珈琲の空

@Lam_7766

珈琲の空

空けた窓から入ってくる冷えた風がレースのカーテンを揺らす。

白と木目調の私の部屋をフロアスタンドの濃い橙色の灯りがぼやっと照らした。何度か触れて明るさを落とす。


 朝起きてすぐに動画サイトのフリージャズミュージックをパソコンで流しながら飲む珈琲が私の至福である。この時間も、香りも空間も全部が私のお気に入り。


 社会人になると同時に一人暮らしを始めて約四年、早朝五時のひとときは私の生活の一部だ。早起きは朝の空気を胸いっぱいに吸い込むのが好きで高校生のときからしていたが、珈琲は一人暮らしを始めてから飲み始めた。学生の頃は苦手だったのだが、ふと飲んだらこの苦さが美味しかった。


 角砂糖を二つ珈琲に落とし、スプーンでくるくると混ぜる。夜空に星が散らばるように極小の結晶が広がって、じんわり芳ばしい茶色の朝焼け空に溶けて消えた。


 そうだ、まだ冷蔵庫に昨日作っておいたマドレーヌがいくつか残っていたような。マドレーヌを冷蔵庫から一つだけ取り出し珈琲の隣に並べれば、長らく行けていないカフェと同じ世界が生まれた。違うことは全部私が生み出したことくらいだ。


 窓から昇ってくる真っ赤な陽の光が差し込む。私はスマフォのカメラアプリを起動させ、大好きなものを全部、小さな箱に閉じ込め

るように気持ちを込めてシャッターボタンを押した。

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