十五通目

いま最悪の想像のもと、貴方へと手紙を書いています。


僕の想像が全く間違っているのを望みます。


その為、もし手紙をお読みになった場合は、すぐ僕の所まで来てくれると助かります。


 実は貴方に言っていなかった部分を話しますと、貴方との良好な関係性をよそに、怜とは少しばかりギクシャクとした関係が続いていたのです。


怜とは塀の外と中のやり取りです。本来そうなるきっかけというのがあって然るべきなのです。


なのに、突如として怜の僕への当たりが強くなっていました。


自分としては思い当たる理由もなく『今はそういう気分なだけ』と思っていました。


 気分がこうも長く続くものでしょうか。


怜は何度会いに来ても、機嫌はちっとも良くなりません。理由すら言わないのです。

遂には会いに来て、態々言う必要もないであろう貴方の悪口を言うようになりました。


 この時はまだ「時期を見て」と貴方との交流を言わずにいたので、僕から話を聞いて出た言葉ではありません。


もし聞かせていたなら、アップダウンの激しい怜です。考えすぎてのストレスから悪口を言ってもおかしくはありませんが、聞かせていないなら他に理由があるでしょう。


それを僕は聞き出そうと当然しました。


機嫌が悪過ぎて、尋ねた初日などは尋ねただけで帰ってしまいました。


 それでも怜は定期的に来てはくれます。ですから何度となく尋ねる機会もあり、毎度訊いてはみるのですが、不機嫌は変わらず続いて、答えてはくれません。


機嫌を取る努力はしていたものの、矢張一定の不機嫌さは保たれる形となって、他の会話や質問の受け答えすら上手く交わせなくなっていました。


 そして遂には、面会にすら来てくれなくなっているのです。


僕はこの理由について考えていました。


『もしかすると自分が怜の気に入らない何かを話したりしたのかもしれない』とか『怜の私生活で嫌な事があったのかもしれない』とか、答えが聞けないからこそ、あれこれ考えてみました。


そうやって一通りと言えるくらい考えて、一周してしまったからか『着目点が違うのかもしれない』と思えてきました。


原因を探る為、視点を色々と変え『理由が今までとは違うところにあるのかも』という前提で思いを巡らせてみます。


発想に乏しい僕には何も思い浮かびません。


散々考えても駄目だった僕は、困った挙げ句「じゃあ、他人の力を借りれば良いのでは」と一つの案を出しました。


 それはK君を使った方法です。


 K君とは暫く会っていませんでした。手紙のやり取りの仲介を頼まなくなってから少し疎遠になり、面会にも来てくれなくなっていました。


それが気になっていたのも大いにあります。『K君に怜の事情を尋ねてもらおう』と思いました。


久しぶりに会いがてら頼むというのは良い気がしましたし「怜の方にもちょくちょく行っている」と以前言っていたので、既に知っている可能性もあります。既に知っているなら手間も省けます。


丁度良いと、久しぶりに手紙を送ってみました。


 思えば彼宛に彼を目的とした手紙を送るのは初めてでした。仲介を頼んでいるというのに、お礼すら手紙の余白に書かなかったのは「大変失礼であった」と言えます。


今までの無礼への謝罪、苦労の労い等を散々書いて送ってみました。


 K君からはなんの返事もなく、面会に来るでもありません。


はじめ『自分が送った手紙には重要な部分を書かなかったのかも』と思いました。感謝を重視し過ぎたせいで、一番書かなければならない所を失念していた可能性は十分ありました。


