第5話
前回今井という女子生徒に決闘を申し込まれた綜真。予定時間10分前になって綜真は第一競技場についた。東側控室で道具の準備などをしていると、数人が入ってきた。
「萩原先生に新井田先生。吉岡会長もどうなされたんですか?」
「俺はルールの確認にな。こいつは声をかけに来たそうだ」
「思ったより緊張してなさそうだね。もしかして慣れているのかい?」
どうやら萩原先生はルール説明に、会長さんは冷やかしに来たようだ。
「あ、ルールについては大丈夫です。特に質問や変更要求などはありません」
「そうか。近接は無しにしてくれって言うやつは割と多いんだけどな。」
そりゃそうだろう。魔技や
「桜井君、君の実力はよく解っているつもりだけど、無茶はしないようにね」
「大丈夫です。多分無傷で終わらせられるので」
「あ、そうそう桜井君。この決闘は幸いにも入学首席、次席の対決だ。なので勝った方が生徒会に入れるということになった。
「・・・一応聞いておきますが発案者はどなたでしょうか?」
「もちろん私さ!君が勝ったら試験どおりの実力。負けたら血統主義者たちに干渉しやすくなるからね。拒否権はないよ」
あの時感じた含みはこういうことだったようだ。
「・・・分かりました。全力で潰してきます」
と、同時にブザーが鳴り、そして機械による合成音の案内が流れてきた。
「競技場の用意が完了しました。選手両名は試合場に出てください」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「桜井綜真さん、逃げずに出てきたことは褒めます。しかし、あなたは絶対に勝てません。試合場の環境は火山。火の得意な術者にとって有利な環境です」
「何故勝てないと?私が炎系の術式が不得意と決まったわけでもないのに」
「いいえ、貴方はすぐに思い知ることになりますよ!」
「それでは、試合を開始します。」
ビーッ
「不死鳥式・火炎槍!」
ゴォォォォォォッと音を立てて炎が沸き立つ。ただの火炎槍ではない。不死鳥式だ、威力は数十倍になっている。さらに不死鳥式には
「なるほど、火山などの火が強い場所では不死鳥式の威力は上がりますね」
「ええ、ですからあなたの負けは決まっているのです!!」
確かに普通の術者なら勝ち目はないだろう。しかし相手が悪かった。ガンッ!という音と共に火炎槍が消えた。
「「「は?」」」
おそらく此処にいたほとんどの生徒や教師、来賓が言っただろう。術式を搔き消す魔技は一般にも知れ渡っているし技能にもある。しかしさっき聞こえたような音はしない。皆が知らないし分からない“術式”だということは、一部のものには理解できた。だが、理解できたからといってすぐ対応できるわけではない。その隙をついて綜真は
「吹っ飛べ」
一言。用意しておいた情報干渉術式で今井の座標を書き換えた。術式では座標を南に10mに変えただけなのだが、同一空間同一界で起きたためテレポートなどの術式の見た目では無く、無理やり後方に引っ張ったような見た目となった。指定座標に到達したため移動は止まったが、壁際にまで追い込まれた。しかも急に移動が停止したことによってGが掛かり、意識が軽く混濁してしまい反撃用の魔法が発動できなくなった。そこに綜真は麻痺系の魔法を打ち込んだ。
「ァ...ッガァ...ッ」
動かなくなったのを確認した審判は一言。
「勝者、桜井 綜真!」
この決闘によって綜真の実力は全生徒、全教員、一部の財界、政界上層部に知られることになった。しかし、平穏な学校生活にはまだ遠く...?
科学も非科学も普通な世界の高校生活 千川 悠汰 @cat1ncarnation
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。科学も非科学も普通な世界の高校生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます