税金を徴収するわけです。そうすると海外から輸入したものを国内で売ろうとするときに値段が高くなりますから、国内の業者を守ることができます。たとえば米や小麦が海外办ら非常に安い値段で入ってきてしまうと、日本の農家が打擊を受ける。あるいは海外から入ってくる自動車に高い関税をかければ、多くの人は国産車を貢うだろう。

そうすることで国内の産業を守ろう、これが輸入関税です。

逆に、どんどん輸出をされてしまうと国内でものが不足したり値段が高くなったりしてしまうから、これを制限しようという輸出制限。こういう制度は意味がないというのがフリードマンの考え方です。

輸入関税をかけることによって海外の安くていいものが国内で高くなってしまうと、消費者のいいものを安く買う権利が奪われる。と同時に、輸入関税をかけなければ守れないような産業は非常に効率が悪い。効率が悪い産業を残すことは資源の最適配分にならないから、潰れてしまっても仕方がない。あるいは潰れないように効率的な経営をし、切磋琢磨することによって外国の企業に負けないような産業をつくることが大事なんだ、これが輸入関税はいらないという理屈になるということですね。

こういう考え方があり得るということを、頭の体操として知っておいてください。


その3 家賃統制、物価・賃金統制はいらない

こんなものいらない3つめ。家賃統制というのは、国なり地方自治体なりが、家賃をいきなり上げてはいけないよ、と統制することです。たとえば物価がどんどん上がって土地代が上がってきたときに、大家さんがアバートの家賃を7万円からいきなり10万円にします、と言ったら困りますね。そこで、たとえばの話、10畳のアバートだったら〇〇万円を上限とする、というふうに値上げを統制することによって、その部屋を借りている人の権利を守るという考え方です。同じように、賃金統制とは、賃金の上昇を規制するやり方です。

一見すると、家賃統制がいらないというのはフリ丨ドマンが弱い立場の人たちに対して厳しいことを言っているというふうに受け取れます。ではなぜフリードマンは家賃統制をしてはいけないと考えたのでしようか。

学生〇 それ以上儲けが出ない。

大家さんにとっては儲けが出ない。でも借りている人にとっては助かることじゃない? フリードマンは、家賃統制をすると大家さんだけではなく借りる側にもマイナスだからやめるべきだと言っている。ちよっと「えっ」と思うでしよう。

学生〇 たとえばマンションの一室も、市場の中では一つの商品なわけだから、むやみやたらに統制すると商品同士の切磋琢磨がなくなる、環境の向上が図られなくなってしまうからではないか、と思います。

おおよそ正解です。つまり、大家さんにしてみれば家賃をあまり上げてはだめだということになると儲からなくなるよね。じやあ部屋はどうでもいいや、どうせ安い家賃なら入居者はいるだろうけど、儲からないんだから壁紙を替えたりなんかしないよ、どこかが壊れても知ったこっちゃない、と住環境がどんどん悪くなっていく。あるいは、新しいアパートやマンションを建てても安い家賃しかもらえないといって、アパートやマンションの建設が止まってしまう。その結果、新しい部屋に入りたくても入れない、これまであるアパートはどんどん荒れ果ててしまう、これがフリードマンの理論なんですね。かつてアメリカでも地域によっては実際にこういった卜ラブルが起きていたようです。

逆に、家賃が上がっていけば儲かるから、次々にアバートやマンションの建設が進んでいく。新規参入によって供給が増えれば、やがて需要と供給が釣り合って値段が落ち着くから、統制をする必要はない、というのがフリードマンの発想です。


その4 最低賃金制度はいらない

最低賃金制度というのが日本にもあります。この最低賃金より安い給料を労働者に払うのは法律違反なんですね。1時間当たりの最低賃金は都道府県によって違いますが、たとえば東京や大阪といった大都市は高く、地方ではやや低くなっています。

フリードマンはこの最低賃金制度もいらないと言いました。労働者を守るはずの制度なのに、なぜいらないのでしよう。

学生  最低賃金が決まっていたら、労働者がどうせこれだけお金がもらえるんだから、そんなに頑張って働かなくてもいいやと思ってしまうから。

なるほど。こういうのをモラルハザードと言いますね。モラルは道徳、ハザードは危険とか災害という意味で、道徳的危険という言い方もします。働いても働かなくてもどうせこれだけもらえるんだからといってみんな働かなくなるということです。いまの話は経営者にとって困ることだよね。ところが最低賃金制度を設けると、守られるべき労働者にとって不利だよとフリードマンは言っています。さあ、どうしてだろうか。

学生  最低賃金が決まっていると、それより低い賃金で働かせようという企業の動き口がなくなる。

そのとおりです。つまり最低賃金を定めることで、雇用側がそれだけの給料を払えないよということになると、じやあ、雇用を控えようかということになって、かえって失業者が増えてしまうことになる、という理屈なんですね。わずかな給料でもいいからとにかく働きたい、とにかく給料をもらいたいという人にとってみれば、最低賃金制度は邪魔になるというのがフリードマンの考え方です。

しかし、その一方で最低賃金制度がなくなり、ものすごく安い給料で働かされる人が増えてきたら、その人たちの権利はどうやって守るのだろうかという考え方もありますね。かろうじて生活できる程度のお金は保証すべきだと考える人たちは、この制度は必要だと考えるわけですね。

日本の場合は最低賃金制度が定められています。この制度はいらないという考え方がある、そのうえであなたにはどうしたらいいかを考えていただきたいということです。

ちよつと刺激的な考え方でしよう。フリードマンはこういう挑発的な言い方をして、それまでタブーだと思われていたことをあえてやつてみたらどうかという主張を、次々に打ち出してきたんですね。


その5 社会保障制度はいらない

続いて、いまのような社会保障制度はいらないという考え方です。たとえば年金制度、そんなものは国がやるべきじゃないよということです。日本では、20歳以上60歲未満の人が保険料を10年以上払っていけば、原則65歳から|定の年金が受け取れるという国民年金などのしくみがあります。しかしフリードマンは、個人の所得を国が勝手に取り上げて、国が勝手にいいと定めたことに使うのは、自分のお金を自由に使う権利を侵害していることになると主張しています。自分で働いているあいだに自分で増やすことを考えればいいだろうという考え方なんですね。

さあ、ここまではフリードマンはどう考えたかをあなたに考えてもらいました。今度は、この意見に賛成か反対か聞いてみましよう。年金制度を国がやる必要はない、個人に任せるべきだ。このフリードマンの主張に賛成あるいは反対の人、意見を言ってもらえるかな。まず、反対の人。

学生〇 やっぱり人は守られたいという願望があると思うんですけど、将来不安なことばかりで先のことなんか見えないから、いま頑張って、年金のためにお金を費やしたら、将来安心できる。

なるほど、つまり将来が不安だ、その不安を守るしくみがあったほうがいいよということだね。ほかにフリードマンの主張に反対の人、どうかな。

学生 お年を召した方には、体が不自由になったり、身寄りのない方もいらっしゃったりすると思うので、福祉施設やサポートできる制度が整っていないと家族だけでは補えないと思うし、社会福祉の事業に関わる人の仕事を増やすことにもなると思うので、いると思います。

わかりました。そういう意見もありますね。

じゃあ今度はフリードマンの意見に賛成という人はいますか。社会保障制度はいらない。

学生 健康保険のような社会保障は必要だと思うんですけど、年金となると、いまの年金制度自体も年金記録がわからなくなってしまつたりしていて、すべて国が管理するのはかなり難しいことだと思いますし、ぼくたちはいま払っていても将来年金がもらえるかというのも不明確なので、制度をつくっておいて結局管理できないのであれば、ほとんど制度としては必要ないんじゃないかなと。

ありがとう。社会保障制度についてそれぞれの意見をきちんと言ってくれました。そのうえで、いま意見を言わなかつた人たちも、考えるきっかけにしてくれればと思います。

私はあえて自分はどう思うかということは言いません。フリードマンのこの問題提起をきっかけに、これまで社会保障制度は必要だと思っていた人たちはちょっと待てよと考えたり、あるいは、じゃあ、社会保障制度ってどうあるべきものなのか、ということを考えたりしていただきたいと思います。


その6 事業や職業に関する免許制度はいらない

では次にいきましよう。事業や職業に関する免許制度です。フリードマンは医師免許を例に挙げています。たとえば日本では、医師免許がない人が医療行為をすると医師去違反になります。しかし、フリードマンはこう言います。治療すべてに医師免許が必要ということになると、ちょっとしたけがでもお医者さん以外の人は診ることができない。そうするとお医者さんは細かい仕事に追われて、本当に医者でなければできないような重大な手術や治療ができなくなる。

誰だって自由に医療活動ができるようにする。問題が起きてしまった場合は、過失致死傷で裁判に訴えて取り締まればいいじゃないか。そちらの法律が充実していれば、きちんとした技術を持った、あるいは教育を受けた人が医療活動をやるようになるだろうから医師免許なんていらないんだよ、ということです。

おもしろいでしょう。この考え方でいけば、学校の教師も資格がいりませんよね。

墓、そして牧師やお坊さんも。

教え方が上手だったら免許なんかいらないじゃないか。誰でも教えられるということになれば激しい自由競争になるから、先生だけでなく、素人も技術を向上させようという気になるんじゃないか、という理論がこれということですね。


その7 民間の郵便事業を禁止してはいけない

続いてこちらです。営利目的の郵便事業の禁止はいらない。つまり自由にやらせればいいよということです。アメリカでは郵便局は国がやっていて、金儲けのために株式会社が郵便事業をすることを禁止している。しかし郵便事業は民営化してかまわないよ、どんどんやればいいじゃないかというのがフリードマンの意見です。あれ、どこかで聞いたような話ですね。

小泉政権時代に郵政民営化というのがありました。日本では郵便事業はすべて国有で、郵政省という国の役所がやっていましたが、民間企業にやらせればサービスがもっとよくなるんじゃないかということで、郵政省から日本郵政公社に移行し、小泉構造改革によって、どんどん郵政の民営化が推し進められたのです。この郵政民営化は、フリードマンの理論に則って行われたということがわかりますね。


その8 公営の有料道路はいらない

それから公営の有料道路。これも民間企業に任せればいいじゃないか。道路公団の民営化、あれ、誰の時代にやつたんでしたつけ。小泉・竹中時代ですね。この規制緩和や特殊法人の民営化などを推し進めた小泉・竹中路線は、まさにフリードマン型の経済政策だったのだということです。


学校選択制もフリードマンが提唱した

さらに、日本では1998年から学校選択制というのが各地で始まっています。昔は公立の小学校は校区が決められていて、住む地域によって通う学校が決められていましたが、いまは自治体によってはその地域内であればどの学校に通つてもいいよというところが増えています。それによって学校側は、先生たちがろくな教え方をしていないと生徒が集まらず学校が潰れてしまう、と危機感を持ち、我が校ではこんなに教育熱心ですよ、と一生懸命アビ—ルするようになりました。この学校選択制を提唱したのもフリードマン。日本でも、企業のメセナ活動というのがあります。企業がコンサートを開いたり、若手の芸術家を招いてイベントを開いたりしていますね。

フリードマンはこう言っています。企業経営者は社会的貢献など考える必要はない。

企業というのは、株主のものである。だから企業経営者は利益を上げて、それを株主にどれだけ渡すかを考えればいいんだ。株主に利益を配分することなく、儲かったのでといって勝手にメセナ活動やボランテイア活動などをやつたら、株主に対する裏切りになる。

儲かったらちゃんと株主に利益を渡し、その利益を受け取った株主がメセナ活動なりボランテイア活動なりをすればいい。これがフリードマンの主張です。

(池上彰氏著作引用・加筆)


小泉政権時代の郵政解散

2001年に発足した小泉政権。就任直後、小泉総理は「聖域なき構造改革」を掲げ、道路公団や住宅金融公庫などの特殊法人の民営化へと乗り出しました。中でも改革の本丸としたのが、郵政民営化です。しかし、与党内からは次々と反発の声が上がり、05年8月、参議院で郵政民営化法案は22人の自民党議員が造反。総理は衆議院解散,総選挙を強行しました。小泉総理はこれを郵政解散と銘打ち、反対する議員を抵抗勢力と呼んで党の公認を与えず、さらに同じ選挙区に自民党公認候補を刺客として送り込みました。

結果、総選挙では自民党が歴史的大勝利を収め、再度提出された郵政民営化法案は衆参両院で可決、成立しました。

(池上彰氏著作引用・加筆)


ティーパーティー (茶会党)に通じるフリ—ドマンの思想

アメリカにティーパーティーという保守派の市民運動があります。日本語訳で茶会党と言ったりしますが、ティーパーティー、お茶会ですね。1773年に起きたボストン・ティーパーテイ事件にちなんだ名前です。アメリカがかつてイギリスの植民地だったときに、本国からの重い課税に憤慨したアメリカ市民が、ボストン港に停泊していたイギリスの紅茶運搬船を襲撃し、積み荷の紅茶を海に投げ捨てたという事件がありました。「さあ、ティーパーティーだ」と叫んだので、この名称があります。

紅茶が海に溶け出して海の色が変わったそうです。この事件をきっかけに、アメリカ独立戦争が始まったんですね。

現代のティ—パーティー運動は、税金の無駄遣いをやめて、小さな政府を推進しょ

うという運動です。そもそもアメリカは高い税金に反対した人たちが建国した国だと

いうことを思い出してもらおうと、ティーパーティーの名前を使っています。増税に

反対し、オバマ政権の大型景気対策や福祉政策を批判しました。

社会保障制度も医療保険制度もやめるべきだ、

とにかく税金を減らせというフリ—ドマンの思想は、このティーパーティー運動にも通じています。


日本における新自由主義政策——労働者派遣の自由化

日本では、この新自由主義的な政策は1996年の橋本政権時代から始まっていました。橋本内閣は金融ビッグバンと呼ばれる金融制度改革を行い、銀行、証券会社—保険会社などに対する規制を次々と取り払ったのです。これにより金融機関の自由化です。派遣労働というのは、もともとは5種(システムエンジニア)など極めて特殊な知識や技術を持った専門職に限られていたのですが、次第に対象業務が拡大していって、2004年には工場の現場などで働く製造業派遣が解禁され(最長3年まで)、急速に派遣労働者の数が増加していったのです。その結果、2008年のリ丨マン・ショックを発端とした景気の悪化により、大量の派遣切り問題が深刻化しました。これを機に、労働者派遣の規制緩和を進めた新・由主義政策に対する批判が高まりました。

現在も、製造業の派遣労働については議論が続いています。民主党政権は労働者派遣法を改正して派遣労働を規制しようとしましたが、反対論も強く、派遣労働は実質的には禁止されていません。

フリードマンのすべてを自由にするという発想、ちょっと新鮮と言いますか、挑発的なと言いますか、非常に刺激になったのではないかと思います。あなたは、フリードマンならどう考えるか、ということを自分なりに考えることができました。そのうえで、その考え方に賛成、反対の意見がありましたね。これが大事です。経済学者や政治学者が言ったことに対してすぐ賛成、反対ではなく、どうしてそういう考え方が生まれてくるのか、まずその論理を理解することが大事なのです。

(池上彰氏著作引用・加筆)


フリ丨ドマンの新自由主義を高く評価する声

説明はそこまでにとどめておきます。


   自由貿易が経済の発展を進めた

あなたはきっと「世界の工場」という表現を大学の講義の世界史などで習ったことでしょ

う。世界中から輸入した原材料を使って、大畫生産した商品を輸出—する。

世界の工場・貿易立国のことですね。いま、世界の工場はどこの国でしょうか。それは、もう、日本を超えてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になった中国ですね。

「世界の工場」というのは、もともと19世紀に産業革命を経て、世界の工業生産額の半分を占めるような大工業国に発展したイギリスのことでした。イギリスの経済学者のジヱボンズがそう呼んだことが始まりと言われています。20世紀になると、そのイギリスがだんだんと衰退して、これにとって代わったアメリカや日本がそう呼ばれるようになったのです。さらに、今世紀には、「改革開放」に転じたことで、めざましいスピードで経済成長を続けた中国のことを指すようになりました。

こうした経済発展が可能になるには、前提条件があると言われています。それは、自由貿易の推進です。イギリスが大工業国となった背景には、輸入品に高い関税をかけて自国の産業を守る保護貿易に反対して、世界市場の拡大、自由貿易を進めたことがあると言われています。第二次大戰後にアメリカが超大国になっていく際に、やはりグローバルな自由貿易の広がりが基盤となっていました。また、日本が経済大国・貿易大国として発展していくためにも、自由な貿易の広がりという条件が欠かせませんでした。中国が積極的な貿易の拡大と外国資本の導入によって急成長を遂げたのも、自由貿易を推進できるように、米欧や日本など世界各国が関税の引き下げなどさまざまな努力をして環境を整えていたからです。自由貿易ができる世界市場が「世界の工場」を育てたわけです。

ところが近年、この動きに急ブレーキがかかっています。白由貿易を推し進めてきたアメリカ自身が「自国第一主義」を掲げて保護貿易に方向転換するなど、すっかり様子が変わってしまいました。その結果、これまで「世界の工場」中国と取引してきた貿易相手国の姿勢や対応もさまざまに変わってきています。


リカ—ドの比較優位によって常識となった国際貿易

さて、そうした変化について触れる前に、そもそも自由貿易とは何か、国際貿易とは何のことか、よくわからないという人も実は多いのではないかと思います。そこでまずは、そもそも、世界の国々はなぜ貿易をしているのか、つまり、なぜ互いに工業製品などを輸出したり、輸入したりしているのかを考えていきましよう。

国際貿易において、非常に大事な概念、考え方があります。それは、「比較優位」の定理、「比較生産費説」と呼ばれる仮説です。これは富の源泉としての分業に気づいたアダム・スミスの理論をひきついで、イギリスのデヴィツド.リカードという経済学者が唱えた国際貿易の大原理です。個人の分業と同様に、国同士も仕事を分担して国際貿易をすると、実は双方にとてもいいことがあるということを発見したのです。

同じ国の中で会社や個人がモノやサ丨ビスを売り買いする、つまり分業、交換をすることで互いに利益が得られる。これを違う国同士の関係に当てはめても、同じような利占があるのです。貿易をすることは、経済発展にもつながっていきます。現代日本で生活している私たちは、世界中から輸入されたモノに囲まれて暮らしています。

輸入するためのお金は、企業が世界中にさまざまな製品を輸出して稼いできたものです。こうした輸出入、貿易が行われることで、豊かに暮らしています。その背後で働いているのが、この「比較優位」の原理です。この原理を知っていれば、世界の貿易で何が起きているのか、日本はどうしていけばいいのか、あなた自身が判断できるような手がかりを得ることができるのではないかと思っています。


リカ—ドが発見した貿易の大原理

では、「比較優位」の原理とはどんなものか、説明していきます。

リカードが説いたのは、国と国がどう役割分担をして分業すれば、お互いに利益が得られるかという理論です。その際、相手の国と貿易をするかどうかを決めるのは、どちらの生産費が安いかどうかという「絶対優位」ではなく、他国と比べて得意な分野「比較優位」を生かせるかどうかによるというのです。国内の生産費が外国より高くても、商品を輸出するほうが利益がある。反対に国内の生産費が外国より安くても輸入するほうが得だ。両国にとっていいことがあるという例を示してみせたのです。


相対的に優位なものを見出す「比較優位」

まずは、「絶対優位」のことを考えてみましょう。これはちょっと思い浮かべてみても、わかりやすいですね。仮に、A国とB国という2国があるとします。それぞれの国には、労働者が200人ずついて、同じように小麦と自動車を生産しているとしましょう。

小麦の生産では、A国は労働者が100人で、生産量は1000とします。数字だけで考えるので、単位は省いています。一方のB国は同じ100人の労働者で、900生産している。ここで両国の生産量を合計すると、1900になりますね。

次に自動車です。A国は労働者100人で、生産量が500です。B国は労働者100人で生産量が300です。2つの国の自動車生産量は合計800になります。

優位—得意分野、相手よりも安く効率的に生産できる得意分野「比較優位」に専念して、貿易によって、その製品を交換したほうが双方にとっていいことがあると、リカードは主張したのです。

さて、それでは、この得意分野「比較優位」とはなんでしょうか。もう少し、具体的に見ていきましよう。先ほどの例では、小麦でも自動車でも、生産量ではA国のほうがB国よりも絶対的に優位です。でも、その優位の度合いをよくみてみましょう。

小麦の生産量はA国が1000、B国が900なので、B国はA国の1000分の900、つまり10分の9、生産量の9割の生産があります。一方、自動車の生産量をみると、A国は500、B国は300ですから、B国はA国の500分の300、つまり5分の3、0. 6の生産量です。要するに、B国はA国の生産量の6割しか生産できないのです。

こう見てくると、B国はA国に対して、小麦も自動車も、ともに生産量は絶対的に劣っているのですが、劣っている度合いを比べてみると、小麦の生産は9割、自動車の生産は6割ですから、小麦のほうが劣っている度合いが少ない、つまり「優位」だということがわかりますね。8国は小麦の生産においては比較優位を持っていることになります。一方のA国は、B国よりも高い生産能力のある自動車について、比較優位を持っているわけです。

そして、それぞれの国が比較優位を持つ分野に専念、特化すれば、互いにいいことがある、全体の経済効率、生産性が高まるというのが、比較優位の考え方なのです。そこで、A国とB国が、それぞれ得意分野に専念して、それ以外の商品、製品は相手国から輸入するとなると、どうなるかを考えてみましよう。

簡単な例を挙げています。たとえば、A国は200人の労働者の180人を自動車に、20人を小麦に振り分けます。これによって、自動車の生産を900に増やし、小麦は200に減らします。一方、B国は、自動車生産ではA国にとてもかなわないので、小麦の生産に特化して、労働者200人全員を小麦生産に回して、小麦10000を生産できるようになりました。

A国とB国の生産量を合計してみてください。小麦は、200十1800 =2000、自動車は900十0 = 900。得意分野に特化する前に比べると、小麦は1900から2000に、自動車も800から900に生産量が増えました。つまり、自分が優位にある分野に専念すると、B国はA国に対して、貿易で勝てるのです。逆に言えば、A国はその分野ではB国に勝てない。ところが、勝てない度合いには違いがあって、自動車も、小麦の生産ではちょっと負けているくらいです。A国は圧倒的に有利な自動車産業になるベく力を入れ、B国は小麦の生産に専念すると、小麦、白動車とも全体の生産量は以前よりも増えるので、両国にとって利益がある、そういう原理が働いている。

だから、世界の国々はそれぞれ、役割を分担して盛んに貿易をするわけなんです。

ここまでのところは理解できましたか? なんとなくマジックみたいな気がしませんか? 私がはじめてこの原理を知ったときは、なんとなくキツネにつままれたような気がしました。A国が圧倒的に強いんだから、そのままA国だけで経済活動をすればいいじゃないか。でも、B国の力は絶対的に劣っているけれども、分野によっては、A国と比べてみて、それほど劣っていないところがある。じやあ、それほど負けていない分野に力を注いで、貿易によってうまく再分配すれば、両国ともに生産量を増やすことができて、お互いにとって利益が高まる。これが、国際貿易は双方にとって利益があるという経済理論なんですね。そして、リカードは、この比較優位の原理を示すことで、自由貿易を進めていけば経済全体の発展につながると主張しました。

国際的な分業と自由貿易こそが世界に大きな利益をもたらすという説ですね。これが、英国をはじめ欧州諸国が工業化を進めた19世紀前半ごろから、国際貿易の基本的な理論となったのです。

ただ、この原理には、ある商品をつくる技術が同じであるとか、労働力の移動が自由であるとかいくつかの前提条件があることは、覚えておいてください。為替レートや輸送コストのことも考えていないので、かなりざっくりとした考え方でもあるんですね。もともとこの理論は、2国間の貿易について述べたものだったので、多国籍企業が企業内取引を活発に行っているような現実の国際貿易に当てはめようとすると、うまく説明できないことも多いのです。この説が登場した当時から今日まで、「国の産業発展の段階によっては、自由貿易が最善であるとは限らない」という批判が根強くある点も知っておくべきでしよう。

この比較優位の考え方は、長く国際貿易の場で使われることになりましたが、実は、日常生舌や会社での仕事など、さまざまなところにも応用できるのです。

たとえばあなたが漫画家になりたくて、売れっ子漫画家に弟子入りするとしましよう。

漫画家にアシスタントとして雇われ、「ベタ塗り」という漫画の絵の背景や髪を黒く塗ったりします。すべてにベタ塗りをしても、師匠の漫画家の大先生のほうが、絵を描いたり、背景の構図力とか圧倒的に能力を持っていますよね。。しかも、売れっ子漫画家のほうがいろいろなことができるんです。すこし、ここで比較優位の考え方を使って、アシスタントが背景を塗る場合を考えてみましよう。どの作業でも売れっ子漫画家がやったほうがいいに決まっています。でもそれでは漫画家がスト丨リーをつくる時間が減ってしまう。この漫画家がなぜ売れっ子かというと、ストーリーが面白かったり、主人公の人格の造形や顔の表情など、いわゆるキャラクターをつくるのがうまかったりするからです。

これに対して、背景のベタ塗りはアシスタントだって漫画家と比べてそれほど差はないだろうということも考えられるわけです。面白いストーリーを考えることだと、漫画家が一か月10本に対して、アシスタントは2本。でも背景の塗りは、漫画家は一日に100枚、アシスタントは40枚とすると、ストーリーでは、10対2、背景のベタ塗りだったら、10対4です。作業ごとに比べてみたら、背景のベタ塗りでは圧倒的に負けているわけではないのです。

こういう状況の場合、すべてを漫画家一人でやらずに、漫画家はスト—リーを考えてキャラクターをデザインし、大まかなカットやりをして絵を入れるまでを行い、残りの背景の塗りはアシスタントにやってもらうというやり方をとったほうが、全体として、この事務所でつくる漫画の量は前よりも増えていくんですね。リカードの比較優位の原理を知っているかどうかはともかく、だいたいプロの漫画家はこういう作品の制作体制をとっています。

また、アシスタントにしてみれば、漫画家がどうやってスト—リーを組み立てていくのか、どうやってカット割りをしていくのか、背景の塗りをしながら学んでいくことができます。読者として漫画を読んでいるだけではわからない気づきもある。事務所やプロダクションは,比較優位で仕事をした訳です。(この原理は最初に学んだ「機会費用」の考え方の応用でもあるのです。機会費用とは、その行動を選択したことによって失った利益も計算に入れた利益のことでしたね。この点を意識すると、知らないうちに比較優位を日常生活に応用していることがよくわかると思います。たとえば、妻のほうが夫よりもはるかに高給取りであれば、夫婦に赤ちゃんが生まれたとき、子育ては夫がして奥さんが働きに出たほうが、家計全体としての収入が増えるということがありますよね。実は、多くの家庭が2人のうちどちらが働いたほうが月々の収入が高いだろうか、あるいは、どちらが子育てをしたほうがよりよい子育てができるだろうか、と考えて役割分担を決めているんですね。その際、どういう選択をすれば、それぞれの機会費用がいくらになるかも考えながら、よりよいほうを選択するわけです。無意識のうちに、比較優位の原理を使い、夫婦での分業、役寄分担をしているということがあるのです。ただ、現実には「夫が働き、妻が育児」という男女意識の役割分担は根強いかもしれませんが。ぜひあなたに、比較優位の考え方から汲み取ってほしいことがあります。勉強でもスポーツでも遊びや芸術でも、この人にはかなわないなという人があなたにもいると思います。でも絶対的にあらゆる分野で負けてはいても、まつたくダメじゃないとか、けっこういいセンいっている分野があるはずです。その分野に専念していけば、ものすごい才能を持っている人と一緒に仕事をすることによって、会社など全体でみれば、これまでよりもよい、大きな成果を上げることができるのだということなんです。それに、比較優位というのは時間の経過とともに変わるんですね。かつて日本はコンビユーターなど電子機器の製造が得意だったのですが、いまは中国などに比較優位が移っています。国もそうですが、個人の場合だって、いまは得意ではない分野の仕事がその人にとって比較優位に変わる時期が来るかもしれません。私も若いころから、特ダネをとる記者、文章が上手な記者など、とてもかなわないなと思う人たちと一緒に仕事をしてきました。でもそれぞれが役割分担をすると、全体では、よりよい仕事ができるということを自然にやってきたのではないかと感じています。あなたも、実際に働いてみないと、何が自分にとっての比較優位なのかわからないと思います。何が得意なのか、いまは苦手でも、実は比較優位を持てる分野は何だろうか。そう考えながら、学んでください。自分はダメだとコンプレックスを抱いたり、絶望したりしたときには、絶対優位で負けているように見えても、必ず自分にも比較優位があるはずだと考えるようにしてください。)

貿易をすることは双方にとっていいことだということがわかりました。

日本も中国も貿易はだんだんと活発になったのですが、歴史を振り返ると、平坦な道のりてはなく、多くの紆余曲折があったことがわかります。最初に説明したように、自由貿易体制ができることによって英国が「世界の工場」として君臨した、20世紀の後半以降、たびたび、この枠組みに反対する保護主義の動きが強まるということがありました。

保護主義は、工業化で遅れていた国は政府が自国の産業を保護し、育てて先進国に追いつくだけの時間の余裕を与えられるべきだという主張なんですね。国際経済の分野では、この「自由貿易か保護貿易か」という対立点、問いかけは、現代までずっと続いているのです。

ケインズの回で取り上げた1929年の世界恐慌のときは、世界各国が自国の産業を守るために、製品の輸入量を制限したり、輸入品に高い関税をかけたりしました。

関税は、モノを輸入するときに、自国の産業を守るために輸入品にかける税金です。

その結果、国際貿易が半分以下に落ち込むなどしたことで、かえって不況になり、恐慌が広がっていったわけです。

この時期、かつて自由貿易を推進していたイギリスも保護主義に転じました。もともと保護主義的だったアメリカが、農業保護のための高関税や輸入制限などを導入する「スムート・ホーリー関税法」をつくるなど、一段と保護主義を強めた結果、世界中が猛反発し、ヨーロッパではアメリカ製品の不買運動も始まったんですね。それに反発する形で、各国がブロック経済をつくり、後発の工業国であるドイツや日本なども市場や資源を確保するために、それぞれが経済圏をつくって対抗しました。それが政治的、経済的な摩擦を引き起こし、第二次世界大戦へとつながっていきます。貿易をめぐる経済的な対立がエスカレートしていくと、ついには、政治、軍事的な衝突をも引き起こしてしまうということなんですね。

世界史で習ったときは、ブロック経済圏なんて、昔は、そんな間違った選択をしたんだな、いまではとても考えられない、なんて思いませんでしたか。保護貿易の傾向が強くなっているいま、目の前にあのときの悪夢がよみがえってきているのかもしれないのだから、先のことはわからないものですね。(池上彰氏著作引用・加筆)


自由貿易促進の取り組み

第二次大戦後は、悲惨な戦争を招いてしまったという反省から、それぞれの国がなるべく自由な貿易をしたほうが、世界全体にとって有益であるという観点で自由貿易を推進する、さまざまな取り組みが行われるようになりました。世界貿易では、国と国との弊害を調整するための組織がなかったため、貿易で各国が望むような利益をつなげるための国際的な協調体制、ル丨ルが必要でした。そこで、アメリカなど第二次世界大戦に勝った連合国が中心になって、貿易の面で協力する国際機関で—世界通貨基金(世界銀行グ儿丨プなどと合わせて)、関税貿易一般協定(GATT)を成立させます。こうして—自由貿易のための環境整備を中心になって進めることで、アメリ力は経済大国、貿易大国としての地位を高めていったのです。

広く世界の国々みんなが参加できるような協定をつくって、互いに関税を引き下げて輸出入を活発にし、世界貿易を拡大していこうという取り組みでした。GATTは国際機関ではなく、各国間の協定なので拘束力が弱かったのですが、交渉を重ねることで、30万品目以上の鉱工業製品の関税を大幅に下げるなど大きな成果を上げました。それから、世界貿易機関(WTO)ができます。

世界貿易を調整する場が必要になってきてGATTウルグアイラウンドの機能を引き継いだうえに世界の国・地域が加盟する巨大な枠組みでの、自由貿易を妨ける保護主義の高まりを防ぐ意味で、1995年に発足しました。

しかし、期待したようには、うまくいきませんでした。WTOは加盟国の全会一致が原則なので、意思決定には時間がかかります。加盟国が増えるにつれて、ますます贸易を統括する国際機関としてうまくいかなくなりました。

発足から30年近くが過ぎても、この閣僚会議を開催してもいっこうに紛争解決などに力を発揮できずにいます。自由貿易の環境整備もまったく進んでいないのです。

つまり、貿易の番人の役割を果たせない、機能不全が長い間、続いているのです。

たとえば、2001年から始まった多角的貿易交渉(通称、ドーハラウンド)では、デジタル分野や環境分野でのルールづくりを進めていたのですが、先進国と途上国などの間で激しい対立が繰り返されて、結局、2016年に挫折し、交渉が棚上げにされたままで、今日に及んでいます。また、加盟国間の通商紛争を扱う紛争処理制度は2019年から機能が止まったままです。アメリカがこの制度に強い不満を持っていて、裁判にたとえると、「最高裁」にあたる上級委員会の委員の補充を拒否しているからです。日本が当事国になっている紛争もあり、関係者は危機感を強めています。

2020年には、6代目のWTO事務局長が任期途中で突然、辞任して、混乱が起きました。自由貿易の調整どころか、信頼がゆらぐようなことになっているのです。

どうしてこんなことになったのでしょうか。さきほど、ちょっと触れた「保護貿易」のほうがいいと考える国がだんだん増えてきたからなんですね。保護主義の高まりが、自由貿易の流れを妨げるようになってきました。

少し歴史をさかのぼると、1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が終結して、社会主義国の消滅とともに、市場経済が広がります。これからは世界が自由で民主的になり、平和な時代がくると思われました。経済のグローバル化が進んで、国際貿易も活発になっていきます。

ところが、貿易の拡大が各国の経済成長を後押しする一方で、富める国と貧しい国の差が大きく開いてしまったのです。2008年に起きたリーマン・ショックのような世界規模の金融危機で市場経済の不安定さがあらわになったり、保護主義化したヨーロッバで国民が不満を高めたりしたことなどあり、権威主義的な政権が次々現れるような動きが目立ってきます。東欧や南米などでは権威主義的な政権が次々に生まれて、国同士の対立、貿易摩擦が相次ぐようになり、保護貿易に転じたことが、とりわけ、それまで自由貿易を先導してきたアメリカが保護主義になったことで、世界貿易の歴史的な転換点となりました。2017年に就任したトランプ大統領は、「アメリカ.ファースト」(米国第一主義)を掲げて、輸入品に高い関税をかけるなど、保護主義的な貿易政策を次々に打ち出しました。背景には、行きすぎた自由貿易によって、輸入品が増えてアメリカの労働者から仕事を奪っているという考えがありました。労働者や農家の利益になるようにと、国産品の流通を増やし、企業には海外工場を米国に戻すように求めます。ひんぱんに貿易相手国に強硬姿勢を示して、国際的な

