人類バーサス地球
加賀倉 創作【書く精】
人類バーサス地球
——曇天の歓楽街。
地を覆い尽くす
「蒼白く不健康な肌……尖った耳……鋭く長く突き出た犬歯……漆黒のマントに身を包むその
⚫️《〈お前たちは調子に乗りすぎた〉》⚫️
今度の声はスピーカーからではない。それに、耳に、ではなく、脳と
「ねぇ……あなた、今、何か言った?」
「いや、言ってないけど」
ひと組の男女が、その謎の声について話しだす。
「低い声が聞こえたのよ。『お前たちは調子に乗りすぎた』って。確かにそう聞こえた」
「えぇっ? そんなの、誰が、誰に対して言うんだよ」
「そうだけど、聞こえたのは本当よ?」
「うーん、言われてみれば……俺も、何かぼんやりとしたものを感じた気がしないでもない」
気のせいではない。
謎の声は、まやかしなどではなく、確かに存在した。
⚫️《〈森を焼いた〉》⚫️
⚫️《〈
⚫️《〈生物たちの生活を脅かした〉》⚫️
「なに!? 今の声!!」
「ね、そうだよねっ、わたしも聞こえた!!」
また別のひと組がそう言った。
⚫️《〈臭くて毒々しい廃棄物を生み出した〉》⚫️
⚫️《〈大地と海と空を汚した〉》⚫️
「なんだ今のはっ!?」
「誰? どこから語りかけているの!?」
⚫️《〈冷たく無機質な光で夜を照らした〉》⚫️
⚫️《〈星々の
「なに? 神様? 仏様?」
「天からの声!?」
️
⚫️《〈地震〉》⚫️
⚫️《〈雷〉》⚫️
⚫️《〈暴風雨〉》⚫️
⚫️《〈台風〉》⚫️
⚫️《〈津波〉》⚫️
⚫️《〈噴火〉》⚫️
⚫️《〈異常気象は全て我が起こした〉》⚫️
「こわいこわい! なにこれっ!!」
「これ、みんな聞こえてるのか……」
「もしかしてこれ、地球の声、とか?」
「いや違う、きっとこれは、主の声に違いない!」
「違うって、天使だろ?」
「堕天使かもしれないぞ」
「ひぃ! やめて! 頭おかしくなっちゃう!」
人々は、ひどく動揺した。
直後、とあるSNSのトレンドは、この謎の声にまつわるもので埋め尽くされた。
———————————————
#神の啓G
7,464,220 posts
1.ニュースのトレンド
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電磁波に洗脳される
305,894 posts
2.テクノロジー・トレンド
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#5Gの次
85,858 posts
3.テクノロジー・トレンド
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#地球の声
547,853 posts
4.ニュースのトレンド
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重力加速度G
20,985 posts
5.サイエンス・トレンド
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ヴァンパイアハンター2nd G
1,899 posts
6.エンターテインメント・トレンド
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最強のTKG
103,898 posts
7.食べ物・トレンド
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鶏卵価格高騰
88,888 posts
8.食べ物・トレンド
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以来、謎の声は一向に止む気配がなく、人々に語りかけ続けた。
⚫️《〈あそこは地盤が強い〉》⚫️
人々は地震を恐れて、揺れに弱い場所を離れた。
⚫️《〈あの高台なら津波は来ないだろう〉》⚫️
人々は津波を恐れて、高台を目指した。
⚫️《〈そこなら大樹が屋根となろう〉》⚫️
人々は風雨を
⚫️《〈そこなら飲み水が豊富だ〉》⚫️
人々は水不足を恐れて、川や湖や池のそばに住んだ。
⚫️《〈ここでは魚や山草がよくとれる〉》⚫️
人々は食糧不足を恐れて、そうした場所に好んで住んだ。
⚫️《〈そこに落雷はないだろう〉》⚫️
⚫️《〈あの山は噴火しない〉》⚫️
⚫️《〈ここがいいぞ〉》⚫️
⚫️《〈あそこはだめだ〉》⚫️
⚫️《〈そこに行くのをすすめる〉》⚫️
人々は、謎の声に
⚫️《〈こっちだ〉》⚫️
⚫️《〈そのまま進め〉》⚫️
⚫️《〈じきに最高の土地に
⚫️《〈もう少し歩け〉》⚫️
⚫️《〈目の前だ〉》⚫️
⚫️《〈そこで止まれ!〉》⚫️
人々は、ある場所に誘導された。
一箇所に集められた人
すると。
揺れが始まった。
「なんだ? また地震か?」
「ここは地盤が強いんじゃなかったのかよ!」
「どうなっちゃうの、わたしたち……」
「こわい! 助けて!」
慌てても、もう遅い。
揺れは激しさを増す。
大地が裂けゆく。
いや、裂けているのではない。
大地が、開いているのだ。
ぽっかりと沈みゆく大地。
その上にいた者は、落ちる。
「誰か手を貸してく……うわぁああああ!」
「きゃあ!」
「ひぃいい!」
「ぎゃああああ!!!!」
大地に大穴が空いた。
人々は一人残らず落ちた。
その代わりに……
穴のすぐ横から、何かが
(^^)/ (^^)/ パカッ! \(^^) \(^^)
H ̄ ̄ ̄ ̄\ / ̄ ̄ ̄ ̄
H |
H 〆
H |
(^^)/ 人 |
H |〆
H 人
H |
(^^)/ |人
H 〆
H
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
なんと、地底に住む者たちが、地上の人間と入れ替わりで、
彼らの姿は
蒼白く不健康な肌。
尖った耳。
鋭く長く突き出た犬歯。
漆黒のマントに身を包む
彼らの正体は
「人間どもめ、なかなかに良い建物をこしらえてくれたな。あれだけの広さがあれば、昼間も、太陽の光を浴びずに快適に暮らせるだろう」
とりわけ
太陽の光。
日を浴びずに地底で育ったことで太陽の光に弱かった彼らは、光を遮ることができる建物が、十分な数、人間の手によって地上に立ち並ぶのを待ち侘びていたのだった。
「にしても人間どもは……面白いように、あの妙ちくりんな声の言いなりになってくれたな。大して、賢い種族ではないのかもしれない。建物の強度は大丈夫そうか? すぐに崩れてしまわないことを祈ろう」
〈完〉
人類バーサス地球 加賀倉 創作【書く精】 @sousakukagakura
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