あまぞら

あるまん

ざんざ、ざんざ

 天気予報なんて、あてになんない……昔の曲にこんな出だしがあったっけ?


 そう、嘆きたくなる位の土砂降りに既に私の黒ロ―ファーは抵抗を諦め、ソックス毎足湯に浸かった様な状態だ……無論リラクゼーション効果なぞ微塵もない。

 予報は出ていたのだ……午前中で降水量ゼロコンマという表示でだが。帰宅時間はデザートタイム午後三時、傘を持たなかった判断は間違ってなかった筈だ。

 天気雨であって欲しいという願い空しく、お天道様のシャワータイムは続く。モノクロの道には海月がぷかりぷかり。カラフルならばまだ心も晴れたが黒や透明ばかりで心もどんより。

 そういえば何気にネットショップで傘を検索した時、ビニール傘300本セットという物があって二度見した事がある。これだけあれば貴族の様に毎日気分で変える事が出来るわね、と思ってしまった。冷静に考えれば毎日雨は降らないし、業者用の卸売だし、私のお城ワンルームが傘で埋まるのは落ち着かなさそうだ。

 包丁も100円ショップで一年分買えば千切りで切れ味の心配をしなくていいわね……もうその店に行けなくなるかもだけど。


 幼い頃は今の様なお馬鹿な考えを本気でしたものだ。おかねもちになったら、だいすきだったいちごのけぇきをたくさんかうんだ、とかね。

 でも大好きだからこそ、偶に食べる位がちょうどいい……そういう考えが出来る様になる程度には嫌な大人になってしまった。


 ……あんなに、大好きだった筈なのにな……。


 男は「名前を付けて保存」、女は「上書き保存」の理論という物を聞いた事があるが、私には当てはまらない、死ぬまでずっと一緒と思っていた。

 実際死……んでは居ない筈だが、愛の巣だった住所すら思い出せない。普段奴の車でしか行っていなかったせいでもあるが、偶々買い物帰り覚えていた看板を頼りにサプライズしてみたら繁殖の最中だったとか女性週刊誌のえっちな漫画でもそうないだろう。

 水曜の夜にしか行けなかったのも今考えれば、私も、多分にあの雌も只のオナホールだったのかもしれない。今思うと其処迄選べる様な顔でもなかったと思うけどね……早かったし。

 奴をノックアウトした私の黄金の右は流れる様にスマホをblock & delete、巣から飛び出し、当時まだ苦みを感じていた黄金の炭酸水で心の錆を洗い流した、筈だ。

 急に呼び出した私に付き合ってくれて、意識を失った私を介抱してくれてたU子、愛してるよ。私が男だったら付き合ってたかもしれぬ。


 曇天の長雨にかこを思い出し気分も落ちてきた……あの時と違うスマホでタクシーを呼ぼうか……と開いた画面にはU子からの着信が。

 今の状況をいうと車で迎えに来てくれるんだって。やはりこういう時に持つのは親友よね……本当に付き合っちゃおうかしら?


 「愛してるよ❤」の顔文字を送信した後、スマホにkissをした。

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あまぞら あるまん @aruman00

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