摩擦が相次ぎました。


1930年代のブロック経済再び、激化する米中対立

自由貿易を推進することによって、世界経済、国際政治に圧倒的な力を握ってきた超大国がいきなり内向きになったように見えたので、世界中がびっくりしました。巨額の貿易赤字を抱えて、国内では国民の不満が募るなど経済面での衰えを、もはや隠せなくなってきていたのでしよう。WTOとは距離を置くようになり、世界市場での自由貿易の推進役という立場を放棄してしまいます。これまでアメリカが主導してきた地域的な経済連携、TPP(環太平洋経済連携協定)からも離脱してしまいます。

参加した国々は、突然、はしごを外されたようなものでした。NAFTA(北米自由貿易協定)などこれまでに米国が結んだ貿易上の取り決めについても、次々に見直しを始めたのです。

それまでにも、WTOでの貿易ルールづくりや紛争処理には時間がかかることから、さまざまな地域で、気心の知れた2国やグル丨プなどが互いに経済連携協定などを結んで、ルールづくりを進める動きが広がっていました。保護主義が高まってくるにつれて、北米やアジアなどで貿易のグループ化がさらに進みます。連携協定などを使って、親密な国を増やすといった囲い込みの動きも広がってきました。ヒトの流れや貿易の分断、国同士の対立などが目立つようになり、さきほど触れた1930年代のブロック経済を思わせるようなさまざまな動きが次々にあらわれてきます。

なかでも、もっともそのころの状況と重なって見えてくるのが、「自国第一主義」を揭げたアメリカと「世界の工場」中国という超大国同士の衝突です。保護貿易に路線を転じたアメリカに対して、力をつけてきた中国は、貿易だけでなく、軍事、金融など多くの分野で侵み始めています。シルクロードをモデルにした独自の経済圏をつくろうという「一帯一路」構想を打ち出し、設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じて、親しい国とグループを形成し、勢力圏を広げようと次々に手を打っています。


関税合戦で加速する米中貿易戦争

2018年には、「米中貿易戦争」が起こります。21世紀に入つてから、この2大強国の経済摩擦は、ずっと続いていたのですが、対中貿易赤字の増加にいらだったトランプ大統領が中国製品に高関税をかけたことから、それが顕著になりました。


日本の締結の流れ

1995年の発足以降、世界中で貿易協定を結ぶ動きが加速します。日本は経済連携協定などを柱に自由貿易のネットワークを拡大してきました。2002年にシンガポールと締結し、その後もマレーシア、タイ、A5EANなどと次々に締結、2019年にはチリとも結ぶなど、締結国との貿易は日本の貿易総額の約80%を占めるまでに拡大しています。トルコ、コロンビアとも交渉中で、イスラエル、バングラデシュなどと新たに交渉を始めようとしています。また、78力国-地域と結んでいる投資協定についてもさらに拡大、進化させようとしています。

 アメリカと中国の関係は、両国が互いに高関税をかけ合うという報復合戦にまで発展してしまいます。これは中国が開放路線に転じて40年で初めての事態でした。

米中の対立は、貿易だけにとどまりません。中国が南シナ海に建設した人工島に地対空ミサイルを配備するなど海洋進出を強めていることにも、アメリカは反発を強めていきます。

先端技術が流出しているとして、国内から中国のハイテク大手企業を締め出します。軍事、安全保障の面でもはっきりと対決姿勢を示すようになり、一部で「新冷戦」という見方さえ出てくるほど、激しくぶつかり合うようになっていきました。

そして、2020年以降、地球規模の大変動が、こうした分断と対立の動きを加速するのです。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が起き、次いで2022年にはロシアがウクライナに軍事侵攻して戦争をしました。そして、イスラエルがガザ侵攻―――世界経済は激しく落ち込み、貿易は停滞し、食料やエネルギー資源の奪い合いが始まるなど保護貿易に向かう国が増えていきます。民主主義、自由貿易を重視する国と独裁的で強権的な国とが、しばしば衝突するようになります。分断が深まり、経済のブロック化が一段と進みます。「米中貿易戦争」は、ロシアなどが加わったことで、米欧日などの民主主義陣営と中国・ロシアを中心にした専制的なグループどちらにも加わらない中立的な国々、この三つの陣営がしのぎを削る図式になってきているようです。こうした状況は、経済摩擦がエスカレートして、原油などのエネルギー資源をめぐって、各ブロックが争った1930年代と、ますます似てきているんですね。(池上彰氏著作引用・加筆)


新型コロナのパンデミックによる経済危機

この大変動で世界の経済、貿易がどんな衝撃的なことになるのかを少し見てみましよう。まずは、WHO(世界保健機関)―――――最初に感染拡大が確認されたウィルスはまたたく間に世界に広がり、世界では、緊急事態を宣言する事態となりました。

それから、その騒動もひと段落して新型コロナのパニックは終息――――

2024年には季節性インフルエンザと同じ五類に指定されて、パニックは去りました。

感染拡大があなたの暮らしや企業を直撃し、日本でも、東京五輪・パラリンピックが延期されました。非常事態が宣言され、外出制限やイベントの中止が相次いで、経済活動に急プレーキがかかりました。赤字の続く企業が増え、雇用の打ち切りなどで個人の収入も減少し生活が苦しくなるケースも目立ちました。この本で、最初に「景気」のことを学びましたが、日本の景気は戦後最悪と言われるほど急減速して、2020年度の実質の成長率は、前年比マィナス4,6%に落ち込んだんですね。

世界経済は大きく減速します。世界中で工場の操業停止などが相次ぎ、生産は落ち込み、都市封鎖(ロックダウン)などで物流網は寸断され、消費意欲も減退しました。各国の輸出も減少し、世界貿易は急速に縮小して、2008年のリーマン・ショックのときよりも落ち込みが大きかったとも言われました。

 それから新型コロナの不況から立ち直ったのはアメリカで、米国経済はふたたび世界一、第二位の中国は「不動産バブル」が弾けて酷いことになった。

 でも、日本もバブル崩壊以来となる株高にーーーでも記録的な円安と世界的なインフレと戦争で、物価高で大打撃です。



まずは、日本がアメリカ、ヨーロッパなど主要な民主主義国の陣営にいる点を確認し、友好協力関係を強化することが大事です。そのうえで、各国と協力して、WTOの再建など世界の自由貿易体制の立て直しに協力して、地道に保護主義への流れを変えていくべきでしょう。それに並行して、2国間の経済連携協定や地域連携協定などを活用することで、白由貿易の重要性を粘り強く説いていく必要があります。

米中の2大超大国のそれぞれと密接な経済関係を築いてきた日本は、両国がはげしくぶつかり合う中で、今後、ますます難しい選択を迫られることになります。アメリカが撤退したあとのTPP(環太平洋経済連携協定)では、日本が中核的な役割を果たしてきたのですが、そこに2021年、中国が加盟を申請してきました。アメリカが抜けたあとで、主導権をにぎろうという思惑が透けて見えますね。影響力を強めようとする中国に、日本はどう対応するのか、ここでも手腕が問われます。


国際貿易による豊かさをどう守るか


さて、これまでの説明で、世界の国々がなぜ貿易をしているのか、ほかの国々と資源や工業製品などを売り買いしているのか、いくらか、その理由がわかつてきたのではないかと思います。貿易によって富が増えるからですね。

戦後、地球規模で、自由な市場での貿易が盛んに行われるにつれて、経済成長が増えていきました。貧しかった国々が先端技術を手に入れて豊かになるという「富の分配」の連鎖が続きました。おかげで日本もこの輪に入ることができたのです。

背後で働いていたのが、貿易によって、お互いが豊かになるという「比較優位」の原理です。長く続いた豊かさの連鎖、それがいま大きな転機を迎えています。国際貿易の拡大、経済のグローバル化が進むとともに、所得格差が拡大したり、失業が増えたりした国々を中心に、保護主義への逆戻りが始まっています。

19世紀の初め、証券仲買人として成功したリカードは、ナポレオン戦争後の激動の時代に経済の論客として活躍しました。

イギリスが安い穀物の輸入を禁止した穀物条例の廃止を訴えて、議論を繰り広げました。論争を経て書いた本の中で、「比較優位」の原理を確立し、保護主義的な輸入制限が続けば、やがて資本家、地主、労働者の間で所得の分配をめぐって深刻な対立を招くようになると警告したのです。彼は下院議員になり、国債の整理などとともに、穀物条例の廃止を強く訴え続けます。リカードが亡くなって20年以上あとに穀物条例が廃止されると、イギリスは前例のないほどの自由貿易国家に変わり、経済大国に発展していきます。

保護主義を乗り越えて、自由貿易を進めていくには、リカードの原理だけでなく、制度やしくみを変えようと粘り強く主張し続けた、そのような姿勢にも学びたいところですね。

(池上彰氏著作引用・加筆)


   いまさら聞けない「投資」の話


   株とはなんだろう


 「株」とは、「お金を出しました」という証拠です。たとえば、あなたが新しく仕事を始めるとします。あなたが大金持ちでなければ、仕事を始めるお金をほかから用意しなければなりません。そんなとき、「株」というしくみがあります。いろいろな人からお金を出してもらい、その証拠に渡すのが「株」です。集めたお金で仕事をして、儲けが出たら〝分け前〟を払います。これが「配当」です。

 株を発行して集めた資金で始める会社を「株式会社」といい、お金を出してくれた人は「株主」と呼ばれます。株主あっての株式会社。「株主」が一番に偉いので、年に一回株主総会を開いて株主に経営方針を説明し、了解をもらう必要があります。

 株主は、株を持っている会社の経営がうまくいくと、毎年、配当を受け取れます。株を持っているだけでお金が入ってくるわけですから、その株をほしいと思う人が出てきます。株の売り買いが始まります。株を売買する場所が「株式市場(証券取引所)」です。

 株というと、日本では「儲ける手段」というイメージが先行していますが、実はそれだけではありません。株を買うことは、その会社を応援すること、ひいては経済活動に参加することでもあります。アメリカなどでは株式投資に対する意欲が高いのは、小学生のころから、こうした株取引に関する教育がなされているためです。

「株価は景気のバロメータ」といわれ、株価が上がれば景気は良くなり、下がれば、景気は悪いことになります。


   株式上場とはどういうこと?


 株は、株式市場(証券取引所)で売買されます。とはいっても、どの会社の株でも株式市場で売買されるわけではなく、資格が必要です。資格を満たして、株式市場での売買が認められることを「上場」といいます。「市場」に「上がる」ことができたという意味ですね。

上場して株が売れると、株式会社には多額の資金が入ってきます。この資金を使って事業を拡大したり、新しい仕事を始めたりできるようになるのです。また、株式会社を作った経営者は、その会社の株をたくさん持っていますから、これを株式市場で売ることで、大儲けすることもできます。

日本国内には、東京証券取引所のほか、名古屋、札幌、福岡にも取引所があります。この中でニュースに登場するのは、やはり東京証券取引所(東証)です。この東京証券取引所には、第一部と第二部、マザーズ、JASDAQ(ジャスダック)の四つがありましたが、二〇二二年四月以降は、プライム、スタンダード、グロースの三市場に再編されました。

プライム市場…株主数八○○人以上、流通株式数二万単位以上、流通株式時価総額一○○

         億円以上、流通株式比率三五%以上。(グローバルな大企業)

スタンダード市場…株主数四○○人以上、流通株式数二○○〇単位以上、流通株式時価総     

         額一〇億円以上、流通株式比率二五%以上。(大企業に準ずる企業)

グロース市場…株主数一五〇人以上、流通株式数一○○〇単位以上、流通株式時価総額五

億円以上、流通株式比率二五%以上。(ベンチャー企業など)



   平均株価とTOPIX(トピックス)


日経平均株価の算出方法は、東京証券取引所第一部(現在はプライム市場)上場企業のうちの代表的な企業二二五社を日本経済新聞社が選び、株価の平均を毎日計算して発表したものです。

 日経平均株価の計算が始まった一九四九年ごろの株は、一株五〇円で発行されていましたから、計算方法に一貫性を持たせるために、まず計算対象企業の株を額面五〇円に換算します。額面五万円で発行されて、現在五〇万円の価値がついている株は、一○○〇で割って、五○○円にします。こうして二二五の数字を合計し、「除数」で割ると、平均が出ます。

「除数」とは、割り算で割る数字のことです。二二五社の額を出すのだから二二五で割ればいいだろう、と思ってしまいますが、これが二二五ではないのです。一九四九年五月に平均株価を計算していた時は、計算対象企業数が二二七社であったのです。翌年から二二五になり、除数も二二五社になりました。時間が経つにつれて、問題が起きます。株式の分割です。

 株価が下がった会社は買いやすいように、株式を分割して売るようになります。これまでの一株が二株になるので、値段が半減します。そのまま日経平均を出すと、値が減るので、二二五よりもっと少ない数で計算することになりました。

 また、TOPIX(Tokyo Stock Price Index)とは、「東証株価指数」です。

 東京証券取引所第一部上場企業会社の株式の時価総額(各企業の株価に発行株式数をかけたもの)を、指数(ポイント)で表しています。現在は一部という区分はなくなりましたが、引き続き使っています。

 一九六八年一月から計算をはじめ、この年の最初の取引が始まった一月四日当時を一○○として計算しています。この指数が一○○〇であれば、当時の時価総額の一〇倍の金額になっている、ということになります。



   国債のしくみはどうなっている?


 国債とは、簡単にいうと「国の借金」のことです。こう聞くと、「誰から借金しているの?」と聞きたくなります。答えは、「私たち国民から」。そんな答えを聞くと、「でも、私も国民の一人だけど、国にお金は貸してないよ」と反論したくなるかもしれませんね。

 あなたが銀行にお金を預けたり、郵便貯金に貯金したりしていれば、そのお金が国債を買うことに使われているのです。あなたが金融機関にお金を預けていることで、間接的に国にお金を貸しているのです。また、あなた自身も銀行や郵便局で国債を買うことで、国に直接お金を貸すこともできるのです。

 実は日本では、財政法という法律で、原則として国が借金をしてはいけないことになっていました。第二次世界大戦中、戦争の費用をまかなうために国債が乱発され、敗戦とともに、この国債は紙くず同然に。これを教訓に、戦後は国債の発行を禁止してきたのです。

 財政法第四条には、「国の歳出は、公債又は借金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と書いています。公債とは国債のこと。つまり、国債や借金以外を財源にしなさい、と明記してあったのです。

 ところが一九六五年、不況のため税収が足りなくなります。このため、この年は、国債を発行するための「財政特例法」という臨時の法律を作って、二五九〇億円の国債(特例公債)が発行されます。戦後初の国債で、この年だけの特別な法律でした。

 翌年になると、今度は、税制特定法の但し書きに基づいて、国債が発行されました。

 但し書きでは、つまり、道路や橋など、形として残る公共事業のためなら、国会が認めれば国債を発行できる、というのです。この但し書きによる国債を、建設のための国債という意味で「建設国債」と呼びます。また、大幅な赤字を埋めるために、公共事業以外の目的の国債も発行せざるを得なくなりました。これが、「赤字国債」です。

この赤字国債を発行するための、特例の法律を作って発行するようになったことから、「特例国債」と呼ぶこともあります。一般家庭に例えれば、建設国債は住宅ローンで、赤字国債は飲食のための借金でしょうか。建設国債なら子孫に財産を残すことができるという考え方もありますが、子孫に借金を残すということでは同じです。

(池上彰氏著作引用・加筆)

(『新つみたてNISAとiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)』『為替レート(円高ドル安・円安ドル高)』『アジア経済(ASEAN・東南アジア諸国連合)』『EU・ユーロ通貨圏』『中国の一帯一路・AIIB』『FRB・FTA・EPA・TPP』『強い米ドル』『バブル経済とはなんだったのか?』についてはこの本の続編で詳しく書きますのでお楽しみに)

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第二部 シン・マネー革命

 新・国富論 ドキュメンタリー部

     あらすじ

 この第二部は小説ではなく、ノンフィクションの経済書である。最近のグローバリズム経済やITやAIに対するデジタル通貨経済、アメリカや日本国やEUや中国などの「世界経済の減速」。5GやGAFAや『貿易摩擦』や為替や金融政策のイロハ。経済の基本から細部の経済理論まで。この本で、必ず経済通になれる、経済を勉強する基礎の基礎。経済の教科書であり、ハウツー本であり、経済の本。

経済のことが4時間できっと学べる。経済の経済による経済のための基礎の基礎。日本人・人類共通の〝経済書〟いよいよ刊行!!



 

――――(注意)この書は特定の銘柄の株や投資商品や投機筋などを推奨するものではありません。投資行為は『自己責任』でお願い致します。損失分の補償や賠償金・寄付金などの相談には一切、応じませんのですべて『自己責任』で完結させてください。―――

   




  

 確かに、日本は安い国になった。

 だが、それでも日本人は沢山のお金を持っています。

 日本人の個人金融資産は2100兆円。企業の内部留保は560兆円・国富は四○○○兆円くらいです。

 要は、日本人は貯めこむだけで、さっぱり消費・浪費に使わない。

 大前先生は『低欲望社会』と名付けたが、確かに、日本人全体が「将来の不安に備えるために」と、貯め込むだけ貯め込んでいる。

 その結果、亡くなるときにおよそ三千万円ほど残していくのが日本人であるらしい。

 まあ、相続先がなければ全部国庫に納められますけど……。

 僕自身もその「将来の不安に備える」という気持ちは理解できる。

 確かに、お金がなければ老後はどうなるのか? と思う。

 国が運営している限り、「年金が貰えない」等あり得ない。

「年金が払えない」というのは国が滅んだときだけだ。だが、支給額は減るだろう。

 その支給額が〝おこずかい〟程度だったら? という不安である。

 これは本当に切実な心配だと思う。困ったときに役に立つのはお金だ。

 どんな綺麗ごとを言ったところで、お金がなければパン一個も買えない。飢え死にだ。

 米国発の金融恐慌とはならなかったが、欧米系の銀行がバタバタと潰れた。大量の失業者と倒産という訳ではないけど世界はインフレ一色、日本のゼロ金利と派遣切り……そのリーマンショックから数十年、新型コロナから数年、今の世界はトランプ米国大統領(当時)に代表される『自国第一主義』である。自己中女の如く「わたし(の国)が! わたし(の国)が!」……そして、トランプ氏が再び大統領になる可能性が高くなった。

 米中関係は貿易摩擦というより貿易戦争、貿易冷戦、と言う具合に報復関税のやり合い。節度がない。だが、日本はアメリカとはたった百六十年の付き合いでしかないが、中国とは千年もの付き合いがある。

 日本は米国との貿易摩擦というより貿易戦争の経験があるのだ。

 なら、その経験やスキルを中国に提供する外交があってもいい。

 問題は、国内のことしかわからぬ財務官僚や傘下の銀行、証券、はたまた傘下でもない天下り先の会社や企業を守るため、かくも長く預金者を地獄の道連れにすることである。政治資金やパーティ券や融資だの公的資金だのと、いいかげんな言葉を使って、税金や年金、庶民や選挙民から金を盗み取り、PKO(株価維持策)や日本の金融機関救済のために「使い込み」、大量にスッている財務省や政治家のメンタリティや態度が問題だ。

 融資だの公的資金だのと、結局、国民の血税ではないか! それを、こっそり国民のポケットに手をつっこんで抜き取り、日本の金融機関救済のために「使い込み」、大量にスッている財務省の官僚や日本の政治家たちのモラルが問われているのである。スリまがいのことをして、時には金融機関にタカり、官邸や政治家の悪事をかばい忖度(そんたく)する官僚。いい気になっていた官僚。何の役にもたたないのに、天下って何億円もの給料をもらう官僚……。こいつらはいったいなんなのか? 本当に人間としての道徳や常識があるのか? 安倍派の政治家が大勢逮捕などになる事件もあったが、所詮は『トカゲのしっぽ切り』でしかない。派閥をなくしても、ほとぼりが冷めたら復活するんだろ?

 今まで、不況対策などと称して百兆円以上スッたが、財務省や日銀や政治家はその金を納税者に返してくれるのだろうか? まさかスッとぼける訳ではあるまい?

 だいたい、政治家がだらしがない。

 金融危機を招いたのは日銀や財務省の官僚たちである。それを知っていながら彼らの解決策を作らせ、法案を成立させるやり方は、なにやらヤケっぱちのようにも見える。いかに、当事者能力がないかを現してもいる。かぎりなく不様、だ。

 財務省は基本的な分析や対策をたてないで何をやってきたかといえば、自分たちの裁量でどうにでもなる融資などの金を株や為替相場にツッこんでみたり、つぶすべき企業や金融機関を史上最低の超低金利で手厚く守り、預金者を犠牲にしてきた。「日本の個人金融資産が2100兆円あるから安心して使え」……などといっても将来に不安があって、史上最低の超低金利であり続ける限り、2100兆円は動かない。動いても外資にだろう。ポート・フォリオで考えても外資の金融商品や為替のほうが魅力があるからだ。円安だし。

 財務省や政治家のバカ殿様たちの「ご乱行」はそれだけではない。

 流動性危機から米国債の投げ売りを恐れるアメリカ政府とつるんで、景気対策と内需拡大と称して、六十兆円も使い込み、またまたアメリカの財務長官や通商代表らに規制緩和や公的資金導入、構造改革などの注文をつきつけられてもいる。これじゃあ、どっちが本当の日本国政府かわからない。さらに、投機家というよりバクチ家を呼んできて、東京市場をはやしたてたり、「ご乱行」の限りをしたり財務省や日本の政治家たちはやってきた。

 やるべきことがいっぱいあるのに、それを知っていながら、対策や処置方法も知っていながら、何もやらず、自らの天下り先と規制利権を守ってきただけだったのだ。その意味で、財務省や日本の政治家たちの罪は極めて重い、といわざるえない。


         二十一世紀の日本は……


  経済危機から脱しただけでは、二十一世紀の日本の将来は暗い。

 昔、ジャパン・アズ・ナンバーワン……などという言葉がいわれたが、今きくと笑ってしまう。世界第4位の経済大国とはいえ、儲かるのは一部の大企業や資産家だけ。個人金融資産(プライベート・キャピタル)が2100兆円ある…などといっても年金や老後や医療保険に不安があり動かない。「いま買うべきではない」と皆思ってる。企業の内部留保は560兆円だ。

 政治は茶番、学歴社会の排除もリップ・サービスで、どこまでも「学歴」で判断する日本の企業人事担当者……。負債は何十兆円以上にもなり、特に、国家債務が一千兆円よりまた増えてひどい経済状況だ。以前のリーマンショックでの金融恐慌で何百万人もの失業者が路頭に彷徨った。

 リストラ、トヨタも赤字……

 どうしてもいっておきたいのは、この国のいい加減なエコノミストにだ。

 なんとか総研とか官僚の傘下のようなエコノミストやジャーナリストや財界人たちは、不況が深刻になると必ず口裏をあわせたように「日本の金融機関への公的資金導入やむなし」とか「大規模減税!」「公共投資で景気対策を」「法人税の減税」などといい加減な考えで発言してきた。この人達は恥を知るべきだ。

 彼らは毎年暮れになると、「来年の春頃には景気は上向く」とか「秋頃には景気回復もありえる。経済成長率は大幅に上向く…」などと数十年間もいい続けてきた。もちろん勘でいっているだけで、真実ではない。性懲りもなく何年間もそんな嘘っぱちを口走り、ハズレつづけてきた。その結果、税金を大量にスッて足りなければ60年先から赤字国債という形で借りてきてムダなものに使ってしまう。…状況は最悪だ!

 また、歴代の大臣も、銀行がつぶれるたびに「もうない」などと、あやふやに言ってきた。そういいながら十数行もつぶれれば誰も信用しなくなるのは当然だ。

 とにかく、今、日本がやらなければならないのは明治維新のときの廃藩置県ではなく、廃県置藩というものだ。道州制にして、税金も地方で集めてその地方で使わせる。

 財源だけでなく、徴税権も与え、地方の自立を促すべきである。

 安い日本で、もうもう一度の高度経済成長は無理だ。

 日本人の平均年齢は48歳くらい。もう若い世代の増加や消費――これを人口ボーナスというが、インドならそうだが。日本の場合は少子高齢化の成熟社会だ。

 ここまで安い国になれば、逆に安さを活かしてのインバウンド需要による『観光立国』でのビジネスと、金利を上げての所得倍増しかない。

『羽田空港のハブ空港化』ももっとやる必要がある。成田は千葉県で首都から遠い。羽田空港を拡張して国際化し、24時間ノン・ストップで低料金でやらねば駄目だ。羽田プランはいい策である。それでいい。

 だが、今は午後9時で閉まってしまう。日本の顔が『シャッター通り』になっている。

 ムダである。シンガポール並みの金融と観光と経済のセンターに日本はなれる。せっかくの世界一の技術力を活かすべきである!

 なぜ、資本主義の原則である「競争原理」を導入しないのか? 同じ値段になったとき、まずいカリフォルニア米やベトナム米を買うか、それともおいしいつや姫やあきたこまち、ひとめぼれ、はえぬきなどを買うのか、消費者に判断させたらいいではないか。

 農協は世界のことを何ひとつ知らぬ農家の恐怖心ばかり煽っている。実際には自由競争になったら、つや姫や秋田こまちなどは外米よりはるかに美味しいから負ける訳がない。むしろ外国人も買うだろう。現に日本のナシやリンゴは外国では高級フルーツと呼ばれ珍重されているという。

 農協が農家の恐怖心だけを煽ってはダメだ。農業にも競争原理を導入すべきだ。

 攻めの農業政策で「サクランボ」「コメ」などを海外進出して儲けよう。

 派遣切りとか内定取消し…と暗い話が多かった。

 しかし、企業が雇用見合わせや不必要人員を削減するのは犯罪ではない。というより、企業としてまた利益追求団体として当たり前である。但し、クビを切られて職や住宅を失ったひとたちには是非救済の手を伸ばすのが政府として、当たり前の政策であろう。

 その上でのリスキリング(学び直し)である。具体的には英会話、IT技術、プログラミング、DX、AI開発――――――

 なぜ就業者の3分の1が派遣社員か? の答えは、05年の『改正労働者派遣法』である。この法律で、安くてすぐにクビ切りもできる『派遣社員』が生まれた。そして、米国発の金融恐慌で、コストカットという意味での派遣切り、リストラの嵐……という訳だった。

 現在は政権のおかげではないが、景気回復と人手不足による雇用拡大と賃金上昇。好景気ではないがやはり少し好景気の〝きざし〟くらいは見えてきたのか……。

 年金の運用利回り、融資、埋蔵金…いろいろな財源がある筈である。また、雇用対策には思いきった公共事業も欠かせない。

 一番悪いのは、何もせぬことだ。頭を抱えて縮こまるだけでは、不況は回復しないのだ。

 また、財界も何もわかっちゃいない。

 景気対策、ゼロ金利、円安誘導、減税……すべてがいきあたりばったりで、あげくの果てに「法人税の減税」などと馬鹿なことをいいだす。状況がわかっていれば絶対にやらないことをやり、状況がわかっていれば絶対にいわないことを言い出して、状況は益々悪くなっていた。

 いまいっせいに起こっている「法人税の減税」「10兆円所得税」「金融やゼネコンへの公的資金導入」などの考えよりもっといい提案をしたい。まず不況対策には、2100兆円の個人資産の金利(利息でなく利回り)の引上げ、インバウンド需要による『観光立国』ビジネス、非収益資産の現金化…などだ。

 特に、『観光立国』ビジネスは、役にたつと思う。そしてDX投資。生成AI投資。

 景気をよくしながら、同時に、二十一世紀の情報化社会に対応できるような人材を育てようという、投資だ。これなら景気もよくなって、と同時に今いっぱいいるような、暗記だけの「学歴エリート」、自分の頭で考えられない「偏差値エリート」も駆逐できる。

 危機から脱し、それと同時に人材も育ち、教育の失敗から生まれた酒鬼薔薇や仙台元・幸町中学生たち(罪もない社会人に対して数年に渡り罵声投石嘲笑した)とかの「鬼畜」も駆逐できる。もちろん教育には私も考えた「ボランティア研修、授業」も必要だが、特に、『観光立国』ビジネスやDX・AI減税は、役にたつと思う。

 将来へのビジョンも描けると思う。

 政府はこの10年間くらいで、景気対策と称して六十兆円くらいスッている。国民の消費が動かないのは将来に不安があるからである。国のヴィジョンがまったく見えないからだ。目につくのはリストラ、倒産、大気汚染、青少年犯罪、官僚や政治家らのモラルの低下…。2100兆円は将来に不安があるかぎり動かない。住宅は、地価が外国に比べて何倍も安くなったのだから、下がったから後は買うだけという話だろう。だが、不動産は株と違って、下がっても「買い」が入らない。住宅需要も今はいいが、これから先の団塊ジュニアの世代の投資が終われば、これからはあまり期待薄だ。東京五輪後の不安……

 今、「団塊ジュニア」の世代が住宅の買い、改築、が終われば住宅需要は「冬の時代」を迎える。エチレン・サイクルや半導体サイクルのように、住宅・不動産需要にもサイクルがあって、それはエチレン・サイクルや半導体サイクルよりもずっと長いサイクルなのだ。値段が安くなっても「買い」がこないのが商業不動産や住宅の特徴だ。それがなんにもわかっちゃいない。

 財界人も何もわかっちゃいない。

「景気対策のために法人税を下げろ!」などと言ってるのだ。

 これなど、いかに経済がわかってないか、の証拠のようなものだ。きっと財界のお偉いさんの老人たちは自分で会計とか経理とか財務処理とかしたこともないのだろう。親の七光りやコネ、偶然か学歴だけで「社長」や「会長」になっただけの人達なのだろう。

 今、日本は史上最低の低金利だ。この低金利で、投資をしないのは「投資するアイデア」がないか、将来への不安、かのいずれかだろう。いまほど投資しやすい時はない。低金利で、土地もひとも金も、物資も、商品素材、原料も、安く、また余っているからだ。

 だから法人税など関係ないのである。大体、日本の法人の六割は法人税を払ってないではないか。

 企業の投資が動かないのも、また、将来への不安、からだ。

 だから、いま必要なのは、「加速償却」という方法だと思う。つまり、「加速償却」という方法でDX/AI減税を……という訳である。これは必要だと思う。例えば、七〇年代、日本はロボット王国となった。それに一番効果があったのは、「加速償却」という通産省の特別税制優遇処置だった。普通、5~8年かかっていた機械の償却を2年でやってくれた。わかりやすく言えば、100万円の機械を買うと、工場のオーナーに50万円戻してくれたのである。これは効いた。

 こうした「加速償却」が今、できないものか?できるのではないか?

 そのように私は思ってしまうのだが、なぜやらないのか?…疑問が残るばかりだ。

 ……長い旅になる。しかし、日本の経済や金融を知るための旅だ。

 そして、「マネー革命」の真実を浮き彫りにするのだ。


      日本国の今後は『観光立国』ビジネス。インバウンド需要による救国の策を体感せよ!


  日本国は安すぎる国になった。だが、まだまだ希望はある。

 昔からいわれているように日本は治安が良い。安全だし、食も安全、地方にも観光資源が豊富である。日本人のネックは英会話力の欠如であるが、これも対策はある。

 まずは『観光立国』ビジネスで日本国の復活を策謀するしかない。

 温泉やスキーに春のお花見、沖縄や北海道などの風光明媚な地域、美味しい日本食―――

 よく日本人は意地悪、ともいわれるが相対的なことで、親切な人も多い。

 よく、海外からの観光に携わる人材で、「日本語を話せること」という条件があると思うが、日本語はわかるに越したことはないが逆に、英語や中国語やアラビア語・韓国語、などが流暢な人材であれば日本人の「英語苦手」をカバーできる。

 そして、インフルエンサーに日本のことを紹介してもらうのだ。

日本の観光目標として年三〇〇〇万人……というのがあるが。要は宿泊所とタクシーなどの移動手段の確保である。それが問題点である。

 だが、移動手段はライドシュアやオンデマンドタクシーや自動運転タクシーなど幾らでも可決手段がある。宿泊も、ホテルの拡充だけでなく民泊や、空き家や公共施設などの宿泊場の改革――――まずは頭を使うことだ。

 観光大国のフランスやイタリアは観光客が年間四○○〇~六○○〇万人であるから、日本もそれくらいを目標にしないと。オーバーツーリズムも問題だが。

 それ故に、観光庁ではなく、観光省という組織が必要だ。

 日本が安い国になったからこそ、「値段の安さ」「安全」「観光資源」「日本食」「安い日本製品」「移動手段の正確さ」という資源が日本国の新たなバーゲニングパワー(国の売り)となる。

 これからはインバウンド(訪日外国人)需要による『観光立国』ビジネスがメインとなる。

「漫画」「アニメ」なども日本の強みであるが。これからは日本でなく中国になるかも知れない。どんどん中国に好待遇で日本のアニメクリエイターが引き抜かれている。

 日本のアニメーターは安い給料で、中国の十分の一の賃金でしかない。

 これでは、いずれ、日本のアニメーターは(中国の)〝下請け〟にならざる得ない。

 もう、少子高齢化で、新たな高度経済成長は見込めない。

 なら、観光こそ、これからの日本国の一大産業だ。

 逆に言うなら、もうこれしかない。

 



『お金じゃぶじゃぶ』異次元金融緩和の失敗と功罪



 異次元の金融緩和は日銀が2024年におわりにした。安倍晋三首相が率いる自民党が、2012年末に当時の民主党から政権を奪取したのが実施の契機になった。

 いわゆる「お金じゃぶじゃぶ」だが、それがあまり効果がなく、早い段階で「デフレ脱却後の新ビジョン」が必要になった。異次元緩和を決めたのは当時の日銀総裁の黒田東彦総裁の時代だが、それと政権のフィクサーで財界の実力者で・国士・国商・闇将軍のJR東海のトップの葛西敬之氏(故人)も、無学な安倍を東大卒の頭脳で葛西氏は支えた。

 異次元緩和はもっと早い段階で出口を探し当てる努力が必要であった。

 日本はたったひとつの国がガラパゴスのような状態になり、井の中の蛙となり、ぬるま湯に浸かり過ぎて茹で上がっているのも気づかない状態にまでなった。

 日本だけが、YCC(イールドカーブ・コントロール)で長短金利操作をした。

 そこまでは低金利政策を推し進めた外国も踏み込まなかった。日本だけがやみくもに続行し、「お金じゃぶじゃぶ」で、それでも低欲望社会で、消費も浪費も思うようには動かなかった。その黒田氏が退場し、葛西氏が病死し、安倍氏は暗殺、日銀は植田総裁の下でマイナス金利の解除を行い、異次元緩和政策を改めた。

 それまでに準備をしっかりやったために民間から反発は起きなかった。

 金融緩和はアベノミクスの「第一の矢」だったが、最初だけうまくいったようだ。が、いつまでも異次元の金融緩和でお金じゃぶじゃぶにしても、金融緩和一本やりでは、中小企業や地方には利益が回らず、労働者の賃金上昇にもつながらない。

富が低所得者層にも絞り落ちてくるというトリクルダウンは結局、起きなかった。何が起こったか、というと、格差が拡大し、一パーセントの富裕層が儲かる一方で、今日や明日の飯にも困る貧困層が増量した。

その結果、日本は『安い国』になり、22年から物価が上がり出し、インフレになったが、国家としてというより個人として貧しい日本人ばかりになってきている。

現在は、金融政策の出口である財政健全化の入り口である。一番と、頭をつかわなければならないのは政府である。

財政健全化はもちろん、税と社会保障の一体改革が正念場であるからだ。

予算要求時に各省庁が金額を明示しない事項要求が現在、多すぎる。なにかあったら経済対策と称して、巨額の補正予算だ。

安倍政権・安倍独裁の時には、政府と日銀はパラサイト(寄生)のような状態であった。あまりに日銀は政府の顔色を見過ぎていなかったか?

