夢日記 帰還へのあこがれ
高黄森哉
夢日記 帰還へのあこがれ
自分はだだっ広い埠頭の駐車場にいて、車を見ている。どうやら、いくつか車両を管理しているらしい。最新型の黒いセダン。車の中には同僚がいて、二人は中で談笑している。
自分は車で休む先輩に話しかける。しかし、内容はわからない。声を発さずに、会話をしたからだ。そのお話に先輩は、特に共感しなかったようだ。
さて、場面は変わって焼き肉屋。机上にはたくさんのカニがある。またしても、仕事の先輩たちがいて、カニを勧めてくる。こんなに大きなカニを食べたことはないだろう、といいながら。自分は、もっと大きなカニを食べたことがあるのだが、気を使って肯定した。思えばこの時、夢から覚めかけていた気がする。というのも、この返答は現実の経験に基づいた返しなのだか。
さて、同期の同僚となにかを交わした後、電車に乗らなければならないことに気が付く。その電車を待っている間、こうやって飲食をしていたのだ。
余談だが、私の夢では理由は後からやって来ることが多い。そしてそれがどんなに荒唐無稽でも、ああそういうことだったのか、と信じてしまうのである。
さて、今度は廃墟にやってきた。といっても、蛍光灯が点いているので、内部は明かるい。ここに来た理由は、自分が異世界からの転生者であるからである。なんでも、転生したものは、廃墟などに発生する時空のゆがみの影響を受けないらしく、そして、時空のゆがみによって出現した律の違う物体を取って来ることができる。自分はこの世界で、その貴重なマジック・アイテムを売ることで生計を立てている。
なにやら、廃墟のある部屋が気になり、ドアノブに手をかける。
その時、金属でできた四本触手の巨大機械が廊下を崩しながら現れた。襲い掛かるというより闊歩している。だが、歩行に巻き込まれれば一貫の終わりなため、逃げる必要があった。壊される廃墟、廊下を下りながら、草原へ向かう。
そして草原。羽のない風車の前で、仕事の後輩がなにか困っている。きっと、背後に遠くにあるあれから逃げおおせるために、この建築をどうにかしたいのだろう。自分がアイデアをだすと、その手がありましたか、といった風に納得していた。しかし、声を出さない種類の会話だったため、どのような解決法で、これから何が起こるのかわからない。
しんとした廃墟、ドアノブに手をかけて、気になっていた部屋の中を見る。部屋には二つ、大きな窓が並んでいる。窓の外には、一般的な日本の住宅街が並んでいる。どうやら、時空のゆがみによって発生した窓らしい。巨大ロボも廃墟も、なにも刺激的な狂騒のない世界。窓の外はやや曇っていて、夕焼けのようにセピアがかっている。退屈なのに、郷愁に駆られて、帰りたくなる。しかし、帰れないことをしっている。それは窓の反射でしかなく、その向こうには、ただこのSF染みた世界が広がっているのみなのだから。
夢日記 帰還へのあこがれ 高黄森哉 @kamikawa2001
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