動画で知ってはいたが読んでなかった貴方。面白いので、読むことを強く推奨する次第で御座います。私がそうだ。
ただまぁ、読んだら読んだでひたすら続きが気になる羽目になる。
読まずにいる期間が長ければ長いほど一気読み出来てお得感はあるし、いつ読んでもいいとは思う。
内容については今後どう転がるかさっぱり分からないので、面白い以外はなんとも言えない。
動画を見てきた人なら分かるだろう。クリスマスからの、けものラビリンス。ちん避け。エイプリルフール。どう転がるか、分からないのだ。
ただ「今更戻ってきてくれと叫んでももう遅い」と謳ってるのでまぁ、そういうことなんだろうなぁ。
ガッkoyaさんのニコニコ作品はほぼ全て履修していると思う。
そのくらい好きな作者さんなのに、小説は存在を知りつつなんとなく敬遠していた。とんでもない損をしていた。
禁忌を犯した人の話が好きだ。
いわゆる三大禁忌、殺人、食人、近親交を犯すと、その人間はそれ以外の人間と別の存在に変質する。他人から見ても、本人の中でも。
殺人鬼や食人族、身内を犯す変態にはあまり興味がない。欲求に従った行動が禁忌なら、もともと異質な人だっただけだ。そんなんじゃなく、昨日まで普通の人間だった人が否応なしに罪業人に堕ちるという不条理と、やっちまった普通人の内面の地獄が好きだ。
「殺すしかなかった」という話や、ひかりごけ事件、アンデスの聖餐など、緊急避難として禁忌に手を出すのも悪く無い。でも一番好きなのは、貯水タンクで死体が浸かった水を飲んじゃった事件の「味がおかしかった」と証言する市民だ。ふざけて同僚の尻にエアコンプレッサーを噴射したら直腸穿孔して死んじゃった、というのもなかなか良い。
こういう事件はそこまで深掘りされることがあまりなく、無自覚の市民から一転、禁忌の罪業人になった人の心情が語られるコンテンツは少ない。
この「もしもなろう小説の主人公がうっかり人を殺したら」は、そんな欠乏にピッタリとはまる作品であった。そのようなテーマへの好感に加えて、主人公のリアリティ溢れる矮小さ加減、期待以上に作り込まれたファンタジー世界、ライト君が飼う万華鏡の如き地獄、そして隅々を支えるガッkoya節。もう最高だ。本が出たら買うし、なんなら数冊買って知らない家の郵便受けに放り込みたい、そんな作品。
カクヨムオンリーのタグをつけておきながらこのタイトル……作者はなかなかいい根性をしている……。
物語は主人公である冒険者のライトがパーティーから追放されるところからスタート。一応「イージスの盾」というユニークスキルは持っているのだけど、ぶっちゃけ頑丈なだけで実用性が低いからね、仕方ないね……。しかし、これがただの盾ではなかった! このスキルの真の使い方に気づいた瞬間、追放者だったライトの冒険者生活は一変! ステータスを自由自在に操れる最強の冒険者が誕生する!!!!!
…………うん、どっかで読んだことあるな、こんな感じのやつ。僕はこういうの好きだよ……。しかし本作が真価を見せるのはライトがこの力に目覚めてからである。
タイトルを見れば予想がつくように、この後ライトは誤って人を殺してしまう。ギャグとかではなくガチの殺人である。
何とか現場から逃げ出したが、その後は罪の意識に苛まれ、その一方で自分が犯人だと気づかれているのではないかという不安にも襲われる。せっかく手に入れたチートな力も下手に使うと殺人犯だとバレてしまいそうでなかなか披露できない……さっきまで調子に乗っていたライトが、一気に曇っていく激しい落差が本作の最大の読みどころ。
この心理描写が実に絶品で、追い詰められた人間の不安定な心情を見事に描き出している。また自分を追放したパーティーの意外な秘密も徐々に明らかになるなど、ストーリー面でも先が気になる内容になっている。今後の展開が全く想像つかず、是非リアルタイムで完結まで追いかけたい作品だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)