国際社会では、中央銀行の独立性が尊重されている。だが、日銀は安倍独裁の時代、政府の下請けのようになってはいなかっただろうか?

日銀と政府の共同声明も見直す必要がある。共同声明を英語で「アコード」という。

持続可能な賃上げ、インフレ後の成長戦略、おかしいと思ったら日銀にはどんどん現実に沿った軌道修正を求めたい。その上で、植田総裁には是非、成長戦略と新しい「資本主義」のルールつくりで頑張ってもらいたい。

異次元の金融緩和やアベノミクスには功だけでなく、罪も多かった。しかし、時代は変わった。黒田氏は辞職し、葛西氏は病死、安倍氏は暗殺―――――

もう言い訳も通用しない。これからが、本当の意味での、正念場、で、ある。




政治刷新改革「繰り返される「政治とカネ」」

    『小石河連合』で奇跡を起こせ!


政治資金パーティー制度が出来たのは1975年であり、その当時は企業献金から政治家個人への献金への転換を目指すものだった。だが、リクルート事件(1988年)の時に、社員数よりも多い枚数のパーティー券を購入するなどの悪用もみられた。これを受けて92年に100万円超(94年の改正で20万円超)の購入者は名前を公表するなどの改正で、落ち着いた。だが、99年の改正で政治家個人への献金が全面的に禁止になるとパーティーが増加した。政治家や献金したい企業には、パーティーは双方に都合がいい。赤字企業や外国人などの規制と違い、制限がない。公開基準も5万円超の寄付より甘い。政治家にとっても、パーティーの対価としてのパーティー券は売りやすい。

 94年に政党助成金制度が出来てから、献金も集まらなくなったが、パーティー券は献金の枠外ということで、便利だし、企業は献金と思っているが対価だが献金ではないという建前だ。

(『振出しに戻った自民党 政治刷新改革の主な流れ』「国民感覚とのズレをふかく反省」(1989)『自民党政治改革大綱決定』→(1992)『政治資金パーティーの規制強化』→(1994)『政党助成金導入』→(1998)『政治家個人への企業・団体献金禁止』→(2007)『国会議員が問われる政治団体の領収書原則公開』→(2009)『自民党下野』『党再生会議 自民党再生の提言』(敗因の分析)「国民感覚とのズレをふかく反省」→(2012)『政権復帰 長期政権(安倍独裁)』→(2019)『(森友・加計)「桜を見る会」問題』→(2023)『パーティー券裏金問題』→(2024)『政治刷新本部初会合』(池田議員・安倍派議員逮捕)(1月26日)『通常国会』→(3月)『予算成立』→(4月)『衆議院島根選挙区補選』→(9月)『政治刷新本部全体取りまとめ』『自民党総裁選挙』→(2025)(夏)『参議院選挙』(10月)『衆議院議員任期終了』……)

チェックする仕組みがないことが最大の問題だ。政治献金やパー券規制制度も、「泥棒に泥棒を捕まえさせるようなもの」であり、規制はすすまない。

 強制力を持ったチェック機関をつくるべきだ、というが実際につくるのは簡単ではない。

 政治献金の透明性の為に、収支報告書の原本を電子化し、ネット上に公開し、誰でも閲覧・チェックできるように――――――というが個人情報とかで〝のり弁状態〟になるだろう。

 政治とカネの問題は深刻で、リクルート事件以前から、「田中角栄が……云々」と口が酸っぱくなるほど言われてきた。その政治家は「政治にはカネがかかる」「後援会の維持費」「事務所の維持費」「選挙の費用」云々、なんたらかんたら――――言い訳ばかりだ。

(飲み会に政治資金は必要ない。ポケットマネーでやれ。政党助成金だけで間に合わせろ。助成金の上に裏金や献金では「泥棒に追い銭」だ)

(パーティー券の問題は、参加人数とは別に全員参加ではなく、参加以上の数の献金が集まること。企業は政党(本部、支部)、政治資金団体以外には寄付できない。派閥のような政治団体にはそのために寄付できない。だから、パーティー券を買い、それが事実上の派閥への企業献金になっているのだ)

2024年1月23日のことだが、自民党による政治刷新会議での『中間とりまとめ案』が発表された。【政治資金の透明性徹底】*政策集団の政治資金パーティー全面禁止*政策集団の収支報告に外部監査を義務づけ など。【派閥の解消と党のガバナンス強化】*「派閥」から脱却し、本来の政策集団に生まれ変わる。→お金と人事から完全に決別。*法令違反の場合、党が活動休止や解散を要求 など。(岸田派・安倍派・二階派・森山派の派閥は解散(麻生派・茂木派(平成研究会)(派閥は解散し、政策集団として存続)は協議中))

(【清和政策研究会(安倍派)98人】【派閥側】「在宅起訴」(会計責任者)

  【議員側】「逮捕」池田佳隆+秘書(衆議院)「在宅起訴」大野泰正+秘書(衆)

   「略式起訴」谷川弥一+秘書(元・衆議院議員・議員辞職)

【志師会(二階派)38人】【派閥側】「在宅起訴」(会計責任者)

   【議員側】「略式起訴」二階元・幹事長事務所(秘書)

【宏池政策研究会(岸田派)46人】【派閥側】「略式起訴」(元・会計責任者)

【麻生派56人】【茂木派53人】【森山派8人】【無派閥(菅氏・小泉氏・石破氏)79人】 

*派閥幹部は立件されず。

 個人献金は申告が5万円以上だが、パーティー券は20万円以上。しかも、記名は14%で、匿名が86%。これがブラックボックス化していた。

【改革案】*企業・団体献金の禁止*政治資金・パーティーの透明化*「連座制」の導入(議員も処分の党則改正)*政策交付金の廃止*政策活動費の廃止*第三者監査の導入)

(選挙制度の在り方・国会運営の在り方・官僚との距離感の在り方まで今後も改革努力を継続)(【政治家には3つの財布がある】『政党交付金(国民一人当たり250円の負担)』『献金(企業・団体・個人)』『パーティー収入』→(*政党支部*資金管理団体*後援会))

政治資金規正法自体が、いわゆる『ザル法』で、抜け道が大量にある。

まさに「泥棒を泥棒に捕まえさせるようなもの」であり、このままではまた第二第三の政治家不祥事・逮捕、が繰り返されるだけである。

 政治家も身を引き締める時期だ。

 自民党などによる『政治資金規正法改正案』が2024年6月19日に成立した。

 改正政治資金規正法でどうかわる?

『政治資金規正法』

〇「報告書の不記載」

(現状)議員の共謀がなければ会計責任者のみ記載

(改正)議員に監督責任(「確認書」の提出義務化など)

〇「パーティー券の購入」

(現状)「20万円超」で購入者氏名などを収支報告書に記載

(改正)公開基準を「5万円超」に

〇「政治活動費」

(現在)使い道の公開義務なし

(改正)政党や年月や項目で使途を報告。10年後に領収書や調査費を公開

『主な政治日程』

(2024年)

〇2024年6月20日 都知事選挙告示/23日 国会会期末/7月7日 都知事選投開票/9月末 自民党の総裁の任期満了/(2025年)/1月 通常国会召集/夏 参院選/10月30日 衆院議員の任期満了

「自民党総裁を上川陽子外相で」という声もあるが、自民党議員たちからは、「〝表紙〟を変えただけでは選挙に勝てない」とも。なら「岸田総裁・首相の続投」で泥をかぶってもらい、一年後に自民党人気の復活を! というのがとりあえずの自民党の戦略だ。

 派閥をなくすよりも、党議拘束をなくしたらいい。自由に議論させるのだ。

 若手だけでなく自民政治家がおとなしいのは何故だったのか? 逆らうと党の公認を得られなくなるからか?長い物には巻かれよ、と。雉も鳴かずば撃たれまい、と。出る杭は打たれる、と。

 昔の若手はバックに後藤田正晴さんがいて、「若手は自由にものを言え」と守ってくれた。

 自民党は2009年の下野後、民主党の大失敗で、2012年に政権復帰。安倍独裁長期政権を許してしまった。だが、それでも、今は、自由意見表明の壁、癌、である安倍晋三元首相が殺されていないのだ。暗黒の時代は去った。時代は変わったのである。

 それでも口を噤むのか?

 安倍さんが殺されたことはいいことだとは思わないが、もう『独裁後』である。

 ここで、立たなくて、いつ立つのか?

 

ーー日本国内では自民党の政治資金パーティーのキックバック問題で大騒ぎになっていますが。

池上 岸田総理にしてみれば、安倍派を一掃できるわけですから、絶好のチャンスでしょうね。例えば、逮捕までいかずとも略式起訴をして、罰金100万円という形で処理する可能性はあるわけです。すると過去の例で言うと、3年間から5年間の公民権停止。つまりこれから3年間は安倍派の幹部が選挙に出られず、国会から追放できるというわけですよ。もちろんその反面、岸田内閣の支持率は落ちるし、自民党全体の支持率も落ちます。でも、安倍派が力を失えば、やりたいようにできるわけです。

ーー諸刃の剣ですね。今後さらに内閣支持率は下がりそうです。

池上 はい、何しろ増税メガネですからね。元総理大臣の竹下登が政権を放り出す直前の支持率は5%ぐらいになりました。その時は消費税並みの支持率になったと言われました。

 (中訳)

池上 お金といえば、日銀の植田総裁が、2023年は3%ぐらい給料が上がったので、2024年の春の給料の上がり方を見て、金融緩和をやめるというか、マイナス金利、ゼロ金利をやめたわけです。昨年の12月19日には「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことでも注目を浴びました。植田総裁にとって「チャレンジング」と言えば、金融緩和をやめるということしかないわけですよ。投資家からすれば金利を上げようとしているとみたわけです。これまで日米の金利差によって、日本が円安になってきたけれど、この発言により「日米の金利差がこれから縮まるんじゃないか」と期待されて、いきなり円高になりました。今後も少しずつ、円安が解消されていくということになると思います。

ーーそうなると、少し景気がよくなりますか?

池上 景気はよくなる可能性がありますし、円安で物価高になっている部分には歯止めがかかる可能性もあります。今、スーパーマーケットに買い物に行くと、あれもこれも値上げでしょ。皆諦めの境地ですよ。今は全般に物の値上げがしやすくなっていますが、連動して社員の給料を上げるという好循環が起きつつあります。これで3月の春闘で大企業の給料が大幅に上がり、中小企業まで行き渡れば、これはかなり明るい話になります。為替も、春先には1ドル=130円くらいまで円高に進む可能性もある。そうなればゴールデンウイークの海外旅行も行きやすくなるかもしれませんよ。

ーー期待したいところです。ちょっとだけ明るい希望が持てました。

    (池上彰著作から引用)


最近、政治家の質が落ちまくっている。その結句、誕生したようなのが今の岸田政権であるとも言える。

「こいつ、馬鹿じゃないのか?」口の悪い弁護士が岸田政権や岸田首相のことをそうくさした。一方、去年、安倍晋三元首相を暗殺で失った自民党最大派閥の安倍派(清和研)と二階派は、〝寄らば大樹の陰〟の大樹を失ったために、『政治とカネ』の「醜聞」に襲われている。

 政治資金で裏金やキックバックを繰り返し、何億も脱税・申告漏れした、というのだ。

 岸田首相は財務省のいいなりになって、社会保障費や防衛費やあらゆるものの増税に次ぐ増税をするだけ。

 まるで、小泉フィーバー前の森喜朗政権にも似ている。それだけ岸田政権は酷い。

まあ、故・安倍晋三元首相の政権よりはまだマシであるが、安倍氏は本当に酷かった。安倍独裁というほどは、独裁色は強くはなかった。だが、それがいいとは思わないが暗殺されたというのはそれだけ憎んでいた相手が多すぎたのだ。

 ここで、日本の政界に期待があるとすれば、『シン・YKK(山崎拓・加藤紘一・小泉純一郎)』ともいうような『小石河連合(小泉進次郎・石破茂・河野太郎)』である。僕が、進次郎氏を所詮は『人寄せパンダ』と呼んだのは、浅はかで、謝罪するしかない。

進次郎さん。ごめんなさい。浅はかでした。どうか許してください。ご一緒に、『新世紀維新』をやりましょう!

でも、進次郎さんは〝これからの政治家〟だ。だが、しくじると、この連合の行動は第二の『加藤の乱』にしかならない。行動は慎重に。

 だが、石破茂(1957-)氏はどこまでも謙虚だ。

「自分が言うのも何だけど、俺は知名度がある。さらに政府の中枢にいるわけでもないから政権に対して批判的なことも言いやすい。そういう人に対しては結果的に人気は集まるよね」「いつまでも俺が目立つのはどうなんだろう。俺の新人時代の熱気を今の若手には感じない。いつの時代も世の中を変えるのは若い人なのに。こんなことを言うと『またカッコつけて』と言われるけどさ」「私に寄せられる意見は大きく二つ。『そんなに文句があるなら、自民党から出ていけ』『いっそ新党を作ればいい』。でもね、誰も内部で批判をしなくなった組織はいつか潰れるよ(ビッグモーターやジャニーズのように)」(石破茂氏談)

天王山は次期自民党総裁選挙である。ここで、最後の砦『小石河連合』が出派ってこなければ、石破氏か河野氏が新総裁にならねば(大した派閥も人脈もないのだから小泉純一郎パターンしか勝機はない)日本はおわってしまう。夢よもう一度、ではないが、よくよく戦略を練ることだ。進次郎氏の応援演説(真紀子さんのような。でもただの悪口でもないし、真紀子さんがまた外相とか……日本がおわってしまう)や、河野氏や石破氏のパフォーマンス。

それに、皆が知っている大物旗頭と、キャッチ―な大義名分と、有力なスポンサー……戦わずして勝つのが兵法の上策だが、政治で戦わないなどあり得ない。とにかく、『小石河連合』で、新世紀維新を起こせ!

次の自民党総裁選挙こそ、天王山、いや、関ケ原だ。今こそ、根性を、意地を、底力を、未来を、見せてくれ!



         国債(日本国の債務・借金)

        バブル期の世界一からの没落「安すぎる国・日本」


 日本の経済をどうみてらっしゃいますか?

 A氏は少し考えてから、

A「まず、国の財政が逼迫していることがあげられるでしょう。国全体の債務(借金)が一千兆円…もある。この膨大な赤字を返せるのか…?そこが問われているのです。あのアベノミクスというか安倍政権になったときにも…景気回復は駄目であった」

N「その一千兆円もの赤字を返すにはどういう方法があるのですか?」

A「日本にとって、いま必要なリストラとはバブル期に作った過剰な債務・過剰な設備・過剰な雇用を削減することです。これが先送りされてきたことが日本の経済成長を抑えた原因となっているんです。この三つの過剰が解消されれば日本経済は本来二%成長も可能です。いま日本では、構造改革が必要だ…といわれてますがこれは、国の「リストラ」と考えてください。日本に必要な構造改革のひとつは国の借金をはじめとする過去の腐った部分を処理するという取り組みです。これは「守りの改革」ですね。で、一方で「攻めの改革」も必要で、それは人材教育やIT教育や雇用創造です。中年のオヤジさんにとって、リストラは深刻です。この言葉は、解雇や給料カットなどと考えられますが、本来の意味はリストラクチャリング、つまり再構築という前向のものです」

N「では、なぜ急務なのでしょうか?」

A「これはいろいろ理由があるのですが、バブル崩壊後、資産の価値が下がったことがあげられます。GDP(国内総生産)は国民の生活の水準みたいなもので注目されます。

 GDPの伸び率を経済成長率といいますが、日本は八〇年代には年に四%成長していました。それが、九〇年に入って一%成長しかできなくなりました。でも、ここが重要なんですが、バブルのときに比べて、今のほうが三〇%豊かになっているんです。もちろん平均だから下がったひともいるけど、不況といわれながらバヴルのときより平均成長率が三〇%伸びてる。日本というのはすごい国ですよね。

 もちろん、世界はもっと経済成長をしていて、日本の給料や地価とか人件費や物価などは安いままだった。今、世界的なインフレで、原油価格や物価が急上昇していますが。

 日本はバブル期には世界一だった。世界の企業に、日本企業は数十社もランクインしていた。それが現在では五十七位のトヨタ一社だけです。

本来なら、日本は一年で二%から二・五%成長ができるはずなんです。では、なぜ二%成長ができないか?というと、当然ながら莫大な債務…つまり借金があるからなんです。いかに立派なプロジェクトがあろうと、巨大な借金を抱えていたら投資できませんよね?危なくて…。つまり、日本は今、そういう投資ができない融資ができない状態なんです。

 巨大な債務がある限り、成長率は戻りません。どんなに公共投資をしても、大幅な所得税減税をしても、国の借金があるかぎり成長は望めないのです。

 日本経済を再生させる方法はひとつしかありません。過大な国の借金を早く取り除くことです。日本の会社は国の借金を処理してきませんでした。処理すると会社がつぶれたり、損失が表にでたり、混乱が生じるからです。また、経営者の責任が問われる…。

『失われた三十年』は、経営者が責任をのがれるため国の借金を償却せず、政府がひたすら公共事業を続ける…かつての大蔵省も金融機関の債務を隠し通す…という三十年でした。今、国の借金を償却しなければ未来はありません。

 ですが、膨大な一○○〇兆円もの国家債務を一気に返せる訳はない。また、一気に返さなくてもいいのです。どうせ、日本人の個人金融資産は二一○○兆円ですし、日本企業の内部留保は五五〇兆円ですから。国富は四○○○兆円。でも、債務より国民の資金が上回っている場合ですから、それがもっともっと債務が膨らめば深刻な状態になりますよ。かつてのギリシャのような。

それと、バブル期にふくらんだ過大な雇用と設備の償却です。もし、成長率がこのまま一%なら、所得が二倍になるのに九〇年かかります。でも二%なら三十五年で所得が二倍になるのです。この差は大きい。

 成長率をとりもどすためにリストラが必要です。AI(人工知能)DX革命の雇用も必要。今、不況だ不況だ、といわれながら八社に一社は過去最高益をあげている会社があるということを知るべきです。まあ、でも景気回復というか日本人の個人金融資産は2100兆円もあり、日本企業の内部留保は550兆円で、タンス預金は74兆円。認知症のひとの保有資産も200兆円もあります。人手不足によることですが雇用問題も改善されつつあります。最悪の金融危機リーマンショックから数十年。コロナから数年……危機を脱した、というところです。」

N「失業についても深刻ですよね」

A「そう。失業は社会の不安を増大させる大問題です。加えて、経済学的にいえば、人材というかけがえのない資源を有効に使っていない状態であり、問題であります。日本企業は、これまで経済が落ち込むなかで雇用を維持してきたばかりか、労働者に対する配分を増やしてきました。しかし、これからは労働者に対する配分を抑えなくてはならない。

 労働組合は賃金を上げろ! というでしょう。確かに上げてこなかった。だが、少し上げておわり。これからもGDPが上がっても賃金はアップしないという可能性があります。

 また、ワークシェアで給料カットやサービス残業など増えるでしょうが、失業してしまうよりはマシです。では、どうすればいいか?これは秘策があります。

 たとえば、今、日本の個人金融資産は2100兆円あります。これはイギリスやフランスやドイツの個人金融資産を足した額より膨大です。この2100兆円の利回りをあげればいいのです。仮に、利回りが一%上がっただけで二十一兆円もの金が国民にもたらされます。三%あがれば六十三兆円。消費税の十七%に相当します」

N「他に、財政再建策はありますか?」

A「数年後にはどうなるのか?財政赤字は何%で、経済成長率は何%か?それを明確にしなければならない。

 日本政府は世界最大の借金を背負い込んだ。問題解決には、税率を引き上げるか、歳出をカットするしかない。今の政府はゼネコン救済のために公共事業をやり、まったく逆のことをしている。今後、債券市場は暴落する可能性もあり、そうなれば国債を発行している金融機関への影響は計り知れない。10年間ぐらい公共投資を控えるなどするしかない。ハイパーインフレとか令和の徳政令とか。都市部より地方が優先され、消費者より生産者が優遇される日本経済の実態を、都市部の人々は感じ始めている。近い将来、政府は本気で「構造改革」を断行するに違いない。それでも、景気が回復しても構造的な問題は解決しないだろう。」

N「問題なのは、財政赤字がこれだけ膨らんでも誰も困っていないということ。それには、貯蓄が高いことがあげられる。国、地方合わせた借金一千兆円(国民ひとりあたり550万円の借金)に対し2100兆円の民間貯蓄がある。しかし、貯蓄はどんどん下がる。8年か10年後、団塊の世代がまとめて貯蓄を取り崩すタイミングがある。誰も困ってないから世界最大の赤字があっても日本人はひょうひょうと生活している。

 借金と貯蓄のバランスが崩れれば、国債相場が値崩れする。つまり、低金利になる。そうなる…と人々が思った瞬間、金利が上がってデフレになって混乱に突入した。米国の株暴落と金融恐慌……明確なのは日本の人口は08年から減り始めたということ。人口が減少し始めてからでは財政再建はできない。今が再建の最後のチャンスなのだ。…と思うのですが」

A「その通り」

N「日本のように2100兆円(日本全体の個人金融資産が2100兆円ある。しかし、そのうちの実に56%が流動性の高い預貯金である。今のままの超低金利が続けば、そのうちの50~70兆円がドルに流れるだろう。現に今、記録的な劇的な円安である)もの膨大な個人資産があり、技術もあり、受け皿もあるところの景気は回復して当然なのだ。しかし、米国発の金融恐慌(リーマンショック当時)で物が売れなくなり特に車や住宅や家電が売れなくなりました。ウクライナ戦争やらで半導体などが足りなくなって、また世界的なインフレに物価高に原油高など悲惨ですが」

A「悲惨ですね」

N「話しはかわりますが、昔、外形標準課税って東京都知事が前にやりましたけど、なんですか?」

A「外形標準課税っていうのはですね、利潤のあるなしに関わらずにその地方の行政サービスを受けていることの対価として支払う地方税です。課税対象を売上高にするのか、人数にするのか議論はありますが、この外形標準課税は三十五年前から議論されてきました。でも、政府も誰もやらなかった。そこで石原慎太郎都知事(当時・故人)がガンとやった。皆、拍手もん。 でも、実際にはビックバン後、銀行はリストラをやってますよ。それに銀行だけに課税するなんていうのは一種のリンチです。そして、銀行税は結局、預金者が払うことになるだけです。結局、政治なんですよ。(都は裁判で負けている)」

N「金融ビックバン(当時)は、日本の金融市場を国際的に開かれた自由で公正なものにする大改革でしたよね?」

A「そうです。その目的は、2100兆円の利回りを高くして国民生活を豊かにすることですね。現在、2100兆円の五十%は預貯金にかたよっています。それを市場にださせればすぐ景気は回復し、国民に利益が生まれます。しかし、利回りを高く…といいましたが、そうなると低金利でなんとかもっていた過大な債務を抱えた企業がバタバタと潰れます。ですから、すぐに運用利回りをあげれない。パニックになりますから。

 いずれにしても、2100兆円の五十%が預貯金に偏っているのは異常です。金融ビックバン(当時)やアベノミクス(当時)や新しい資本主義はそうした過大な資産の運用利潤を上げることなんです。金融…というのは経済で金を融通すること。今まではハイ・リスク、ハイリターンな国債やデリバティブしかなかったものが、投資信託や新NISAなどの金融商品が出てきている。これが成果なんです。

 でも、預金ってローリスク、ローリターンですよね?でも、まだ日本人は投資信託には余り興味がないようです。投資信託というのは、個別に人々から小額の資金を集め、それをファンド・マネージャーという専門の投資家が株などに運用して、利潤を投資家にもどすという商品です。これがまだ理解されてないのです。また。ノンバンクなんかもわかられてないんじゃないかな。ノンバンクとは「銀行でない金融機関」です。銀行なら預金で資金を集められますが、ノンバンクはそれができません。でも、社債という形で資金を集めます。これも新規の金融商品です」




「日本凋落の根本原因」


 その前に、「まちづくりの課題 人口減少時代の再構築」というテーマについて、少し触れてみたい。東京秋葉原などで、古い雑居ビルを壊して、そこに高層ビルを建てて再開発をする、というようなプランがいろいろな地方の主要都市の駅前とかでも進められている。

 その事業の是非云々は触れないが、建築コストは爆上がりなのに、オフィス需要は減少している。まあ、少子高齢化とリモート化と人口減少時代、ということである。

 地方で、東京と同じことをすれば確実に失敗する。だが、そういう地方の為政者や役人は、どこかの地方でうまくいった施策をひたすら猿真似するだけである。

 雑居ビルを潰して、高層ビルを建てるとか以前に、もっと〝面〟で考えねばならない。

 地方で子育て世代を呼び込みたいなら、空き家をリノベーションして安く貸し出し、保育園や学校を増やして、教育システムを魅力的にするとか。老後の富裕層のひとを呼び込むなら、病院を増やし、ライドシュアやオンデマンドバスなどで交通を四方八方に結びつけ、移動を自由にさせる、とか。

 馬鹿程、『ハコもの施設』を新しくつくれば人が呼べて、経済が活性化すると思い込む。

 米沢市の前の市長は、まさにそれで、貴重な市の積立金をすべて無駄遣いし、市立図書館、市立病院、市役所、と無駄に新しくした。その結果、人口が増えた訳でもないし、馬鹿みたいに施設の建築をしたので地元のゼネコンに仕事が出来た――――程度である。

 そのようなことで市がよくなるわけはないのに、馬鹿だからわからない。

 結局、米沢市は財政危機自治体になっただけ。

 馬鹿は死なねば治らない、でしかない。


日本が経済的に凋落した根本原因は何か?

 それは2つあって、ひとつは日本の人口が一億数千万人ということ。つまり、国内だけでの商売でも十分に成り立つマーケットであったが故に、国内だけで世界に通用するような国際市場でも通用する商品や商売にコミット(関与)してこなかったこと。その為に、日本は国際競争力を失ってしまった。

 もうひとつが、ITの巨大企業GAFA(Google、Apple、Facebook(現・Meta)、Amazon)(*「日本版(7人の侍)」①トヨタ(自動車)②スバル(自動車)③三菱商事(商社)④SCREEN(半導体)⑤DISCO(半導体)⑥TEL(東京エレクトーン)(半導体)⑦ADVANTEST(半導体)*「アメリカ版(7人の侍)」(『Magnificent(マグニフィセント)7』)(アップル・アルファベット(グーグル)・マイクロソフト・アマゾン・メタ(フェイスブック)・テスラ・エヌビディア))のような規模の企業が、日本国にはこの三十年出てこなかったということ。

 その結果として、日本企業は国際競争力を失ってしまった。

 今は答えのない時代である。

 昔の工業化社会なら、商品は、値段が安いけども、より高性能に、より小さく、より薄く、より軽く、より便利に、よりデザインがかっこよく、すれば売れた。

 だが、今はそんな時代じゃない。

〝見えない大陸〟であり、ニッチなニーズを拾い、賢く動いて売らなければ売れないのだ。

 例えば、日本の電子レンジは高性能で、様々な機能がついている。だが、韓国の電子レンジはボタンが二個だけ。そんなにいろいろな機能はついていない。

 だが、それでも韓国の電子レンジは売れる。

 何故か? 機能が少ない分、安価で買えるから。

 そういうニーズを拾う努力をしなければ売れない時代なのだ。

 また、中国で、日本の洗濯機が「すぐに壊れる」とクレームが続出した。よくよく調べてみると、中国の農村部では洗濯機でジャガイモを洗っていたことがわかった。

「そりゃ壊れるよ」と日本人は苦笑するかも知れない。が、そこがニーズである。

 クレームの裏にニーズがある。

したり顔で、「クレームだけなら誰にでも言えるんですよね」といきがっている場合じゃない。クレームの裏がニーズだ。

案の定、日本メーカーが手をこまねいている間に、中国の家電大手のハイアール社がじゃがいもを洗う専用の洗濯機を発売した。メガヒットになったという。

何でも、戦略次第である。

頭を使えないくせに、したり顔だけの人間では駄目なのだ。

「日本人の給料が下がり続ける根本原因」も、今までデフレスパイラルであったことに加えて、そういう戦略的な人間が日本人にはかなり少ない、という人材不足がある。

 確かに、高学歴なだけなら、英会話マシーンとか、そういう人間ならいるが。

 人間は学歴じゃなく、学力であるということ。

 高学歴なら何でもできる訳ではない。

 小説とかビジネスとか改革案とかスピーチとかアイディアとか、高学歴など関係ない。

 もう少し、日本人にも戦略とはどういうものか? 理解してほしい。

 だが、高学歴を至宝のように大事に考えている以上、そういう理解は無理難題というものだ。今風に言えば、無理ゲー、でしかない。



N「日本の政治家は『財政投融資(財投)』のアメをなめまくって現状維持しようとしているということをきいたことがあるんですが」

N「それはかなりの昔の話ですよね。小泉改革の郵政民営化とか、その時代の経済の話ですよ。小泉純一郎首相(当時)とか、竹中平蔵、みたいな(笑)……『財投』というのは財政投融債のことで、全体で340兆円以上。この預金はすべて財務省に集められ、財務から赤字続きの国鉄清算…や国有林野や住都、道路公団…などといった公団にまわされていた。この公団は官僚の天下り先でした。それが温存されていた。行革は骨抜きにされたのでした。まあ、郵政民営化で郵政の資産(財投)は民間に流れたのですが。と、同時に米国の保険会社がきた(笑)(財投銀(主な投資計画(2024年から2年間)*国内の半導体や蓄電池→1500億円以上*スタートアップ企業の革新技術への投資→1000億円以上*脱炭素の再エネ分野→1500億円以上))

 国際経済や経済も非常に目まぐるしく変わった。ビックバンや規制撤廃の後に10年と苦しんだアメリカやイギリスなどは経済が非常にうまくいった。日本は不景気で苦しんでいた。そしてGoogleやAppleやAmazonやフェイスブックなどの世界企業が活躍し、今はAIやIOTやDXや自動運転とか、スマホのアプリとか綺麗ごとのSDGsとか………なんかすごいことになっています。

インターネット・オブ・シングスというすべてがインターネットにつながる社会になった。でも、二十数年前のインターネットなんて動画とか表示するのに一件四分もかかっていました。今は一秒です。携帯電話もすべてスマートフォンです。ガラケーなどもう古い(笑)

 だが、教育の失敗に代表される「闇バイト・青少年による殺人事件」「おやじ狩り(強盗)」「パパ活・援助交際(売春)」「テロ」…「東京市場空洞化」「少子化」「高齢化」「IT(情報通信技術)やDX対応への遅れ」「いじめ自殺」…。日本はこのままでは沈む一方です。」

N「日本は、本当に魅力のない国になった?」

A「いいえ。日本から外国にいった旅行者は1670万人。しかし、日本にくる旅行者は2000万人。観光地としては人気です。ただ、留学地としても魅力がない。留学生らは日本にはめったにこず、アメリカやヨーロッパなどにいく。日本で学んでも何の役にもたたないし、物価は安いしコストもかかりませんが役に立たない、いいことがひとつもないからです。外国の資産家が日本に別荘を……などというのもまったくない。日本で働き発展途上国に仕送り……というのはありますけどね。世界第四位の隠れ移民大国・日本です。航空や船舶の寄港数も年々減少している。前述した通り、コストはかからないが、役に立たないので割に合わないからです。また、日本は情報発信能力にも欠ける。例えば、ファッション・ショーを東京で開いても、世界には伝わらない。しかし、一端パリで開けば、世界中のファッション雑誌に載る。音楽でも学者論文でも絵でも、日本で発表しても世界にはまったく伝わらない。やるだけムダなのです。

 日本の経済の実体はデュアル・エコノミー(二重経済)。つまり、一〇%ほどの世界的に通用する産業(トヨタやソニー、松下など。それから技術のある中小優良企業)と九〇%にもおよぶ何ひとつ世界に通用しない林業に代表されるような産業…補助金づけで甘やかされてきた産業(農林水産や証券や金融、ゼネコン、サービスなど)の二重構造…これが日本経済の実体だ。六〇年から九〇年とまったく変わってない。

 バブル経済のときは日本企業は世界一であった。だが、「失われた三十年」で、安い国・安すぎる国になった。給料も上がらず、物価も最近は上昇だが、今まではデフレで安いまま。外国では昼のランチ代が三千~四千円くらいだが、日本では八百~千円程度。

 ひたすら安い国になった。

だから、一気に規制を撤廃とか大幅緩和してしまうと九〇%の弱い弱い産業はどんどんツぶれていき、失業率もうなぎ登りになるに違いない。だが、もちろん規制緩和や構造改革は必要で、我慢しなくてはならないのですが…。」

N「だが、そうしたことには必ず反発が起こるものです。失業率が5%からふた桁にいく時、どんなパラダイム・シフトが日本にやってくるか……恐ろしい限り。おそらく、犯罪率激増、ホームレスのバッコ、青少年犯罪……などなどもっと増えるのは間違いない。

 先の金融恐慌リーマンショックでも失業者が何十万人も首を切られて路頭を彷徨った。

 また、この国は世界でも希な「高齢化」「少子化」社会を迎えようとしている。

 高齢化は高齢者が増えて、高齢者需要がふえることを意味する。しかし、「少子化」とは子供が減り、若者が減り、生産人口が激減することをいう。一般的に出生率が二・〇八%ぐらいなければ人口の長期的維持は難しいという。それが日本の出生率は一・数%だ。

これは恐ろしい数字である。俗に「林業七〇歳、農業六〇歳、小売り五〇、工場四〇、OL三〇、フリーター二〇…」という訳で、それに生産人口減少で人口が増えず、それらに10才ずつ足すと、憂欝なことになる。」

A「「高齢化や少子化の対策として女性をもっと雇うべきだ!」などという意見もある。これなどは一見もっともらしいが、まったく違う。日本の女性の有職率は52%と、世界で最も高い。これ以上「女性を雇え!」となったら、考えられるのはただひとつ。出産後の四〇才前後のパートタイマーをフルタイムで…ということだけだ。それに最近の晩婚化、出産後の勤務継続を考えると、非常に憂欝なことになりそうだ。」

N「また、日本にはちゃんとしたアントレプレナー(起業家)もでてこない?」

A「いえ。それは違う。日本の若者にはひどいのもいっぱいいるけど、優秀な人物も多いのです。楽天とかZOZO(2019年9月12日、ヤフーが4000億円でZOZOを買収・前澤友作社長は退任)とかメルカリとかソフトバンクとかサイバーエージェンシーとか……しかし、そうしたひとが会社に入ると日本では潰される」

N「若いな、君はなにもわかってないよ、って(笑)」

A「そう。個性や創造性を潰される。わかってないのはお前じゃないのか?!

