第77話 最終回:人生の終わらせ方

  真奈美が死を考えるとき、未知の世界に対する恐怖を取り除いてくれるのは唯一、死ねばあの優しい父にまた会えるかもしれないというその思いだけだ。


 全てが楽に進んだ人生では、年を老いたとき、特に際立って思い出せるものがないかもしれない。苦い思い出にもビタースイートの破片が潜んでおり、その人の人生を深みのあるものにしてくれるのだろう。


 また、人の命は終わりがあるからこそ意味を持たせることもできる。もし、終わりがなく人の命が永遠に続くとしたら、きっと人は気がふれてしまうだろう。


 何よりも大事なことはその終わらせ方にある。


 自分の力でできることを全てそのときどきに実行して行こう。後回しにはしない。


 そうすれば、最後の一息を取る瞬間、

「私の人生、これで良かった」と満足して、微笑ながら永遠の眠りにつくことができるのではないだろうか?


 真奈美はそんな風にしてこの世を去りたいと思った。


 30冊余りの父の日記は、父の死後遠く太平洋を渡ることによって、真奈美がこれからの余生の瞬間瞬間を一つ一つ大切に生きていくために必要な貴重なる要素を、天使の羽に乗せて運んできてくれた。

  

「お父さん、有難う!娘のジュリアンにも子供が生まれたよ。お父さんのひい孫たちだよ。とっても可愛い男の子たちだよ。彼らは、私が渡米することを決意したからこそこの世に送り込まれて来た宝物だよ。私も頑張っていいお祖母ちゃんになって、日本で育ったことで得ることができた大事な教えやお父さんの生き方から学んだユニークな発想の数々を孫たちにも自然に伝えていけるようにしてみるよ。


 後何年生きられるか分からないけれど、この次お父さんに会ったら、今度こそはずっとお父さんのそばから離れないでいつまでも一緒にいるから心配しないでね。約束するよ」


 I love you, Father!


                 The End!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

太平洋を渡った父の日記 真奈・りさ @BaachannouserID

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画