第10話




――宇賀の兄貴、外ヅラいいけど中身ヤバいって噂だよ。

――聞いた聞いた。宇賀くんに暴力振るってたんでしょ?


――森川先輩って宇賀兄弟と二股してたんだって。

――幻滅だよな。本命は兄貴の方で、弟の方は捨てられたとか。


――花村も兄貴に虐待受けてたらしいぜ。

――だからあんな風に歪んじまったのかもな。






 一人の少女が紫色の花を道の隅に置き、立ち上がって上を見上げた。

 歪んだフェンスが見える。


 学校の屋上は、閉鎖された。


 目撃した人物は「まるで真っ赤な蝶のようだった」と語る。


「せめて、私はあなたたちのことを伝えながら生きるわね」


 視線を紫色の花に落とし、少女は小さく呟いた。

 瞳に少しの涙を浮かべて。




 それは、

 兄に壊されて身を堕とした悲しい女と、

 兄に壊されて未来を諦めた悲しい男の、

 青春の話。

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壊れた青春 松山みきら @mickeylla

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