 ホリエモンみたいなやつもいるけど……。ZOZOの前澤社長は今太閤というか……現在の豊臣秀吉というか…猿面冠者で(笑)

 なぜ世界が「シン・マネー革命・経済サヴァイバル」モードになったのかを考えていくと、割と単純だ。90年までの世界では、世界的に競争している資本主義経済の中にいる人というのはだいたい二七億人だった。あとのひとは壁の向うにいた訳だ。もちろんソ連も向こう側だった。ところが冷戦構造が終わった。軍事的に…というよりもその人たちが同じマーケットにはいってきた。ソ連がロシアになって市場経済になり、東欧も市場経済になる。アジアでも13億人の中国やベトナムが入ってきた。そして、今、地球の市場経済人口は六十億人までなった。二倍以上増えた訳だ。これはチャンスなんです。マーケットが広がった訳だから。で、世界中で競争が激化して、「経済サヴァイバル」モードになった。

 人口が二倍になってマーケットも増えたということは、それだけ競争も激しくなる。それを我々は避けては生きられない。じゃあ、我々のコミュニティ、共同体のあり方を考えるうえで、今まで日本は競争をしてきたのか?という自問自答をしなければならない。

 日本は間違いなく市場経済の国であり、民主主義の国であるから、プルラリズム(多元主義)の国だったはずなんだけど、一部そうではないところがあった。」

N「コメなどの農作物と金融ですね?」

A「そう。日本金融は、いわゆる護送船団方式でプルラリズムじゃなかった。

 銀行員はいまでも多額のサラリーをもらい、多額のボーナスをもらっている。競争といえば、いかに待ち時間を短くするかだけだった(笑)…。でも、ロボットやAIやキャッシュレス社会やDX・仮想通貨やらで、窓口業務もリストラする銀行もでてきた。いっぽう、政府の規制がなくて自助努力だけでやっているところはいいものが出てくる。自動車産業などだった。

 英語で「コンペティティブ(競争的な)」と「コンピタント(有能な)」というのがあって、コンペティティブとは一歩抜け出すということ。一方、コンピタントというのが自分の力でやっていくということでこれが求められるのです。

 一九世紀の資本主義というのは徹底的に競争した結果すごく貧富の差が拡大して、その反動としてまた労働組合運動が過激化するという失敗を招いている。二十世紀に入って一九二〇年までを「変革の時代」というように、その期間に「独占禁止法」ができ、労働組合の権利が認められるようになった。」

N「そして、二十一世紀…新たな問題が持ち上がっている。その典型が、デジタル通貨です。昔でいうなら、アジアの資本移動ですね。外国の資本が自由にタイに流れ、インドネシアに流れ、マレーシアに流れたから八〇年代以降のアジアの奇跡が起こった。ところが一端ダメになるとその反動はすごい。すごい勢いでそれらの国から資本が逃げ出すんです。その逃げ足はすごく早い。」

A「その制度をなんとかしようといった人がいます。ノーベル賞をとったトービン(故人)です。このエール大学教授は、「トービン・タックス」と称して、国際的な取り引きには税金をかけたうえで自由にやらせたらいいんだ、と言ったのです。そうすれば逃げ足も鈍るだろうと。

 チリとタイでも同じ事をやったのです。たとえば外国人がバンコクの銀行にお金を預けようとすると、ふつうより高い率の準備預金というものを積まなきゃいけない。その積んでおく比率を高くした。預金の一部をリザーブしておかなければならないのです。こういう形で、外国人がバンコクでバーツ建ての通貨を持とうというとき、少し余分にお金がかかるシステムにしたのです」

N「そういうのは普通は国際的にいっせいにやらなきゃならない。しかし、案は日本からは出てこないんですよね。いつも出てくるのはアメリカか欧州で、日本は賛成か反対かいうだけ。

 ガット・ウルグアイラウンド(現・WTO)が始まったのは八六年。九三年にコメ輸入自由化で合意した。その間、貿易のシステムをどうするか?という案がアメリカからは一〇〇も二〇〇も出ている。欧州からも五〇でている。しかし、日本からはゼロなんです。ゼロ。また世界の富はわずか1%のひとに集中しています。世界の富豪の8人の資産と世界の24億人の資産が天秤で同じなんです。」

A「アメリカは学者が政府の中に入ってるから案もでてくる。しかし、日本の場合は役人の利害関係で調整されるだけなんです。結局、政治なんですよ。

 日本には国際会議で(官僚の作文棒読みでなく)まともに議論できる大物政治家はいない。本当に残念なことです。」

N「その通り。今は、それ以上の流動性のあるデジタル通貨ですよ。スマホ決済とかデジタル通貨で、国境も時間も空間もすべて超えてくる」

A「今の日本国民の所得は、バヴルのピークの頃にくらべて一〇%上がっている。GDPにして五〇〇兆円、1000兆円の資産を失った国の所得水準があがっているのです。

 不況だったのが問題ではなく、何もしないのが問題だった。韓国でもタイでもインドネシアでも危機の時は所得水準が二割くらい下げてる。しかし、日本は上がっている。これだけ資産を失っても所得水準があがるのは珍しいことです。言い換えれば、それだけ経済力がある。体力がある…ということです。不況でも、お金も人材もある。

 何もしてないから、資産デフレになった、ということです。ちがいますか?」

N「そう。…不況、不況、とはいえ餓死者がでる訳ではなかった。一部で、最近は餓死とか女性の貧困とか出てきているけど。それは不幸だが、何もしないことが問題だったのです。とにもかくにも、日本人は経済や国際情勢を知らな過ぎる。知らないから勉強しようとする人間もいるが、くだらんマンガをむさぼり読んで終ってしまう。

 それではいけない!

 日本は規制緩和を急ぎ、アジアの牽引車にならなくてはならない。…日本の経済低迷を、一種のシャーデン・フロイデ(敵の没落を喜ぶ心理)で見ていた欧米も、「やっぱり日本に頑張ってもらわないとアジアはダメだ!」と言っている。

 確かに、日本がこのまま経済的に沈めば、世界へのダメージは計り知れない。今の日本の経済は思わしくないが、是非とも政治家や官僚には頑張ってほしいと思います」

A「まったくその通りですあなたは若いのによくわかってらっしゃる」

N「いいえ。勉強したことを喋っているだけです…」

A「ご謙遜を」

N「…ところで、日本の景気についてどう思われますか? 金融恐慌後に好景気になった、安倍さんのおかげだ、といわれてますが? 安倍さんは殺されてしまいましたが」

A「市場原理にまかせる、ということと政治家のリーダーシップでしょう」

N「……では、今、日本の政治家に求められていることはなんですか?」

A「まず、「対立軸」の明確化ということです。混迷の日本国社会をどのような社会にしていくかの基本論こそ必要だ」

N「対立軸とはどのような?」

A「第一は「大きな政府かちいさな政府か」、という対立であり、第二は「成長志向か環境志向か」ということである。第一は「高福祉・高負担か、低福祉・低負担か」ということ。要するに「富」の分配と、社会制度の改革である。第二は成長しつづけて国土をコンクリートだらけにするか、それとも環境を考えて「ゼロ成長でもいいから」環境にコミットしていくということです」

N「そのふたつの案は日本政府から出てきませんよね?」

A「そう。まったく出てこない。ただ、成長しよう成長しようといってるだけです」

N「改革なくして景気回復なし! とか(笑)アベノミクス! とか(笑)新しい資本主義とか。抵抗勢力は…公共事業で景気を回復させようとしている」

A「まったく、その通り。ケインズの景気対策(公共投資、財投、民間需要)を今でも通用すると思っている。ばからしい」

N「景気対策を追及するか、それとも消費拡大には限界があるとして「財政再建」という目標を優先するかの選択でしょ? 要は」

A「そう。さらなる成長志向は未来へのツケを累積させるばかりで、問題の先送りでしかない。景気が回復しても赤字が解消する訳ではない。消費回復には、将来への不安を解消しなければ2100兆円は動かない」

N「景気が最悪期ですが、生産や設備投資はまだまだですね。政府はAI(人工知能)やIT・DX・BtoC・BtoB(情報技術)が持続的に発展し、雇用をつくりだす…などといってますが」

A「ITで雇用が生まれるのは事実です。景気はよくなりつつありますよ。歴史的な円安で、日本の輸出企業は大儲けしてますから。現に、AT&Tが大量にリストラをした時、デル・コンピュータがその失業した「優秀な人材」を20万人も獲得できた」

N「しかし、日本ではまだそうした大きな受け皿がない」

A「その通り。ミス・マッチも影響してくるのですが、とにかく受け皿がない。政府は不確実な将来については何もいわず、希望を持て! などといってるだけです。AIやロボット時代だって受け皿はあるんですね」

N「ミス・マッチってなんのことですか?」

A「これは雇用における「供給と需要」のミス・マッチのことです。今、失業者がいますが、求人はあるんです。特にコンピュータ関連などで。でも、コンピュータを扱える失業者が少ない。そこで会社側の需要と失業者の供給にミス・マッチがある…ということです。だから、ITバウチャー(切符)などを発行して〝お金のないひとでも〟パソコンの技術を習得できる社会を作っていかないといけない、と、そういうことです」

N「なるほど」




        アベクロ路線からの脱却

        普通の少子高齢化対策で十分効果はある


 長い間、日本銀行(日銀)の総裁として、故・安倍晋三元首相とともに低金利政策を指導してきたクロトンこと黒田東彦総裁が退任し、経済学者としての新総裁である植田氏が就任した。実務派というではなく、学者で、実体経済を知らず、学問としての知識しかない。

 それで大丈夫か? という気もするが、多分、大丈夫だろう。

 まずは、今までのお金じゃぶじゃぶのアベノミクスからの脱却、であろう。

 実際に、アベノミクスは何もうまくいかなかった。

 お金じゃぶじゃぶにして、低金利にしても、大前先生が『低欲望社会』という通りに、欲望もなく、「将来が不安だ」と日本人はひたすら貯蓄に励むだけだ。

 その結果が、日本人の個人金融資産が2100兆円。企業の内部留保が560兆円――――

 ということなのだ。

 日本人は「備えあれば憂いなし」「石橋を叩いて渡る」ということなのだ。

 だが、それも否定できない生き方だ。

 リーマンショックのときやコロナのとき、蓄えや企業の内部留保があったので、助かったひとや企業が続出した。困っても、誰も助けてはくれない。

 例えば、ボランティアでユニセフに寄付しても、自分が困窮した時にユニセフが救済してくれる訳ではない。ユニセフはもらうだけ。最後は自分次第なのである。

 天は自ら助くる者を助く、ということだ。

 自分しかあてにならない。

 だから、貯蓄だけではなく投資や浪費などで経済を回せ、といったところで無駄だ。

 誰も無駄遣いなどしないものだ。

 だが、策はある。

 そして、それは中学生レベルの簡単な策謀でもある。

 金利を上げるのだ。

 誰も投資や消費に使わないなら、金利を上げればいい。

 一パーセント上げただけで、個人金融資産が2100兆円なら約21兆円が国民に渡ることになる。その分なら、投資や消費に回すひとも出てくるに違いないのだ。

 まさにあぶく銭でも21兆円―――――これが消費や投資に回る。これで景気回復どころか好景気モードに驀進である。

 何でも戦略次第である。

 このような策こそ、大事であり、植田日銀総裁はこれで「黒田路線からの脱却」を完成できる。まさに、これこそ景気対策だ。

但し、むろん、金利を上げれば潰れる企業も出てくる。しかし、それは致し方がない。

 資本主義とは、退場するべき企業には退場・潰れてもらって、新陳代謝で、その分を新しい企業に受け継ぐ……そういう倒産と起業のシーソーゲームこそが、資本主義のダイナミズムというものだ。潰れるところは潰し、新しく生まれる企業はそれも自由にやらせる。

 そうでなくて、何が資本主義なのか?

 本来潰れるべき企業を守るのは間違っている。

少子化対策だって、多くの有識者や政治家や官僚は、「普通の少子化対策」では役に立たない、という。だが、そんなことはない。フランスやデンマークやスウェーデンでの『少子化対策』が日本国内でもきちんとすれば役に立つ。

特別な戦略やスキーム(枠組み)などいらない。

極普通の少子化対策で、いいはずなのだ。どこでも子供を作るのや、子育てだったり、シングルマザー問題だったりや女性の貧困―――――その問題に国境はない。

同じ女性の問題、同じ子供の問題、同じ家庭の問題、である。

詳しくは後述するので、策謀は参照してもらいたい。

なにも「異次元の少子化対策」とかいう意味不明の戦略でなくとも、「普通の少子化対策」であれば欧米での策を日本版にすればいいだけだ。

 気負うな。冷静になれ。少子化に〝特殊性〟はいらない。



         改革の成果が出るまで十年はかかる



  日本人の賃金が上がらない原因に、以下の四つがあるという。

 ひとつは、生産性の壁。

 日本はブルーカラー労働者(工場などでの生産労働など)の生産性の向上には力を入れてきた。だが、ホワイトカラーでいえば全然ダメだという。

 結論も出ない議論を毎日続け、営業などで留守の部下の代わりに課長が電話対応をする。

 それで、「○○さんから電話があったよ」という。給与の高いマネジャーが誰でもできる電話番をしている国など、日本だけだろう。

 生産性を上げるとは、例えば今まで十人でやっていたことを五人でやれば生産性は50%上がった、ということ。日本というのは工場労働などでは厳しく管理するのに、それがホワイトカラーの場合になると、急に甘くなる。アイディアもないのに、ルールだからと会議を毎朝やってしまう。無駄である。だが、当の本人たちは無駄だ、と思ってもいない。

 次に、DXの問題。日本にはDXに詳しい人材が乏しい。

 IT人材というと、パソコンやスマホが操れる人材と思いがちだが、その程度で〝人材〟とは片腹痛い。じゃあ、最近の若者でスマホやパソコンは操れるが『電話応対が出来ない』のでも〝人材〟なのか? そんな電話対応も出来ないのが入社など「会社が潰れる」(笑)

 文句を言ってないで、電話応対くらい何万回もシュミレーションして出来るようになれ。

 電話も出来ない輩などどこでも使えない。どこでもクビになる。

 コミュ障どころの話じゃない。まったく使えない。〝人材〟どころか〝会社員〟でさえない。電話も繋げられず、どうやって働くのだ? 一生涯、工場労働か?

 IT人材やDX人材というなら、プログラムが組めるだけではなく、その分野の戦略や計画も出来るのを〝人材〟という。スマホやパソコンなど今の時代、ほぼ誰でも操れる。

 次に、英会話の問題。日本人の一番の問題がこれ。

 英会話が出来ない。外国人と英語で話せない。ビジネス英語ではなく、日常会話英語が。

 コールセンターだけでなく、日本人自体が、英語が駄目だから、海外市場の開拓どころではない。これでは二十一世紀の仕事にならない。使えない。

次に、雇用契約の問題。つまり、日本の会社ではすぐに解雇することは出来ないのが問題。

 まあ、社内いじめで、精神疾患にして辞めるように仕向ける作戦もあるようだが(笑)

 その手だと、後で、訴えられたり、いじめを苦に自殺したら裁判沙汰になったりする……

 すぐに解雇できない為に、退職者と新入社員の新陳代謝がよくない。

 だが、これも慎重にしないと、日本で大リストラを奨励したら、もっと酷いことになる。

 アメリカで上手くいっているからと、日本で上手くいくか、はまったく別の問題だ。

 小泉・竹中改革路線での『製造業での派遣社員』と同じ状態になる。

 首切りを奨励するということは、派遣切りを奨励することと一緒だ。


     大学十兆円ファンドの無駄遣い


 日本政府が、今度は、日本国内の大学に最大十兆円を投資して経済発展につなげていくのだという。わかりやすく言えば「経済科学立国の夢よ、もう一度」という。

 ノーベル賞を取れるような人材を発掘しよう、というものらしい。

 だが、今どき、ノーベル賞の価値などほとんどない。

 日本人もノーベル賞を取っているが、お金になったのは中村修二氏の青色発光ダイオード(LED)と、本庶佑(ほんじょ・たすく)氏のがん免疫治療薬オプジーボなど数少ない。

 中国は、ノーベル賞は科学研究では一人だけだが、特許の数は日本の数倍である。

 すでに、ユニコーン企業、デカコーン企業も多数存在している。

 大学に大金を投入するのも策としてはありだが、それよりも外国の一流の教授や匠を招聘したほうがいい。今でもやっているけれど、ギャラが少なすぎる。

 MITやケンブリッジとかの名物教授を、一年で一億円―――それを十人で十年。それで富国の支援になるなら安いものだ。人間は戦略次第だが、教育次第でもある。

 芸は身を助く、学問は身を助く、だ。

 特に、ITやDX人材を育てる教育こそ大事だ。

 この国にどれだけの人材やホワイトハッカーがいるのか? それが答えである。

 そして、教育だけでなく、技術者や起業家と資本家・投資家との『出会い』こそ大事だ。

 その場が、日本国にどれだけあるのか? それも答えだ。



   やらなくていいことをやめられないのは、そこに『利権』があるから。


 すべて『利権』がらみの問題だと思う。

 2025年に大阪の夢洲(ゆめしま)で大阪万博が開催されるが、有識者や研究者が口をそろえるのは「絶対にペイしない。儲からない」ということである。

 今まで、大阪では三回万博が開催された。確かに、1970年の大阪万博は盛り上がった。だが、それはディズニーリゾートさえない時代である。

 1990年には花博と称してまたも大阪で万博が開催されたが、まったく盛り上がらなかった。多分、夢洲での万博が開催されても、日本人はユニバーサルスタジオジャパン(USJ)に行くだけではないか? 明らかに失敗するのが火を見るよりも明らか、である。

 だが、IR(公営カジノの誘致)にしても失敗するのが大体予想できるのに中止にできないのは今が答えのない時代である、と政治家も官僚もわかっていないからだ。

 答えのない時代に、答えを見つけようとすると過去の成功体験に拘ることになる。

 そして、そこには『利権』があり、簡単にやめることが出来ない。

「もう工事を始めているし……」と、損切りもできないし、利権も守りたくなる。

 今の時代、万博もIRも儲からない事業である。

 師の大前先生は、IRが儲からなくなったのは中国のハイローラー(超高額の博打金を賭ける大金持ち)を当時の習近平政権が粛清したからだ、という。

 儲からないのが、失敗するのがわかっていて、やめられないのは利権を守るためである。

 それは『花粉症対策』でも同じことである。

 日本人の花粉症の羅漢率は40%と、物凄いことになっているが、誰も政府も対策を打たない。何故か? そこに利権があるからである。

 花粉症であれば、まずは医者。花粉症での患者という顧客の確保である。そして、製薬メーカー。花粉症の薬の販売の儲け――――――胃腸炎の特効薬はもうあるようだが、花粉症の特効薬はまだない。花粉症で死んだりしないが、患者に大量の薬を処方し、製薬会社と医者のウィンウィンな関係がないと困る、ということ。

 まずは、2025年の大阪万博の開催中止、これが一番望ましい。

 絶対に、夢洲での万博は失敗する。まだそれほど金をかけていない今こそ、〝損切り〟で、開催中止にして馬鹿なことはやめることだ。

 利権があるから、なかなか思うようにいかないかも知れないが、国民が中止を望めばいいのだ。原発に反対するだけでなく、夢洲での万博も反対してほしい。

 それこそが原発停止なんかより大事なことである。




 アメリカや英国、ニュージーランドやスウェーデンなどのアングロサクソン経済が、大規模な規制撤廃、規制緩和で、経済がメチャクチャなに状況になって、その経済が回復して二十一世紀に対応できるような体系になるまで十年かかった。その結果、ユナイテッドや英国航空、アメリカンをはじめ航空は世界一の企業になり、情報通信も、製薬も、大変な競争力をもった。だが、それまで十年かかった。

 だから日本の経済危機の不況の完全回復も同じように改革から十年はかかると思う。

 それまでは、失業率の上昇(今は、雇用は増加しているがAIなどの最新技術で失業者も増えるのは確実)、中小企業と金融機関の倒産増加、犯罪率上昇と治安の悪化、デフレーション、ホームレスの増加、民間設備投資の冷え込み、株価低迷、デジタル・デバイド……非常に我慢が必要になる。しかも、日本の場合は、超高齢化、超少子化、などといったものもあり、かなり憂欝なことになりそうだ。

O「そう。…なぜ、アメリカや英国、ニュージーランドやスウェーデンなどのアングロサクソン経済が、大規模な規制撤廃、規制緩和を断行できたか?といえば、ちゃんとしたリーダーがいたからだ。アメリカにはオバマ、レーガンが、イギリスにはサッチャーが、ニュージーランドにはロンギ首相とダグラス蔵相がいた。この数十年間ほど、アングロサクソン経済はどういうものであったか?

一つに、経済が停滞し、失業率も高かった。日本やドイツ、スイスなどが官製の繁栄を桜花している時には、敗北感というより恨みのような感情まであり、あたかも「日本がアメリカを支配する」などといわれたりもした。TVカメラの前で、東芝のステレオやトヨタの車をハンマーでたたき壊す…などといったパフォーマンスは当たり前であった。

 それが今では日本は没落し、世界は日本より経済が進んだ。日本は安すぎる国になった。

二つに、労働組合が強く、政治的なたれ流しがつづいた。

三つに、政府が巨大化し、むしろ北欧や日本、ドイツ、スイスに対して敗北感さえあった。四つに、通貨が他のOECD(経済協力開発機構)諸国より弱くなっていた。

 こうしたことは今でも残っているが、なんといってもアメリカや英国、ニュージーランドやスウェーデンなどのアングロサクソン経済はこの間にドラステックな改革を行った。 

大規模な規制撤廃、規制緩和をなぜ断行できたか?といえば、ちゃんとしたリーダーがいたからだ。アメリカにはレーガンが、イギリスにはサッチャーが、ニュージーランドにはロンギ首相とダグラス蔵相がいた。突如として国家のリストラや規制緩和を行った。結果として、規制緩和には痛みが最初にともなうもので、失業率がウナギのぼりになった。 アメリカでは8%、NZでは11%までいった。世界がキリギリスの日本をほめる一方で大変経済的に苦しかった。そのため不満が爆発し、「改革の父」「改革の母」のレーガンやサッチャー、ロンギらは失脚した。

 アメリカやイギリスの企業は世界に進出していった」

N「まさに寓話『アリとキリギリス』だ(笑)

(アメリカでは、地域によって、金融、航空、通信の企業が大活躍している。北太平洋、北西部、シリコンバレー…などの田舎が発展した)

(イギリスでは知的集約産業(薬品、化学、ソフトウエア)、ロンドン金融機関、情報産業(ロイター、フィナンシャル・タイムズ、エコノミスト)、通信(BT、C&W、マーキュリー)や英国航空(BA)などが世界的な競争力を持った)ロンドンへの一極集中もなくなった。ニュージーランドもアジア地域一発展していた。しかし、トランプ氏の登場で米国はまた滅茶苦茶なことになろうとしている(笑)」

O「また、アイルランドはインターネットによって、アメリカ企業を大量に呼び込み、25万人の雇用をつくり、マイクロソフトの開発部門もダブリンやシャノンに進出したりもした。十年で大活躍だ。それにくらべて、日本はどうであったか?一部、トヨタやソニーや、パナソニック、本田技研工業などは世界にでていっているが、ほとんどの日本企業も金融も世界的な競争力などまったくない。これからもない。教育が失敗しているので、ベンチャーだの、IT革命(ITバヴルは崩壊し、パソコンは家電となりIBMは中国にいった)、などといってもコンテンツ(中身)がダメだから…第二の松下幸之助や本田宗一郎や稲盛和夫は、絶対に生まれない。これからの日本は、ひたすら憂欝なことになりそうだ」




第一章 金融危機・リーマンショックから数十年 コロナから数年。

世界インフレからの回復



         金融危機・リーマンショックから数十年『ウィズ・コロナ』


       安すぎる国になった日本。世界のランチ代は二千~三千円



 国内にいると気付かないのですが、海外に出ると「あれ?」って思うことがありませんか?

 そう。「値段が高くなったなあ」と感じるのです。バブルの時には海外に行くと「安い」と思っていたが、現在、海外に行くとその逆になってしまった。

 世界では、この三十円で物価も給料も上がっていた。だが、日本は物価も給料も上がらずのままで、デフレで安いままであった。その結果として、世界との差が開いたのです。

 

低価格のレストランでの食事(106の国・地域。1ドル=130.5円で計算(2022年))

 一位 スイス 3309円。二位 ノルウェー 2613円。三位 アイルランド 2491円。四位 デンマーク 2337円。…七位 イギリス 2099円。…十五位 アメリカ 1958円。

…二十七位 ドイツ 1388円。…四十八位 日本 900円。

 

コーヒー一杯の値段(1ドル=130.6円で計算(2022年))

 デンマーク コペンハーゲン 764円。アメリカ ニューヨーク 651円。

 スイス ベルン 639円。香港 625円。ノルウェー オスロ 611円。

 中国 北京 605円。フランス パリ 523円。シンガポール 523円。

 イギリス ロンドン 523円。韓国 ソウル 512円。日本 東京 484円。


ビッグマック指数(ビッグマック価格(54の国・地域)1ドル=137.87円で計算。(2022年)) 

 一位 スイス 925円。二位 ノルウェー 864円。三位 ウルグアイ 839円。

 四位 スウェーデン 771。五位。カナダ 724円。六位 アメリカ 710円。…

 十四位 イギリス 612円。三十一位 中国 490円。三十二位 韓国 483円。

 三十三位 タイ 482円。四十一位 日本 390円。

 (日本)2000年「五位」→2022年7月「四十一位」


ランチ・マンション価格・平均年収の比較(出典:OECD(2022年))

 日本(ランチ)900円(70m2のマンション)約9000万円(平均年収)424万円

 韓国(“)約820円(”)約2億円(“)462万円

 ドイツ(“)約1400円(”)約1億2000万年(“)591万円

 アメリカ(“)約2000円(”)約1億3000万円(“)763万円

  (食費2割・仕事の経費1割・マイホーム3割……)


 「デフレスパイラルとは?」

① 企業が儲からない

② 給料が上がらない

③ お金を使わない

④ 売れないから値上げできない

これが螺旋階段(スパイラル)のように続くこと。

 人件費の安い日本は、人材が海外に流出するピンチでもある。

 GDP比で、世界第二位だった(一位はアメリカ合衆国・約3億3200万人)日本(約1億2500万人)は2017年に中国(約14億1200万人)に抜かれ三位に、更に2023年にドイツ(約8300万人)に抜かれて四位に、2026年にはインド(約14億人・イギリスは約6700万人)に抜かれる予定だ。

「でも、国でのGDP比はそうでも、日本人の一人当たりのGDPはまだまだ世界一でしょ?」というのは感覚が古い。いまや、日本人の個人のGDP比は28位(2021年度)でしかない。日本のIT人材(20代)の平均年収は413万円、アメリカは1023万円である。

 さらに、日本のアニメーターの平均月収は約19万円。中国では約52万円である。

 今は「日本の強みがアニメーション・漫画などのサブカルチャー」というが、これからは日本ではなく中国になるかも。日本人が中国の下請けになる日も近い。

 まさに、没落。陽はまた昇る―――――――――のであろうか?

 少なくとも、今のままではどうしようもない、としか言えない。



  ふたたびO氏にお話しをきいた。

 金融危機や不況の原因は、過大な債務と設備、雇用であった。しかし、詳しいことは後述しよう。それより、アメリカやイギリスなどのアングロサクソン経済はどういうものか?

O「アメリカやイギリスなどのアングロサクソン経済の強さは、1つに、正直な経済で隠しごとがない。日本と違って「情報開示(ディスクロージャー)」がしっかりしている。 2つに、規制緩和で、通信、金融、航空などを発展させた。ボーダレス化では、国境をまたぐのは情報、金、人(と企業)であるから、これらの部門の自由化は効果大だ。トランプ氏の『自国第一主義』『報復関税』『貿易戦争』はいずれ破綻する。やり方が幼稚であり、損をするのはアメリカ人自身である。

 (2023年の11月まで、バイデン大統領(当時)とトランプ候補(当時)の選挙はどうなるかわからないとも言われた。だが、イスラエルとハマスの戦争で、イスラエルの支援をしていたバイデン大統領について、Z世代と呼ばれる層がさすがに一般市民が大量に被害にあっているシーンを観て、拒絶感を深めている。といってもZ世代は絶対にトランプには投票しないが、バイデンへの投票を棄権する可能性が高い。こうなると、トランプ支持者の岩盤支持者は前回と同じだけ票を入れる訳だから、もうトランプ氏の再選で決まりである。また、ドナルド・トランプ氏が米国大統領になるのだ。そうなると、米国のウクライナ支援は〝打ち切り〟で、ウクライナは敗戦。ロシアのプーチン大統領の勝利、となる。その前に、アメリカ大統領選挙の前でも、兵器の爆弾や兵士の供給不足(ウクライナ側は8万人の戦死者。負傷者も含めると20万人。ロシア側は戦死者はもっと多いが、ロシアの人口ならまだまだ兵力がウクライナの数十倍ある)でウクライナの敗戦が決まるかも知れない。トランプ氏がまた大統領になったら、ウクライナ敗戦+NATO離脱+在韓米軍撤退+台湾を守らない……そういう絶望の未来になる)

日本が、アングロサクソン経済が経験したような規制緩和による激痛に耐えられるか?10年間耐えられるか?血を流しながら出口をみつけて国民を引っ張っていけるようなリーダーが(ハッタリでなく)現れるか?

 オバマ、レーガン、サッチャー、ロンギに共通しているのは、リーダーシップ、経済の素人、向こう見ず、ビジョンを語るのがうまい、誠実で、金を溜め込んで着服して私腹をこらしているように見えない、ということだ。

 中曽根首相(当時・故人)は、日本電電(NTT)と国鉄(JR)などの規制緩和と民営化をおこなったが、それだけで終わった。中曽根に、サッチャーやロンギのような才能があったら、日本は今のような悲惨な状況にはならなかったはずだ。中曽根は規制緩和をすすめようとしたが、官僚たちに阻まれ、遂に二つの団体の民営化だけでおわった。(+たばこ公社)その時のツケを、日本人は払わされているのだ」

M「今の日本の政治家は、その中曽根の置き土産をハイエナのように貪っているだけだ。小泉の郵政民営化も安倍晋三のアベノミクスも同じようなものだった。それにしても……無駄が多い」




         規制緩和への反発



 規制緩和にはかならず痛みがともない、反発がともなう。「コメ自由化反対!」などといって、コメ農家が政府や自由化賛成派、賛成派ジャーナリストらにテロやデモを仕掛けたのは記憶に新しい。

 私も「コメ自由化賛成派」だったのだが、それが近所のコメ農家に知れると、悪質なイヤがらせを仕掛けられたものです(笑)。今は、もう「コメがどうの……」とかとは違う次元の経済になってしまいましたね。TPPとかQUADとか。中国の『一帯一路構想』とか失敗になったようですが(笑)

O「そうしたことは金融でも、官僚でも、サービスでも商店でも見られる。もう廃止になったが、大店法などその象徴のようなものだったろう。「自分の店の近くに大きな店ができると困る。売れなくなる」などといった手前勝手な理由で、大店法をもちだして大型の店舗を阻止して、消費者の消費や選択の自由を永く奪ってきたのだ。「自分の店の近くに大きな店ができると困る。売れなくなる」などといった手前勝手な理由で…。そのくせ、補助金までもらっていた。オポーチュニズム(ご都合主義)とはこういうのをいう。

 イギリスのサッチャー首相(当時)がビッグバンを行った時、野党からは「弱体化した銀行がバタバタとつぶれ、外資に乗っ取られる!」という意見が次々に出た。

 サッチャー首相(当時)はその反対意見に対して、こう言い放った。

「ここが自由市場である限り、シティ(ロンドン金融市場)の繁栄は続く。また、外資を入れても、銀行まで外国に持っていかれることはない」

 はたして、イタリアもドイツも、日本も、アメリカも、いまやロンドンにおいて為替を支援し、株を売買し、起債している。ロンドンが世界の市場と化し、そこに人や金、情報が集まって、周辺には巨大金融産業が立地している。ベアリング社がコケようが、ロイズが傾こうが、ロンドンは大丈夫なのだ。だが、ブレグジット……つまり、イギリスのEU離脱は馬鹿でした。移民とか経済難民とか、色々な訳はあったのでしょうが。経済が大打撃ですし。イギリスが再び経済を好循環にするにはEUへの再加盟しかない。それしか救われる道はないし、そういうことが賢いイギリス人がわからないはずはない」

N「移民とか……そうしたことが日本でもできないものか?いえないものか?そこが不思議で、疑問でもある。日本の次の道は①移民の受け入れ(人口激減対策。アメリカのグリーンカード制度のようなものをつくる)②莫大な資金を活かして海外に移住する(タイが一番治安もよくて水も合う)。日本の政治家やエコノミストは何かというと、ダイエー、長銀のや移民受け入れの議論時にわかったように「金融恐慌になる」「日本金融機関が崩壊すれば1000万人規模の失業者が…」などといって事情もよくわからない国民を脅す。そして、公的資金(税金)を導入しようとするだけ。ベアリング社は一ディーラーのために倒産した。イングランド銀行もあえて、「みせしめ」のために救済しなかった。〝リスク管理を怠ればツぶれるのだ〟という教訓を与えた。サッチャーのおかげで「英国の名門会社を守れ!」などといったバカげた意見はでなかった。世界がこの三十年間で何を学んできたか?それは、

 〝リスク管理を怠ればツぶれるのだ〟

 という教訓である。日本の政治家も官僚も、それがわかっちゃいない!〝リスク管理を怠ればツぶれるのだ〟ということを日本の金融機関にわからせるためにはウミを出す意味で、ツぶれるべき銀行はツブすべきなのだ。大事なのは、預金者の預金と、企業への貸し付け金さえ守ればいいのだ。それさえ守れば、あとはツぶれる銀行やノン・バンクはつぶせばいい。特に、農協系など守る必要もない…守る価値もない。一番最初につぶすべきところだ」

O「とにかく、日本の金融機関に必要なのは、〝リスク管理を怠ればツぶれるのだ〟

 という教訓である。それを忘れないでほしい」




     今話題の『ソロ活』と〝戦後経営の神様〟稲盛和夫氏

       「日本を変えたい」至誠が民主党政権を生んだ


 今は何でもソロ、つまり、ひとりでの活動『ソロ活』の時代であるという。

 ひとり焼肉やひとりリムジン、ひとりキャンプにひとりディズニーにひとりUSJ……

 マス・マーケティングより、パーソナライゼーション(個人主義)――――

 何よりも日本人は孤独を好むかのような個人ソロ・ブームである。

 だが、所詮は個人の消費活動であり、それが景気回復にすぐに繋がるか? といえば甚だ疑問符がつく。ひきこもりが数百万人いるらしいが、それで結婚しなかったり子供もつくらなかったりするのか。

まあ、著者も独身で子なしだが。これは私の場合は若い頃に、結婚もしないし子供も作らない、と覚悟を決めたからであり、ブームに乗った訳ではない。これは立志だ。

 それにしても2022年8月24日に亡くなった〝戦後経営の神様〟稲盛和夫氏は本当に立派な経済人であった。亡くなったのが90歳でだから大往生な訳だが。

 私はあまり人脈がよろしくないので、生前とかに交流とかなく、また『一太郎三ピン』と呼ばれた大評論家の長谷川慶太郎氏(一太郎・故人)、三ピンの竹村健一氏(故人)、堺屋太一氏(故人)、渡部昇一(故人)または大前研一氏とも何のつながりもない。

 大前先生は師匠であるが、私が勝手に心の師匠だと決めているだけで、実は面識がない。

 まあ、あったところで、私は「話がつまらない」ので結局、退屈させるだけだろう。

 あわないほうが無難である。

 それにしても、亡くなった稲盛和夫氏は、本来なら日本の財界のトップにも立てるような人材であった。だが、大前先生によると、地方の大学卒(熊本大学)の稲盛さんは東大卒ぞろいの経団連や財界からいじめられてパージ(粛清)されたのだとか。

 東大を出ていなければ駄目――――とは、どこかの東大卒ハーバード卒の26歳の高学歴市長のような(笑)。まだ、将来性は未知数だが、高学歴だから選ばれるだけでは……まるで元・官僚の候補者(しかも課長にさえなっていない元・ひら官僚)のような(笑)。

 日本人は他人を学歴でしか判断できないのか?

