熱血大剣
「なんじゃこりゃあ!!?」
右手が変なことなってるぅぅ!!?俺の持ってた剣も、
「ってか、毒とか怪我…治ってんじゃん!!」
『お〜い!』
「一体どうなってんだよ、俺の体!!!」
『話を聞け!!!!』
俺はドラゴンもといトカゲの大声で、錯乱状態から我に返った。
「すまん…どうした?」
『正直…こんな事になるなんて俺も想像もしてなかったわ。俺が知ってるんはアンタが持っているその王の龍印の有無と、それにまつわる伝承くらいでな』
王の龍印?どっかで聞いた様な名前だが、その名前以外、俺の脳裏には何も浮かんでこなかった。
「その、俺が持ってる王の龍印ってやつ。一体何なんだよ」
俺がそう聞き返すと、俺の中のドラゴンもとい、トカゲは薄笑いを浮かべながらこう返した。
『教えてやってもいいけどな…ここで話すには、外野がうるさいんでねぇ』
俺の目の前には、キョトンとした顔でこちらを見ている
「まぁ…そうだな。剣が
『せやったら頼もしいわ。腹も膨れたし、いっちょやってみるか!!』
————————————
俺は
それを大剣で受け止めると、木でできた棍棒や剣は焼け焦げ、そのまま、鉄でできた剣も大振りで
その刹那、自分の
俺はそれを避けず、真正面から受け止める。
激しい轟音が鳴り、俺は何とかその場で大木を受け止める。すると、
「ゴラララ!!!!」
案の定、周りには毒の矢を引いた、弓矢の連中がウヨウヨと集まってきた。
『ここままや危ないで!イメージするんや、心の奥底に眠ってるものを開放せい!!!』
正直トカゲ公の言っている意味はよく分からなかったが、俺は心の中でイメージしてみた。
周りへの劣等感、蔑まれたことへの怒り、そして…守るべき約束を果たすため!!!!
「俺は諦めねぇぞ!
ゴブリン供の弓からは矢が放たれた。しかし不思議な事にその矢は、俺を貫く前に燃えカスとなり、消えてしまった。
それだけでなく、
魂が、俺の心がボウボウと火を立てて燃える。
『すっげえよアンタ。もしや…と思って言ってみたんやけど、本当に俺の力を継承してるなんてな!!!!」
あぁ…すっげえ分かりにくい説明…ありがとさん。
俺は今までの思いを力に込め、ありったけの力で地面を飛んだ。そして、
「怒髪天真剣…噴火栓!!!」
俺の燃える剣線は、地面まで
こうして、俺の暇つぶしの戦いは…俺達の勝利という形で決着を迎えたんだ。
————————————
俺は自らの体を引きずりながら、磔にされていた女性の元へと歩みを進める。
「だい…丈夫っすか?今、助けます…」
磔になっていた女性の縄を、俺は
「大丈夫…!!?今、回復してあげるから!!」
その女性が、倒れ込む俺を抱え込み、回復魔法を俺にかけようとする。
「他の子も…お願い…しま…す…」
俺はそう言い残すと、気を失ったのだった。
◆ ◇ ◆
「ブッファ!!!」
『ようやく目覚めたなぁ…待ちくたびれとったで。俺も、お前の事を待っとった人もな…』
「良かったぁ…ご無事の様で…!!」
目覚めた俺を覗き込む様にあの女性は座っていた。どうやら女性は、俺の中にいるトカゲの声が聞こえていない様子だった。
「んあ、他の子達は?」
すると、他の小さな子達が次々と俺の視界に映り込んできた。
「全員無事です。本当にありがとうございました!!」
俺はその言葉を聴くと、その場からゆっくりと起き上がった。
「ふぅ、ハッピーエンドで良かったなぁ」
辺りを見渡すと、ここは森の開けた部分で、俺達が先程までいたらしき場所からバチバチと炎が広がっているのが見えた。
『どうやら…アンタが戦った時の火が、酒樽やら肉片の油やらに燃え移ってな。あそこに居た
被害が大きかったのは否めないが、ともかく無事で生還できたのは良かった。
女性は木が開けているところで焚き火をしていた。俺もその焚き火に近寄る。子供達は先ほどまで捕まっていたというのに、焚き火の側でギャハギャハ笑いながら遊んでいた。
すると、女性は俺の前に木でできたお椀と、その中に入っている美味しそうなスープを出してきた。
「これは?」
「もう、すっかり夜が吹けていますが、腹の足しになるかと…」
『この女…さっき、ゴブリンが貯めていた食料を幾つか取っていたんや。中々頭が切れ者やのぉ、何処かの誰かさんと違って…』
「はいはい…俺は頭が悪いですよっと」
俺は、そのままスープを一気に飲み干した。
「ウマっ!!!」
俺の率直な感想を聞くと、女性はにっこりと笑った。
「ゴブリンが持っていた食料と食器を、いくつか持ってきたんですよ。お気に召された様で何よりです」
