第3話
縄文時代の医師によって作成されたカルテ
患者名:マルノ
怪我の内容:戦闘により片腕を矢で射られる。
治療の内容:体内に残った
・準備
今回の治療では、床や壁に薬草を擦り付けた高床式の施設を使うことで魑魅魍魎の類から患者を守るという大陸の技術を取り入れました。
頭部ではない部位の手術には耐えられないほどの激痛が伴うため、四名の力自慢を選抜し患者を抑え付けさせました。
・治療
黒曜石のナイフによって皮膚と肉を切り、握斧で骨を削って鏃の除去を行いました。
その際、待機していた薬師により鏃に毒が塗られていることが確認されたため、鏃の突き刺さっていた部位の毒を抜く治療を行いました。
これは骨を削り肉を削ぐ危険な手術で患者が魑魅魍魎に憑かれて命を落とすことが多いため、身代わりの土偶を用意した上で行いました。
患者が絶叫する中で骨を削り肉を切り裂く過酷な手術で、医者も患者も、体力を激しく消耗します。
助手は汚れた床を水で清めながらも私に医療器具を渡していましたが、あまりの出血量に人手が足りなくなったため、さらに助手を3人に増やし治療を続けました。
毒に汚染された骨肉を削り落とした後、傷口を水で清め骨の針で縫合します。
すでに日が落ちており患者は気を失っていたので、この作業は特に支障もなく簡単に終えることができました。
最後に土偶を砕き彼に降りかかる災いを土偶に代らせて治療を完了しました。空には、すでに月が昇っていました。
その後、治療を受けた兵士は槍こそ握れなかったものの、農作業には支障がない程度の力を取り戻しました。
疫病などの心配もなく、醜い傷口こそ残ってしまいましたが、特に化膿などはしておりませんでした。
よって、この治療は成功したと判断できます。
国内でもごく稀な鏃の摘出手術の成功例を作れたことを、私は誇りに思います。
最後に、貴重な絹の手術着と大陸の技術で作られた高床式の施設を一棟を、廃棄する必要があるほどに汚してしまった件については、ここでお詫びさせてください。
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縄文時代後期の公文書集 曇空 鈍縒 @sora2021
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