 稲盛さんが生前に支援していたのが政治家の小沢一郎氏であり、稲盛さんの支援が実り民主党政権(当時)が誕生した。だが、数十年に一度の東日本大震災に見舞われて、官僚に意地悪されて、民主党政権としては〝泣きっ面に蜂〟であった。

 民主党政権(当時)があれだけ失敗したので、安倍晋三みたいな輩の独裁を許す結果になった。そういう意味では日本人全員の不幸、でもあった。


N「脳天気なTVのニュースキャスターは「国民の個人金融資産は2100兆円もあるのだから、国民の皆さんは安心して使ってください」などというが、将来や老後に不安がある限り、国民の個人金融資産2100兆円は絶対に動かない。それさえもわかってない」

O「あるいはもっと恥ずかしいことが起こるかも知れない。

 つまり、アメリカの司法当局(証券取引委員会・SEC、連邦検査局・FBI)などが動いて、日本の金融機関の連中をつぎつぎに逮捕して、パージ(粛清)していくかも知れない。もしくは、証券やUSTRなどが土足で日本に「内政干渉」してくるかも知れない。

 安倍派の政治家の続々逮捕とかは、粛清の嵐の前触れ、ではないのか?

 しかし、冷静に考えよう。

 第一次産業革命は、日本に「加工貿易立国」というすばらしい手段を与えてくれた。だが、第一次産業革命のトップになったからといって、次の第二次産業革命のトップになれるとは限らない。これからの第二次産業革命(電気・自動車)第三次産業革命(コンピュータ・トランジスタ)第四次産業革命(IT・AI・DX)(IT革命、ITバヴルは弾けた)は、情報通信やインターネットで、情報も、金も、商品も、企業も、国境をまたぎ、関税をすりぬけ、やってくる。GAFA(Google、Apple、Facebook(現・Meta)、Amazon)の勢いはすごい。

 企業そのものが世界中を行き来する社会なのだ。例えば、インドのバンガロールに汎用プログラムをつくらせ、インターネットで岡山におくって、岡山の田舎でPS用ゲームにしあげ、東京のソニー本社に発信して商品化……などといったことも考えられる。

 第四次産業革命(IT・AI・DX革命)は、英語を共通語とし、国家や組織より、個人が主体となる。北海道の根室にいながらコンピュータ・ネットワークでアイルランドにつなげて、衣料などをDHL(国際宅急便)で届けてもらう…などといったことも可能である。それが仮に沖縄であろうと、台湾の片隅であろうと、通信網か衛星があるかぎり同じことだ。もちろん有害なアダルト・ポルノ画像なども国境をこえてやってくる。日本ではモザイクのかかる「性器」でさえ、モザイクもかからない状態で画像がはいってくる。もちろん、それ目的でコンピュータ・ネットワークを始めるような愚は避けてほしい。

 青年がそうした女性の裸や「性器」をみたい……という気持ちはわかるのだが、そうしたものをみる目的だけで(あるいはゲーム目的だけで)コンピュータをはじめてもツマらない。すぐにあきてしまうだろう。おそらく「こんなグロテスクなものだったのか…」で終りだろう。

現在の若者は一日中スマホとにらめっこし、ゲームやインスタやLINEをやっているだけ。

〝生産性〟〝創造性〟が存在しない」

N「コンピュータ通信にはいろいろな種類があるのだが、いちがいにどれがよくどれが悪いとはいえない。ただ、先生がいったような仕様目的だけでは国際人とはなれない。

 第四次産業革命(IT・AI・DX革命)は、英語を共通語とし、国家や組織より、個人が主体となる。はじめに、個人ありき……なのだ。だから、時代においていかれないためにも英語、そしてコンピュータ語(マシン語でなく、OS等の基本プログラム言語でよい)や通信ツールや方法などを学ぶべきであろう。

それで、第二のビル・ゲイツになれるかどうか…は知らないが。

とにかく自分に役にたつと思ったら、コンピュータや通信ツール(携帯やデジタル家電)などを買うべきだ。そして、その知識を身につけるべきであろう」

O「そう。そうでなければ、第四次産業革命(IT・AI・DX革命)には生き残れないように、時代は進化しているのだ。そんな中、日本の旧人らは、「学歴」に拘るのみだ。パソコンやスマホさえ操れない。若者は電話やコミュニケーションも出来ない。これでは日本の未来はひたすら暗い、といわざるえない」

N「話はかわりますが、輸出入や円高・国際化について教えてください」

O「はい。日本は一九八〇年代に入って、急に国際化といいはじめました。それまで『外国部』となっていた会社の部署も、この頃から『国際部』と名称がかわります。

 日本は間違いなく貿易立国です。でも輸出入のGDPに占める比率は以外と高いんです。コメとかあるから関税を高くして鎖国しているイメージですが、ほとんど関税など掛けないですでに『開国済み』です。アメリカも同じくらい。でも、ドイツやフランスでは三十%くらいで、香港は100%をおそらく越えるでしょう。つまり、GDPに対する輸出の比率は人口できまるのです。人口が多くて国内マーケットができあがっているところは、必然的に国外とのかかわりが小さくなります。

 でも、日本の場合、そうもいきません。石油エネルギーを輸入しなければ生きていけないのです。エネルギー資源は絶対に輸入しなければなりません。となると、買うためにはある程度の外貨も必要であり、ある程度の輸出もしなければ生きてゆけません。

 日本という国は経済規模が大きくとも、昔から外国に目をむけてました。エネルギーがないためです。秀吉が朝鮮を攻めたのも、日本軍がアジアを侵略したのもエネルギー確保のためでした。とはいえ、国際輸出化は以外と最近で、八〇年代前半からです。

 その時代は、アメリカのレーガノミックスがうまくいき、ドル高円安が実現しました。こうなると日本からの輸出に有利だ…と、海外輸出の『海外事業部』などができる訳です。

 また、最近ではバヴル期のとき日本人が海外でブランド品を買い漁ったり、ロックフェラー・ビルやゴッホの絵を買い捲ったというのも記憶に新しいですね」

N「アグリーでしたね」

O「まったく。……今日のグローバル社会では、物だけでなく、金も人材も移動します。たとえば、トヨタの車は日本でも米国でも同じ〝物〟です。しかし、資金や人は違います。

車なら船にのせて外国まで運んでいかなければなりませんが、金は瞬時に移動します。

人も飛行機などで短期間に国を行き来します。優秀な人材なら、米国でもフランスでも日本でも中国でもやっていけます。こういうひとを国際人といいますよね。

 また、グローバル社会では国と国の制度が同じじゃなきゃダメですよね? 規格とか国際ルールとか法律とか刑法とか物の値段とか…これは絶対に統一すべきです。でも、今はキャッシュレス社会で、すべてカード決済・スマホ決済です。眼の虹彩認証やカラダにICチップを埋め込むとか。レジも自動で決済するとか。もう現金だけではないんですね、時代的に。仮想通貨とか。でも、日本が鎖国状態……とか大嘘です。もう開国済み、ですよ」

N「日本の地価下落はどうですか?」

O「バブルが崩壊して日本の地価が下がりましたが、これはグローバリゼーションの一環だと思います。日本の土地がなぜ高かったのかといえば、土地が狭いことと土地が有効に使われてなかったということです。バブル経済の時はね。でも、今は世界の地価のほうが高い。日本は安すぎる国になったということ。いずれにしても土地に対する需要が高かった。しかし、日本の地価が高くて圧迫感があるなら、会社を韓国なり北京なり香港、シンガポールなりに移せばよかったのです。どこかの国に会社を移して通信で補えばよかったのです。また、農業が自由化されたら日本の農業はやっていけないわけではない。兼業でも補助金とかおいしい利権がありますから。でも、農地が大量に売られたら、地価はもっと下がります。これもグローバリゼーションの一環だと思います。つまり、もう日本は安すぎる国だから、観光と下請けの時代のフェーズに入った、ということらしいです」



         危機の再来



  日本の不況の原因はいろいろあるが、バブル期の過大な債務、設備投資、雇用だったように思う。だが、現在の「失われた三十年」の日本国の不況の根本原因は①少子高齢化②給料が上がらない③企業が儲からない、である。日本の金融機関の評価の下落は、もっている担保の不動産価格(国の借金価格)の下落が原因であるが、そこで露呈されたのは、日本金融機関の予信能力の欠如だった。

公共投資はどうですか?ムダが多いといわれてますが…。

O「公共投資は国民の生活の資するインフラの整備ということですが、最近「ムダが多い」といわれています。それは、政府が財政の長期政策をたててなかった為です。

 その結果、東京湾アクアラインや、無駄なコンサートホールが、雨後の筍のように日本中にいっぱいできました。不況といわれた一九九〇年から十年に公共投資と称して予算が一〇〇兆円使われています。2021年の第二回東京オリンピックもそんなに儲からなかった。

 にもかかわらず、道路も狭いし、いつも混んでるし、空港は遠いし…という不満が国民にあります。それは、公共投資がムダなところに使われているからです。誰も通らない林道や田んぼの真ん中の贅沢なオペラ・ハウス、農道空港…。日本中、ムダなものだらけ。 また、日本の場合、建設費が高いということがあります。

 これだけ巨額な公共投資がされているのにもかかわらず、公共投資は今も増えています。それは、公共投資が『景気回復策』と考えているためです。国民もそれを期待しています。 で、期待感に便乗して、建設業者の仕事をなくさないために、族議員がバラマキを続けています。また、問題だったのは各省が勝手にやる公共投資を制御するシステムがなかったってこともありますね」

N「外圧もありましたよね?」

O「一九八〇年代から九〇年代にかけて、巨額の経常収支の黒字を抱えていたってこともあります。経常黒字を抱えていたことで、海外から貿易黒字を減らすために内需拡大を要求されました。アメリカから公共投資を増やせと圧力があった時期もあり、役に立つたたないは別として公共事業を増やしました。現在は『アメリカの暴れん坊将軍』トランプ大統領の「いいがかり」とか(笑)2024年の大統領選挙で復活が確実らしいので、また世界はあのひとに振り回され続けることになります。

 問題は、公共投資によってこれまでのように役にたたない社会資本をつくっても国民の誰もうれしくないことです。バブル崩壊後、多くの企業が従業員を減らし、また企業数も減ってます。ところが建設業社だけは、気がついてみると五〇万社以上になっています。ここで日本の雇用者の約一〇%を占めてます。湯水の如く税金を投入していたため淘汰されなかったのです。でも、これだけ巨額の財政赤字を抱えているともうこういうこともできなくなります。潰れる企業は潰して新陳代謝を計るのが資本主義の鉄則ですよ」

N「だが、かならずしも暴落がパニックになる訳ではない。80~90年代にかけて、世界の金融機関はひっくりかえった。ただ、暴落はしたけれどパニックになったところはひとつもない。アメリカ、イギリス、スウェーデン、ニュージランド…いずれも暴落ないしそれに近い形の為替市場の大乱高下からの暴落にみまわれたが、パニックになった国は一つもなかった。日本も、暴落したらパニックにならないように策を練っておく必要がある。

でももちろん08年からの金融恐慌で米国はパニックになり世界もパニックになった。

 それから数年。またコロナもあった。世界はインフレになり、それでも景気は回復基調であり、ついこの前までの暗闇の大不況、という状態ではなくなった」

O「だが、スウェーデン式金融支援策はうまくいかなかったよね?なぜだと思います?」

N「やはり、スウェーデンというのは小さな国だったってことだと思います。たかだか7000万人の人口でしょ?日本は1億2000万人もいるんだから、スウェーデンでうまくいっても日本でうまくいかなかったのは道理です。先進国で人口が1億以上という国はアメリカと日本しかない。しかも、どちらも超経済大国です。

 スウェーデンのような国でうまくいったからといって日本でうまくいくとは限らないってことですよね?」

O「まぁ、そうだね」

N「為替についてはどうですか?」

O「う~ん。為替ね。……為替レートっていうのがありますね?」

N「はい」

O「為替レートっていうのは、その国の通貨建ての資産に対する需要と供給で決まります。日本の株式、債券、現金などは円建ての資産ですが、これを持ちたい人が増えれば円の価値が高くなり、米ドル建ての資産を持ちたい人が増えれば米ドルの価値が高くなります。 この需要と供給を動かす要因、つまり為替レートを決定する要因には、物価水準や経常収支などさまざまなものがあります。

 われわれの資産っていうのは必ずどこかの国の通貨で計算します。たとえば日本に土地をもっているなら通常、円建てで計算されます。一方、われわれはドル建てやポンド建ての資産をもつこともできます。外貨預金はそのひとつです。あるいは、ドルやポンドやユーロの現金(キャッシュ)をもっていれば、それはドルかポンドかユーロ建ての資産です」N「そうですね」

O「円をもっているひとが、ドルに交換したいという場合、その交換比率が為替レートな訳です。では、為替レートはなにで決まるのでしょうか?」

N「それぞれの資産に対する需要と供給ですか?」

O「そうです。円建ての資産を持ちたい人が増えれば円の価値が高くなり、米ドル建ての資産を持ちたい人が増えれば米ドルの価値が高くなります。しかし、需要と供給で決まる…といってもそれを決める要素はたくさんあります。大雑把にいえば、長期的には物価水準で決まります。たとえば、ある物を日本で買ったとき何円か、アメリカで買ったときに何ドルか?…で、比較してレートが決まる訳です。単純にいえば。例えば、ある物がアメリカでは二ドルで、日本では三〇〇円で買えるとします。すると、比率は二対三〇〇で、つまり一ドル一五〇円になるわけです。本当はもっと複雑なんですけどね」

N「為替の変動って予想できますか?」

O「出来ませんね。地震予知と同じです。たとえ、明日は一ドル何円だ、といっても、もしその予想で円が高けりゃ皆ドルを売って円を買うでしょ?するともう予想は外れますよね?要は、その時の需要と供給によって為替レートはきまるってことですよ。

 赤字を大量に抱えている国の通貨で資産を持ちたくない。アメリカの金利が高くて米ドルを持ちたい……ということで今、円安になっているってことです。今は仮想通貨の時代ですがね。AI(人工知能)やロボットや自動運転無人車とか。」



         日本は個別種目で金メダル



 鉄鋼や自動車(再編や合併がすすんでいた)やコンピュータや家電やカメラやゲーム機など日本には強い産業が多かった。あとはセラミック関係や家電用半導体などだった。だが、半導体では台湾企業が独走状態。架電やコンピュータなどもほとんど今は中国や韓国製品になった。(半導体の八割は台湾のTSMC社であり、それを米国企業のインテルと韓国のサムスンが追随しているところだ。新型コロナやロシアのウクライナ侵攻などでの半導体不足で、世界は三十兆円の損失を出した。今やパソコン・スマホだけでなく自動車もデジタル機器にはほぼすべてに半導体が搭載されている。だが、すべて台湾頼りでは危険とした世界は、政治主導で、台湾のTSMC社はアメリカの現地に半導体大規模工場を、インテルはアイルランドに欧州の大規模半導体工場を建設した。グローバリズムでも、「(半導体の)サプライチェーンが台湾一極集中では危険」という政治判断でもあった。日本の北海道にも台湾メーカーTSMCの半導体工場が出来るという。まさに世界は石油以上の戦略物資・半導体をめぐる『半導体ウォーズ』の様相を呈している)日本は「ロボット大国」などといわれているが、そのほとんどはアメリカ製の焼き直しである。コスト競争もあると思うが、断トツの1位という訳でもない。

 電子関係でもLenovoやTI、インテルなどあなどれない会社は多い。そうですよね?

O「そう。医薬品でいうと、日本は抗生物質のような発酵をベースとした薬やアミメ酸の技術など強いところもあるが、大半の医薬品については日本はまだまだ技術輸入国である。アメリカ技術に手も足も出ないのが実情。その他の産業はダメなところの方が目立つ。

 ソフトウエアにしても、エンジニアの数は日米が同じくらいなのに、マイクロソフトやAppleやAmazonやGoogleなどに手も足もでない。でも、日本って開発や発明はダメだけど製造技術は世界一の技術をもっています。でも、

 日本の産業は、デュアル・エコノミーであり、日本は「個別種目で金メダル」を取っているにすぎないのだ。その他の水産や金融やサービス、農業など弱すぎるくらい弱い。だから、あまり日本の技術を過信してはいけないと思う。もう、中国の企業にさえ日本企業は勝てませんしね。中国が〝コピー商品〟をつくっていた時代はもう懐かしいというか(笑)」



          リストラと二元構造


 ソニーや日産や東芝は1万6000人リストラしましたが、評価は?

O「日本では衝撃的に受け止められていたが、米国にいた私からいわせると「え?1万6000人削減?」と笑い話になるだろう。ああいうのは「ダウンサイジング」といわない」

N「ダウン・サイジング?」

O「再構築ってことです。AT&Tは5万人を1ケ月で削減した」

N「でも、日本では受け皿がないでしょう。米国ではIBMが20万人削減して、その優秀なエンジニアをデル・コンピューターが獲得した。日本にはそんな受け皿がない。あのパナソニック(松下)やソニーやトヨタもリストラで何万人も首をきったが、受け皿がない」

O「成長企業が育ってないからだ。米国では新しくうまれたハイテク企業のうちほとんどが倒産する。だが、最も成功したベンチャー企業の多くが3度目の挑戦だった。要は、いかに諦めずに努力するか…です。日本人はすぐ楽なほうに逃げ込む。挑戦をなかなかしない。その結果、ベンチャーをやる人を日本人は「変人」扱いするのです。ホリエモン、前澤社長、秋元康、柳井正、孫正義、三木谷氏……」

N「話題をかえまして。……ところで、日本はデュアル・エコノミーだと思うのですが詳しく分析するとどうなりますか?」

O「デュアル・エコノミーというのは二元経済構造のことです。バヴル崩壊後、日本経済がどうして成長しないのか?それが二元経済構造にある………と、マッキンゼーがいっています」

N「マッキンゼー?」

O「マッキンゼーとはマッキンゼー・グローバル・インスティテュートという世界的な経営コンサルタル会社のことです。それによると、日本は公的セクターの関与の強いグループの生産性が著しく低く、停滞していると指摘してます。国際競争にさらされ、生産性の高い自動車、家電、鉄鋼、工作機械などのセクターは雇用で日本経済の10%を占めるにすぎない。ほかの90%は、生産性の乏しいドメスティック(内部的)な製造業およびサービス・セクターである…ということです」

N「つまり、日本経済は10%の優秀な大企業で持っていて、他の90%は便乗組だと?」

O「まぁ、はっきりいうとそうです。ただ、大企業…例えばソニーやシャープだけがいいっていうんじゃなくて、中小企業の中にも世界一の技術をもったところは沢山あります。キーエンスとかは今ブームで、〝キーエンスの経営方法〟とか〝キーエンスの成功戦略〟とか大ブームになっていろいろな本が出ています」

N「日本の技術は世界一ですからね。それを忘れるな、と。まあ、それも今は昔で、日本より技術がある国も珍しくなくなりましたが。そういえば、私の馬鹿兄貴は偏見と勘違いから「地元の工業団地の会社は全部つぶれてアジアにいくんだ」などとしたり顔でいってました(笑)。が、日本の中小企業には「世界一の技術」があるから(単純労働以外で)そんなに人件費だけでポシャルほど日本の会社はやわじゃない。でしょ?」

O「まあ、そうですが、10%しか優秀な企業がいないっていうのも事実です。食品加工、繊維、家具などのドメスティックな製造業は雇用で全体の15%、その絶対的生産性の水準は平均でアメリカの63%である。小売り、不動産、医療などのサービス・セクターは雇用で全体の75%を占め、その絶対的生産性の水準は、第二セクター同様、平均でアメリカの63%と推計されている。

 この雇用で全体の90%を占め、絶対生産性の乏しく著しく低い、国内セクターの構造改革が進み、その生産性がアメリカ並くらいにならなければ日本経済の再生は難しい」

N「リカネント(循環)が日本経済には必要?」

O「そう。失業したり倒産したりしても、その人材がすぐに別の会社に登用され、会社も新しいのが次々生れ、倒産する会社にとってかわるような…食物連鎖的な、サプライト・サイド・エコノミー(供給者側の経済)によるリカネントがね」


        第二章 財務省の罪



        財務省の罪


 世界中がバブルに沸いたのは80年代、それから弾けて崩壊という事態になったのが、90年代…。しかし、米、英、ニュージーランド、スウェーデンなどはいち早くその痛手から立ち直った。そして、米国発の金融恐慌……リーマンショック後、新型コロナ禍を克服して、今やアメリカでは好景気でインフレ気味。世界一の経済大国アメリカ合衆国の面目をみせつけている。それに比べて、中国は不動産バブルが弾けて(中国恒大集団(「エバーグランデ」が48兆円の負債。碧桂園(「カントリー・ガーデン」)が27兆円の負債)、日本以上の少子高齢化(一人っ子政策も影響した。ちなみにもう一人っ子政策は廃止になった)で、もう中国が経済力でアメリカを抜くのは絶対に不可能、とまで言われている。

(*(中国)の恒大集団グループのような膨れ上がる債務の『融資平台』(会社・日本でいう第三セクター会社)【地方政府(省・市)】→【融資平台】→【銀行で融資や返済受ける】→【インフラ投資(高速道路や地下鉄など)】。(100兆元→2000兆円の債務)*中国の債務を支えていたのは『中国の土地使用権の価格』その価値が下がり〝土地バブル〟崩壊。中国株がネガティヴに。→リスク回避で日本株が人気になっている。*新型NISAは高配当*『中国の習近平政権の死守ライン①台湾問題②政治体制(共産党政権維持)*共同富裕→〝経済〟は最重要視するが、共産党と並ぶような経済のグループが出来るのは全力で潰す』)

流石に、アメリカの経済は強い。どこまでもダイナミックな国だ。

 80年代~90年代にかけて日本の金融機関は、リスク管理に対してとりわけ怠慢だった。それ以前にも、日本の金融機関は発展途上国債務に巻き込まれて大打撃をうけている。にもかかわらず、そのあとすぐにアメリカ、オーストラリア、イギリスなど欧州各国に出掛けていき、結果として世界各地でバブルにまきこまれて彼らは大損したのである」

M「「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「日本は世界一のバンカーだ」などと煽てられてその気になり、次々とリスクの高いファイナンスに手を広げてしまった? それも今は昔で。日本は経済力も減退し、ただの安すぎる国になった。今は中国の勢いが凄くて中国の経済構想『一帯一路』とか。アメリカのトランプ大統領の『貿易戦争』とか」

S「過去に、世界中の金融機関が同じような痛い目を見たのに、なぜ日本金融機関だけが、その教訓を生かせなかったのか?それは、リスク管理の欠如が原因であった。

 アメリカのバヴル崩壊の時、アメリカに進出していた日本の金融機関が大打撃をうけたのをみて、日本の財務省は通達を出した。それは、予信管理の部分を日本の本社にもどして、本社からみてリスクの少ないと思われるファイナンスにだけ投資しろ、などというものだった。そのため、予信管理の部分を日本の本社にもどしてしまったために、現地部隊と本来援助すべき日本の国内部隊とが切り離されてしまった。そのため、彼らは世界各地の金融機関からの勢いに押され、取り残され、日本の外での業務ノウハウや危機管理のノウハウをまったく学べない状況になって終わった」

N「日本の本社で判断できる物件やファイナンスなど限られている…。そんないいものが日本からの遠隔操作だけで手に入る訳はない。その前に、現地の金融機関がもっていくに決まっているだろう。それがわかっちゃいなかったのですね?」

S「それと、もうひとつの原因は「神風メンタリティ」である。

 つまり、「自分たちだけは安全だ」「自分たちがまずくなっても財務省が助けてくれる」「日本は神秘の国だ。日の本の国の金融機関のわれわれが負ける訳がない。危なくなっても〝神風〟が吹く」……などといった考えだ」

N「「われわれは特別だ」「いずれ財務省が助けてくれる」…と誰もが考えていたのだ。これほど甘ったれた考えを持つ機関も珍しい。日本の過去の軍人がそうであったように、世界が何もわかってないから、そういった考えをもったのだろう。外をみないで、国内しか知らない人間が、「財務省が助けてくれる」と信じきっても不思議でもない。外を見ず、自らの世界に閉じ籠るような人間は、「自分の才能は世界一だ」と信じるようになる。外の荒波に揉まれたこともない人間の〝自惚れ〟である。そして、経済の没落……」

S「その通り。おもえば、日本人というのは海外にいってもほとんど現地人と接触をもたないという。そこにいるわずかな日本人たちとツルみ、一緒に狭い部屋でカップラーメンをすすったり寿司を食べたり…まったく現地人とコミュニケートもコミットをとらないときく。それは留学生だけでなく、ビジネスマンでも同じだという。

 こうした、外を見ず、自らの世界に閉じ籠るような人間らが、「自分の才能は世界一だ」と信じるようになっても不思議ではない。荒波に揉まれたこともない人間の〝自惚れ〟である。ただ、問題なのは「誰かが助けてくれる」…というような甘ったれた考えだ。

 こうした考えでは、当然ながら、ダメだ。これじゃあビジネスマンとして世界に通用しない。いや、ビジネスマンとしてより、〝人間〟として通用しないだろう。もちろん、優秀なひとも大勢いてホリエモンとかZOZO(2019年9月12日、ヤフーが4000億円でZOZOを買収・前沢友作社長は退任)前澤社長とかSOFTBANK孫正義さんとかユニクロの柳井正さんとか楽天の三木谷社長とか……ちゃんとしてひともいっぱいいる。でも、社会的成功者は当然ですが全体の1%ですから。」

N「財務省が、自分たちの影響力を駆使して、嫌がる日本の金融機関に大量にアメリカの30年ボンド(米国債)を買わせたことも明らかになっている。「為替リスクが大きいから嫌だ」といっても財務省と米国財務省の癒着のため断りきれなかった。アメリカも、赤字のツケを脳天気な日本の金融機関が払ってくれるのだから、ムダ使いをやめない。それどころか、ほんものの危機の時に、日本の金融機関がパニックになって30年ボンド(米国債)を国債市場で大量に損覚悟で売り浴びせないように、財務省とツるむようになった。被害者はわれわれ日本人の生活者ですよ」

S「財務省はアメリカの赤字の請負人となり、そのツケを国民、預金者、に払わせることによって自分たちの国際金融市場での地位を維持しようとしているのだ。これほどわれわれ生活者をバカにしたやり方も珍しい。財務省の〝尻拭い〟はいつも預金者、納税者になり、いつまでもツケのオーダーはとぎれない。バカにしている、してない…以前に、これは詐欺ではないか? 国家機関による詐欺ではないか? 国家による犯罪ではないのか? そして、不況の元凶は財務省が金融機関の損失を知りながら国民に隠しつづけたことだと思う」N「政府も最近まで、不良債権の額を知らなかったらしいですね?」

S「そう。それが問題の元凶なんです。日本政府もトランプさんの〝わがまま〟をきいたり。中国の『一帯一路構想』などというものは中国だけが得をする『中国版経済侵略策謀』です。絶対に日本政府は協力したり参加したりしてはいけません。また日本の政権での外相はなんだか外交戦略がない。ただ外国にでかけて笑顔をふりまくだけ。日本の外相がいったこともない小国にいくだけ。『スタンプラリー』じゃないんだから。」





         消費税の問題


 財政の累積赤字とは、いま使いほうだい使っている借金のツケを子供達、孫たちの世代にオーダーすること。このツケの負担を減らすためには、やはり今の世代も負担を負わなくてはならない。その方法のひとつが消費税の引上げです。今の財政赤字がこれ以上増えないためにも最低でも消費税は、一四%は必要だといいます。とはいえ、法人税は日本企業の競争力を殺ぐかもしれないので上げられません。所得税も引き上げられません。

 消費税をあげるしか手はないのです(金利を上げるという秘策もある)。一四%などと途方もない額かと思うかも知れませんが、ヨーロッパ諸国では消費税率は一七、八%ですからそんなにひどい数字ではない。これだけはいえるんですが、借金は返さなければならない、ということです。

 でも、借金が全部返せる訳ではありません。ナポレオン戦争時代からのフランス、第二次世界大戦後のイギリス…など大変な財政赤字を抱えましたが、全額返した訳ではないんです。ただ、借金が増えないようにした。そして、利息をきちんと払ってます。つまりGDPの名目成長率が名目金利より大きいという条件があれば、バランスがあい、財政破綻を防ぐことができる訳です。

 また、過大な国の借金を抱えているかぎり、成長は絶対にみこめない。景気対策のために消費税を戻したところでそれほどの減税効果はない。消費税は3%から5%にしたたけで、7兆円の増税、医療費も含めると9兆円の増税…。7兆円減税ではタンス預金に消えるだけだろう。消費税を10%にしても6兆円の増税なだけ。しかし、2100兆円の運用利回りを一%上げただけでも21兆円の減税効果がある。仮に、今の金利0・数パーセントのパーセンテージを5%に上げただけでも七十五兆円の減税効果になる。

S「しかし、この危機のツケを国民すべてが払うとなると、少なく見積もってもその50倍、300兆円になる。国内不動産の100兆円はもとより、デリバティヴや米国債の損などをすべて含めると国家予算の4倍になる。日本の銀行群の利ザヤが年間2兆円だから、それで払えば150年はかかる」

N「こうした財政危機を引き起こした犯人たちは財務省にも日銀にはもういない。または、天下り先に生息している。こうした連中を「A級戦犯」として逮捕し、パージしなければならない。そうでなければ犯罪者が野放しのままだ。財務省は、〝雑魚〟だけ捕まえさせて「トカゲのしっぽ切り」を決め込む気なのだろうが、そういうことを国民が許してはならない。もっと巨悪はいるハズだ。それをなんとかパージ(粛清)せねばならない!」

S「そもそも、財務省の官僚が民間に天下ること自体、おかしなことだ。ルールもなにもあったものじゃない。どこかのバカ漫画家は「官僚は給料が安いのだから、民間に天下って高給をとって当然! それでサラリーマンと同じ。…官僚は難しい試験に合格して一流大学入って、難しい国家公務員試験通ったのだから、偉いのだ」などと脳天気な無知ぶりとナイーヴさを発揮し、漫画でその考えを表現して(無知な)読者をマインド・コントロールにかけようとしていたが、その無知ぶり、ナイーヴ(無邪気)ぶりは呆れるばかりだ」






      官僚など「偉く」もなんともない



  どこかのバカ漫画家は「官僚は給料が安いのだから、民間に天下って高給をとって当然! それでサラリーマンと同じ。…官僚は難しい試験に合格して一流大学入って、難しい国家公務員試験をとったのだから、偉いのだ」などと脳天気な無知ぶりとナイーヴさを発揮し、漫画でその考えを表現して読者をマインド・コントロールにかけようとしていた。

が、はっきりいって「官僚など「偉く」もなんともない」としか私には言えない。

 官僚は難しい試験を……一流大学に入って……などというのは学歴主義というものだろう。暗記力がすごく、『文科省○×式クイズ』を突破したからといって「偉い」とか決まるものではない。それどころか、それだけをして「自分は優れてる」とか「自分は天才」などと〝いい気〟になっている姿のほうが、滑稽だ。

また、そういう連中を賛美するバカ漫画家にいたっては何をいわんやかなである。

 最近では、官僚とは7K労働で、安い給料で、馬鹿な政治家の答弁書やブリーフィングの作文で忙しく、深夜まで残業が毎年続くらしく高学歴学生は官僚での就職を倦厭し出した。

だが、そんな官僚も、課長にさえなっていないような役に立たない平官僚の分際にも拘らず、地方の知事選挙や市長選挙に出馬したりする。

米沢市でもそういう高学歴エリートの元・平官僚が市長選挙に打って出て、落選した。

官僚の傲慢さはどこからくるのか?

S「多分、それは甘やかしからだろうと思う。彼らは、親に「勉強が出来る」がゆえに甘やかされたのだ。結果、〝アグリーな連中〟がゴキブリのように霞ヶ関にウヨウヨしている。

幼少の頃より受験に受かってきた「学歴エリート」は、いい学校や官庁に入って、国家公務員試験に受かって、チヤホヤされる。

 誰もまわりの連中が批判しないから、自分は他人より優れている…などと勘違いもうまれる。それはそれでいい。問題なのは、そうした勘違いのひとに巨大な権力と規制利権が渡ってしまうことである。

 バカになんとか…というが、これほど危ないものはない」

N「結果として、〝アグリーな連中〟がゴキブリのように霞ヶ関にウヨウヨするようになる。民間にタカッて天下り先や賄賂を要求し、税金を自分の金のように使ってしまう。まさに、バカになんとか…である。しまいには政治家になって「このハゲー!」(笑)」

S「音楽やスポーツなら、すぐに優劣がわかる。判断できる。100M走ったり、演奏すれば誰にでも優劣がわかる。しかし、勉強となると、例え一流大学を卒業して国家公務員試験に受かっても、それで官僚として優秀になるかどうかなんて誰にもわからない。反体制のジャーナリストや評論家も、官僚の前にくると急に腰が低くなる。まるで腰巾着のようになる。「官僚に睨まれる」のが怖いのだ。「嫌がらせ」が怖いのだ。

 結果として、誰も官僚を批判しないから、傲慢化に歯止めがかからなくなる」

N「一番の癌は、キャリアによる身分制度?」

S「そう入省の時に、その人間は十三段階にわけられる。学歴と国家公務員試験とか、と入った状況で。本物のキャリアは十三段階のMクラスの人々だけである。同じ東京大学を卒業しても、入り方が悪いと国家公務員試験に受かっても、このクラス(エリート・コース)に入れない。そういったひとを官庁内では「セミ・キャリ」というのだそうだ。キャリア官僚は年功序列で、いったん次官コースに入れば、刑事罰にでもとわれないかぎり絶対に出世する。ノン・キャリやセミ・キャリが定年まじかになって、やっと部長とか課長がせいぜいなのに対して、キャリアは事務次官やトップにまでのぼっていき、そこからさらに民間に天下れる。そこで、ロクに仕事もしないくせに大量の退職金や給料を貰うのだ。これほどたちの悪い連中も珍しい」

N「まぁ、官僚なんてどこの国でもそんな感じなのだが、民間にチビチビたかったり、天下ったり……本当にタチの悪い。まさにゴキブリだ」

S「情報を隠蔽するのも官僚にとっては朝飯前だ。財務省や厚労省や外務省や防衛庁がそうであったように、秘密資料を焼いたり、どっかに移して隠したり……まるで知能犯のごとき振る舞いである。旧・社会保険庁も安倍独裁政権下の官僚たちも酷かった。そして『森友学園・加計学園・桜を見る会問題』の忖度…。

 だが、一番問題なのは、そうした勘違いのひとに巨大な権力と規制利権が渡ってしまうことである。官僚は、無難無効な予算消化をするだけのCM会社やゼネコンや民間会社やジャーナリスト、エディターだけを重要視し、さらに大きな仕事をまわす。いかにもくだらないCMやパンフレットをつくろうが、道路を何十回も掘り起こそうが、あぶない薬をつくろうが……とにかく自分たちのゆうことをきく人間たちを重宝がり、使う。そして、税金はそうしてどんどんとムダに使われていく。これほど恐ろしいものはない」

N「いまの財政危機の原因は、財務省のミス・リードである。しかし、その当事者からは謝罪も反省の声もない。これはどういうことなのか?」

S「本当に、バカ漫画家がいうように「官僚が偉い」のなら、こんな金融危機は起きなかったハズである。それをどう理解していけばいいのか……」




         考えなければならない移民受け入れ


 日本経済の中・長期的見通しには悲観論がともなう。悲観論のもとは、いわゆる少子高齢化である。人口が07年頃から急激に減少し、老齢化が急速にやってきて経済が先細りした。金融恐慌で失業者が何十万人も路頭に彷徨う。何か手はないのだろうか?

