土の果て水の果て、空様の育て親の情。

人の まなこ より生まれし兄弟。一人は
山へもう一人は海へ。
 かりそめに父子となりたる墨染の男と
山彦、それは恰も運命の如く。

 先を急ぐと言いながらも待っている。
死をも超えた己の運命、そして自らの存在
来し方を知らしめる 何か を。

一方、同様に出自を識らぬ少年は、もう
ひとつの まなこ であった 兄弟 と
邂逅するが。

災厄の主と来訪神とのぶつかり合いは、
様々に奇怪な奇跡を齎してきた。

 あれは、この世に存在してはならぬ。

なれば自分も。けれども、かりそめの父は
生きる術を、そして 人の心 を教えて
くれた。

 人に寄ったもの、山彦。
そして魔に寄ったもの、海彦。

死ぬる事のない墨染の男。泥に塗れた
盲目の少女。水底の神。


彼等は、何を想うのか。