溟い森の中に射干玉の羽根一つ二つ散る
- ★★★ Excellent!!!
薄暗い森の中。木々が枝葉を伸ばして
せめぎ合う。下草とは呼ばぬ程に繁茂したその中で。遠く、微かに響く鳥の聲が。
森閑とした昏い世界を人が訪う事はない。
滅多な事では。
『自殺の名所』と、人はそう呼ぶ。
明白な意識が呼んだのだろうか。制服に
身を包んだ その男 は。忙しなく説明と
質問を繰り返す。役所仕事とは然り。
けれども、その形式貼った尋問の
軸 が変わる時。
思い出して初めて私は泣いて、その真実を
目の当たりにする。理解して尚、悲しみが
薄まる事はない。
未練なのか。
いつまで、そうしているのだろう。
際限のない悲しみを、断つ。それも又、
いつまで、こうして行くのだろうか。
甲高い嘆きの後に。
射干玉の羽根