とても丁寧に描かれた作品です。
この作品の個性として一番に挙げられるのは、なんといっても、「異世界の内情や情緒」というものを、じっくりと手探りするように味わわせてくれることです。
そこの世界に住む人々は、現実世界の人間とはどう違うのか。普段はどんな生活をし、どんなことを考えて生きているのか。そういう「文化の違い」みたいなものにしっかりとフォーカスを当て、一種の異文化交流をしているような感じを引き出してくれます。その中で更に「魔法使いがなぜか迫害されている」という謎を追う展開となります。
せっかく異世界に来たのだから、ファンタジーなのだから、その世界の空気とか内情なんかをもっとしっかり味わいたい。昨今の「ファンタジー」の中では忘れられがちなそのポイントを思い出させてくれるのが、この作品の第一の魅力だと思います。
……と、いうように情緒満載で紡がれるこの物語ですが、もちろん魅力はそれでは終わりません。
そう、ミステリーとしての真相部分。そこのインパクトが凄いのです。
終盤、『星と丸の王国』というこのタイトルの『意味』に触れて行くことになります。
その段階から怒涛の伏線回収が始まり、「なん、だと……?」と読む人を驚愕させる真相が待っています。
「魔法使いが迫害される意味」と、そもそも、この『異世界』とはなんだったのか。(特に『星』と『丸』の文字がどこから由来するものだったのか、という答えが面白すぎます)
それらがある一つのイメージに集約されていく。ついニヤリとするような感じもあり、ここまで読み続けて良かったと、必ず思わされること請け合いです。
情緒あるファンタジー、そしてラストでの驚きを味わってみたい方、是非とも本作を手に取ってみてください。