そこで、薄々書いた記憶のある文を、再度書いて確認し二通目を送りました。確認しましたから、必要な文言は入れました。


どういう訳か、K君からは依然としてなんの返信もありません。


 事実が積み重なると『K君が来ないのには理由があるかもしれない』と思えて来ます。

僕には懇意から訪ねてくる人がいなくなって、不安が増していました。


この現状から僕には考える時間が生まれ「K君は何故、僕の手紙を無視しているか」が可也気になっていました。


 考え過ぎる時間は、怜が来ない方にも及んで『K君が来ない理由と何か繋がっているのかもしれない』と、結びつけて考えるまでになったのです。


そこまで考えが及ぶと、二人は「邪魔者が塀の中」というので『くっついているのかも』と落ち着き『だとしたら許せない』という心持ちが生まれました。


僕はこの仮説を確かめたく、二人双方に手紙を送ってみました。


矢張返信もなく、面会にも来ません。


そうなると仮説は、どんどんと本当であるかのように思えて来て『なんとかしたい』と思うのです。


しかし、塀の中ではどうにもなりません。


 二人が気になっている所へ、偶然にも雑誌社からの取材申込みがあり、取材を受け入れることにしました。


これは、書いた通り二人の関係が知りたかったからで、取材の受け入れ条件として「K君と怜を見に行って、こちらに報告してくれること」としたのです。向こうはこれを受け、まず僕が取材を受けるとなりました。


 取材を受けた時点で僕は「怜に裏切られているかもしれない」と考え、犯人でいるのをやめようと思っていたくらいでした。

 けれど真実はまだ解っていない。


一旦思い留まって、世間の知る通りの殺人犯でいるとしました。僕の望みは二人の状況を知る一択なのです。今焦って思い切った行動に出る必要はありません。


 僕は取材を殆ど上の空で聞いて「くれぐれもキチンと見てきて下さい」と念押しして、後日報告しに来てくれるのを待ちました。


約束はキチンと守られ、二人の報告を受けるとなりました。


 はじめにK君ですが「住所の場所にはもういないようだ」と言います。


記者によると「住所の場所には古い平屋があった。一見住んでいると見えたが、郵便受けにはチラシや何かがはみ出てい、誰かが取ったとも見えないので、長く家に帰っていないか、出ていったのだろう」という話で「チャイムを鳴らしてみたが、出てこなかったのでもういないのだろう」と結論して僕に話してくれました。証明するのは、ポストの中に僕の手紙が残っていたらしいのです。


 片や怜ですが、怜はゴミ屋敷となっている家に住んでいると言います。

中に入ったわけでもないのに「そうだ」と解ったのは、外から見ても解ったからのようです。


 怜は事件後、古いアパートに引っ越したと聞いています。記者が見たのはそのアパートのことでしょうが、怜の住んでいる一室は常にカーテンが閉め切られていると言います。


そのカーテンは内側から何かに押され、押し付けられ偶然出来た隙間からは、白い袋やらが高い位置に見え、推測するに「ゴミが溜まってそうなっているのではないか」とのこと。


更に「あの様子だと散らかしている本人は中にいるとしても、他の誰かはいるとは思えないし、一日中張り付いていても誰かが出入りしたのは確認出来なかった」と言いました。


記者の話からすると、一先ず僕の思っていたような二人の関係ではなさそうで安心しました。


僕は成る可く刺激を与えないようにと思って、コンタクトを避けてもらっていたので、結局本当のところは解りません。が、その時は僕の信じる心が「大丈夫である」と納得させました。


 但し、安心なのは僕が考えたような関係ではなかったという部分だけで、怜が何故ゴミ屋敷に住むような人になってしまったかは非常に気になりました。


怜はどちらかというと綺麗好きの部類です。僕がポテトチップスのカスをテーブルの上に落としてしまったくらいで怒っていたのです。


 僕への対応をはじめ、明らかな変化。これが大いに心配になりました。


こちらは心配から、怜の普段の生活なども知りたく「さらなる密着を」と記者にお願いしました。記者は「忙しいから」と僕の願いを断ります。


それではこちらが困ります。なんとか粘ってみました。


記者は「忙しい」の一点張りです。

恩着せがましく「おたくの会社だけ答えてやったのに」と言ってみても、さらなる怜の報告は受けられそうにありませんでした。


 長々と話してみても、結局駄目そうなのを察した僕は、仕方なく「怜が最近、自分への対応が悪くなっている」というのを告白し「どう思うか」と尋ねてみました。


これだけを聞いて良しとして済ませるつもりでいるも、返ってきた答えは僕を非常に落ち着かない気持ちにさせました。


記者は「あなたへの態度が何故変わったのかは解らない。自分の事として考えてみるならば『あなたが犯罪者になったから、別れる気が生まれたのではないか』というくらい。ただ、自分が取材した人の中に似たような人がいたのを今思い出した。昔、虐待を受けていた息子が父を殺したという事件があった時に、その息子は同じくゴミの散乱する部屋に住んでいて、当時我々の間で話題になった」と言ったのです。


