ラブコメ
ザイン
CASE1
「いや〜凄く印象に残ってるんだよね」
開口一番そう話すのは、個人で飲食店を営む頭部にタオルを巻いた男。
「…………と言いますと?」
私は今ネットで密かに話題のネタを追ってこの男に会っている。
「1人でやって来ることは今どき珍しいことじゃないんだけど、まぁウチにしては珍しいタイプのお客だったよ」
「珍しい…………ですか?」
男によればその人はシワ一つないスーツを初々しく着こなしていたそうだ。
「女性ですか?」
「あぁ…………きっと社会人成り立てだろうな」
店内の雰囲気を見て確かにその年齢層の女性が1人で入るお店では無いなと思った。
その男は女性が頼んだというメニューを作ってくれた。
出てきたのは、このお店1番人気のメニューとお茶碗に盛り盛り盛られたご飯。
「メニューは、特に変わった注文では無さそうですね」
「メニューは…···……な」
引っかかる表現。少しして目の前に揃った料理に違和感を覚えた。
「これ…………ご飯多くないですか?」
「だろ?こっちは並で頼んで、ご飯は大盛りなんだよ」
ご飯の大盛り自体はそれ程可笑しいとは思わない。ただ目の前には大盛りの茶碗が3つ並んでいた。
「その人。これを1人で?」
「あぁ」
メインよりも明らかに多いご飯の量。まるで【こちらが目当て】と言わんばかりの光景に、なんとなく男が私に伝えたいことが伝わってきた。
私はまず【メイン】の料理のスープを啜る。豚骨をベースにしょうゆの風味がしっかりと味にされどクドさを感じさせない味が食欲を誘う。
そんなスープの染み込んだ太麺を啜る。しっかりとしたコシが味わいを深くしている
ふと視線をご飯に移す。【メイン】によって期待値が高まったことで自然とご飯への期待も増していた。
ご飯を頬張ると……………ふわふわで一般的なご飯だった。
(ご飯より明らかに【コッチ】がメインだと思うんだが)
「好きな味です」
「そうか。良かったよ」
スープでご飯を食べたりして完食したが、やはり最後の一杯の時には【メイン】は無くなりひたすらご飯を喉に通すこととなる。私には多いと感じる量であった。
「その人よく食べましたね」
「……………」
「あの〜」
「あっ、すまん、すまん。その人の食べてる姿思い出してさ」
「はぁ…………」
「あの食べっぷりは料理人冥利につきるな」
「……………」
このお店を特集しようかと目的と違うことを考えていた私は、この時の男が何故その珍しい女性をそのような讃え方をするのか理解に苦しんだ。
しかしその女性を追いかけることでその意味が重々理解出来るようになっていくのであった。
ラブコメ ザイン @zain555
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