S「日本の女性の出産率をあげる? 無理だ。女性の社会進出が進み、共働きが当たり前の時代。それに今の日本の不況や青少年犯罪や子供の育児の大変さ、そんなこんなで出産しない女性が多い。結婚しない。もしくは、ひとりだけ子供を産んであとはやめておく、といった日本人女性が多い。これはやむおえない。まさかチャウシェスク時代のルーマニアのように、子供を産んだ数だけ減税し金がもらえる……などという馬鹿な政策はとれない。

 とすれば手はひとつしかない。「移民受け入れ」である。外国人の帰化および就労を大幅に増大させることである。アメリカにしてもヨーロッパにしても白人の人口は減ってきていて、日本と同じような状態だ。しかし、これらの国は外国から移民を受け入れて、アフリカ系、ヒスパニック系の人口が増加してその減少をカバーしている」

N「日本は国籍・出入国管理問題には厳しく、外国人を締め出すような法律になってる」

S「在日韓国人でさえ、前まで「指紋押捺」の義務があったほどだ。もちろん、外国人が犯罪を犯すケースも多く、心配する向きもわからないではない。何百万という移民を受け入れるということはリスクもともなう。日本は国籍について血統主義をとっていて、フランスやドイツよりも帰化の条件は厳しい。帰化のためには法務大臣の許可が必要で、たとえ許可に必要な客観的要件を備えていても許可しないこともある。

 また、帰化の条件として「素行が善良であること」という非常に抽象的な法律もある。よって行政の裁量の範囲は極めて広い。(テストを受けさせ、技能、技術、知識をもった外国人だけ受け入れよ。そして、欧州や北欧の少子化対策の日本国での実施)

 日本の出入国管理法が単純労働者の入国を原則として認めていないのは、広く知られている。研修や就学のために入国したものが、特別に許可を受ければ(19条2項)、限定的には外国人も単純労働に就くことが認められているが、これはあくまで例外。また、一定の技術、技能、知識をもった外国人の入国は認められているが、これもポジリスト(入国条件の具体的列挙)だから、例えば、介護の専門家などは法律を変えない限り、入国させられない(介護ヘルパーとかならアジア諸国から招聘しているが。日本語の試験に合格しなければ帰国――――というのは酷すぎる。人権侵害も甚だしい)」

N「アメリカ経済がうまくいっていたのは、いわゆるITによってである。そのためにはアジア系アメリカ人(主に中国人やインド人)の移民技術者の力が役にたった。彼等がシリコンバレーに移住して、アメリカ経済が活性化したのである。そういうことが日本でもできないものか?…と思う(日本の安いギャランティー(給料)では来るわけないが)。日本に、中国系のベンチャー・キャピタリストやインド系のシステム・エンジニアが移住すれば、日本経済にとってプラスであると思う。だが、トランプ政権(当時)になって移民を排除する傾向があった。移民で強くなった筈なのに排斥するとは。メラニア夫人自体が移民の子なのに。」

S「早急に、日本の国籍・出入国管理法を改正し、移民受け入れを考える時期にきている」N「1990年の入管法改正で、それまで技術労働者にしか出てなかった定住ビザが日系2、3世にも発給されるようになりましたよね?」

S「そう。だが、まだ十分ではない。単純労働への就労も可能になったし、その結果、日本への渡航者が急増した。日本で働く南米日系人は90年には7万1803人、92年には16万5935人、99年には22万0458人となった。当初はその人の祖国より日本で働いたほうが儲かることから1~2年働いて祖国に帰って豪邸をたてる…などというケースが多かったが、今は「日本での生活を楽しむため」来日する外国人も多いという。

 問題なのは、そうした外国人を「ロボットより安い労働力」と考えて、3K労働に従事させて搾取している日本人経営者だ。今の日本は世界第四位の隠れ移民大国だ。不法移民が地方などや都市部で、不法に働いている。まあ、発展途上国の自国で働くより高収入だからこそ、彼らは工場労働も3K労働もするのだが。(技術実習生という名の奴隷)」

N「3K職場もいとわない日系人女性は引く手あまただときいてます。でも、なぜいとわないかというと祖国で働くより日本で働いたほうがペイするからなんですよね。日本で一年も働けば、祖国で働くより十倍も百倍も儲かる…からです。また、日系の労働者が急増し、家族での来日が進めば、子供の教育とか健康保険とかさまざまな問題が生じます」

S「そうした人達へのケアが十分でないところが日本の問題ですよね」




         IT革命。そしてAI(人工知能・生成AI・DX)革命へ!




 インターネットのもたらす衝撃は、一国政府の対応できる範囲を越えていることがある。OECD(経済協力開発機構)がインターネット利用者の国際比率を発表した。このなかでは人口千人あたりのホスト数がある。一二〇を越えるフィンランドを最高に、シンガポール、米国、韓国、アイスランド、スウェーデン、カナダ、ノルウェー、デンマーク、ニュージーランド、オーストラリアと続き、ここまでは六〇を越えている。ちなみに日本は二〇で、一九位だった。この差は工業社会の到達度ではない。「自由」の到達度だ。

 まあ、今はその『IT革命』から二十年で、生成AIとか自動運転車とかスマホやDX革命とか、もう数段も高レベルなことになっており、いよいよ二十一世紀的な最先端技術の世界になってきている。むろん、それは先進国だけで、貧しい国もまだ数多い。だが、南半球の国も『グルーバルサウス』などといって、発展が著しい。その筆頭がインドである。

 インターネットは趣味にだけでなく、ビジネスにも使われている。インターネットでビジネスとビジネスが「市」をつくり、世界中がつながっている。値決めや取引の習慣が激変すれば、既得権のようなものが一挙に崩れるだろう。それを、規制を通じて阻止しようかどうしようかによって、インターネットの利用環境は規定されるのだ。

S「インターネットでは英語がつかえるかどうかが問題だが、世界中につながり、自由に情報を発信したり自らが主役になれたりすることを考えるとそれほど障害ではない。

 とりわけ情報処理や設計という仕事において、国境を越えた協動性のネットワークが広がった。IT(情報通信技術)によって、例えば網走の田舎にいるひとがコンピュータ・ネットワークによって沖縄や東京、大阪ばかりでなくNYにもLAにもパリにもロンドンにもアフリカにもつながる訳だ。リモートワークである。そして、気にいった商品をクリックして、DHL(国際宅急便)で自宅に届けてもらう……ということも出来る訳だ(トップはご存じAmazon)。また、世界中から情報を瞬時に集められる。発信できる。これがIT革命の凄さである」

M「しかし、日本にはまだ規制がある。たとえば、薬をインターネットで日本で売ろうとしても規制があるため売れない。また、著作権の問題で、画像などがコピーできない(当時のこと。現在は薬も麻薬や劇薬以外なら売買できるし、画像もコピーできる。著作権によって違法ダウンロードの取り締まりも厳しくなった)」

S「日本政府もIT革命に乗遅れないように戦略を考えているようだが、規制がどこまで撤廃されるかどうか…。とても不安だ。日本では通信速度も遅いし、常時接続でもない。無駄な公共事業で橋や道路をつくる金があるなら、ITインフラをもっと充実させるべきだ。例えば、すでに日本は米国に負けている。米国は利用者1億人、韓国は100万人、日本は8000万人だ。しかし、超高速インターネットいわゆる光ファイバー(によるブロードバンド)なら、まだ勝てる。なぜなら米国より日本は国土が狭く、光ファイバーを張り巡らせるのにそんなに費用も時間もかからない。しかも民間にやらせれば需要が60兆円にもなる。とにかく、IT革命は第三次産業革命といっても過言ではないのだが、政府の関知できる規模を越えている。ITと日本経済との適合性がかかっている。これらは明らかに政策を越えているのだ(現在、光ファイバーなどは日本国中に張り巡らされた。後は離島などは衛星通信ということになろう。後は5Gではなく6Gや7Gだ)」

N「ITってインフォメーション・テクノロジーですよね?でも、アメリカでは、インフォメーション・オブ・タップっていわれています。タップ…とは水道の蛇口のこと。つまりインターネットも水道のように使える社会ができてるって訳なんです。韓国でさえもうブロードバンド(大容量高速デジタル通信)で、ITがさかんに行われています。日本でもインターネット料金などが『水道代』並になればIT革命がおこる。まあ、IT革命なんてこれだけネット社会になってるのに「今更?」感もあるだろうがもっと便利になるということ」

S「まぁ、そうですね。日本は世界一の技術をもってますから、日本国中に光ファイバーを巡らせるのも簡単ですし、アメリカにはすぐ追い付ける(張り巡らしたがアメリカには追いつけなかった)。携帯電話にしたって日本はほとんどネットワークにつなげられるデジタル…しかし米国の携帯は3割がアナログです(当時)」

N「BtoB(電子商取引)…BtoC(消費者電子取引)というのもあります。BtoBはまだ日本ではどうかな?と思うけど、BtoCはすぐに日本に根付くでしょう。そしてIOT(インターネット・オブ・シングス)とAI(人工知能・生成AI・DX)革命へ! です。」

S「そう。米国の経済の1/3がITによる需要です。IT利用者は3億8千万人(ほとんど北米欧州)ですから。CONVISINT(電子取引会社)が儲かる訳です。GoogleやAmazonやAppleやフェイスブックなどの世界企業は兆億企業ですよ。」

N「でも、ITのインフラはいいんですが……肝心のコンテンツ(中身)はどうですか?私は仙台の幸町などで「教育・躾の失敗による鬼畜中学生によるテロ」を体験してますし、また最近の日本人の若いのってひどいでしょう?親が甘やかして叱りもしないし躾ないから……鬼畜みたいなこどもがいっぱいウヨウヨしてて…」

S「まぁ、それは教育のことだから、この経済対談と道がそれるので、別の機会にあなたが執筆して本をだせばよい」

N「そうですか。では……話しを戻しまして。ITの本質とは?」

S「まず、インターネットとは何かというとデジタル情報のやり取りなんです。文字や画像や音などをデジタル化することで安く、遠くまで送れる…ってことです。その結果、コストを押さえて商売ができるように世界がなった」

N「日本がITに遅れた訳は?」

S「まず、競争がなかったこと。デジタル情報でいろんなことが出来るって専門家が考えたとき、まだインフラがなかった。で、とりあえず電話線を使おう…ってなって。やってみると以外と便利だ。なら、もっといい回線を使って便利にしよう……というのが当時の日本や世界の動きだったと思う。競争もなくNTT独占だったから、ITが遅れたともいえます。競争にさらされた米国はIT先進国だし、韓国もITが進んでいる。日本は遅れてしまった。追いつこうにも、アメリカのGAFAや中国のBATHにはもはや日本国は勝てない。日本とアジアではなく、アジアのトップは中国で、アジアの中の日本、でしかなくなった」

N「ITは雇用を減らし、失業者が多くでるといわれてますが」

S「産業革命のときも農業やほかの産業から失業者が大勢でた。また石油革命でも炭鉱やら林業がダメになった。今、ゼネコンやらがダメになってる…。そして、これからは生成AIで……。でもこれは時代の趨勢なんですよ。ITというのはデジタル情報のやり取りで効率的になること。効率がいいものが悪いなんてことない。そしていまはAIやIoTやロボットDX……という時代です。」

N「ITやAIというのは皆が使うべきものなんでしょうか?」

S「いえ。使いたくないひとは使わなくていいですよ。電話と一緒です。顔を見て話さなければ嫌だってひとはそうすればいい。ただ、コストが高くつきますよ、ということ」

N「行政の役割は?」

S「とにかく、競争させることですね。ITやAI・DXというのはフロンティアなのだから。日本の農家を守るために『セーフ・ガード』などと称して輸入規制することがあったが…ああいうのは農業などだけでやってればいい。その考えをITにまで使われたらかなわない。競争がなければだめで、ITでも株でも市場にまかせなければダメなんです。

 それが資本主義ってものなのだから…でも、楽天が第四の携帯会社として市場に参入した訳ですが、意味がないと思います。携帯会社は世界で二社から三社であり、日本で第四の携帯会社など誰も望んでいない。基地局も日本中に作らなければ繋がらないし、例えば冬山で遭難した時に繋がらないような携帯電話を持とうというひとは存在しない。楽天は携帯事業で年間一兆円くらいの赤字だが、ペイしない。僕が楽天の社長なら、モバイル部門からは早々に撤退しますね」

N「でも、セーフティネットも大事です。とくにベンチャーの場合、ハイ・リスク、ハイリターンですから。健全な社会というのは、三度ダメだったけど四度目で成功した…というようなチャンスが必要ですよね?」

S「その通り! ジャパン・ドリームとでもいえばいいのか。とにかく、あのひとみたいになりたいっていってチャレンジできる社会じゃないと。あのひとみたいになりたいけど無理みたい…というのではどうしようもありません。しかも、リスクが大きいのに安全ネットがないなんてことでは誰も起業してチャレンジできませんよ」

N「でも、日本の場合はベンチャー支援率が低いでしょう?ベンチャー・キャピタルも日本には数多くありますが。日本の場合のベンチャーって、銀行系列か独立系かですね?」

S「それと事業系です。自分で会社を起こして成功して、ノウハウも資産もあり、他のベンチャーに投資もするという。

 なんでもそうですが、これからはベンチャーといえばIT・AI・DX革命ってことになりますよね。どうしても。IT・AI・DXなんて手段だ、手段に使われてはいけない! などというひともいますが、確かにIT・AI・DXって手段です。でも、今までの問屋や取り引きコストを限りなくゼロに出来るから『革命』っていわれてるのであって、反対しているひとは青いんですよ」

N「日本は間違いなくIT・AI・DX大国になれると思うんですが…」

S「そう、なれます。でも、なぜ今、韓国より下かというとサボってきたからなんです。国民皆がITに興味を持てば、すぐIT大国になれますよ。今は中国やアメリカのIT企業に手も足も出せない。日本は出遅れた。IT革命のスタートダッシュに遅れたのです」

N「携帯とかスマホや家電からもインターネットやEメールが出来ますしね。プラット・ホームは無限大ですよ。しかも、日本の御家芸の『家電』が、新たなプラット・ホームになれば日本の逆転勝ちですよね。コンビニも、そのプラット・ホームになりつつある」

S「まさに、IT・AI・デジタル革命ですよ。あとは自動車ならEV(電気自動)車。コンビニが益々便利になる。中央の商店街が廃れるのもわかりますよね。だって、商店街では公共料金も払えないしいろいろな物がそろってない。夕方七時でシャッターが降りちゃう。これじゃあ、ニーズやウォンツ(欲求)に合致しませんから。客が減って当然です」

N「ヤフーなんてすごかったですよね。株価が一億円ですから。インターネットの検索と広告だけで…日本では二位は楽天だけど…」

S「でも、今はインターネットへ広告を出したほうが、テレビCMより見るひとが多いんですよ。しかも、インターネットなら会社と消費者のワン・to・ワンですから。意見も届くし、オーダーメイドも簡単にでき、注文も調べ物もクレームもクリックひとつです」

N「これから卸や問屋は、メーカーと消費者のプロデューサー的なものに変わらざる得ない。それがIT革命、AI・デジタルDX革命ってことですよね?」

S「そう。メーカーそのものがプロデューサーになっている例もあります。

 AKIA(アキア)という会社は、店舗を置かず、インターネット広告からのカタログ販売だけをおこなっています。製造業社ですが、工場を持たず、注文がきてから他の工場に製造発注して、部品をつくり、開いてる工場に送ります。そして、コンピュータをつくり消費者に配達します。アキアは設計とプロデュースだけしているんです。

 また、デル・コンピュータもそうですよね。インターネットで注文を受けて、消費者の希望通りのコンピュータを設定しセッテングして配達する…。こういうのがIT革命・デジタルDX革命なんです。デジタルDX革命で、今後十年で二〇〇〇種類の薬が発見できるともいいますし…」


         世界のブロック化と経済



W「…今、世界の経済ブロック化が進んでいて、NAFTA(北米自由貿易協定)やEU(ヨーロッパ連合)、APEC(アジア太平洋経済協力会議)、ASEM(アジア欧州会議)、ASEAN(東南アジア諸国連合)などさまざまなものがある。いちがいにどれがよくてどれが悪いか、などということは言えないが、やはりアメリカとEUにリンクしていないと利益は見込めないと思う」

N「そう。確かに二十一世紀は中国の時代といわれた。『一帯一路』構想も凄かった。まあ、中国の『一帯一路構想』は、中国だけが得をする『中国版経済侵略策謀』でしかありませんでしたが。しかも、不動産バブルも弾けて、日本以上の少子高齢化で未来は暗い。中国は、けして協力したり参加してはいけません。著作権侵害も酷いですが。が、インドネシアや韓国は前に暴動があったし、ASEAN(東南アジア諸国連合)は通貨危機もあったし、アジア市場が薔薇色とはけしていえない」

W「しかし、ひるがえってアメリカやEUにリンクしていけば、収益も見込める。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)ももう動いてる」

N「国際関係には、グローバルな関係(IMFや世銀、WTOなど)と地域間の関係(リージョナルなEUやAPECなど)、それに二国間関係とインターネット空間のサイバー取引(仮想通貨やネット決済)の関係の四つがあります。ヨーロッパは通貨統合を実現させ、地域間の関係を深めています。「ユーロ」という欧州通貨は、まだまだの通貨ですが、もうすぐ信頼性がさがるようになります。ヨーロッパは統合に辺り五段階のプロセスをすすめています。金融恐慌で米国が駄目になって、世界は迷惑を受けてますが、まだ中国やインドなどは経済がいいんですよ。イギリスが欧州連合から離脱したが再加盟するしかない。

 まず、NAFTAのような「自由貿易圏」をつくる。そして、「関税一本化」。そして、物や金、人が自由に行き来できる「共通市場」。そして「経済統合」…認可や規則を統一する。最後は「完全な市場統合」です。EU内で統一の通貨銀行を作り、統一の政府をつくる訳です。日本はAPECだけに一筋で、波に乗り遅れているかんがあります。アメリカは世界の五〇%もの地域と関係を結んでいます。ですが(当時)トランプさんが大統領になって〝馬鹿殿〟のような報復関税で『貿易戦争』になったりしましたね。」

N「話は飛びますが、需要と供給、について話しをおききしたい。アジア関係で」

W「モノの価値が決まるのは需要と供給の法則で説明できます。その物への需要が増えれば値段も上がります。また需要が減れば、値段も下がります。逆にいえば、供給が増えれば価格は下がり、供給が減れば価格は高くなります。プラダのバックは何万円もしますが、みんなの需要が大きいため価格は高い。でも、みんなが見向きもしなくなったら価格は下がりますよ。そういうことです。アジア関係とは関係ないけど(笑)」

N「内外価格差はどうですか?」

W「海外にいくと昔は必ず「なんて日本の物価が高かったのか」と思いました。例えば、日本のお米は美味しいけれど、外国米の五~十倍の値段でした。女性のブランド品も、香港にいったほうが安い(今はそうでもない)となっていました。

 でも、今は日本は安すぎる国になった。海外でのランチ代は一回に二千~三千円。日本なら千円以下。九百円くらい。でも、世界が高くなったのではなく、日本がバブル崩壊後、ずっと給料も物価も安いままだっただけです。

 日本より、世界の給料の方が高い。だから、日本人が海外で仕事をしたり、生活したりしているんですよ。作家さんや音楽家や俳優さんらがよく海外移住したりするでしょう?

これはどうしてでしょう?

 答えは、経済性にあります。日本にはさまざまな産業があります。その中で、自動車や家電、科学、などはいいのですが、建設や林業はなんの競争力もないですよね。

 じゃあ、トヨタやソニーだけが給料は上がってるのか?というとそうでもない。しかし、他の弱小企業や産業も、そうしたエクセレント・カンパニーの給料に引き摺られて給料が上がればいいんですが、そうはなっていない。何故か、バブル崩壊後、ずうっとデフレが続いて給料も上がらなかった。不況だから物も売れない。つまり、日本人の低い人件費が物の値段に反映してるってことです。

 保護と規制とデフレと不況で、安い価格でもなりたっていた…しかし、これからはそうはいきません。競争の波は、あらゆるところに及ぶでしょう。銀行などもそうで、これから賃金カットもされていくと思います」

N「アジアの成長はどうですか?」

W「アジアとひとくちにいっても多様性があります。香港では戦後二五年から三〇年という長い間、ほぼ二ケタ成長を実現していった。日本の経済成長期がせいぜい一〇年だったことを考えるとすごいですよね。一方、フィリピンのように政治混乱で経済どころじゃなかった国もある。ベトナムは戦争をしていた。バングラディシュでは飢餓…。

 八〇年代前半、日本からアジアの発展途上国への中間財(部品)や資本財(工作機械)の輸出があいつぎました。それらには技術が濃縮されてます。つまり、日本が技術供給者になったのです。アジアはその技術を体得し、生産者となったのです。でも、それで終りではありません。工場をつくっても、その製品を買う国がないといけません。

 その買う国はアメリカでした。プラザ合意まで、アメリカはドル高で、さまざまな国から買い漁りました。そして、赤字が膨らんだ。そこで、八五年にプラザ合意を受けて、ドルが下がり始めます。そうすると、アメリカはもう買えない。日本も買わない。

 そこで、アジアは手頃な買い手を見つけます。

 NIES諸国とASEANです。特に、NIES(韓国、香港、台湾、シンガポール)は大口の買い手となりました。これは専門家も予想してなかったのですが、NIES諸国は人口が少ないため、すぐに人件費が高くなり安い人件費の他アジア諸国に対抗できなくなる。そこでNIESはアジアの人件費の安いところに工場を作って技術を提供した。

 NIESが技術供給者になった訳です。そして中国が世界の工場となった。日本人の人件費の30分の1なのだから品質以外かなう訳がない。

 だが、中国が世界の工場から脱却し、経済大国になり、日本を抜いてGDPで世界二位の大国になった。それで、中国も米国同様の市場になったわけです。

 日本製品の買い手の市場になった。

アジアのすごいところは、今まで戦っていたのに、急に「一緒に金持ちになろう!」といえることですよ」

N「アジアは大丈夫?」

W「はい。アジアの企業は野心的な挑戦をしているし、人材もある。だから、金融恐慌だけでポシャってしまうほどアジアは脆弱ではない。

 現在、ほとんどのアジア通貨は米ドルにリンクしている。円にリンクしていた時代もあったが、その時代は円高で大変だった。円で借金してドルで返さなければいけなかったからだ。それで彼等は意識的にドルにリンクしていった。そんな中、ドルの価値が上り、1$=80円から120円へとドルが50%も高くなってしまったわけで、そうするとドルにリンクするのが難しくなってくる。なぜなら、アジア通貨の強さはほとんど変わっていないからである。アジア通貨が強くなったのは、米ドルに引っ張られて上がったに過ぎない。

 それなのに50%も上がったため、ドルに連動したペッグ(為替相場を米ドルと連動する通貨制度)が外れて、タイ・バーツ、インドネシア・ルピア、マレーシア・リンギットの下落となった訳である。これは、通貨危機でもなんでもなく、当たり前の『調整』である」

N「その通りです。この30年ほどで一番不安定だったのはアメリカ・ドルだという。それは当然で、1ドル=360円から80円になって、25%どころか75%も落っこちた訳である。それがバヴル経済に乗って這い上がってきて、50%強くなった。つまり、日米の水位があがったり下がったりしていて、アジアはその間に浮かんでいるだけだ。そしてアメリカ経済の好景気と記録的な円安…

 こうした水位の変動はやはり、日本に問題があると思う。日本が市場開放などをもっとしたために円が弱くなった。その為に、逆にドルが異常なほど浮上した。その結果が、アジア通貨危機に繋がった」

W「だが、いま世界を見渡してみても、アジアほど魅力のある投資先はない。日本に投資してもリターンが少ないし。アメリカはまさに世界一。次が中国やインド―――――そう考えると、アジアがおわり…などというのは馬鹿らしい考えであるのが分かる筈である」



         輸入と輸出


  海外から輸入することは損につながるといった考えがあります。が、自国の優位性をもつモノと他国の優位性のモノを交換するのは、お互いの国の発展につながります。また輸出の増加は輸入する力を高め、輸入する力が高まれば経済成長も容易になります。

 海外の途上国も、誰もが豊かになりたいと思っています。その手助けをするのが、ODA(政府開発援助)や技術移転です。

 ある程度貯蓄ができたあと、その国はどういう形で経済アプローチをするか考えます。ひとつは産業の基礎は鉄だから、鉄を製造しようというもの。もうひとつは、今から鉄をつくっても先進国には勝てないからもっと違った軽工業品をつくろうというもの。これは消費者側にたつか、国の威信をかけるか…という問題です。が、結論からいうと軽工業品をつくった方が正解です。消費者から近いところから上流に上っていくのを後方連環といいます。なぜこれがいいかというと、機械や素材、部品の需要が生まれるからです。

 逆に、鉄からつくって下流に下る方法を前方連環といいます。

 今、発展している国はみんな後方連環からスタートしました。

 前方連環では、鉄を作っても生産や消費がどうなるか決まってないから不安です。

 旧社会主義諸国はこぞって、国の威信をかけて鉄をつくりました。ソ連、中国、北朝鮮、北ベトナム…。しかし、使い物にならない鉄を製造するだけでうまくいかなかったのです。いまだに海外からの輸入を自国の損、と考えているのが米国のトランプ大統領(当時)でした。


         第三章 リスク管理




         財務省の役割と財政分離




  財務省(旧・大蔵省)の財政と金融政策の機関分離は必要不可欠だった。だいたい、税金を収めてコントロールするところと、税金を使うところが一緒の省などというのはしまりが悪い。世の中は「お金」で動いているのだから、財務省の権限が巨大になるのも無理からぬ話しだった。00年度に、「金融庁」が設立されたが、さらにすすんで破綻処理の「金融支援庁」とそれから「金融財務庁」「金融政策庁」が必要になる。財務省はほぼ解体という形でいいだろう。(立法の経済財政諮問会議で税金使用の方針だけは決められる)つまり、釜底抽薪の計で、巨大権限を財務官僚から奪うようにしたらいい…という考えである。これは重要で、早急な実施がもとめられる。

 そもそも、財務省の役割というものはどういうものか?

T「00年度に、「金融庁」が設立されたが、財務省はそれをのぞくと大きく分割することができる。財政面においては、租税制度の企画、立案、予算の作成と執行、租税の徴収、国債の発行と管理。金融面においては、財政投融資の運営と管理、民間金融制度の指導、通貨・為替管理、監督(金融庁)……。

 日本の財務省の果たしている役割というのは、これほど膨大なものである」

N「しかも、これほど大きな役割をひとつの省が握っているような国は、世界中どこにもない。それぐらい珍しく、巨大な利権を持つ省庁な訳だ」

T「そう。たとえばアメリカでは、財務省、FRB(連邦準備制度理事会)、証券取引委員会(SEC)、連邦預金保険機構(FDIC)、予算局、内国税収入局(IRS)に、それぞれ分割されている。財務省も分割し、(00年度に「金融監督庁」が設立されたが)さらにすすんで破綻処理の「金融支援庁」とそれから「金融財務庁」「金融政策庁」が必要になるだろう。(「金融庁」というのは、証券取引などを監視、指導する警察機関である)財務省には主税局と主計局があるが、税金を収めてコントロールするところと、税金を使うところが一緒などというのは「しまり」が悪い。アメリカでいえば、バジェットビューローという機関と内国税収入局(IRS)というのがわかれているように、分けて運営すべきである」

N「税金がどんどん減っていくし、これから少子化や高齢化で税収率もどんどん落ち込むっていう時に、税金を収めてコントロールするところと、税金を使うところが一緒などというのは「しまり」が悪い。集めるところと使うところが近くにあると、歳入欠陥があったとしても、いろいろ帳簿処理して使える金を工面してしまうだろう。本来、集めた金が百なら使う金も百でなければならない。それを、帳簿処理して、赤字国債などをだして倍以上使ったり、財政投融資などといって郵貯や年金をPKOにツッこんだり、赤字国債を乱発したり……ということが起こっている。これが分割問題のコア(核)なのだ」

T「税金の権限・利権を、特に、財務省主計局に持たせないようにしなければならない。 野党が「財務省分割」案でもっとも主張していることはまさにそれだったのだ」




         財務省は解体すべし



 財務省としてまとまっていてよかったのは、戦後から高度経済成長期までの間だけである。それまでの途上国としての日本は、国民の間に資金がなく、工場などの設備投資もままならなかった。国をあげて、金融機関を維持し、保護、倒産の危機から守るために、競争を管理する必要があった。そのための、財務省の「護送船団方式」は効果があった。

 財務省が、所得税の配分や資金の流れをコントロールしたりしたことが、経済成長にプラスに働いた。金利を低くし、設備投資にまわるようにして、貯蓄を奨励し、その金がさらに還流するような金融政策が求められてもいた。だが、ブレン・ウッズ体制の崩壊とともにそうした考えも「終了した」、と言わなければならない。

T「当時と同じ考えで、今、財務省は超低金利にして、貯蓄を奨励し、その金がさらに還流するような金融政策をとっているようだ。が、日本人の個人金融資産が2100兆円もあるとなると、その当時の「金無し時代」とでは事情が違ってくる。

個人金融資産が2100兆円もあるとなると、金利を低くしたほうが逆に、不況になるのだ。これは「ストック金持ちのフロー貧乏」といったところだろう」

N「もう、財務省が幅をきかせる時代は終わった?」

T「その通り。すみやかに、財務省を解体し、前述したような機関に分けるべきである。そうでなければ、金融構造、構造構造の欠陥は解決しないだろう」




         リスク管理の欠如



 日本の金融機関は80年代初めに、世界各国にでていった。シンガポール、ロンドン、香港、NY、LA、欧州などを中心に海外進出した。が、今みてみると、その戦いは「全敗」といわざるえない。金融恐慌で大リストラ…トヨタやソニーでさえ苦しかった。

 銀行証券の再編も進んでいる。リーマン・ブラザーズも倒産した。ビック3も…

 証券のほうはすべて撤退…日本株を売り込むというようなことはなくなった。そもそも、外資系のほうがポートフォリオ(商品一覧)も充実しているし、わざわざ不便でコスト高の日系証券会社など使う外国人はいない。差がつきすぎている。

 それを変えることが出来るのが黒田さんから代わった植田日銀新総裁であろう。

T「損保にしても、外国にいって自分で商品に値段をつけろ…などといわれてもそれをできる人材が社内に育っていなかった。結局、外資系の損保会社から誘われた案件に「乗る」形になる。そういうのは危ないものが多いから、いつも最後にババをひかされ、失敗の連続となっていた。今も、人材がいないことでは一緒だ」

N「ビル・ファイナンスにしてもM&Aファイナンスにしても、全敗。勝率はわずか5%だという。米国に進出した日本金融機関のプレミアム(ジャパン・プレミアム)は62%、欧州の金融は34~36%である。つまり、日本の金融機関は高い値段でファイナンスを買い、安い底値で「二束三文」で売っている。不良債権を大量に抱えるのは当たり前である。

 かろうじてうまくいっているのは、ユーロ市場での社債発行だという。これは、日本に債権市場がないため仕方なくやった結果である。しかし、その内訳を見てみると、日本の証券が主幹事でやるが、数週間後には取り引きの主体が日本に戻ってきてしまっている。つまり、規制が多くコスト高の日本の発行市場は空洞化している。もう2次市場になっているという訳だ」

T「もうひとつだけうまくいっているのが、トヨタ、日産、三菱などの自動車会社のやっているオート・クレジットなどのファイナンスであったという。そこそこはうまくいっていたそうだ。…米国には、ジェネラル・モーターズ・アクセプタンス・コーポレートション(GMAC)や、GECC、フォード・ファイナンスなどといったものがあってそのファイナンスを真似したのだという」

N「この30年間ほどは、日本の金融機関にはいいことがひとつもなかった。原因は、日本で競争にさらされなかったことと、リスク管理の欠如である。

 日系の海外金融機関は、すべて日本に「出戻って」きて、海外でやっていたひとも粛清され、まったく海外でやれるだけの人材は、育たなかった。

 すべてはリスク管理の欠如が原因である」




         問題解決のために


 まず、日本において問題が発生すると、徹底した原因究明はおこなわれない。なぜ、そうしたことがおこったのか?という徹底した原因究明はおこなわれないのだ。結果として、問題の重要性を正確に把握できず、まだまだ深刻な問題が発生する可能性があるのにもかかわらず「山を越えました」などと答弁するようになる。

T「企業や政治家の不祥事の時にわかったように、関係者や当事者はまったく情報開示(ディスクロージャー)をせず、ただただ「それについては調査中です」「記憶にございません」などとすべてを隠蔽し、責任逃れをしようとする。そして「今回の危機を越えないと、大変な金融恐慌になる」「200万人単位の失業者がでる」などといって脅すのだ。そして金融恐慌で企業は派遣社員を何万人も首切りし、失業者が路頭に彷徨った。

 自分たちの失敗はすべて隠し、自助努力もせず、なにがなんでも公的資金(税金)を投入させて助かろうとする………まさに恥知らずなオポーチュニズムだ」

N「次々に問題を引き起こしている原因の追及、今後の見通しなどについての情報や対策が十分でないため、解決策の議論もできない。関係者や当事者はまったく情報開示(ディスクロージャー)をせず、防衛庁のように書類を焼却したり隠蔽するだけで、データがとれずに解決策もたてられない。年金だけじゃ2000万円足りない、とか(笑)

 それは公的年金が貰えないときの想定で、年金が破綻するとか国家が運営しているのだし国家が滅ばない限り年金は破綻しない。支給額は少なくなるだろうが……」

T「結果として、財務省や政府、経済戦略会議から出されてくるものは「いきあたりばったり」の解決策になる。一時的に問題を消化しよう…といった解決策だ。これではどこあたりが「戦略」なのかわからない。

 問題解決のためには、情報開示(ディスクロージャー)を徹底させること。一秒でも早くやらなければならない。させなければならない」

N「でも、バブル期から三〇年…不況だ不況だといわれていても日本は三〇%も成長していた。日本というのはすごい国なんです。世界はもっと成長して、日本は安すぎる国になった。でも、本来なら年二%成長ができます。

 その足枷が、過大な債務…不良債権な訳です」




        BISの自己資本比率


 日本の生保や損保を中心とした金融機関は、政府にいわば脅されて、アメリカの30年国債を買わされた。その時点で計上すると、十五%以上の為替損がついてしまう。

 すると、為替損だけでも何兆円にもなり、それが三月期に計上されると、企業収益が悪化し、株式市場がもたないと思われた。そうなればBIS(国際決済銀行)の自己資本比率8%ルール(大手が8%、中小金融は4%)を満たせないところが続発する。

T「そのことから、財務省は株価暴落を防ごうとルールをかえてしまった。差益、差損を計上しなくてもいいようにしてしまった。その結果、どこの金融がよくて、どこが悪いのかわからなくなった。自分の都合のいいときだけルールを守り、守れなくなるとルール変更してしまう。ご都合主義の典型である」

N「BISって銀行の自己資本比率で、銀行のどこがよくてどこが悪いか判断するものですよね?では、保険ではどういうものがあるんですか?」

T「ソルベンシー・マージン比率というのがあります。これは銀行のBISに相当し、保険会社の財務の健全性を示している。保険会社が引き受けている保険に関して、大災害など通常の予測を超える危険が発生した場合、資本、基金、準備金など対応可能な支払い余力をどの程度もっているかの指標です。200%以上が健全性の目安で、0%を下回ると金融監督庁から業務の一部停止命令が発動されます」



         第四章 問題解決への道



 金融で、さまざまな提携、合併、連携がすすんでいる。

 これからもどんどん金融や企業の提携、合併、連携がすすみ、倒産も続発するに違いない。まさに第二次世界大恐慌だ。ITやAIでこれから膨大な労働人口が奪われる。人間の強みである創造力以外のスキルは無用に?これはどういう流れか?

