(二)
「で、まあ、要約しても付け足したとしてもあれですか……拾ってきたということですね。はい、解散。説明ないのならどうしようもない」
「シェルー容赦ない―。ま、そういこだよねっ、いいんじゃない? なんかわかんないけど」
「お前ら、言い方わりぃぞ。まあ、拾ってきたであってるけどな。解散、解散っと」
部屋から出ていこうとする彼らを呆然と見送るアリアだったが、はっとサガミを振り返り――
「……ちょっと、サガミ?」
「まあ、よしだよね。説明したところでそれに尽きるわけだし。みんな、わかってくれてよかったよねぇ」
「ですねぇ。あっ、おなかすいたんでワカサさん、ごはんー!」
なんて、会話で結局。
場所は変わって、艦内の食堂――
「ふう、やっぱ、ワカサさんのきつね蕎麦はおいしいですねぇ。細かい柚子の薬味がのってるのもポイント! ふんわりさわやかにして、御出汁は優しくも少し甘く濃いのが体中にしみわたるぅ。おあげさんもしみしみ、ネギとわかめがしゃきっとくたりでおしいぃ」
なんて、イチがどこの食レポ? という感想を言いながら、蕎麦というものをすすっている。
アリアはそれにごくりとつばを飲み込み、自分の目の前にも置かれているきそれにそっと手を伸ばした。こちらは茶色く丸い揚げ物らしきものがのっている。そして、下に見えるお蕎麦? という麺らしきものがスープの中で泳いでいるのが見えた。
なんだろうこれはと、アリアが小首をかしげているとサガミが横でにっこりと笑いかけてきた。
「コロッケそばっていうんだ。アリア、食べたことない?」
「コロッケは……あ、あるけど、普通はお皿に乗ってるでしょ?? あの、おそばってなに? これ、スパゲッティ? でも、スープに入ってるのはあまり食べたことないの」
「アリアさん、もしかしてすするっていうの初めて?」
「え、ええ。そうやって食べるのが作法なのね。ちょっと、やってみる」
「うん、やってみて、おいしいよ」
にっこりとサガミとイチが両隣で笑いかけてくるのに、こくりと頷いて。
まずはそっと、深いお椀のそれ(正しくはどんぶり)を両手で支え、イチが先程やっていたようにスープ、おつゆというのをいただく。
こくりと一口。
ぱっと、アリアの顔をが輝いた。
「なに、これ。今まで食べたことない味! 甘くて少ししょっぱくて、でもしつこい味でなくてからだじゅう染み渡るっていうの? わかるわ。何の味なの?? これって何を使ってるの? えっ、海藻とお魚? それからしょうゆっていうもの? こんぶという海藻に、かつおというお魚がポイントなのね。なにかしら、舌に広がっていくのよね……え、これをうまみっていうの??」
アリアが感動して、でも、うまく表現できないのをもどかしそうにしているのを二人が面白そうに見ている。
「このスパゲッティ、ううん、おそばっていうのよね。風味がすごいわ! 口の中に広がっていく。すごく、香ばしくて、おいしい。おつゆとからんでまた、さいこう! コロッケもくたりとして、おつゆふくんでたならないわっ」
四苦八苦しながらも、すすることをやめないで夢中になって食べるアリアにワカサがちょっと呆れて話しける。
「おいっ、あまり慌てて食べると詰まるぞっ。ほら、飲み物のめ。茶」
「んぐっ、ありがとう。ふう、おいしいわ! ワカサ。お茶? って、これ、緑色なのね。紅茶とは違うの??」
受け取ったコップ(湯呑)の中を見て、アリアはこれまた不思議そうに小首をかしげて。手にじわっと灯るぬくもり。これはあたたかくていい。
そして、一口飲んだ。
ほっと、息をつく。
「……すごく、やわらかくて、ふわっと鼻に抜ける香りと口に広がるやさしい風味ね。このお蕎麦という食べ物にとっても合う! ううん、私、紅茶よりもこちらが好きかもしれないわ」
感想がやまないアリアに「そりゃ、よかった」とワカサは苦笑しながら言葉を返す。サガミはニコニコとそれを見つめ「どう? ワカサの手料理は。初めての料理は気に入った?」と言ってくるものだから
「もちろん! とってもおいしい。ありがとう、ワカサ!」
花開くような笑顔で言葉を返すのだった。
「……おう」
「ふふ、ワカサ、照れてる」
「っていうか、アリアさん。ごはんで自分の説明がどうとか気にしてませんねぇ」
三人の反応など気にすることもなく、アリアは夢中になってまた、お蕎麦をすするのだった。
cosmic blue 文月 想(ふみづき そう) @aon8312a7
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