第31話 『白昼夢に騙された話』

大きな公園の奥を歩いていると、小さなカフェが目についた。


「こんなところにカフェなんてあったんだ」


ちょうど小腹が空いていることもあって、入る事にした。


店内に入ると、どうも水の膜一つ隔てたようにぼんやりとした景色に迎えられる。

なのに、不思議とそれに違和感を感じない。


ウェイターらしき影が近づく。

ゆらめく輪郭がどうも人でないようだが、気にもならなかった。


私は勇気を出して、「あの〜」とウェイターさんに声を掛けてみる。

目の前にいる“ソレ”は何やらモゴモゴと私に返答するが、内容は聞き取れない。

夢うつつの中、いきなりアレが現れた。


私の目の前に置かれたのは、大きなチーズの塊だった。

蛆虫のわいたチーズがテーブルの上で臭気を放ち、そこで白昼夢は終わった。


けれども困ったことに、

鼻の穴の中には臭気と、

それから蛆虫が残っていた。

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元気玉怪談 @Minoru_oni

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