T「いってみれば主流である。

 つまり世界市場が飽和状態になっているからだ。これからは東南アジアだインドだグローバルサウスだ、アフリカだ…などといってもそれらは市場としてまだ出来上がってないし、あいもかわらず中米欧の3極で売っていかなければペイしない。日本はアジアの中の日本に没落……そこは市場が飽和状態になっているために、パイをわけあうようになっているのだ。そのための提携だ」

N「しかし、前述したように日本の金融機関の、「なにがなんでもBISの自己資本比率を達成しよう」「(自らの判断基準を持たず)保有株式の含み益でもなんでも資本金に算入してとにかく達成しよう」という姿勢に、欧米の格付けはますます厳しい見方をするようになった。日本金融機関は横並びで、つぶれる時には全部つぶれてしまう」

T「提携はその時の「保険」なのだ」



         BIS自己資本比率の達成という大義名分



 財務省や日本の金融機関は、「BIS自己資本比率を達成しなければ、海外での銀行業務が制約を受け、海外展開に支障がでる」と、達成しなければならない理由を説明する。 しかし、矛盾がある。

 そもそも、財務省が公的資金という名の税金を為替や株式に投入し、公的資金を投入してもらわなければ自分ところの不良債権も処理できないような機関が「海外業務」をやる必要があるのか?そういうところはツぶすべきではないのか?他人の助けがなければ業務もできないところに、国民が額に汗して納めた貴重な税金を与えていいのか?

T「本来なら、自助努力させ、不良債権も自分の力で処理させるべきだ。結果として、BIS自己資本比率の達成がならずということなら、自分の力で海外から撤退すればいい。自分の金ですべて処理させるべきだ。すべて自助努力させるべきだ。財務省は金融救済から手を引くべきである」

N「要は、預金者の預金と企業への融資金、貸し付け金さえ守れば、ツぶれるべき銀行はツぶしてしまったほうがよい。そうでないと、甘やかすと子供がダメになるように、日本の金融機関や企業はいつまでたっても自立できない。

 日本においては長い間、株式市場は日陰者扱いだった。資金調達のほとんどは銀行からの融資がおもで、株式市場はほとんど間接的な役割しかなかった。それが、金融ビックバンによって、ソニーやトヨタ、パナソニック(松下)、イトーヨーカー堂などの会社まで証券、株式市場、金融に参入するようになった。これは非常にドラステックな変化といわざるえない」

N「株式市場につっこむ金が政府の金なら何も文句はいわない。ただ、問題なのは税金…をつっこんでいることだ。他人の金だと思って、大規模に株式に介入して、大量にスッている。これなど国民や預金者をあまりにもバカにしている結果だ。「頭がおかしいんじゃないか?」とさえ思う」

T「株価というのは、その市場に上場している企業が、将来得ると予想されるキャッチ・フローを、そのキャッチ・フローの確実さを織り込んだ割引率(ディスカウント・レート)で割り、合計したものであるという。これを将来のキャッチ・フローの現在価値(NPV)というのだそうだ。株価というのはその企業の将来性や不確実性によって変わるのである。 今、日本の株価が下がっているのも、日本企業の将来が見えないためで、けして投機家のせいではない。本来のPKO(プライス・キーピング・オペレーション、株価維持策)は将来性のない株価を切り下げ、企業の責任を問うことに他ならない」

N「そのためには、地方自治体なら、まず非収益資産の処理、現金化が急がれる。あまり使われない体育館や工業団地などを民間に売り、現金化することだ。これから税収も確実に減る、少子化や高齢化で成長ものぞめない。そうなれば金はいくらでもあるにこしたことはない訳で、非収益資産の処理、現金化が急がれるというものだ。後は、繰り返しになるが『観光立国』ビジネスと移民受け入れ、金利の上昇で景気対策、である」

T「それから、特殊法人や第3セクターの廃止、撤廃だ。法人の給料を下げる…ようになったが、そのリストラ案たるや笑ってしまうほど小規模なものだ。銀行も、特殊法人や第3セクターも、イラナイところはどんどんツブすべきだ。そして、金融はただツブすのではなく、預金者の預金と企業への融資金、貸し付け金さえ「国有財産をすべて抵当にいれてでも」守れば、あとはイラナイところはどんどんツブすべきだ」


         知性を生かせ



 日本では、戦後の経済体制である『政・官・業』の構造が限界にきているといわれる。

 しかし、なにかうまくいかなくなるとすぐ官僚組織が批判される。あらゆる組織は間違いをおかす。要は、日本がバブル以降にどれだけ努力をしたかだろう。

T「日本の経験は異常なことではない。17世紀にはオランダのチューリップ投機、18世紀には英仏で歴史的投機があった。米国の1929年の株価大暴落もそのひとつだ」

N「バヴルを経験したことで、日本人全体がペシミスティックになっているが」

T「バブルっていうのは『創造的破壊』だとシェンペーター教授(故人)がいってた。それが至言だと思う」

N「日本は今、アメリカを模写し、米国経済モデルをシステムに取り入れようとしている」

T「米国が今、好景気だが自国第一主義時代に入っているのは誰もが知るところだ。日本は株価もさがってきて景気が減退しているのに今だに多くの人が、理解もせず、才能もないのにも関わらず、株式や不動産に夢中になってた。そして、バブルが弾けると、途端に何でもかんでも貯蓄。その結果、日本人の個人金融資産が2100兆円。企業の内部留保が5500兆円国富が四○○○兆円――――と凄いことになっている」

N「米国にとっては、貧富の差が非常に大きいことは深刻ですね。よく、米国は自由だ…などと誤解する人が多いんですが、米国は貧富の差が激しく、また階級社会でもある。繁栄の時代でありながら、所得の多くがあいかわらず1%の人に帰属し、下の99%の人にはわずかな分け前しかない。その金持ち富裕層のひとりのトランプさんが大統領になって貿易戦争を引き起こしていた。」

T「よくグローバリゼーションという言葉を耳にするが、流行りだから使っているに過ぎない。以前から経済が国境を越えて国際的な協力関係があった。グローバリズムは、国際協力関係、国際貿易、国家間の資本の流れの親密化、強化という言葉で説明可能だ。グローバリゼーションを新しいものだと思う人は歴史の大きな流れをわかってない」

N「インターネットやAI・DXなどの技術の発展は資本主義を変容させますか?」

T「技術は人間の可能性を広げる。コンピューターは人々の満足や知識を増大させた。しかし、過去にも、鉄道、電話、航空、ラジオ、テレビに関しても同じようなことがいわれてきた。つりあいが大事だ」

N「21世紀の日本は何をすればいいですか?」

T「平和を維持することであり、核をコントロールすることだ。そして、日本人にとって満足や幸福を感じることのできる政府、社会、経済システムをつくり、世界の平和や福祉に貢献すること。日本は米国の模倣でなく、日本の知性を生かすことだ」





         今、投資信託の時代



史上最低の低金利が続く日本…。少しでもお金を有効に運用したい。誰もがそう考えている。そこで、今、投資信託がブームになっている。だが、日本は『低欲望社会(ほとんどの欲望がなく、ガツガツしていない社会)』であると大前先生はいう。本当にそうか?

 では、投資信託ってどういうものなのだろう?

T「投資信託の特徴は(1)運用をプロにまかせられる(2)少ない額で分散投資可能

(3)少ない額で世界中の様々な市場に投資できる……といった有価証券(株の運用)である。

 投資信託は、多数の投資家から集めたと資金を、専門家である投資信託会社が株や公社債などの有価証券に投資し、運用の成果を分配金として投資家に返す仕組みだ」

N「ヘッジ・ファンドとは違うのですか?LTCMのような」

T「ヘッジ・ファンドとは少し違います。ヘッジ・ファンドはハイ・リスク・ハイ・リターンですから。ヘッジ・ファンドは米国だけで2千社ありますが、投資信託と違い資産家から大金をあずかってデリバティヴで大きくして為替市場などに投機するんです。そういうのはハイ・リスク・ハイ・リターンですから儲かるときはかなり儲かるけれど、損する時はすごく損をします。LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)なんかも破綻しましたよね。だいぶ前に。ノーベル経済学賞のロバート・マートン博士とマイロン・ショールズ博士がいて『ドリーム・チーム』なんていわれたのだけれど。結局、頭がいいだけではダメなんですよ」

N「G・ソロスは?」

T「あのひとは投機家というよりバクチ家です。92年の英国のブラック・ウェンズデーの原因はソロスでしたでしょ?」

N「昔すぎて覚えてません(笑)そういえば00年にITバヴル崩壊による世界同時株安やサブ・プライム問題(リーマンショックの元凶)(07年の米国低所得者向け住宅ローン金利の焦げつけ)で世界同時株安になりましたね?サブプライム不況といわれ、小麦などの価格高騰や原油価格高騰になった。しかしOPECが悪い訳ではなくて、原油が高くなったのはサブプライムで損したお金持ちのディラーたちが原油市場にマネーゲームでマネーを突っ込んでいたからです。そして、新型コロナ渦。そこから数年後―――――

 また小麦などの高騰はバイオディーゼルへのシフトによるもので供給不安なんです。でもこれもマネーゲームです。なにせ世界のマネーは1京6000兆円ですから」

T「英国はERM(欧州通貨制度)に加盟しようと思っていた。そんな時、イギリスはポンド(EU加盟時はユーロ)を切り下げる…ってドイツの新聞が報道した。ポンドが高いうちにソロスは50億ポンド売り、下がってから買い戻し大金を得ました。そして、英国通貨は暴落し、英国はERMから脱退したのです。住宅ローンについても同じケースです」

N「へ~っ。で、投資信託はそういうリスクが少ない?」

T「そうですね。投資対象は国内外の金融・株・為替・国債などですが、世界中にリスクを分散させる訳ですから。また、投資信託は1つのファンドで何十、何百という銘柄に投資しますから、1つの銘柄の値下がり影響が小さくてすむのです」

N「誰が運用するのですか?」

T「ファンド・マネージャーっていうプロの専門家です。今はAIで全自動で電子取引ですが(笑)」

N「投資信託にはどんな種類があるの?」

T「「株式投信」と「公社債投信」のふたつの大きく分類できます。「ユニット型(単位型)」と「オープン型(追加型)」にも分類できます。一般に株式はリスクが大きいが、分散投資が投資信託なので、リスクも小さい。また、投信を買える期間も限定されてなく、満期前に成算することも可能だ(元金割れの時もある)」

N「どの投信を選べばいいの?」

T「投資する資金の性格を考えて選ぶことが重要。例えば、子供の育児や教育や住宅のことを考えた投資ならリスクの少ないもの。また、資金に余裕があるなら、ハイリスクでもハイリターンが得られるものでもいいだろう。期間も考えて、マイホーム用にあわせた期間投資すればいいんです」 ………(以後省略)


         第五章 市場原理を!




         市場原理を導入せよ!







O「アメリカでも規制緩和をやった時、金融機関は過当競走になり、金融機関の連中はモラルやリスク管理を忘れた。しかし、ツブれるべき銀行をどんどんとツぶすことでモラルハザード(道徳的退廃)はなくなった。日本でも、ツブれるべき銀行をどんどんとツぶすべきだ。要は、預金者の預金と企業への融資金、貸し付け金さえ守ればパニックは起きない。ウミを出す意味で、ツブれるべき銀行はどんどんツぶすべきだ。政府の補助金でとりあえず潰れていないゾンビ企業(*本業の利益で借入金の利払いを賄えない企業(PBR(株価純資産倍率)が一倍を越えなければゾンビ企業。潰れた方がいい企業(1006社(23年度・大規模企業だけでも)))が、2022年度におよそ25万社となり、11年ぶりの高水準となったことが分かりました。新型コロナ禍の緊急対策として、政府が実質無利子無担保の融資をおよそ43兆円実施したことなどが要因ですが、今後、長期金利や倒産リスクの上昇に伴い、企業の調達金利が上昇し、利払い負担が増加する可能性があります。これは20年以上前の民主党政権時に、亀井静香氏が幽霊企業救済としてモラトリアムを行ったことが発端です。「“ゾンビ企業”の推移」グラフによると、11年前にはゾンビ企業が30万社近くあり、その後は多少減ったものの15万社程度が続き、2022年に再び増加して25万社となりました。これら企業は小規模で、小売業が目立ちます。極端な意見かもしれませんが、これらゾンビ企業を全部つぶすなど大胆な対策を行わなければ、日本の経済がおかしくなります。こういった企業には退出していただき、資本主義の原理を思い起こしてほしいものです。(大前研一氏記事より引用))も潰したほうがいい。潰れるところは容赦なく潰して新陳代謝をよくするのが資本主義の鉄則だからである。

 財務省は金融機関のモラルハザードの助長を助けるのをやめ、預金者、投資家、投機家と金融機関のそれぞれに自己責任を要求したらどうか?

 シビアに預金先を見付けようという預金者にたいして、判断基準を明確にするべきだ。競争力はバランスシートの大きさではなく、融資プロジェクトのリターンやポートフォリオによって判断できるようにするべきだ。そのためにも金融機関の情報開示(ディスクロージャー)がかかせない。情報公開による、市場原理導入がかかせない」

N「だが、それがまったくなされていないのが日本の現状である」

O「その通り」


         国内金融機関の現状



 国内の融資物件を金融機関が分析する場合、だいたいにおいては本店がやるようにと決まっている。会社の方針…という訳だ。けして、各支店では分析させない。いや、ツールもちゃんとした人材もいないために分析もできない。結果として、国内の融資物件を金融機関が分析する場合、だいたいにおいては本店がやるようになっている。

 東京に本店がある金融の場合、北海道や沖縄、山口、高知、青森、山形……そのようなところの融資物件など遠隔操作で判断できるハズもない。しかし、やろうと(もしくはやって)している。各支店の融資担当者が、規定の紙に記入して本店に送り、本部がそれを分析、判断するという形をとっているのだ。今流行りのリモートワークだ。

 もちろんうまくなんていっていない。その結果の、国の借金総額一千兆円だ。日本金融はそこまで国債を買っているという。だが、そのカネは預金者……つまり、国民に政府は一千兆円も借金しているということだ。

 また財政危機を受けてまた『貸し渋り』『貸し剥がし』だった。

O「現状では、各支店のパソコンにはリスク分析のためのデータなどないし、業種別のデータ・ベースからデータをとりだすようなツール(道具)も汎用ソフトもない。また、それをできる人材もまったくいない。いるのは「学歴エリート」か、コネかなにかではいったお嬢ちゃんやお坊ちゃんだけだ。まあ、今や生成AIや万能AIで何でも可能だが…。

 本店・本部の分析は、ペーパーだけで行われているのが現状で、そのためにいきおい財務諸表の美しさに心を動かされるのもやむおえない。デジタル化が進まないのはいろいろな問題があるが、政府関係でいえば、複雑な日本人の名前の漢字だ。渡辺さんの(なべ)が数十種類。齋藤さんの(さい)が数百種類。名前を常用漢字に統一すればハンコや書類も新しくしなければならなくなる。……本店・本部がリスク管理をするのは当然だが、それで各支店には最低限のリスク管理の処方もないのでは、あまりにもイビツだ。その結果、各支店は、なんとしてでも通したい融資物件には嘘の記入までして本店に送るようになる。通したくない場合はその逆の記入をするようになる。

 たとえば、信用組合などの例をとると、そういった不正が行われないようにと行員は地元の人間を使わない。「馴れ合いで融資しないためですよ」ある組合のオーナーはそう威張って私に言ってた。しかし、矛盾がある。

 実際には、不正融資などをするのは8割りが組合のオーナーである。部下に厳しくする前に自分自身に厳しくしたらどうか?それと、「馴れ合い」というが、地元と密着した経営こそが信用組合の「強み」であろう。それがなくて、どうして大手の銀行に勝てるというのか?その判断さえできないというのか?」

N「不正融資の前にリスク管理の強化が先であろう。日本の金融機関は上にいくほど腐っており、その頂点が財務省、日銀、というのを忘れてはならない。まあ、取引の殆どは現在ではAI(人工知能)がやってますがね。今は。デジタル通貨で、窓口が激減中ですよね」


         海外金融機関の現状



 海外融資に関しても、本店が「遠隔操作」でやっていた。

 これは、日本の金融機関が海外でバヴルにまきこまれて大量の不良債権を抱えた結果、財務省が「海外現地法人にまかせるとロクなことがない」とかいって、金融機関の審査機関をすべて日本に戻させたことに始まっている。

 日本からの「遠隔操作」で判断できる融資物件など限られているが、要は、本店でわからないことはやらなくていい…ということなのだ。

O「財務省はなにか金融に問題がおこるたびに強権を発動するのをやめるべきだ。税金を為替市場や株式にツッこんだり、公共事業で税金を大量にスッたり、作文を書いてバカな政治家に棒読みさせたり……そのようなことはやめるべきだ。

 そうしたことをしても心が痛まない財務省の連中らは、「恥」を知るべきだ。いみじくも人間としての良心が少しでもあるなら、民間にタカったり、税金を着服したり、不況対策、金融危機対策などと称して六十兆円も何百兆円もスッたことにたいして「反省」すべきである。それがちゃんとした人間というものだ。それが良識ある人間というものだ。

 財務省の甘やかしの結果、日本の金融機関は融資プロジェクトに関しては自らの判断を放棄し、「モルガン・スタンレーがやるならうちも乗る」などといったやり方に終始してしまっている。そういうのは危ないのが多いから、結局最後にババを引かされ、泣き寝入り……となっている。まさに、メンタリティが「子供」のままだ。今はAIプログラムが一秒に数万件という投資を自動処理でやってるが」




         リスク管理



 リスクというのは本来は、将来期待できる利回りがどれくらい変動するか、できまる。これを管理するのが「リスク管理」というものである。

 もし期待度が10%だとして、その差がプラスマイナス2%たったら、それが2%のリスクである。一般には変動が高いほど期待値が高くなり、リスクを補填する。これがいわゆる「ハイ・リスク、ハイ・リターン」である。

O「しかし、それは将来のことであって、「ぜったいに儲かります」などという訳ではない。儲かるどころか、ヘッジ・ファンドのように「デリバティヴ(金融派生商品)」で大損することもある。その例のひとつが破綻したLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)やリーマン・ブラザーズといえよう。株式や為替などというのは言わせてもらえば「バクチ」であり、儲かる時もあれば大損する時もある。だから、ひと昔前の、「大損したから損失補填しろ」などという損失補填事件はいかに馬鹿らしいかがわかるというものだ。しかも米国発の金融恐慌で派遣社員が何十万人も首を切り路頭を彷徨ったこともあった」

N「銀行は国以外に融資するときは、その融資物件が安全かどうかを厳しく審査しなければならない。長い間、日本の金融機関は担保(7割が不動産)を差し出させ、リスクを回避する…というやり方をとってきた。一方、欧米では金融市場が自由化されるに従い、優良な企業には無担保で貸し出しし債券を発行できるようになり、また銀行の貸し入れも無担保になった。日本の、「リスク管理は担保で…」は通用しなくなったのだ。

 大体、担保がなければ金を貸さないのでは金貸し(サラ金)と同じである。銀行はサラ金や消費者金融やローン・カード会社とは違うのに、同じようなメンタリティでやっている。日本の銀行機関は何か「考え違い」をしているのではないか? 銀行の「ありよう」がわかってないのではないか?」

O「また、自己資本比率とは、いざという時に自らを守るという意味で極めて「現金」に近い形にしなければならない。(政府の金融再生法案や早期健全化法案では、自己資本比率が8%のところは救って、2%以下のところはツぶすという。なんとも呑気な法案である)ところが実際には、BIS(国際決済銀行)の自己資本比率を達成するために、日本の金融機関は、保有株式の含み益の45%を2次的な資本として算入することを国際的に要求して認められてしまった。今日明らかになったように、信用不安が起こるような時は、株価が安くなり、投機家や経済マフィアが暗躍し、しかも日本の企業は大量の「売り」を吸収するだけの流動性もないから、「リスク回避」としては非常に脆弱なものである」

N「しかも、日本の金融機関の含み益・担保の7割が不動産で、しかも大部分が「更地」である。これはどういうことか?」

O「リターンを得るためには、さらに資金を注ぎ込まなければならない。「更地」では利益にならないから、そこに一戸建てなり商業ビルなり建てなければ売れない…リターンが得られない。しかも日本の土地は大量の「売り」を吸収するだけの流動性もないから、

「リスク回避」としては非常に脆弱なものである」

N「そこがTVに出てくるエセ経済ジャーナリストにはわかってないのではないか?」

 つまり、含み益があろうがなかろうが、それが株や不動産ならリターンは得られないということだ。「更地」では利益にならないから、そこに一戸建てなり商業ビルなり建てなければ売れない…リターンが得られない、ということなのだ」

(日本の個人金融資産は2100兆円で、このうち預貯金が57%を占め、有価証券は11%に過ぎない。有価証券が40%を占める〝金融先進国〟の米国にどこまで近付けるか?)(▼日本経済 国全体の正味資金(国富)3999.1兆円。国富増加は、日本の水膨れを意味する。(大前研一氏記事より引用))






         「お金」の気持ち




 お金というのはすべて日本では「円」で換算され、現されるが、実際にお金の性格は、お金を提供するひとがどれくらい運用してくれるかによって期待度は変わってくる。

 税金なんかもそうで、税はわれわれの生活を支えるのに必要な国の重要な収入です。税は豊か限るひとから貧しい人達に富を再配分するという機能(応能負担)ももっています。ただ、所得の多いひとから少ない人へ、強制的に移転させる仕組みは、頑張って所得をあげようとする意欲を喪失させかねません。ベンチャーで頑張るひとが求められる今、その仕組みは再検討されなければなりません。

 頑張った分、所得が増える。でも、罰ゲームみたいに税金でほとんどもってかれるようではベンチャーが育たなくて当然なんです。ハイリターンだから頑張れるのに…。

 所得が二千万円以上になると三分の二もってかれます。それでもその残りをためて立派な家を建てると今度は相続税です。きつい累進課税で、七〇%もとられます。

 しかし、大多数のサラリーマンは恵まれてます。

 例えば、四人家族でお父さんだけが働いていて、所得が三八〇万円程度なら、所得税はゼロなんです。それは給与所得控除やその他の制度によって引かれているからです。


 お金というのは、それ自体はけして「悪」でも「善」でもない。お金をもっているから善人ということもないし、もってないから悪人…という訳でもない。お金を持っているから「偉い」訳でもなく、もってなく貧乏だから「卑しい身分の者」という訳でもない。ただ、世俗的な成功は「お金をいくら持っているか、儲けたか」で計られる。

 金融機関の安心度も、キャッシュ・フローがいくらあるのか?で計られるともいえよう。要は、預金者のおろす預金の保有範囲(ストック)がいくらで、その全員の預金者が金をおろすだけの許容に耐えられるのか?…である。現在はキャッシュレス社会で、スマホ決済やカード決済が当たり前になり、仮想通貨の時代である。つまり、現金ではなく、電子決済、ということである。

O「銀行が倒産するのは株が下がったとか、そういうことでツぶれるのではない。全員の預金者が金をおろすだけの許容に耐えられなくなった時、つまり「金欠」になったときにつぶれるのである。

 それから、預金者が、元本が保障されているのに投資するのか、元本が保障されてないのに投資するのか、で金融機関の計り方も大きく異なる。証券の場合は、決まったリターンを金利という形で受け取る債券か、リターンの変動の大きい株式か、で計り方が違う。 つまり投資家のリターン・リスクを考えて運営しているか?が問われるのである。

  アメリカでは昔、ジャンク・ボンドに投資して「ハイ・リスク、ハイ・リターン」で預金者を煽って金を集めた金融機関が、大損失をだして倒産した。結果、経営者は罪に問われ、有罪に問われ「刑務所」にぶちこまれた。また、「ハイ・リスク、ハイ・リターン」ということでいえば、ヘッジ・ファンドで破綻したLTCMがあった。LTCMが破綻して、ロシアやアジアがいっそう経済危機、金融危機になり、アメリカのバブル経済も吹き飛びそうになった。結局、アメリカ政府がLTCMに公的資金を導入して再生させたが、この破綻の余波は大きい」

N「お金はよく「寂しがりや」で仲間の金があるところに集まる、という。もちろん、そんなことは俗説だが、ヘッジ・ファンドで裕福な資本家から金を集めて、デリバティヴで倍にして世界市場に投資して、アメリカの経済は潤っていた。その機関が破綻したのだから、ジョージ・ソロスでなくても泣きたくなるってものだ。

 結局、彼等は、「お金」の気持ち、がわかってなかったのかも知れない。まあ、いまにしてみれば古い話ですがね(笑)

 今の投資はインデックスファンドで、コンピュータのAIでの自動取引が主だ。

 よく投資というと、大きな机の四方八方に大きなコンピュータ画面で株取引……というイメージがあるが、ああいうのは特殊な技能のひとがやる戦闘機攻撃、のようなものだ。

 そういうスキルも大事だが、それよりパソコンで出来ない創造性の仕事が今は一番と儲けられる。暗記や計算ならパソコンがあり、人間ではもう勝てないのだ。

あまりにも抽象的な表現だが、私はそう思う」






   第六章 ケインズ経済はもう役に立たない




 この三十年ほどで、世界経済の実態が大きく変わってしまった。

 少なくても、今のマクロ経済というのはケインズ経済学を主体としているように思う。ところが、ケインズ経済学というのはいわば「限られた国境線のある国の経済」なのである。けして、いまのグローバリゼーション経済、ボーダレス経済やキャッシュレス経済とは違う。当時のイギリスは、植民地を解放したとはいえ、経済的には旧植民地からの輸入、輸出がおもだった。アメリカの経済も、モンロー主義で、国内でだけ公共需要を作っていればよかった。そんな中でこそ、ニューディール政策もうまくいったのである。ごく、「限られた国境線のある国の経済」であったからだ。

O「そういうところでは、有効需要をつくっていけば供給も国内でうまれ、それに対する供給量も増える。需要も増える。そうすると消費も刺激されて、有効需要もいっそう増える…という具合だった。しかし、いまのグローバリゼーション経済、ボーダレス経済では、国内で有効需要をつくっても、絶対に国内に供給がでて消費される…という訳ではない。 たとえばアメリカ国内で有効需要をつくったとしたら、供給はカナダやメキシコ、東南アジアや日本にでることもある。なぜそうなるのかというと、当たり前の話だが、ケインズの時代にはなかった「情報化経済」「コンピュータ・ネットワーク経済」がそこにあるからである。ケインズの時代にはなかった「コンピュータ産業」「ロボット産業」「AI(人工知能・生成AIやDX)」がそこにあり、国境を越え、時差を越えて世界中を行き来しているからである」

N「つまり、ホワイト・カラー、ブルー・カラーに加えて、新しい「コンピュータ・カラー」、「ロボット・カラー」がでてきたから、ケインズ経済学はもう成り立たなくなりつつあるという訳だ」

O「ケインズ経済学はもう成り立たない。

 にも関わらず、日本は景気対策と称して、「有効需要」「公共投資」と、ケインズ経済学にそって大量に税金を注ぎ込んでいる。そして百兆円もスッてしまった。また、アメリカ政府との間に、「430兆円の公共投資をする」と約束までしてしまった。これはムダ使い以外のなにものでもない」

N「実際には、政府も地方自治体も「火の車」で、それでもムダ使いをやめることもない。財源が足りなくなれば「赤字国債」「地方国債」「建設国債」などを乱発する。そして、北海道に高速道路をつくったり、沖縄の離島に橋を架けたりする。それでも足りなくなれば、「融資」などといって、税金や年金を流用してしまう。郵政民営化で民間に財投が流れたとか郵便局が便利になった…という話はききませんが。アメリカのアフラック社とかいう保険会社が郵便局経由で日本にやってきただけで(笑)」

O「日本開発銀行、日本輸出入銀行からも流用してしまう。また、住宅ローンも乱発して、次々と「劣悪な欠陥住宅」を乱造してしまう。郵便貯金や、お年寄りのための年金をPK (株価維持策)で株式市場にツッこむなど朝飯前である。震災で「住宅」の殆どは流された。また、マネー・サプライということでいえば、それで景気を判断し、操作しようというのが財務省や日銀のやり方だ。が、それは意味をなさなくなりつつある。というのは、一国でマネー・サプライして、「通貨供給量」を操作しようとしても、インパクト・ローンで外国からいくらでも金を借りてくることができる。だから、マネー・サプライだけで景気を判断し、操作しようという考えは成り立たない。

 それから、国内でマネー・サプライをどの程度にしようが、外為マーケットを通して一日に約1兆3千億ドルのお金がやりとりされている。それは電子的に、国境を越え、時差を越え、やり取りされているのである。一方、貿易に使われる金は、世界全体で1年でも3兆8千億ドルくらいにしか過ぎない。そして今は仮想通貨や電子マネーの時代である。AI自動取引プログラムとか」

N「お金というものは魅力あるところになら、瞬時に移動するものだ。それが投資であり、投機というものだ。そうした巨大な金が一日で動いているような現状では、一国でいかに通貨供給量(マネー・サプライ)を制限しようが、たいした障害にはならない。

 また、金利や公定歩合も、国際市場では「さやとり」されるから、一国ではどうしようもない。一国で決めていくことはできない」

O「ところが、日本の金融のひとびとや政治家、経済官僚はまだそのことがわからず、いまだに為替や貿易収支で「経済」を判断している。そして、貿易不均衡の是正のために為替は高いほうがいい、とか、安いほうがいい、とかの話をしている。

 実際には、為替というのは投機家のマーケットになっているのである。金融商品に魅力がなくなって、1%か2%かぐらいしか儲けられなくなった時、為替市場に参入すればうまくいくと日銀が介入してきてババを引いてくれる。少なくとも、月に4%統計上には6%は儲かる。したがって勝ち続けることはできなくとも20~30%は稼げる。そういう市場になっている。しかも、日銀は結局、絶対に、「円安はまずい」だの「株安は…」などといって為替に「日銀介入」してくるから、安心して売り浴びせることができる。

 投機というのは、ギャンブルと同じように参入者が多いほどリターンも大きい。だから、日銀が為替に「日銀介入」などしても勝てる訳はない。力というより金の量が違うから、勝てる訳はない。頭のいいはずのエリート日銀マンや財務官僚がそんなことすらわからないとは思えないので、きっと「国民を苦しめる」ために「為替介入」や「PKO」しているに違いない。つまり、「イヤガラセ」なのだ。

 本来、「投機」というのはリスクが高いもので、(普通の国の)為替には危なくて「参入」などできない。しかし、この国では日銀がババを引いてくれるようにできているので、(外人の)一部のトレーダーは、安心して売り浴びせることができる。「貿易不均衡を是正する」というのが大義名分である。しかし、実際には為替は「貿易不均衡」とは関係ない。1$が320円から80円になって、円安にふれて1$が135円くらいになっても、貿易不均衡など是正もなにもされなかったのに何故わからないのか?

