第11話 No.1 VS No.2 part3

 「ゲーム如月1-1!」


 お互いのサーブゲームでリズムをつかむと、そこからは怒涛のキープ合戦。

万丈先輩が力で押して、如月先輩がテクニックでそれをうまくかわす展開が続いていた。


 

 「ゲーム万丈5-4!」


 

 「ハァ、ハァ、ハァ。」


 

 お互いにかなり息が上がっていた。


 

 「ヴァッエェイ!」



 「ヴゥラァ!」



 二人とも声を荒げ、お互いのすべてをぶつけるかのように楽しんでプレーしていた。俺は、この白熱した戦いの中でどちらもパフォーマンスが落ちないどころか、むしろ徐々に上がっていることに気づけば感動を覚えていた。


 「ゲーム如月6-6!」


 お互いに均衡を破ることができず、ついに試合はタイブレーク(7点先取)にもつれ込んだ。ここまで来たら勝利はどっちに転ぶかはわからない。


 「6-5 万丈リード!」


 ワンチャンスをものにした万丈先輩がミニブレークに成功し、ついにマッチポイントを握った。



 「フー、、。スッ、バシィィン!!」



 豪快なサーブが如月先輩を襲う。


 

 「ガキッッ!」



 「返したっ!?」



 「トンッ。」



 「アウト!ゲームセットアンドマッチ!ウォンバイ万丈!7-6!」



 「ウォーーーーーーーーーー!!!」



 コートサイドからどよめきが起こった。



 「あざっした!!」



 「ひぃやー、悔しいけど今日は俺の負けだぜ、凌駕!」



 「フンッ、これで通算戦績30-30でふりだしだな。」



 No.1とNo.2がそれぞれ健闘を称え、握手を交わす。


 俺は今、間違いなくものすごい試合をこの目で見た。おそらく一生忘れないだろう。


 (すごい、すごすぎる。これが本物の頂上決戦。俺もあんだけ打てたら、、、。)


 その時はしか言葉が出てこなかった。


 ふと隣を見ると、柊は周りの異様な盛り上がりとは裏腹に、一人真剣な目でコートを見つめていた。


 「俺だって、、、。」


 ふいに柊のつぶやきが聞こえた。俺はなにか言葉をかけようとしたが、かける言葉も見つからなかった。


 「よし、全コート注目!!」


 (如月先輩の声だ。)


 「今日はもう日暮れるし、練習終了だ。みんなコートブラシー。」


 俺はその合図を聞くや否や、真っ先にコートブラシへと駆け出した。この学校ではもちろん、コートブラシやボール拾いなどの雑用的な仕事は率先して一年生が取り組む。面倒だが、コートに対しての感謝だ。


 

 「コートブラシ終わりました!」



 俺は大きな声でそう告げた。



 「ご苦労、全員整列!気をつけ、礼!」



 「ありがとうございました!!」



 (なんか、今日の部活すげぇ長く感じたな。)


 そんなことを思いながら俺はボールカートを押してコートを出た。


 


 


 

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ゲームセット モヘンジョ・太郎 @mohenjotaro2

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