俺は何気に言われたこの一言で、更に自分の無鉄砲さと頭の悪さを自覚してしまうのだった。
「お代わり…」
そっぽを向きながら、女性に木のお椀を突き出した。あぁ…こんな時でもきっと不貞腐れた顔をしてるんだろうな、俺は。
すると、女性は優しい笑みをこぼし、お椀を受け取ってくれた。
「もちろんです…!!」
『ほぉ、顔が真っ赤やで。子供っぽいところあるやん…』
うっさいな…!別にいいだろうが…
俺は女性から受け取ったお椀の中身を一気に飲み干す。
「あらあら、よくお食べになられる様で…まだまだおかわりはありますからね…!!」
女性はニコッとこちらに微笑み、スープが入っている大鍋を木のお玉の様な物でかき回す。
「貴方が来てくれなかったら。私はこうして生きていませんもの…」
その女性は、スープの具材を見つめながらそう静かに呟くのだった。
「アンタ…何でゴブリンなんかに捕まっていたんだ?」
俺は率直な疑問を女性に問いかける。
「私ね…ここからそう遠くない村に住んでたんです。でも昨晩、あの忌々しい
静かな夜と、騒がしく遊ぶ子供達の声が、俺と彼女を照らしていた。
「この子達は村の子供で、私と一緒に逃げたのですが、遂には捕まってしまい…気がついた時には
子供達の楽しい声とは裏腹に、彼女の背中は暗い悲しみに包まれていた。
「でもね、そんな時…貴方の様な強い方が助けに来てくれたんです。もし、貴方が助けに来てくれなかったら私はきっと、きっと…」
鍋のスープに水滴がポタポタと落ちる。
「ごめんなさい…!つい、ボウッとしてしまって。こんな汚いスープ、飲めませんよね…」
すると、それまで遊んでいた子供達が、彼女のもとに集まってきた。
「お姉ちゃん。泣いてるの?」
「よしよし…」
「いい子だね…!!」
各々の子供達が、彼女のことを全力で励まそうとする。
「うぅん…ありがとう」
彼女は子供達を全力で抱きしめる。俺はそれを後ろから、微笑ましく見ていた。
いい子だな…この子達は。
と、その時だった。こちらに一つの光が迫ってくるのが見えた。暗闇に目を凝らしてよく見てみると、それは松明を持った大勢の人だった。
子供達はその男達の姿を見ると、走り駆け寄っていった。
「お父さん!!」
「お母さん!!」
それまで下を向いていた女性も、子供たちの声を聞いて、光の方を振り向いた。そして…涙を流した。
「なんで?なんで…みんな生きてるの?」
女性は光の方へと走っていった。木の根に引っかかり、転びそうになりながらも、光の方へと走っていった。
「なんだよ、みんな生きてんじゃねえか。てっきりまた、暗い話を聞かされるかと思ってヒヤヒヤしたぜ」
俺は、手に持っていた器をそっと地面に置いたのだった。
◆ ◆ ◆
私達を探しに来た村の人達は、五体満足な私達の姿を見ると、一斉に駆け寄ってきた。
「シェーラ!無事だったんだね!!」
「お前の父さん…お前のこと、ずっと心配してたんだぞ!!」
お父…さん?
そこには、人の波をかき分け、こちらに向かってくる私のたった一人の家族がいた。
「お父さん!!」
私は、その人の元へと一直線に向かう。そして、抱きしめた。
「シェーラ…!たった一人の家族!!」
私はお父さんの胸の中で、子供の様に泣いた、泣いた。
少し時間が経ち、涙がおさまった後、私はお父さんに思わず聞いた。
「どうしてみんな…」
すると、お父さんはこう言った。
「実は…村で戦っていた時に、後数人しか残っていないというところで
いやぁ…後数分でも
違う、偶然なんかじゃない…!!
私はその場から、彼がいる場所へと走り出した。
「お、おい…我が娘、どこへいく!?」
私が焚き火をしていた場所へ戻ると彼の姿はなく、ボウボウト燃える焚き木の火と、そのそばに彼が使っていた木の器が、ポツンと置いてあるのだった。
◆ ◆ ◆
『本当にいいんか?彼女達にお別れの挨拶しなくて…』
ドラゴンもといトカゲは、俺の中からそう話しかけてくる。
「いいのさ。あのままダラダラとお世話になっても迷惑なだけだし、あのタイミングが一番別れやすい」
俺はゆっくりと静寂に包まれている森の中を歩いていた。
『ふぅん…俺はもっと食べたかってけどな、あのスープ美味かったなぁ!!」
「なぁ…」
『ウン、なんや?』
「当然の様に俺の中にいるけどさ…お前何なんだよ!!」
『何度も言ってるやないか!
「それは聞いてるよ。違う…檻の中から急に俺の脳内に話しかけてきたと思ったら、変なスタンプかハンコか印鑑か分からん物を俺の腕とお前の額に押せだって!!?
