第4話

「さ~て、次は【徳川家康暗殺未遂】だな~」


 前田利長と浅野長政さんが、首謀者だよね。

 前田家は、お家取り潰しにはならないんだけど、かなり権力を削がれる。

 とりあえず、前田家に挨拶に行こう。私ももう狙われないだろうし。

 それと前田利家さんには、世話になったしね。


 利長さんとまつさん(芳春院)が、出迎えてくれた。

 墓前に手を合わせる。

 そうしたら、密談の始まりだ。


「徳川家康の悪行の数々、許せませぬ。父・利家の無念を晴らしたいと思っています。奇襲の準備は出来ています」


 血気盛んだね~。若気の至りだ。


「返り討ちに遭うよ? もうちょっとさ、策を練ろうよ」


「暗殺なら可能です。浅野家の協力も得ています!」


「甘く見過ぎだね~。機密が漏れていると思わないの?」


「えっ!?」


 徳川さん家の情報網を甘く見過ぎだよ。

 前田家にも、密偵がいることを教えてあげる。

 前田利長さんは、顔が真っ青になった。まつさんは、静かに聞いているみたいだ。肝が据わってる人だね。


「では、どうするというのですか? このままでは、豊臣の天下が脅かされるのは明白です!」


「う~ん。徳川家康さんてさ、一応豊臣家の家臣じゃん? ここで戦を起こすと、分裂して豊臣家の弱体に繋がるんすよ。それと暗殺しても、徳川家はあんまり揺らがないですね。逆に結束が強まるかも? やるなら、徳川臣従の家を削って行く所からかな~」


 とにかく短期決戦は、無謀だと分からせる。

 もう全ての策謀を論破して行く。相手は、知力MAXの大策略家なんだ。

 最後には、利長さんも折れてくれた。


「今、大大名で信頼がおけるのは、前田さん家と上杉さん家だけです。だけど、二家が組んでも兵力は、徳川家の半分にも満たないでしょう。それにあの狸が相手です。味方の裏切りが多発して、戦にならないっすよ。信頼している家臣に裏切られても、戦ができますか?」


 特に、毛利家と宇喜多家は信用できない。私は、転生知識でそれを知っている。

 五大老同士で潰し合っても、徳をするのは徳川だけだったんだ。


「ぷっ。狸ですって?」


 まつさんが、笑ってくれた。蔑称はヤバかったかな?


「……三成殿は、広い視野をお持ちのようだ。分かり申した。今は耐えましょう」


 そういえば、私は戦下手と思われているんだったな。

 後方支援を得意にしてたのは、自他共に認めて貰えると思ってんだけどな~。


 小田原征伐時の、忍城水攻めは、秀吉さまからの命令だったんだけどな~。

 文禄の役では、朝鮮にも渡ったのよ?

 でも、舐めてもらえるなら、舐めて貰おう。策を講じやすくなる。


 まつさんは、終始笑顔でお酒を飲んでいる。

 この後、出家だもんね。楽しんで貰おう。

 それと、家康が頭の上がらない、数少ない人物でもある。誼を結んでおけば、強力な援軍にもなってくれるだろう。




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