言う通りにしないと、何もしないぞ
@HasumiChouji
言う通りにしないと、何もしないぞ
「競り落せたのか?」
『閣下……流石に、これはマズいのでは?』
「俺は『競り落せたのか?』と聞いている」
『はい……』
「そうか、では、すぐに空港に向い、ワシントンDC行きの便に乗れ。こっちの空港に到着したら、すぐにホワイトハウスまで持って来い。万が一、ブツを紛失しやがったら、お前ではなく、お前の嫁を中東のテロリストのスパイに仕立て上げて強制収容所に送ってやるから、そう思え」
『ですが……機密費で閣下の私物を購入するなど……その……』
「俺は軍事・経済の両面で世界最高の国の大統領だぞ。この程度の事が何故許されない?」
『あの……機密費の使途は、いずれ公開する事になって……』
「ああ、それか。その頃には俺は死んでいるから大丈夫だ」
『私は生きてる可能性が……』
「それがどうかしたか?」
『ですから……その……閣下が私に命じたのは時効が無い犯罪……』
「うるさい。これ以上、俺に逆らうと、お前の嫁だけではなく、娘も強制収容所送りだ」
娘へのプレゼントとして国家予算で買ったのは……世界最大とまではいかなくても「最大級」ではあるダイヤだ。
娘が、まだ高校生だった頃から、娘と俺は、普通の父娘としては、あまりないような関係だった。
とは言え、俺は、すごぉぉぉぉ〜く偉いので、それも許される筈だ。
今度、夜中に娘の寝室に行った時に、事が終った後に娘に、このダイヤをプレゼントする予定だ。
俺は、期待に胸を膨らませながら眠りにつき……。
俺の体は青空に浮いていた。
目の前には人の姿にも見えない事もない巨大な入道雲。
その表面には、時折、稲妻が走る。
「ようやく見付けたぞ……。我にとっては須臾の間であったが、人間にとっては長い年月だったようだな」
俺は唖然としてしまった。
「何だ、そのしゃべり方はッ? シェイクスピアかッ?」
「妙であるな? 我は人間から数多の名前で呼ばれる存在だが『シェイクスピア』なる名前で呼ばれた記憶は無い」
「じゃあ、お前は何者だ?」
「我は天空を
「何だ、マーベル映画に出てるマイティ・ソーの同類か」
「ああ、たしかに、その名前でも呼ばれた覚えがあるが……自己紹介は、これ位にして、本題に入ろう。我が所有物を返せ。人間がインドと呼ぶ地に有る我を祀る神殿に戻すが良い」
「何の話だ?」
「人間どもの間でしか通用せぬ
「俺が競り落したダイヤの事か?」
「その通りだ。人間がダイヤと呼ぶ石である。我々、神々にとっては信者の敬虔なる気持ちがこもったもの以上の意味は無いが、信者達の想いを無碍にするのは、我としても望まぬ所である。さあ、返せ」
「だから、あれは俺の所有物になったんだ。お前のじゃない」
「これほど頼んでもか?」
「そんな上から目線の頼み方が有るかッ? 俺は、世界最強最悪の軍事独裁国家の元首だぞッ‼」
「我にとって、お前の国を壊滅させるなど
「返すまで……何だ?」
「
「はぁっ?」
その夢の事を思い出したのは……国が……と言うより世界が滅びかけた頃になってだった。
世界で最も偉大な国の大統領の筈の俺が……好きなモノを満足に喰えなくなっていた。
世界中で天候がおかしくなり農作物も家畜の肉も満足に作れなくなっていたのだ。
天候がおかしくなったせいで妙な病気も流行り出し、医者や薬も足りなくなっていった。
嵐や大雨や竜巻でいくつもの町が壊滅し……1年につき数百万人の国内難民が発生し……。
「どうなっているんだ、一体?」
「地球温暖化による影響としては予想通りです」
ホワイトハウスに呼んだ学者は、そう答えた。
「何か、おかしいだろう? 何で、俺が大統領に返り咲いてから、急に、その地球温暖化とやらが酷くなったんだ?」
「それが……」
「何だ?」
「わかりません」
「阿呆かッ? お前、学者じゃないのかッ?」
「ですが……まぁ、偶然だと思うのですが……」
「だから、偶然、何が起きたって言うんだ?」
「はい、大統領が再選されて間も無い時期に……その……
言う通りにしないと、何もしないぞ @HasumiChouji
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