第55話

「外に出るのをやめる?なんでですか?杏奈さん。」

「いや…、シンプルにこんな話聞いた後で出くわしたくないでしょ…。」

「え!?今の話って主任の元旦那さんの話じゃないんですか!?」

「違うわ!確かに私の元旦那も公務員で浮気していたから別れていたんだけど、私の場合は弁護士を入れてしっかりと対処したからもう関わりもないわよ!」

「えぇ〜、なんで僕の元妻の家庭を攻撃するようなことをするんですかぁ〜、僕と杏奈さんの平和な時間を…」

「えぇ…、今さら…、まぁごめん。確かに軽率だったね。」


こいつ、本当に話の内容理解していなかったのか?

まぁ確かにまどろっこしい話し方だったけど。


「ん?でも、たけのこ園に転職して子どもができたと言うのであれば経済状況はあまり良くないんじゃないですか?」

「そうねぇ…」

「何?優希くん溝口さん…、なんで転職したら経済状況が厳しくなるの?」


きょとんとした可愛い顔で杏奈さんが質問をしている。

本当になんでこんな無垢で純粋な可愛い女の子と優希くんは出会うことができたんだろう。


「うーん、なんとなくはご存知かと思いますが、障害者支援施設とか、わかりやすいもので言えば老人ホームとかの福祉施設の給料は一般的に低い傾向にあるんですよ。公務員の2馬力であれば経済的に余裕はあったと思いますが、今では公務員ではない30代の男性が福祉施設に転職して1人で妻と子どもを支えることになるんですよ?だいぶきついんじゃないですかねぇ〜。」

「福祉施設の給料ってそんなに低いの?優希くんの給料聞いたことがあるけど、そこまで低いようには感じなかったけど…。それに、真波さんが公務員をやめていない可能性だってあるんじゃない?」

「いやー…、どうでしょう?まず給料に関してですが、僕が務めている施設は支援員に多く還元しているのも事実ですけど、結局のところ他の施設よりも給付が多かったんですよ。なんでかは施設の事情から詳しく言えませんけど。それに、真波は務めている役所の相手と浮気をしたんですよ?噂が広まっているのであれば2人とも潰れるのが自然な形でしょ。」


確かに優希の考え方が1番自然だし、実際に浮気相手の様子を見ているとそのような形で間違いないだろう。

でもなんで嬉しそうなんだよ…


「まぁ、いいじゃないですか!もう関係ない人たちのことですし、僕たちはなるべく関わらないようにして平和に過ごしていきましょう。」

「うん、そうね…、でも、やっぱり対策をしておくに越したことはないわ。和美さんに連絡しておく…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る