第10話 No.1 VS No.2 part2

 審判のコールがされた途端にコートは不気味なほど静まり返った。まるで嵐の前の静けさのように。ただ聞こえてくるのは万丈先輩のボールをつく音だけだった。


 「トンッ、トンッ、トンッ。」


 こっちまで張り詰めた緊張感が漂う。


 

 「スッ、パアァン!!」


 

 「15-0!」



 あまりに一瞬すぎて何が起きたのかわからなかった。ただ万丈先輩のサーブの打球音だけが響き、気づけばボールはフェンスにめり込んでいた。


 「いや、火の玉かよ(笑)。あいつのサーブはいつも規格外すぎるって。」


 急に後ろで声がしたので俺は少し驚き、振り返ってみると、そこにはトイレ休憩から戻ってきた逸崎先輩がいた。逸崎怜王いつざきれお先輩は万丈先輩に次いでこの学校のNo.3の実力者だ。


 「お、さっき凌駕と試合してたゲーマー君じゃん!」


 先輩はそう言いながら俺の隣に寄ってきた。


 (ゲーマー君?)


 俺は呼ばれ方に少々違和感を覚えたが、先輩は続けて言った。


 「いやー、さっきの試合は中々のガッツだったね。あそこまでしぶとい新入りは見たことないよ。」


 「あ、ありがとうございます。万丈先輩ってあんなサーブ速いんですね。俺と試合してくれた時はあんなスピードじゃなかったのに。」


 「驚いただろ?凌駕はサーブのクオリティだったら日本一だもんなー。」


 「日本一!?」


 という言葉に反応せずにはいれなかった。


 「まあ、日本一っていうのは認定されたとかじゃなくてあくまで俺個人の見解だけどな(笑)。」


 「でも先輩がそこまで思うくらいってことは、全国でも通用するサーブてことですよね?」


 「それは間違いないな。あいつよりいいサーブ持ってる高校生は見たことないな。なにしろサーブは昔からあいつの必殺技みたいなもんだったし、あのサーブと恵まれた身体能力で全日本のU12で優勝しちまったからなー。」


 「全国優勝ってことは、、えっ、万丈先輩って日本一だったんですか!?」


 「そゆこと。もう6,7年前の話だけどな。」


 初耳すぎて驚きを隠せなかった。いくら昔のことといっても、全国優勝はとんでもない偉業だ。


  

 「ウォラッ!!」


 「ゲーム万丈1-0」


 

 気づけばサーブで圧倒した万丈先輩が第一ゲームをものにしていた。



 「トンッ、トンッ、トンッ。」



 次は如月先輩のサービスだ。


 「しょーたのテニスは凌駕と正反対って言っていいかもな。」


 「そうなんですか?」


 「まあ見ときな。」



 「スッ、スパッ!!」


 

 「バコッ!」



 「シュタッ」



 「パコン」



 「バァァン!!」



 「15-0」



 なんて滑らかなテニス。万丈先輩がのテニスだとしたら、

 如月先輩はのテニスだ。


 「今のはまさにしょーたのテニスって感じだったな。とにかくあいつはペースをコロコロ変えるのがやたらうまいし、嫌なとこついてくんだよねー。チェンジオブペースの申し子みたいだわ(笑)。」


 「なんかきれいなテニスですよね。」


 「なんだその感想(笑)。おもしれぇな。」


 「いや、テニスはパワーだけじゃないんだぁって(笑)。」


 「そこがテニスの奥深さだな。そういえば、ゲーマー君の名前ってなんだっけ?」


 「吉田暖です。」


 「んー、じゃあヨッシーか。」


 「へ?」


 「あだ名だよ、。さすがにいつまでもゲーマー君って呼べないだろ?」


 「確かにそうですけど、、、。」


 「呼び名なんてなんでもいいじゃん。じゃ、俺明日試合で先上がるから、じっくり観察しときな。ヨッシーまたねー。」


 そういって先輩はコートを後にした。


 


 


 



 



 

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