第19話 胃袋は掴めた
「炊事洗濯って……。そのくらい自分でしますって。とにかく弟子は取ってな」
グルグル キュルル
そんな言葉を出している時だった。女性のお腹から音がしたのだ。彼女は顔を真っ赤にして、お腹を両腕で抱くように隠した。
ギロリと僕を睨みつけるも、その目には涙が浮かんでいた。ああ、お腹が空いているんだな。そう言えば、携帯用の薄いパンの持ち合わせがあったな。
「あの、良ければこちらをどうぞ」
僕は持っていた携帯用パンを差し出した。
彼女はパンと僕の顔を交互に睨み、結局誘惑に負けたのだろう、そのパンを受け取って一口食べた。
「え? 柔らか……。これ、どこで売ってるの?」
尋ねる女性に答える僕。
「それ、売り物ではなくて、僕が焼いたものですよ。このくらいなら、いつでも何枚でも焼いて出しますよ」
そう言っている間にも、彼女はパンをモグモグと食べ進めていた。よっぽどお腹が空いていたようだ。
「美味しい……。うーん、す、炊事だけなら……。あ、でも、弟子にするとか、そういうのは別の話ですからね!」
どうやら、心は掴めなかったが、胃袋は掴めたらしい。
白狼の牙〜彼女は拳ひとつで全てを叩き潰す〜 皇 将 @koutya-snowview
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。白狼の牙〜彼女は拳ひとつで全てを叩き潰す〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます