第3話 白い煙の向こう側

始業式の開始を告げる鐘が鳴る中、瑠香は美玖と凛と共に、校舎の裏側に来ていた。瑠香が箱から1本のタバコを取り出し、火をつける。

朝の一大イベントが終わり、ほっと一息をつく瑠香の顔には安堵の気持ちが広がっていた。美玖と凛も火を着け、匂いと煙が入り混じる。


「瑠香、戻ってくる気あんの?」


美玖が投げかけたのは瑠香が高校2年生の夏まで所属していたレディースの話であった。


「今時レディースなんて古いっしょ」


笑いながらもどこか遠くを見つめる瑠香。そんな姿を見た美玖はどことなく寂しさを覚える。


美玖が走りを覚えたは瑠香の影響であった。

夜中に家を飛び出した美玖が行く当てもなく公園のベンチに座っている目の前を瑠香が颯爽と走り抜けた姿を見たことがきっかけであった。これなら、大人に対抗できるかもしれない。そう、簡単に考えたのが全てのきっかけであった。

そんな瑠香が今ではいなくなった場所に、美玖は寂しさを感じていたのだ。


「いいんじゃない?バイクなんてうるさいし」


凛が言うと、冗談か冗談じゃないかがわからなくなるがそれはそれで中和性がある存在であった。


そんな瑠香が煙の向こうに人影を見つける。


「今って、なんか式やってるよね?」


そんな質問をしながら瑠香はその人影に目を奪われる。

大きなシルエットにどこか見覚えを感じたのだ。


「誰かさぼってんじゃね」

「私達も人のこと言えないけどね」


そんな会話が耳にかすかに入る中、そのシルエットから煙が吐き出されるのが見える。

誰なんだろう。

不思議と親近感の沸くそのシルエットに引き込まれる瑠香をしり目に、美玖と凛の笑い声は響いていた。

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睡蓮の香りに抱かれて 流星 @ryusei6

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