溟い森の中に射干玉の羽根一つ二つ散る

薄暗い森の中。木々が枝葉を伸ばして
せめぎ合う。下草とは呼ばぬ程に繁茂したその中で。遠く、微かに響く鳥の聲が。
森閑とした昏い世界を人が訪う事はない。
滅多な事では。

『自殺の名所』と、人はそう呼ぶ。


明白な意識が呼んだのだろうか。制服に
身を包んだ その男 は。忙しなく説明と
質問を繰り返す。役所仕事とは然り。

けれども、その形式貼った尋問の
 軸 が変わる時。

思い出して初めて私は泣いて、その真実を
目の当たりにする。理解して尚、悲しみが
薄まる事はない。
         未練なのか。


 いつまで、そうしているのだろう。

際限のない悲しみを、断つ。それも又、
いつまで、こうして行くのだろうか。
甲高い嘆きの後に。

 射干玉の羽根