短編だけど長編のような構成で、密度がある

第一印象は「限りなく透明に近いブルー」という小説。でも、中身は違いました。

無駄なく端的だけど詳細な描写。情景・場面を想像しやすいです。
小さな、さりげない謎を入れてあることで、惹きつけてあります。
少しずつ情報を出すのがいいですね。
前振りから回収をする形で解説するため、伏線回収じみた気持ちよさがあります。
丁寧な話の運びでした。

「友達の友達の叔父の友人を名乗る」というまわりくどさにユーモアを感じます。
アブノーマルな雰囲気、独特の世界観。ふわふわとしながら不穏な感じ。英字の略語ってドラッグっぽいですよね。
異様な空気の中に生活感が混じり合うのがまた、コントラストがあります。でも、どことなく現実の延長線のような気がしなくもない。
生々しくリアリティがあります。

特殊な日常を切り取ってはいるものの、異常過ぎない。どことなく自然。それどころか、癒しですらある。きっと、細かく日常を描いているからでしょうね。
青緑というのがまた。海と植物の両方を描ける、最適な形容です。

ミドリが共感を抱きやすい描き方をされていると感じました。あの異常な日常も彼女にとってはある意味で救いだったのかも。

そして終盤の急展開。急転直下のスピード感。衝撃的でホラーじみた終わり方です。
隠喩だからこそ伝わる怖さ。具体的な描写を省き、事実だけを述べるのが冷たさを引き立てています。
これもまた伏線回収といえるのかも。最後まで読んでから冒頭に戻ると、なんともいえない気持ちになります。

なにげに終盤のカギ括弧文うまいですね。
ある意味純粋だった子どもが大人に堕ちてしまった物語だと感じました。
最後の短い内容が余韻を引き立てていました。