成人式、僕は代表スピーチを頼まれた!

崔 梨遙(再)

1話完結:1300字

 もう30年以上も昔のことなのかぁ、時の流れは残酷。今回は成人式の話。



 僕は、最初は成人式に行くつもりは無かった。たいした理由は無い。なんとなく、成人式で浮かれるよりも、成人式に行かずクールに1日を過ごす方がカッコイイかな

ぁと思っただけだ。それに、地元なのだから、同じ中学のみんなには、会いたければいつでも会える。


 ところが、成人式の代表スピーチ(3校1名ずつ、計3名)を依頼された。まあ、断れなかったので引き受けた。引き受けたからには成人式に行かなければならない。そこで! 僕は期待した。“成人式で代表スピーチをすれば、女性の心も鷲づかみではないのか?”、僕は女性陣にカッコ良く映るかもしれない。これは、同じ中学の女性と接近するチャンスだ!



 成人式当日、僕等スピーチ組は少し早めに会場に着かねばならなかった。中学の同級生だったテルが一緒に行ってくれた。僕等は会場に1番乗りだった。1番乗りのテルが、代表で花束を受け取ることになった。


 さあ、スピーチ! 数百人の新成人。その前で語る。緊張した。だが、僕は緊張すると手は震えるが声は震えない。だから大丈夫だと思った。何を話したのか? 原稿が無いので正確にはおぼえていないが、成人するまで支えてくれた人々に対する感謝と、明るい未来について語ったと思う。さあ! 崔がスピーチしましたよ! 女性陣の反応はいかがですか?


 女子は誰も僕に近付かなかった。


「崔、久しぶり!」

「崔君、久しぶりやな」


 僕達は10人以上のグループになったが、全員『男!』だった。グループでの記念撮影をしてもらった。10人以上いるのに、全員が男の暑苦しい写真、今ではその写真がどこに行ったのかわからないくらい悲しかった。女性が映っていれば、きっと紛失しなかっただろう。



 とりあえず、そのメンバーで1次会。居酒屋。男ばっかり。スピーチをしたくらいでは、女性の心は掴めないのね。2次会はカラオケ。で、3次会とやっている内に1人消え、2人消え、最後は僕とテルともう1人になった。


「これからどうする?」

「もう、風俗行こうや」


 テルが風俗行きを提案した。なんで、こんなことになったんだ~!? 中学が一緒だった女性は美人やカワイイ子が多かった。なのに、地元の女性にはとことんご縁の無い僕だった。ああ、あの時、僕の方から女性に話しかけていれば、それだけの勇気があれば……。仕方が無い、先を見据えて来世に期待しよう!


 18歳、高校を卒業して進学してからは、女性とお付き合い出来るようになった。そして、僕は社会人になってから多くの女性経験を得た。中学? 地元? 関係無い。僕と付き合ってくれたのは、地元以外の女性達だった。



 今、同じ中学の同学年だった知人達とは、ほとんど縁が切れている僕だ。何年か前、元同級生の男が亡くなった。その時、たまたま連絡先を知っていた同じ中学の女性から連絡があった。“お通夜、葬儀”の連絡だった。僕は“仕事で行けない”と返信した。嘘だった。無理をすればお通夜に行けたかもしれない。だが、僕はもう同じ中学の人間とは関わらないと決めていたのだ。例え、美人の元同級生がいるとしても。







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成人式、僕は代表スピーチを頼まれた! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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