俺は混乱したまま、未だに俺の中に居座るトカゲに絶叫する。
『そんなもん言われても…さっきから出られるならとっくに出てるっちゅうに。ずっと出ようとしてるけど出られへんねん。詳しいことは知らんし、どうなっとんのや…』
「それはこっちのセリフだ!!大体なんなんだよ、このスタンプは!!!」
俺はバッグの中から、龍の形をしたあのスタンプを取り出す。
『あぁ…それは王の龍印って言ってな。龍を体に宿す剣士…古来から竜剣士が持っていると言われている物やわ。
今はほとんど竜剣士がおらん様なって、俺も伝承でしか存在を知らんかったから、詳しくは分からん。
けど、そんな秘宝級のもん持っとるんやから、本当はさぞかしすごい剣士なんやろ?アンタの剣さばき、俺が人生見てきた中でおそらく一番の剣術やったしな』
「ちげーよ!たまたま盗賊に盗まれてたのを盗み返しただけだ!!実際の俺は、騎士団から追い出されて、風が導くままに旅をしている放浪剣士だ!!そんな大層な物だって知らんかったし、知るよしもねぇーよ…!!」
俺の必死の抗議に対し、俺の中にいるトカゲは首をかしげた。
『ありゃ?確かにあんたの剣技は、竜剣士呼ばれても違和感のないもんやったけどな』
「俺は弱魔体質なんだよ!!」
『弱魔?』
「魔法が自分じゃ一切使えないんだよ!!」
『あぁ…なるほどな。でも俺がいる時はそれらしき事が出来たと…』
「…そうだよ」
俺は悔しそうに言い放った。
『だったら尚更ええやんけ!!アンタは魔法が使えるようになって、俺は空腹も満たせて、なおかつ助けてまでもらい、こうして新たな伝説の竜剣士と対峙できとるんやから』
「伝説の竜剣士って…俺はそんな大層な者じゃないよ」
『だったらええやないか。二人でも…』
俺はその言葉に、思わず足を止める。
「あぁ?」
『お前は俺といれば誰かを守れたやろ?きっと、俺達が手を組めば英雄や神様にも引けを取らない、最高の竜剣士になれるはずや!なぁ!?一人で何かを成し遂げられないんだったら、俺も一緒に着いてくわ、アンタの旅に!!』
俺はその場で考えたように硬直し、その後、思いっきりため息を吐いた。
「分かった…着いてきてもいいよ」
『わーい、サンキュウご主人!!』
トカゲは俺の中で盛大に暴れる。
結局止めても無駄やし、もしこいつを外に出す方法を見つけたら、放り出せばいいか。
『って変なこと考えてないよな!!?ご主人!!』
俺はその問いに対し、にこやかに言い放つ。
「ひとまずはお試し期間ってことだ。俺がお前のことを気に入ったら、中に入ったままでいいよ…トカゲ」
『トカゲって言うのやめい!俺はファイアドラゴンや!!』
「じゃあドラ豪な…」
『ドラ…なんだって?』
「ドラ豪。ネーミングはナントナクで付けた」
『まぁ、そっちの方がええか…ご主人』
「ご主人ちゃう…俺はフォール。フォッカ・フォルテ・ヴェルゼビート…16歳だ」
『若いな、フォールの旦那。俺がその頃は、まだペーペーのチビドラゴンやったっちゅうに。フォールの旦那はしっかりしとるな」
俺は顔に思わず顔に笑いを浮かべ、前へと進んでいく。
「褒めても何もでねぇぞ〜ドラ豪。それに、旦那ってのは無しだ。フォールでいいよ」
『いやはや…フォールの食った物やその味は、もれなく、アンタの中に居座っている俺の腹の中にも入ってくるもんで』
「それで腹膨れたとか、スープの味が…とか言ってたんか、まぁ…食事の手間なくていいじゃん。それにしても、何でドラ豪は
ドラ豪は苦い顔をしながら当時の事を思い出しているようだ。
『実は俺、水が苦手で。いつもは丁度いいサイズの洞穴で寝とったんやけど、入り口に水の滝みたいな装置を設置されて、そのまま餓死しそうになった所をほいっと捕まったわ。ありゃあ…二度としたくない経験やで』
「すげぇな…
俺達はそんな風に笑い合いながら、朝焼けの森の中をただひたすらに進んでいったのだった。
◆ ◆ ◆
「おい…どうやら
「えぇ、そのようで…それでは取りに行きますか?龍を従えることができるという王の龍印を…魔王ベルボルグ様」
魔王はニタァと笑いを浮かべた。
「下のものに伝えよ。必ずしや、王の龍印を見つけるのだと…」
「御意…我が王」
その者はそう言い残すと、その場から消え去った。
王は一人の玉座でただ笑う。
「いよいよ始まるぞ…我が野望が」
ソードラゴンズ〜魔法が使えない剣士は龍を宿し、竜剣士へと成り上がる!!〜 ファンラックス @堕落休 @fanracx
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