転生したら女性しかいない世界で俺が唯一の男になった件について

モモンガ

第1章:「転生、そして目覚めた世界」



「あれ……?」


目を開けると、見慣れない風景が広がっていた。青い空、白い雲、そして澄んだ空気。まるで映画のセットの中にいるかのような違和感が体中を包んでいる。少なくとも、これは俺が昨日までいた世界ではない。現実感がないにもかかわらず、体に伝わる風の感触や土の匂いは妙にリアルだ。


「ここは……どこだ?」


俺、一ノ瀬亮(いちのせ りょう)は、平凡な高校生だ。昨夜、勉強していたはずが、気がつけばこの見知らぬ場所にいた。記憶を辿ろうとするが、頭の中はぼんやりしていて、最後に何をしていたかすら思い出せない。事故にあったのか? それとも、夢か? 夢にしては妙に鮮明すぎる。


「……誰か、いるのか?」


周囲を見渡してみても、誰もいない。見渡す限りの草原。遠くには山が見える。こんな場所、俺の住んでいた街には存在しないはずだ。


突然、背後から聞こえた声に、俺は慌てて振り返った。


「あなた、ここで何してるの?」


声の主は、腰まである長い金髪をたなびかせた、一人の女性だった。目を見張るほどの美しさで、まるでファンタジーの世界から飛び出してきたかのような服装をしている。剣を持ち、鋭い眼差しでこちらを見ていた。


「え、あ、えっと……」


突然の出来事に言葉が詰まり、どう答えていいのかわからない。彼女は一瞬眉をひそめたが、すぐにため息をついて言った。


「もしかして、あなたが……男?」


「え?」


男? 俺が男なのは当然だが、なぜそんなことをわざわざ確認するんだ?


「どうしてここに男がいるの? この世界には、男性は存在しないはずなのに……」


「……は?」


彼女の言葉が頭の中で理解できず、俺はただ彼女の顔を見つめた。この世界には男性がいない? じゃあ、俺は一体どこにいるんだ?


「信じられない……」彼女は呟くと、少し距離を取りながらじっとこちらを見つめた。「あなた、どこから来たの?」


「俺は……わからない。ただ、気がついたらここにいたんだ」


彼女は少しの間考え込んでから、決意を固めたように頷いた。


「私はセレナ・アークウィル。ここから近くの街で隊長をしている者よ。あなたをすぐに連れて行かなければならないわ。少し危険な場所だから、ここに一人でいるのは良くない」


「え、ちょっと待って。状況が全然わからないんだけど……ここはどこなんだ? 俺はどうして……」


「説明は後よ。今は急がないと。ここはもうすぐ『影の襲撃』が来るかもしれない場所なの。ついてきて」


影の襲撃? 何を言ってるんだ? わけのわからないまま、俺は彼女に従って歩き出した。


---


しばらく歩いた後、草原を抜けると小さな街が見えてきた。石造りの建物が並んでいて、まるで中世ヨーロッパのような風景が広がっている。だが、そこには明らかに違和感があった。通りを歩く人々……全員、女性だ。


「ここは、本当に……」


「そう、ここは女性しかいない世界よ」


セレナは淡々と答えながら街の門をくぐる。俺の頭は混乱の極みだ。どうやらここは、男性が存在しない異世界のようだ。だが、俺はなぜこんな場所に来てしまったのか。そして、この世界で俺がどうやって生きていけばいいのか、まったく見当がつかない。


---


街の中を案内されながら、セレナは俺に少しずつこの世界について説明してくれた。この世界、名を「アルテミナ」と言うらしい。何百年も前に男性が消え去り、以来、女性だけの社会が築かれてきたということだ。


「でも、どうやって子供を……?」


「魔法よ。私たちは、特別な魔法によって子供を作ることができるわ。でも、それでも男性がいた時代の話は、今でも伝説のように語られている。あなたが現れたということは……何か大きな変化が起きる予兆かもしれないわ」


俺が転生した理由は不明だが、何か重大な使命があるのかもしれないという不安が募る。とはいえ、目の前の現実を受け入れなければならない。


「ここに着いたわ。とりあえず、休んで。これからどうするかは、後で考えましょう」


セレナに案内された建物に入ると、俺はベッドに腰を下ろした。これからどうなるのか、全くわからないが、一つだけはっきりしていることがある。


俺は、女性しかいない世界に、ただ一人の男として転生してしまったのだ——。


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