 記者の話を聞いて、僕は貴方を思い浮かべました。


もしかすると怜は貴方を······と考え『生存を確認しなければ』と思いました。


ですから、さっき強気に出たというのに、今度は泣き落としの体で「義母を見てきてくれないか」と頼みました。


記者は先程までの姿勢を崩しません。


こちらは「もうあなたしかいないのだ」と言って、額を床に擦り付けるまでしました。

懇願する形を取ってみると、向こうは渋々「解りました」と請け負ってくれました。


 記者が報告してくるまでの間、僕がどんな気持ちでいたかは、全く想像の通りだろうと思います。


 心待ちにしていた記者が来てくれた時には、長旅に出ていて久しぶりに会う親友のように迎えていました。

僕の余りの熱気に、向こうはちょっと引き気味に受けます。それから「落ち着かせよう」という考えからか、ゆっくりと話し出しました。


 結論から言うと、記者の話は僕を安心させるものでした。


貴方は「元気でいた」と言います。


全くの誤解だと解りました。


多分貴方は、見られていたのにも気づかなかったでしょう。記者のスキルからして、そんなのは簡単なのかもしれません。


本当の事を言うと、頼める状況だったら貴方にも伝えて欲しい言葉があったものの、他の事もお願いしてしまった手前、無理だったのです。以前断られたという事実から、多くを頼めませんでした。


 僕は怜についてのお願いもしていたのです。


だから貴方の方は手薄になってしまいました。勿論「貴方が大丈夫だったら」という条件付きだったのは断っておきます。


 言い訳はさておき、お願いしていたのは「怜に僕の言葉を伝えてほしい」というものです。

記者は怜についてのお願いも実行してくれたようです。


そうしてもらって解ったのは「依然として怜には問題があるようだ」という点です。


 僕の言葉を伝えようとしてくれた記者に依ると、チャイムを鳴らして出てきた怜は、自分が誰かを話すや否や、押し売りでも追い払うようにドアを閉めたらしいのです。


これだけなら解らないではありません。怜は恐らく、記者を恐れるように生活していたのでしょう。最も出会いたくない人であり、嫌うのは当然と言えるのです。


しかし、記者は「僕からの伝言を仰せ付けられている」と伝えたというのに、聞こうとしなかったのです。


 面会に来ていた時の態度や、最近面会にも来てくれなくなったその理由は、未だ軟化するでもなく存在している証明でした。


 僕がアテにしていた他人を介してのやり方は結果を出せず、完全に解決の道をなくしてしまったと言っていい状況になっていました。


貴方が生きていると知った安心は一つ得たとしても、元々気にしていた部分はより不可解な点として、確固たる地位を築くに至り、何をしていても考えてしまうものになりました。


怜の一連の話を、他人を介して聞くとなったせいで、酷いものが一層酷くなったとも感じられます。


依然として会いにも来ず、解決の糸口は少しも見えなく、食べ物が喉を通らなくなるまでになっていたのです。


 寝ても覚めても怜の事を考えてしまうようになった僕は、面会へと来てくれた日々の中に反省点であり、来なくなった理由があるとして、何度も思い返したであろう諸々を思い出して「理由がやっぱり解らない」となると、直接は関係がないであろう塀の中での生活をも振り返っているのでした。


 そうやってK君がまだ塀の中にいる頃まで遡ると、ふと『K君は今何をしているのだろう』などと思いました。報告を受けてからK君は関係ないものとし、全く頭の外へと置いておいたと言えました。


僕が手紙を出していたその場所に「K君は住んでいない」という話を、この時久しぶりに思い出したとして良いと思います。


 K君を思い出すと、彼がいなくなったというのは「意外」という気が改めてしました。

我々は割と密に、塀の中と外を問わずやり取りをして来たのです。


僕になんの言葉もなくいなくなるのは不可解で、こちらが思っていたような感情、感覚というのを向こうは持っていなかったのでは、とまで思ってしまうのでした。


ただ、こんなのはこちらの取りようでしかなく、状況が生み出した被害妄想と言えます。


 何故でしょう。


僕には直感的な『こちらと同じ感情がなかった、というのは間違いではないかも······』という妙な感覚がありました。


直後『K君は僕を実験に使ったのかもしれない』と、俄にリアリティを持つ仮説がに浮かんでいました。


これは今までにない感覚で、仮説を確信に近いまでに感じさせ、今になって急にK君への不信感が湧いて来ました。


 彼が塀の中へ入れられる羽目になったのは確か「無実の罪」と言っていました。


 本当にそうでしょうか。


K君が犯人として罪に問われたのは、現場に残された証拠の他にもあった筈です。

確か「殺人罪の教唆」だった記憶です。

これは嘘と取れなくもないのですが、多分この一点だけは本当でしょう。


本当の事を含めるからこそリアリティを持たせられるのは、僕自身で実証済みです。


要は「教唆」とは「自分では手をくださずにいたが、関与が認められる」という意味です。影響がハッキリとはしなかったからこそ、罪にこそなれ全面的に責任を取らされず、K君は割合に軽い罪で済んだと推測出来ます。


K君が言っていたこの話の中に、答えがある気がするのです。


 考えてみると何故僕は「言うまい」としていたあの話を彼に伝えたのでしょう。

僕の決意は強固だった訳で、簡単に話すとは考え難いのです。

なのに僕は話してしまっている······


 これは話させられたのです。

 そうとしか考えられません。


 という前提で考えてみると、彼が塀の中で奇妙な立場でいられたのは、そこに落とし込めないでしょうか。K君は誰にも目をつけられず、それどころかボスを利用するまでしていたのです。


僕が以前書いた手紙には「美味しい思いをした」と記したと思いますが、あれこそ彼の特殊能力なのではないでしょうか。


彼は特殊能力で気づかぬままに、僕をコントロールしていたのです。


つまり、僕が彼に真実を話したのは、彼が僕をコントロールし、言わせたくなるように仕向けた。


彼が自分の生い立ちを話したのは、こちらが言いにくいことを話す易くする為でしょう。その方が特殊能力が発揮しやすいと考えたと推測します。


そう考えるとK君の話した生い立ちは、彼が欲するものを得る目的の嘘だったと思えます。


僕が彼に普通の家庭で育ったのを話したから、それを聞いて同情を引く目的として、嘘の家庭環境をつくり上げ話したのでしょう。

嘘と本当を混ぜたことで、今考えるとちょっとおかしな部分もあったように思いますが、K君の巧みなやり方ではぐらかされた気が今はしています。


 こんなのは簡単に出来ることではありません。けれどK君は「まさか」と言いたくなるような能力を活用していたに違いありません。


 もしそれが本当だとすると、僕が貴方に手紙を書こうと思ったのも、彼が仕向けたのです。


おかしいと思うのは、手紙をK君に仲介していた点、貴方の住所を教えて貰えなかった点です。


彼は「手紙が黒塗りになるから」と言っていたものの、思い出の部分などは『黒塗りになりようがないのではないか』と思えます。要は彼の計画に使えるものにするには、貴方と直接やり取りされては困ってしまうわけです。


