第3話 良い思い出が無い!
僕自身は合コンで良い思い出は無い。
例えば学生時代。僕は小・中学校が一緒だった陣内から合コンに誘われた。
「場を盛り上げてくれ」
と言われた。正直、そういう誘われ方はしんどかった。プレッシャーを感じる。だが、僕自身が女性とのご縁を求めていたので、つい行ってしまうのだった。
その時の合コンは5対5、僕以外は陣内の高校出身。僕と陣内は高校が違う。僕だけ男性陣に陣内しか知り合いがいない。完全にアウェー。だけど、めっちゃ盛り上げた。だが、後で聞いたら女性陣はみんな彼氏がいるとのこと。僕の頑張りは最初から報われないということが決まっていたのだ。陣内の悪意を感じた。陣内は知っていた。“女性陣はみんな彼氏がいるけど”と、一言あれば参加しなかったのだ。
それが全てではない。盛り上げ役として何度合コンに参加しても、カップルが成立しても、合コンが終わるといつも僕は独りぼっちだった。僕は誰ともカップル成立にはならない。だから、僕は合コンの誘いを全力で断るようになった。社会人になって、上司や先輩から人数合わせで頼まれたら断れなかったけれど。
或る時の合コン、名古屋の広告代理店(中小企業)を辞めて大阪に戻るまでの短期間、僕は引っ越し費用を稼ぐために某大手工場で働いていた。その時の月収は40万以上、50万に近かった。残業代と夜勤の手当てがあったからだ。
合コンは辞めた広告代理店の人間が開催、辞めた広告代理店の男性ばかり。金曜日の仕事の後、普通にスーツ。だが、営業から離れた僕は茶髪に短パン。すると、女性陣に全く相手にされなかった。僕は別に気にせず、隅っこでポテトを食べていた。
話題が収入の話になった。結婚相手を真剣に考えている、20代後半の女性陣だから、必死だ。みんな、20万とか25万くらいしかもらっていないことを僕は知っていた。みんな、お茶を濁したり多目に言ったりしていた。最後に僕が聞かれた。
「あなたの収入は?」
「今、月に50万くらい」
女性陣がどよめいた。そこで僕は、
「帰りますわ」
と言って帰った。やっぽり合コンはつまらない。
社会人の合コンもつまらなかったなぁ。或る時、イケメン・独身・めちゃ優しい先輩のための合コンが開催された。めっちゃキレイな女性が参加していた。先輩と美女は意気投合、親しくなっていた。みんな、“先輩には幸せになってほしい”と思っていたからそれで良かった。盛り上げ役で呼ばれた僕が何もしなくても盛り上がった。僕は、今日はゆっくりできると喜んだ。と思ったら、
「崔! 幹事の前原さんのお相手をするように!」
と言われた。前原さんは僕より年上、尋常じゃないくらい歯が出ていた。僕は、こう見えても必ずしも外見を重視していない。ビジュアルに恵まれていない女性と付き合ったこともある。だが、目の前で先輩が大美人とイチャイチャしているのに、僕には前歯さん? いや、前原さん? 理不尽だと思った。前原さんも、僕を好まなかったようだが。僕は、ますます合コンが嫌になった。
合コンに似たイベントにも良い思い出が無い。或る会社では、独身寮の忘年会があった。そこで数人のパーティーコンパニオンを呼ぶのだが、僕が座ってる隣にスレンダーな茶髪美人が座ったことがある。ところが、何も喋らないのだ。気を遣って僕から話しかけても、“はい”と“いいえ”しか言わない。“自分から僕の隣に座ったくせに、なんやねん?” 僕は腹が立った。
「席、変わってくれたらええよ」
と言ったが、“ここでいい”と言う。僕は会話することを放棄した。実に不愉快だったが、どうせ女子大生のアルバイトだろうから、プロ意識や接客サービスの意識というものが欠落しているのだろう。それにしても腹が立つ。その時、僕が寮長だったので余計に腹が立ったのだ。
僕がいかにモテなかったか? ご理解いただけたことだろう。僕は1対1の勝負じゃないと通用しないのだ。イケメンじゃなかったから。嗚呼! 合コン。
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