 また、為替マーケットでは為替レートはいくらがいいか? などと話してみたところで、貿易するひとたちは一年に1500億ドル(日米間の収支)しか動かさないのに、投機家たちは一日で2000億ドル(NY、ロンドン、東京市場の合計)も、日によってはドルと円を動かしてしまう。だから、何度もいうように、金の量が違うから、勝てる訳はない…ということだ。それをバカな頭や古いケインズ経済学の考えで「介入」するから、ババを引かされ、「泣き寝入り」するしかなくなる。ま、今はAIプログラムで数秒に何万件自動取引だ」

N「「尻拭い」はいつも日本国民いや、預金者、納税者、である」

O「もし、一切介入しない、ということになったら…きっと「正常」な状態、「正常」な為替市場にもどるに違いない。

 投機家というのは「臆病」だから、日銀がババを引いてくれない、となったらリスクが怖くて売り浴びせることもしなくなるものだ。そうすれば、為替はあるべき水準に動いていく。日本のように購買力平価と為替が2倍もひらいているような国は異常なのだ。

 1日に1兆ドルも動く市場や電子決済市場・ネット市場があるのに、それに気付かず、古い頭とケインズ経済学で対応しようとしている。それはさながら、ボロボロに錆びた日本刀をもって、最新式の戦闘機や巡航ミサイル「トマホーク」に突撃する武士……そんな感じだ。

 旧日本帝国軍部風にいうなら「一億玉砕」「神風特攻隊」である。

 そんなもの通用するわけないのは、すでに公然のこと、である」




         財源は国有財産民営化/ペイオフ凍結解除



 税制改革はなぜ必要なのか? それは、税制が景気に悪影響を与えているならなおさなければならないからである。日本は租税負担率が低いと財務省は指摘する。

O「だが、日本人は税金が重いと感じている。ちゃんと使われてないという不信感がある」N「税制改革はいわゆる恒久減税か?」

O「経済のグローバル化はとめられない。日本の法人税は安すぎる。外国から資本が入らず、投資機会が少ない。増税しかない。だが、景気対策なら金利の引き上げの景気対策の21兆円だ」

N「減税後の増税はどうするのか?財源も足りず、日本全体の債務(借金)が一千兆円もある。これ以上、債務は増やせませんよ。巨額な債務がある限り、景気回復も無理です。減税じゃなく、やるべきは借金処理と国レベルでのリストラでしょう。なんとなく消費税や所得税を減税しても、過大な債務、雇用、設備があるかぎり成長は望めませんよ」

O「そうか。法人税も、外形標準課税をするしかないが、赤字法人増税につながるのですぐにはできない。赤字法人は本当に赤字だ」

N「米国は、レーガンが減税し、その後、増税した。ブッシュ政権でも減税して増税したが景気はよくなった。が、その後金融恐慌…トランプが減税しアメリカは経済が好転したが、世界的なインフレになった。ウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻………そうしてその後の数年―――――――」

O「財務省は歳出が歳入をうわまわればすぐ赤字だというが、社会資本の貯蓄を考えなければならない。ストックを見れば黒字になる。減税財源は国有財産の民営化でまかなえる。特殊法人を売れば24兆円になる。官僚の宿舎も民間に売ればいい」


 ペイオフ凍結が解除され、破綻した金融機関に預けておいた資金が全額保護されなくなった。個人にも自己責任がかせられ、金融機関選択も重要になる。

N「預金保険とか、ペイオフってなんのこと?」

O「預金保険とは、個人が金融機関に金をあずけていて、もしその銀行が破綻した場合、国が1000万円まで保護して返してくれること。保証している預金を預金者に払い戻すことを「ペイオフ発動」と呼ぶ」

N「ペイオフを発動したことは?」

O「日本ではない。米国ではあるが、一人一人に預金を返すのは煩雑で難しく、ちいさな金融機関でだけおこなわれただけだ」

N「なぜペイオフを解除するの?」

O「凍結が長引くほど国民全体が税金で負担する額が増えてしまう。しかも、全額保護は個人だけでなくプロの機関投資家も対象になる。もうけをねらう投資家がいつまでも税金で守られているのはおかしいでしょ?」

N「…なるほど、そうですね」



         第七章 金融不安の原因



 原因のすべては、日本が過大な債務、雇用、設備を抱えてしまったことにある。過大な設備とはきらびやかな本社ビルや工場、保養施設、レジャー施設、商業用不動産ビルの建て過ぎにある。そして、日本は安すぎる国になった。

「建て過ぎ」の原因はいくつかあるが、経済が世界化するなかで「オフィスビルが足りない」と実際以上に叫ばれ、建て過ぎてしまったことにある。昔と違い、いまはCAD(キャド、コンピュータ設計)などですぐに設計したり、コンピュータですべて資材管理からなにからできるようになった。大型建設機械、トラック…いとも簡単に商業ビルが建つようになり、大量発注し、商業ビルがあふれかえってしまった。

 ところが、前述したように「土地」「商業不動産」にはサイクルがあって、エチレン・サイクルや半導体サイクルより周期が長い。儲かる時にはガバガバ儲かるが、次は日照り、そして倒産……などというのが当たり前である。中国人の爆買いが日本不動産まで及んだ。

O「このところ日本のゼネコンがどんどんツぶれていっているが、この問題と無縁ではない。この問題はあと十年は解決しないだろう。

 価格が下がっても「買い」が入らないのが商業不動産の特徴(団塊ジュニア世代が住宅減税にのって住宅投資していたが、住宅減税が終わってからはそうそうつづかない)なのだ」

N「90年代の不景気になった国をみてみると、商業用不動産、オフィスの空室率が15%を越えたところで「クラッシュ」や「メルト・ダウン」がきている。それは日本でも同じである。それを忘れてはならない」

O「地価はこのところ下がってきているが、まだまだ下がるだろう。世界と比較すると日本の地価はかなり安いのだが……」



       第八章 公的資金導入は正しいのか?




 日本人のプライベート・キャピタル(個人資産)の2100兆円がまったく動かない中で公共投資も赤字になっている。それに加えて米国発の世界同時株安のリーマンショック後の新型コロナ渦から数年後――――――。

O「この公共投資というのは景気にとってなんら効果はない。金利も為替も国民にとっては効果はないが、この公共投資というのは国民生活にとってマイナスに働く。それが政策当局にはわかってない。

 公共部門でいうと、不況の原因はとくに大都市を中心とした土地、人、債務、の余剰、そして大都市の商業ビルの建て過ぎ…供給過剰にある。ところが公共投資はそういったところとは関係ないところでおこなわれている。長野県に高速道路をつくったり、沖縄の離島に橋を架けたり、大阪に空港をいくつもつくったり…儲からない万博開催…。ムダ以外の何ものでもない」

N「税金がムダに大量に使われ、赤字が膨大な額になっている」

O「また、緊急景気対策となると、都会では用地収用などで時間がかかるので、いつも田舎でやることになる。いそいでやるニューディール(実際にはこの政策は失敗したが、表面化する前に戦争という需要が生まれた)はいつの時代も「田舎」なのだ。そんな感じで、ドンドンと税金が使われていく。財政投融資(年金、郵便貯金など)がどんどんムダ使いされていた。そして安倍政権になって地域復興や子供保険や膨大な社会保障費介護費・医療費……しかも、それにはなんの景気浮揚効果もない。

 いまの国家予算が90兆円とすると、その外側で国債が使われているわけだが、その額は140兆円である。それがモルヒネのように使われている。

 関西国際空港は1兆8000億円投資して造ったが、未来永劫ペイしない。長良川河口堰、はつくったが、イラナかった。

 このようにツケをどんどん今の30代以下の世代に先送りして、いらない公共施設をドンドンつくってしまっている。税金や年金などを使って…。若いひとがこの状況を知って怒らないのが不思議なくらいだ。いや、きっと知らないのだろう。なんせ、「若○の至り」というクイズを「若鳥の至り」だの「若乃花の至り」などと答えるような連中ばかりなのだから……。今の日本人の若者は、ひたすら低レベルなのだ。文字は読めても「読解力」「語彙力」が不足しまくっている。大卒でさえ、例に漏れず、なのだ。

 国債売却費を使っても、その巨大プロジェクトには収益見込みがどこにも見当たらない。そんなものがあるなら、わざわざ国がやることもなく民間がさっさとやっているだろう。ペイしないから、第3セクターだのなんだのといって税金を使わなければならない訳だ。儲からない事業であっても、ゼネコンに利益誘導したいときに第3セクターだのなんだのといってやるのが彼らの「常識」なのだ。バクチを除いて、国のやる事業はすべて赤字…。

国鉄などは債務が28兆円で、さらに膨らみ続けているが、ツケを国民に押し付けてしまった。なんの脈絡もなくタバコの値上げだのなんだのと、「掻き集め」である。この法案をつくった連中は「恥」を知るべきだ」

N「自分の「無能さ」に対して「恥」を知るべき?」

O「そう。また、日本の識者は、どこかの金融機関がおかしくなると必ず「公的資金を導入して救済しなければ…」などというが、これはいかに自分が識者でないかを現している。 公的資金というのは税金や年金に他ならない。それを使うことは国民にかなりの痛みをともなわせるということだ。なぜ、日本の金融機関だから…、などという理由だけで貴重な国民の税金をツッこんで「尻拭い」をしなければならないのか? どうしても公的資金を導入…ということならば預金者の預金保護と企業への貸付金の保護のみ、だ。

しかも、「特例業務勘定」で、総額17兆円までと決めた以上、そのルールを変えてはならない」

N「国・地方を合わせた財政赤字は一千兆円あるといわれてます。日本のGDPが五〇〇兆円程度だと考えると、いかに膨大な額であるかがわかります。しかし、日本の不幸は2100兆円もの個人金融資産があり、そのため表面化しないことにあります。

 その財政赤字はGDP比率からいえば一一%です。アメリカのレーガン政権での双子の赤字は六~七%程度、「イギリス病」といわれた英国の赤字の時も六~七%程度。日本の一一%という数字がいかに深刻かわかりますよね。

 もうすぐ団塊の世代(他の世代より6割人口が多い)が貯蓄の切り崩し時期にはいります。団塊の世代が貯蓄している分には問題がないのですが、もうすぐパニックになるでしょう。そして、国の借金のツケは必ず子供達にオーダーされます。

 金融恐慌で派遣社員や正社員が何十万人もリストラされて路頭に彷徨ったこともありましたね。

 ですから、我々の世代は、「二年間我慢して、財政を健全化させよう!」と、債務を増やさない努力をすることです。そのためには消費税のふたけた値上げも覚悟しなくてはなりません」


         第九章 景気認識





 日本は比較的所得格差の小さい国だといわれてきました。しかし、この一〇年ほどで所得格差が広がっています。それは、グローバリゼーションやIT革命で頑張った人が所得を上げたという点があります。まわりを見渡して実感できることもあるのではないでしょうか?

 さて、所得の不平等さを計るものとしてジニ係数というのがあります。今、日本の人口は一億二〇〇〇万人ですが、その所得の少ないひとから並んでもらって、所得の多いひとまで足していきます。すると、グラフができます。所得格差が大きいほどグラフが弓形になっていきます。日本は弓形に近くなっているのです。つまり、頑張ったひとが所得を得ている…という訳です。でも、前述したようにほとんど税金でもっていかれますけど。


 いまの日本経済を完全回復させるためには、二十一世紀産業(情報通信(IT)、AI(人工知能・生成AI・DX)、バイオ産業、遺伝子工学、ロボット産業)のような産業が育たなくてはならない。この領域で世界と競合できる可能性はある。しかし、教育が失敗しているから、第二の松下幸之助や本田宗一郎や稲盛和夫などぜったいにでてこない。しかも、日本にはベンチャーの国土がないし、教育システムや懲罰的税制を変えないで「ベンチャーの授業」だの「パソコン授業」だのとやってみたところで、いまのゲーム少年、チャット少女がますます増えるだけだろう。いま起業家スクールなどといって「起業家」を育ててみたところで、アジアや台湾、シンガポールあたりにやられて「泣き寝入り」がオチだ。

I「もうひとつ、日本人の弱いところは「英語」である。

 OSにしても情報通信にしても汎用ソフトにしても、すべては英語である。英語が操れない人間は、情報化社会ではダメなのだ。「ウィンドウズ」の日本語版はいつも遅れる。その間に、東南アジアや台湾(台湾総統・蔡英文氏(2024年1月の台湾総裁選で、民進党の頼清徳さんが、国民党の候友宜候補と第三党の柯文哲候補をやぶって当選。新しい台湾総統に就任)、シンガポールやバンガロールにいいところはすべて奪われてしまう。イギリス、NZ、アメリカ、オーストラリア…成功しているところはすべて英語圏だ。日本人はそれがわかってないのではないか? もう「英語」が世界共通語であることを…」

N「また、「金利」についても是非言いたい。

 バヴルで借り込んでいる企業は金利が低くないと困るけれども、国民の声を反映していない。2100兆円のほとんどが、金利を低くすることによって動かないようになっているのだ。金利を高くしないと、個人資産の余りあまっている先進国においては景気はよくならない。2100兆円を動かすためには、金利(運用利回り)を上げたほうがよい。それが景気刺激に繋がる。

 たとえば、金利を1%あげただけでも21兆円の減税効果になる。5%なら150兆円分を国民のポケットに返したことになる。個人消費はGDPの6割であるから、これは大きい。 これ以上の景気刺激策はない。しかし、そういうと財務省は「そんなことしたら銀行や中小企業がバタバタつぶれる」というだろうが、つぶれるようなところはつぶせばいい。それを無理に救おうとするから税金を大量にスッてしまうのである」

I「また「円高は困る」などといって、政府は為替に介入するが、円高だろうが、円安だろうが、海外にでていった企業や工場は国内には帰ってはこない。米国債、NZ国債、豪国債、加国債…そういうものに手を出していたら歯止めがきかなくなる。

 そんなことさえ、日本国政府にはわからなくなっているのである」

         日本の現状と都市の再生




 アメリカが景気が良くなったのはフロンティアに直面したからだと思います。それは社会主義国の崩壊で、資本主義市場が二七億から六十億人に増えたからです。ひるがえって、日本はどうだったか?

 日本という国は資源がありません。そのかわり人だけはいっぱいいる国です。そこで、人材教育を一生懸命やりました。それから、明治維新頃から外国のいいものをどんどん取り入れてコピーしました。それこそ謙虚に一生懸命マネしました。そして、終身雇用や年功序列というシステムを生み出していきました。

 よく規制緩和が必要というと、「それは日本には馴染まない! アメリカのやることだ!」という意見がありますが、いいところは取り入れるべきなんです。

 派遣切りや雇用不安や金融恐慌は悲惨でしたね。でも、AIやロボットでも産業革命ですから雇用危機や制度危機はあるんです。

 それと、土地に関していえば、土地は一つの資産です。資産の価値はそれがどのくらいの収益を生むかによってよって決まります。日本の地価はバブルのピークまでの三十五年間で二二〇倍になりました。今、地価が下がりましたが、半分でも一一〇倍です。だが、世界に比べて日本は安すぎる国になった。地価も物価も安すぎる国になった。都心のサラリーマンは無理して都心に一戸建てを建てましたが、今、その投資額より土地は上でしょうか?また、株も大幅に下がりました。株というのは、その企業が将来生み出すフルーツを当てにして売買するものです。今、日本の会社の株は高いものもあれば下落したところもある。ヤフーなんて一億になりましたが、いまは低迷してます。

 極端な話し、日本国がつぶれてもトヨタは潰れません。只、外国に会社がいってしまうだけです。そういうことが、起こりつつあるのが今の日本なのです。

 それから、二十一世紀の産業は都市型産業です。東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨、など批判を恐れずにいえば田舎での災害……。都心部は相変わらず人口は増えているし、ビジネスチャンスもある。ITもAIもDXも仮想通貨も、都市型産業ですよ。

 よく、ITがあるなら地方でもやっていける…などとききますが、少し違います。国際コンサルティング産業、国際ソフトウェア産業、国際金融など人口が多くて集約している都市でなければできないことが多いのです。そのために都市のインフラが整備されていなければならないのですが、東京はインフラがいまいち整備されてません。地方となるともっとひどい。とにかく、二十一世紀は地方で……ではなく、人口集約型産業が主になるってことです。ですから都市の再生は急務です。まあ、その半分はリモートワークで、通信でいいので、地方でもいいのですが。北海道や九州の半導体メーカー工場とか。いままでスーパー林道だの田舎のコンサートホールだのに公的資金が使われてきたのは残念でなりません。結果、ITが遅れてるのです。

 また、日本の住宅が高いといわれますが、その理由は、土地代が高いほかに、住宅そのものの値段が高いっていうことです。それでも世界から見れば安くなりましたが。おおまかにいえば日本の住宅(建物のみ)の価格はアメリカの三倍から四倍程度も高いのです。日本はこれまで土地の値上がり益だけに期待していましたが、これからはリバースモーゲージという考えかたも必要になるのではないでしょうか? 子供の学力低下も問題ですが、別の著作で語ります。




   救国の新世紀維新「大日本復興計画と戦略」

(落合陽一著作『日本復興戦略』幻冬舎より記事引用および記事参照)


「日本復興計画と戦略」


 今の日本は自虐的な自国批判か、天動説的な自己中の「日本はすごい」という感じの自画自賛コンテンツばかりになっている。「過去の日本は何がすごくなくて何がすごくなかったのか?」これを考える情報を知り、自分の頭で考えられる様にならねば如何ともし難い。

ここで、世界を影で操っている『彼ら(世界一部の為政者・権力者やCIAやMI6やモサド中国や北朝鮮の情報部などの諜報機関)』の意見を載せよう。但し、彼らにもプライバシーがあり、生活も、守秘義務もある。ある国際ジャーナリストみたいな「CIAやモサドの俺の友人がこう言っている」みたいなことは真似出来ないが(笑)、文章もかえてニュアンスだけで伝えればこういうことだ。「今はコンピュータのインターネットやSNSやらで情報は溢れて、誰でも世界の情報が得られるかのように思う。はたしてそうだろうか?確かに情報が得られるがそれはフェイクニュースだったり、我々が意図して流した〝情報〝だ。スノーデンで有名になったように、我々は、特殊な電脳システムで、〝世界の情報〝を得ている。そして、その〝情報〝によって世界を影で操っているのだ」「でも、例えば『JFKの暗殺』とか『スノーデン事件』とかそれこそ『ロッキード事件』や『カルロス・ゴーン事件』でも、〝すべての情報〝のようなものがネットでも簡単に〝その情報〝が検索すれば出るが……?」「それらの〝情報〝も、我々が意図して流したものだ。ほんとうの〝情報〝はあんなものじゃない。本当の〝情報〝は簡単には集められない。だからこそ、本当は〝情報〝は〝カネ〝になるんだ」

世界は謀略や陰謀で満ちている。すべては情報次第。今こそ情報、そして自分の頭で考えて、決断するのが、時代の趨勢でもある。

それこそ決断であり、英断であるべきだ。

過去のマイホーム制度もアイディアは最高だった。頭金を払い、後のローンは毎月銀行口座から引かれていく。人口ボーナスや高度成長戦略が垣間見える。

また、田中角栄首相の『日本列島改造論』も素晴らしい。日本のような島国で、移動に不便な国を、高速道路や地元空港や新幹線で、一日で日本全国を行き来できるようにした。

田中角栄が「天才」といわれるのはそうしたビジョンがあったから。大金をばらまいたとかじゃないんですよね(笑)。今の日本は日本でつくらなくてもいいものまでつくってしまっている。デジタルネイティブ世代では当たり前のイノベーションがないと、隠蔽体質、炎上体質、いじめ、パワハラ、セクハラ、モラハラ、残業など問題は山積する一方です。

AI、AR・VR、5G(第五世代の移動通信システム)やブロックチェーンは間違いなく世界を変えていきます。新しいテクノロジーをどう生かしていくか?これは賢い天才とかイノベーターが必要ですが、天才じゃなければ駄目な訳でもない。

これからの自己流の勉強次第だと思いますよ。

パソコンのプログラム研究や政治経済の勉強、心理学や兵法やプロパガンダ(大衆操作)やマーケティングの勉強……まだまだ間に合います。

おじさんやおばさんでもまだ間に合うんです。

 また「欧米」という価値観も改める必要があります。

我々日本人がよく使う「欧米」……しかし、アメリカには法の見本があったり、フランスには自由経済の見本、ドイツの法律を日本は参考にして導入しましたが、過去の「いいところどり」だけでは日本のシステムはよくはなりません。

フランス型の『男女平等』は真似しない方がベストです。何故なら日本とは文化が違うからです。フランスでは男女が飲みに行ったとき男女とも平等に勘定を折半します。

ですが、日本では女性より男性のほうが多くの勘定を払うでしょう?これを外国でやると、女性が「差別だ!」と怒るんです。

でも日本人の女性はそんなことはいわない。「男が勘定を払うのは当たり前」「(デートで)男性が女性におごるのはマナー」とかになっています。

この感覚の違いを無視してフランス版『男女平等』をやるとカオス(混沌)になる。『年金制度』『老人介護職業訓練制度』は違いますが。

また、『働き方改革』も「ワークバランス」の範疇です。ストレスで死んだり、過労や残業で死んだら元も子もありませんから必要な規制です。いじめや児童虐待も。

今後は少子高齢化で、老人ばかりになって子供がいなくなる……というのが悲惨に考えられます。が、老人が多くなるのも人口が減少するのもチャンスではないですか?

人口が減るというのは〝自然減でリストラが出来る〝ということです。日本はさらなるIT化・AI化・ロボット化すればいいし、単純作業の外国人派遣労働などもあるでしょうが、工場や警備とかレジ係とかタクシーバス(自動運転)とか、どんどんロボット化すればいいんです。老人にしてもボケたり寝たきりにならなければ〝シルバー人材〝〝シルバー需要〝として生かせるんです。これが経済戦略というものです。

また、〝ホワイトカラーのおじさん〝も、いろいろな職業を兼業させればつかえます。

いままでの学区教育制度は、まさに工場での「単純作業タイプの労働者」も築くためのものでした。その地区その地区に学区をもうけて、その地域の学生を入学させる。

基本的に習わせる教育は同じ。何故なら「この学校では音楽を重点的に教える」「この学校では英語を重点的に教える」というと、一部の音楽好きや英語好きの子供はよろこぶだろうが大半の学生は反対する。そこで同一化が図られる訳だ。

また、学問はつまらなく、我慢を強いるものになっている。

何故なら、働くことは我慢とつまらないことを続けることだからだ。

だが、これからの教育はそれではいけない。

IT・PC・SNS・コンピュータプログラム教育(ネット注文・販売・配達「コンビニにいかなくなる?」)、5G(テレプレゼンテーション、自動運転、バーチャル体験、リアルタイム体験、感覚伝達、世界語自動翻訳・通話、アンドロイド、障害者補助)、ビジネススキル・文章や絵やデザイン・プレゼンテーション、討論・コミュニケーション・読解力、自分の頭で考える創造力想像力強化、社会道徳教育(他人を偏見の目で見ない。人の悪口を言わない。〝自己中〝を辞める。拝金主義じゃなくノブレス・オブリージュと仮想通貨、キャッシュレス化、オークション、フリマ、レンタル、シェア、ウェアラブ端末、AI、VR、クラウドファンディング、クラウド化、介護・転職勉強)、英会話教科教育など今後は必要になってくる。道州制度(10~20万人都市ごと*廃県置藩)、大阪都構想なども絶対に必要です。

よく「英会話をマスターしたい」という学生が居るが、「英語で何を外国人に訴えたいの?」ときくと答えがない。いいたいことがないのに英会話をマスターしても「通訳」以外の道はない。誰でも「自分の頭」で考え、「自分の意見」をいい、「討論」するスキルがいる。

ITも勉強不足だから中国に負けた。日本で中国のようなアリババやテンセントやバイドゥは生まれなかった。日本はメルカリやソフトバンクと楽天とLINEやZOZOだけだ。

今の日本ではGAFA(Google、Apple、Facebook(Meta)、Amazon)の強大企業には勝てない。

これからのリーダーは3タイプにわかれる。

部下もそれらに附属する。

①旧型リーダー(オールマイティ型)

②新型リーダー(タレント型)

③AI型リーダー(AI・スマホ・5G&PC型)

とにかくすべての叡智を使い、勉強するべきは勉強し、将来に備えることだ。

今の時代、一流大学を出れば安泰じゃないし、一流企業に入社すれば安泰じゃない。

これからこそサバイブの時代だ。

そしてだからこそ「自分の頭で考える」能力が問われる。他人からの盗作で褒められても少しもうれしくないのは当たり前だ。

誰も他人の考えなんか聞いていない。あなたの「意見」をきいているのだ。

そこで答えられなければ「人間」なんかやめてしまえ。

そんな人間は絶対に社会で成功出来ないのだから。だが、勉強次第で変われる。

この書を、バイブルとして、努力勉強するのだ。まさに、その時は今、だ!



         改革を止めるな!


 やはり個人消費が鍵だろう。日本の個人金融資産は2100兆円あるという。そのうち56%が預貯金だ。もっているのは高齢者…。だが、この膨大な金が動かない。すこしでも動けば景気回復になるのに。

 …なぜ動かないか?といえば、当たり前のことだが、将来に不安があるからである。年金や老後、介護、医療、マイホームのローン…いろいろ不安があるからだ。

 自分の子供や孫への将来の不安……。

 また、構造改革の遅れや過大な国の借金…政治家のリーダーシップ欠如と、膨大な一千兆円にも及ぶ債務である。まず景気を少しでも回復にのせ、それから国有財産をすべて抵当にいれてでも借金を返すしか道はない。公共事業も10年間停止し、財政を建て直す…これしかない。

 誰も通らないような道路や橋をたてたり、九州や北陸に新幹線を通しても仕方ないではないか。また債務が膨らむだけなのだから…。

 でも、効果のある公共投資は必要だと思う。例えば北海道の北から九州鹿児島まで新幹線を通すとかは夢があっていい。雇用は百万人は見込める。

 戦略は『観光立国』ビジネスと金利の上昇(による個人資産倍増での消費拡大で、好景気)。

 今、経済を発展させるのは公共事業でもPKOでもない。構造改革と緊縮財政…なのだ。 また、日本の貯蓄の3分の1が財源…つまり国の財投に消える。この金はリスク・マネーにならない。この貯蓄の何百兆円の金を市場に出回らせれば景気もよくなる。

 年金の140兆円を、政府は景気のカンフル剤として株価維持やゼネコン維持などに使っているからだ。「金庫株」も「401K」も遅かった。「流通」も、大改革が必要だ。

 財政赤字の問題も大きい。赤字一千兆円のうち8割が地方自治体の支出である。個人金融資産が2100兆円ある…などといっても団塊の世代が切り崩す時期が迫っている。日本の政治家は「国の借金を返すまで血が流れるが、我慢しよう」というヴィジョンを民衆に訴えなければならない。「ペイ・オフ」や「セーフガード」などもっての他だ。地方自治体もこのままではやっていけない。どうするか?

 確かに、トヨタの大企業の収益は伸びている。しかし、一方で、中小企業がバタバタ潰れていっている。日本では努力しても、小室哲哉(08年詐欺で逮捕)や宇多田ヒカルやつんくや秋元康や孫正義や前澤社長や柳井会長などの例外を除いて〝豊か〟になれない。その現状が問題なのだ。

 そして、日本は〝頑張った人が豊かになる〟という社会を作らねばならない。それが、今、日本という国に課せられた使命なのだ。

 いま世界経済はカオス状態である。

 ヘッジ・ファンドが世界の金融に及ぼすダメージは計りしれなかった。

 ちなみにヘッジ・ファンドとは、少数の大富豪や投資家から大手の金融機関などが資金をもらって、それを大きな見返りを狙って「デリバティヴ」などで倍にして投機性の高い金融商品に投資する基金のことであった。高度な金融技術で損失の回避(ヘッジ)を目指すことからヘッジ・ファンドと名がついた。ジョージ・ソロスのクォンタム・ファンドが有名だったが、170兆円もの巨額の損失を出して破綻寸前に救済されたLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)も有力なヘッジ・ファンドのひとつだった。アジアの通貨危機やロシアの通貨・経済危機はヘッジ・ファンドが主犯だとの見方が強い」

 今、格差社会となり、『いざなぎ越え』といわれながらも、誰も実感がない。当たり前である。儲かるのは企業だけ……従業員の給料は下がり続けているからだ。

 また団塊の世代の大量退職で売り手市場だが、一方で正社員になれない非正社員(派遣、フリータ、ニート、パート、障害者)の数は225万人、1680万世帯で苦しい。ひきこもりも100万人もいるという。

 またワーキング・プアと呼ばれる働いても豊かになれぬ人々が、年収200万円以下で、400万世帯。国民の1/3が収入減だ。

 この格差と社会システムが改善されない限り、第2のホリエモンや村上や前澤社長が出てきても、自殺者が急増するのは明らかだ。

 セーフティ・ネットが是非とも必要だ。

 グローバル・スタンダードはいいが、アメリカ並になってはいけない。一%の大金持ちが腐るほど金をもっていて、ほとんどのひとはワーキング・プア(働く貧困層)では日本の未来はない。どこにでも格差はあるが、大事なのは雇用の質だ。たとえば正社員と非正社員が同じ時間働いていれば給料も同じでなければならない。それが、非正社員が正社員より少なく、生活保護者より年収が少なくなるのでは単なる搾取である。

 ただ、では最低賃金を上げればいいのか………といえばそうでもない。

 大企業なら金があっていいだろうが、中小の余裕がない所は雇用危機が起こるかも知れない。リストラや工場を中国や東南アジアに移す………ということがおこるかも知れない。AIやロボット化が進むだろう。デジタル通貨も、AI革命も。5Gも。4K8K画像革命も。

 バランスが何よりも大事で、よりよい戦略が必要だ。私のような無学な輩にはよくわからないが、政府にはあらゆるシンクタンクやプロフェッショナルたちがいるのだから、よく計画を練ることだ。財政危機だからと何もせぬのは無策であり愚策だ。

  新しい「マネー革命」はすでに始まっている。その革命を生かすも殺すもあなたしだいなのだ。

     


               おわり




参考文献



(1)『ウクライナ戦争論』小林よしのり著作(扶桑社)(2)『ウクライナ戦争論②』小林よしのり著作(扶桑社)(3)『日本の論点2018-2019』大前研一著作(プレジデント社)(4)『日本の潮流2019-2020』大前研一著作(プレジデント社)(5)『日本の潮流 2020-2021』大前研一著作(プレジデント社)(6)『日本の潮流 2021-2022』大前研一著作(プレジデント社)(7)『日本の潮流 2022-2023』大前研一著作(プレジデント社)(8)『日本の潮流 2023-2024』大前研一著作(プレジデント社)(9)『日本の論点 2024-2025』大前研一著作(プレジデント社)(10)『世界インフレ日本はこうなる』池上彰著作(SB新書)

(11)『世界情勢のきほん』池上彰著作(ポプラ新書)(12)『第三次世界大戦日本はこうなる』池上彰著作(SB新書)(13)『20代の自分に伝えたい地政学のきほん』(SB新書)(14)『なぜ世界から戦争がなくならないのか?』池上彰著作(15)『池上彰の伝える技術』

(16)『難しいことはわかりませんがお金の増やし方を教えてください』山崎元著作(17)『国富論』アダム・スミス著作(18)『資本論』カール・マルクス著作(19)『君主論』マキャベリ著作(20)『ウクライナ戦争の嘘』斎藤優・手島龍一著作

(21)『問題は日本よりむしろアメリカだ』エマニュエル・トッド+池上彰著作(22)『独裁者プーチンはなぜ暴挙に走ったのか』池上彰著作(23)『我が70年の投資哲学』長谷川慶太郎著作(24)『今世紀は日本が世界を牽引する』長谷川慶太郎著作(25)『2020長谷川慶太郎の大局を読む』長谷川慶太郎著作(26)『今こそ「米中」を呑み込め』長谷川慶太郎著作(27)『中国は民主化する』長谷川慶太郎著作(28)『大局を読む 日本の難題』長谷川慶太郎著作(29)『強い個性の経済学』長谷川慶太郎著作(30)『生き方』稲盛和夫著作

(31)『経営13カ条』稲盛和夫著作(32)『経営』稲盛和夫著作(33)『心』稲盛和夫著作(34)『実学』稲盛和夫著作(35)『考え方』稲盛和夫著作(36)『京セラ フィロソフィ』稲盛和夫著作(37)『成功への情熱』稲盛和夫著作(38)『アメーバ経営』(39)『組織の盛衰』堺屋太一著作(40)『知価革命』堺屋太一著作

(41)『三度目の日本』堺屋太一著作(42)『日本を創った12人』(43)『油断!』(44)『平成維新』大前研一著作(45)『平成維新part2』大前研一著作(46)『第4の波』大前研一著作(47)『新しい消費者』大前研一著作(48)『IT革命』大前研一著作(49)『シニアエコノミー』大前研一著作(50)『企業参謀』大前研一著作

(51)『考える技術』大前研一著作(52)『ビジネスモデルの教科書』大前研一著作(53)『発想力』大前研一著作(54)『低欲望社会』大前研一著作(55)『この国を出よ』大前研一+柳井正著作(56)『50代からの稼ぐ力』大前研一著作(57)『大前研一の新・資本論』大前研一著作(58)『全員一致ならやめてしまえ』竹村健一著作(59)『国家と人生』竹村健一+佐藤優著作(60)『特上の人生』竹村健一著作

(61)『世界一の金持ちになってみろ!』竹村健一+堀江貴文著作(62)『逆転の成功術』竹村健一著作(63)『先見力』竹村健一著作(64)『好きなことをやって成功する法則』竹村健一+中谷彰宏著作(65)『正義と腐敗と文科の時代』渡部昇一著作(66)『決定版 日本史』渡部昇一著作(67)『幸福なる人生 ウォレス伝』渡部昇一著作(68)『知の井戸を掘る』渡部昇一著作(69)『国民の修身』渡部昇一著作(70)『名著で読む世界史』渡部昇一著作

(71)『名著で読む日本史』渡部昇一著作(72)『明朗であれ』渡部昇一著作(73)『終生 知的生活の方法』渡部昇一著作(74)『国際情報』落合信彦著作(75)『大いに語る』エマニュエル・トッド著作(76)『トッド人類史入門』エマニュエル・トッド著作(77)『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』エマニュエル・トッド著作(78)『思考地図』エマニュエル・トッド著作(79)『帝国以後』エマニュエル・トッド著作(80)『大分断』エマニュエル・トッド著作

(81)『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ著作(82)『2030年ジャック・アタリの未来予測』(83)『ニッポン再起動』竹中平蔵著作(84)『新・経済学入門』高橋洋一著作(85)『世界インフレ時代の経済指標』エミン・ユルスズ著作(86)『どうすれば日本経済は復活できるか』野口悠紀雄著作(87)『世界の宗教のことが3時間でざっと学べる』池上彰著作(88)『経済・政治のことが3時間でざっと学べる』池上彰著作(89)『池上彰のやさしい経済学』池上彰著作(90)『お金・経済のきほん』池上彰著作

(91)『脱原発論』小林よしのり著作(92)『国防論』小林よしのり著作(93)『新型コロナウィルス論』小林よしのり著作(94)『天皇論』小林よしのり著作(95)『愛子天皇論』小林よしのり著作(96)『戦争論』小林よしのり著作(97)『戦争論2』小林よしのり著作(98)『戦争論3』小林よしのり著作(99)『世界情勢2024』池上彰著作(100)『日本復興戦略』落合陽一著作

(雑誌)週刊東洋経済 2023年12/23・12/30新春合併特大号(2024大予測)

(映像・番組)番組『日経ニュースプラス9(2024年7月から『日経ニュースNEXT』にタイトル改題)』(BSテレビ東京)

(メール)メール『大前研一〝ニュースの視点〟』(毎週金曜日更新)

(参考文献②+α経済ベストセラー)『半導体戦争』クリス・ミラー著作千葉敏生訳(プレジデント社)『21世紀の財政政策』オリヴィエ・ブランシャール著作田代毅訳(日本経済新聞社)『現代日本の消費分析』宇南山卓著作(慶応義塾大学出版会)『なぜ男女の賃金に格差があるのか』クラウディア・ゴールディン著作鹿田昌美訳(慶応義塾大学出版会)『創造的破壊の力』フィリップ・アギヨン、セリーヌ・アントニン、サイモン・ブネル著作村井章子訳(東洋経済新報社)『私が見てきた日本経済』小峰隆夫著作(日本経済新聞出版)『資本主義とイデオロギー』トマ・ピケティ著作『綿の帝国』スヴェン・ベッカート『「経済成長」の起源』マーク・コヤマ、ジャレド・ルービン『ドキュメント通貨失政』西野智彦『コモンズのガバナンス』エリノア・オストロム                 

                他

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~シン・やさしいマネー革命「やさしい経済学」お金と経済がわかる ~元・全国新聞紙投書有名人の僕が、経済書のベストセラー100冊を研究して『最強の経済学本』を作りました。 長尾景虎 @garyou999

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