更におかしいのは、僕が怜に手紙を書いているというのを伝えていなかった点です。


矢張、色々と問題のある親子関係を知っているなら、話しておいたほうが良いと思えます。


そうならなかったのは『彼がそう仕向け、K君が思う不都合をシャットアウトする為ではないか』と判断出来るのです。

「余計な行動はさせないようにした」とは取れないでしょうか。


これも「彼の都合がいいようにされた結果」と思えます。


 彼には計画があり、その計画に沿わされる形で僕はコントロールされたのです。

彼が外に出るまでの間は、練って考えた計画を実行し、後に繋がるようにする時間だったと考えられます。


 今思い返すと、彼に言わされたであろう「真実の告白」には、K君を刺激する何かがあったのでしょう。


だから重要な部分は書かずにいるのを勧められたのです。


貴方には話していませんでしたが、罪の告白部分は、彼が塀の中にいる時に全てを話し「時期が来たらK君が代筆して渡してくれる」という手筈になっていたのです。


K君の説明に依ると、さっき言ったように「殆どはチェックの上で黒塗りにされてしまう。だから、大事な部分は書かないでいた方がいい」としていました。


僕は鵜呑みにして「そうか」と言う通りにしたのです。これも、そう思わせる言い方や何かでコントロールされ、彼の計画に沿わされたのではないかと思えます。


繰り返しますが、これは推測でしかないと言えます。ただ、僕の考えでは「娘と母親の間にある火種を大きくしよう」という意図があったのではないかと思うのです。


話が一転した辺りで貴方の良からぬ部分を刺激し、着火を試みたのではないか。


 考えていた通りだとすると、出した手紙には、僕が実際に話したもの以外に、何か加えられていたと思われます。


全ての手紙を自分のもとまで送らせていたのは、僕の文面を見たうえで「どうすれば彼が考える良い結果を導けるか」を考える為だったのではないかと捉えられるのです。


貴方が此処へと来た時に感じたちょっとした違和感、会話の齟齬は此処に当てはめると納得が行く気がします。


今僕には確認が不可能なので、そうであるという前提で話を進めさせて頂きます。


 恐らくK君は、僕が伝えていた内容と自らが考えた文章をどうにかしてくっつけ、貴方に見せ『悲劇へと向かって行く、その成り行きを見てやろう』と考えたのです。


僕が伝えていた内容と彼が考えていた文章とを繋ぎ合わせれば、貴方の気を逆なでし、一気に考えていた通りに行くと思っていたと推測します。


 塀の中に入っているのでも解る通り、彼は彼の考えたゲームを一度は成功させているのであり、K君が思った通りにことが進めば、想像した通りになる予定だったのでしょう。


反して、計画が悪かったのか、手紙という手法が初めてだったからか、或いは、貴方が一般的な常識にかかる人ではなかったからか、ことは思った通りには進まなかった。


それどころか、貴方の方は気を軟化させて行った。


計画は全くの失敗に終わってしまったのです。


 これはK君にとって完全なる計算違いでした。僕の書いて差し上げた手紙が、貴方に強い影響を及ぼすとは考えなかったのと、人は変わって行くという部分を考えなかった失敗も大いにあったでしょう。


失敗を知ったK君は、本来誰に気づかれてもいない計画を中止にしてもいいというのに、計画の変更までして、望む結果に繋がるよう考えたのです。


それこそ、怜が面会に現在来てくれなくなっている一件なのではないでしょうか。

彼は僕と怜の分離を謀ったのです。


 前にも書いたように彼は怜のところへも、ちょくちょく行っていました。


K君の能力からしたら、怜を操るなど簡単に出来たのでしょう。


彼の怜へとコントロールは、それでも時間が掛かったからこそ、はじめのうちは面会にも来てくれていた。

これは完全にコントロールされる前だったと思え、面会へと来なくなった辺りでは、完全にマインドコントロール下へと入ってしまったのでしょう。


K君が僕の面会に来なくなったのは、怜の方の手応えから、僕の方には「もう利用価値が無くなった」と判断したからではないか。自分の手中に落ち、怜が隔離状態になった段階で僕は必要なくなったのです。


 計画は想像するように、順調に進んで行ったのでしょう。

何故そう思うかと言えば、貴方が長く面会に来ていないからです。


K君は、怜の母親への嫌悪、憎悪を増長させ悲劇へと導いた。

彼は僕とのやり取りを仲介していたのですから、貴方の住所も知っているのです。

当然貴方のもとへと、怜を向かわせるのが可能なのです。







『僕の想像が間違っていてくれ』と願いながら、その確認の為、今僕は方々に手紙を送っています。


結果を待っている間、今貴方にも手紙を書いている訳です。


待っている僕はどれ程やきもきしているか。

本当ならば貴方が此処に来てくれるのが一番いいのです。

来ないのは「他の理由があるからだ」と願ってやみません。




尤も、僕の想像通りならば、記者が見に行った後に貴方はもう······

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或る真実の告白 ライゾウ @kakulyzoh

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