要するに"ちょうどいい感じ"になるのがベスト
今回からようやく戦闘描写そのものにスポットを当てます。相変わらず主観100%で資料もないものですが、参考になればと思います。
その前に一つお聞きしますが、皆様が考える理想の戦闘描写とは何でしょうか?
手に汗握るような大迫力? キャラたちの心情も含めてダイレクトに伝わってくる描写? それとも漠然とした印象しかないけど、自分たちが伝えたいものを全て読者に伝えられるようなものでしょうか?
人によって目指すものは異なります。私が列挙したものと全く違うものを考えた人も多いでしょう。
ですが "読者がしっかりとイメージできる" という点においては、皆さん共通しているのではないでしょうか?
であるならばつまり、読者が読んでその光景を鮮明にイメージ出来る・味わえる描写であればいいわけです。
♢
私が意識していることを共有させてもらうと、描写に強弱をつけるということです。(他の方に言われて初めて意識してることに気付いたことなんですがね……)
どういうことかというと、特に強調したい部分は詳細に作り込むけど、そうでない部分は最低限読者に伝わる程度に抑えるということです。
先に断っておきますが、手を抜いているわけではありません。こうしないと読者が疲れてしまうからです。
これは自分が読み専だったころに気付いたんですが、小説を読むのって意外と体力を使います。web小説でも例外ではありません。文字を読んで、想像しますよね? その作業を常に行うので結構疲れるんです。
戦闘描写は特にそうです。ファンタジーにおいては読者も戦闘描写について注目しているため、力を入れて読み込んでくれます。
力を入れて読み込む=詳細に読んでくれると言い換えてもいいでしょう。しかし、それはつまり体力を多く使うということです。
もし「戦闘描写に物凄く凝っているのにPVがあまり伸びない!」と悩んでいる方がいらっしゃるなら、それは読者が途中で疲れてしまってリタイアしているからなのかもしれません。
どうすれば読者が疲れず、最後まで読み切ってくれるのか? これは意外と単純で、情報量を多くし過ぎないようにすればいいです。
情報量が多い=考えることが多い
という方程式を作れます。
考えることが多い=疲れやすい
という方程式にもなります。
なので凝り過ぎると読者が疲れてしまって、離れてしまいます。
ただし例外として、戦記物や格闘系のようなジャンルは今言ったことそこまで当てはまらない印象があります。これについては私もよく分かっていないので、知っている方がいれば是非教えていただければと思います。
閑話休題、話を戻して、ここからは簡単な強弱の付け方を見ていきます。誤解を生まないように説明しておきますが、これは一つ一つの動作についてなのでクライマックスとかそういう意味ではないです。
強弱の付け方を説明する前にまず例を提示します。
以下は[剣士同士の模擬戦]という条件を基に私が即興で作った戦闘描写です。
♢
途切れないAの剣舞がBの体幹をガードの上から切り崩していく。徐々に追い詰められる感覚にBも焦りを覚えるが、反撃の隙が見当たらない。
無理に攻撃を仕掛ければ手痛い反撃を喰らうことは確実。しかし反撃しなければ押し負ける。そんな状況で躱す防ぐを強制されるストレスはBの冷静を削り取り、またそこから生じた焦りがさらなるストレスを生み出すという無限ループが起こっていた。
「クソッ、たれがァ!!」
堪えがたい屈辱と焦りが叫びとなって表出するが、重なる焦りはどんどんBの防御を雑にする。そこに勝機を見たAは、刺突のフェイントを挟んだ後に強烈な切り上げを繰り出し、Bの剣を弾き飛ばした。
「……勝負あり。ってことでいい?」
淡々とした言葉と共にAは剣の切っ先をBへ向けた。その切っ先に敗北を見出したBは歯噛みしながら項垂れ、崩れ落ちるようにしてその場に座り込んだ。
♢
こんな感じです。私自身人に講釈垂れるほど熟達した人間ではないので断言はできませんが、これなら平均点より上は取れるかなと勝手に思っています笑
解説ですが、意図的に短文を多くしています。少し長めの文章も読点で短く切っています。
これは強弱でいう弱で、こうする理由としては、さっき言った読者が疲れないようにするためです。読者が1ターンに受け取り、イメージのために考える情報の量を調整しています。
読者が文章から受け取った情報をそのまま噛み砕くことなくイメージ出来るのが理想だと私は思っていて、そのためにも長すぎたり詰め込めすぎたりしないように気を付けています。要するに読者に余計な作業を与えないようにしています。
・Aに押されていたBが焦って雑な行動をし始めた。それに気付いたAが勝機を見出し、強攻撃を仕掛けたことで決着した。
上記の戦闘を要約するとこうなります。
分かりやすいですが、あっさりし過ぎです。考える必要はほぼゼロですが、読み応えがないので満足感に欠けます。読んで満足できないものを読み続ける方は早々いないでしょう。
とにかく分かりやすく、しかしあっさり過ぎないように。これが大事だと思います。
次に見て欲しいのが二段落目~四段落目です。全体の半分以上をBの焦りを描写するために使っていますよね? これ要約すると「Bが焦って隙を晒した」の一言で済むんですよ。でもメッチャ肉付けしてるんです。
これが描写の強弱における「強」です。Aの攻撃に押されたBが何を考え、そしてどうしたのかを詳細にしました。
なぜそこを詳細にしたかというと、このときBが取った行動が戦闘の決着に繋がっているからです。
Bが劣勢を打開しようと焦るあまり防御が雑になったからAに王手を指されたわけですから、それを強調する必要があります。そうしないと戦闘に説得力が出ませんからね。
それとこれはワンポイントアドバイスですが、前後の文脈も意識出来ればいいと思います。
私が「強」としたBの焦りの描写の前後にある文章をもう一度見てください。
Bが焦りを覚えた理由と、焦りを覚えたことでどうなったか。この二つが「焦り」という要素で繋がっています。この繋がりがあるからこそ、Bの焦りを無理のない自然な文章で詳細に描写出来ますし、描写していないAの冷静さもBの焦りを強調することで暗に示せます。
ざっとこんな感じでしょうか。今回の例は例のために作ったものなので私も簡単に作れましたが、ここにキャラクターたちの思想やそれまでに紡いできた物語が加わると一気に難しくなります。
重ねてお伝えしますが、今まで私が述べてきたことはあくまで私の主観ですので、絶対に正しいというわけではありません。皆様の文章能力を底上げすることを保証するものでもありません。
あくまで参考程度に受け取ってもらえればと思います。
♢
この創作論は引用著書や参考文献等もない、私の主観によるものです。私自身素人ですので、何か間違っている点や誤った解釈などあるかもしれません。そのときはコメント等でご指摘して頂ければ幸いです。
戦闘シーンを魅力的に書くにはどうしたらいいの? 金剛ハヤト @hunwariikouka
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