第一章(二十)
※前の話を二話削りました、すみません(*- -)(*_ _)ペコリ
「ちょっと、サガミったら! なんか追ってくるわよ?! っていうか、わたし走るからっ」
「いや、僕が抱えて走った方が早いから、アリアは心配しないで」
「でもっ」
「いいから」
(抱えてって、どっちかというと荷物担ぐみたいになってるわよ! なんて、言ってる場合じゃないわよね)
車よりはやい速度で、建物から建物へ跳躍しながら移るサガミに目を白黒させる。流れる景色に頬に当たる風に呆気に取られながら、後方を見れば、少し離れた場所から同じ速度で追ってくる女。
表情はにこやかな笑みを浮かべていて、正直、不気味だ。
(あの追ってくる女の人、服装……見るからに軍服、よね。この国の軍ではない、あれは他所の。でも、なんで)
そんな人間に追われなければならないのか。
(もしかして、サガミって軍の人? ううん、それより)
「……ね、ねえ、あの、知り合いってわけじゃないの?」
「いきなり殴りかかってくるような、知り合いはいないかなー」
「そう、よね。って、走ってるのによく息切れないわね」
「まあ、走り逃げるの得意だから」
そういいながらさらに速度をあげる。
度々、地上の人が宙を舞うように跳ぶサガミたちに気づいて、驚きの声をあげている。それはそうだろう、普通の人はこんな高い跳躍して走るなど、ありえない。
(なに、他所の星ではもしかして、これ普通? あの女の人もそうだし)
「……まさかね、この二人がきっと、規格外なんだわ」
「なにか言った?」
「べつに、それよりほら! あの一瞬で移動は! それなら」
「あれの発動数秒でつかまるよ、せめて十数秒は場に留まらないと無理だね」
「そんな、あっさりと!」
「とは言っても、事実だしなあ。困った困った、あっ」
「えっ?」
「!」
それに気づいたのは三人、同時だった。
「はいはーい、困った時のイチさん参上ってね! せーのっ」
ぱちん。
指を鳴らすような音が響いた瞬間、以前、サガミが出したような空間が現れたかと思うと、アリアたちは出てきた手に引っ張り込まれる。
それに跳躍して近づこうとした女は、しかし
「逃すつもりはないわ「はい、あなたにはこちらあげましょうか!」っつ」
閉まる空間、見えた男の苦悶の表情。
女の上から、降っていた大量のドドメ色の玉ねぎ。
(玉ねぎ、いや、目の錯覚かしら?)
「……え? 今度は落ちてる?! ちょ、サガミ」
「ああ、大丈夫。落ちてるんじゃなく空間移動してるだけだから。ねえ、イチ」
「そうそう、いやー、危なかったですねぇ」
ぱんっと弾ける音と共に、ふわりイチが目の前に現れる。
にこにこしながら、アリアとサガミを交互に見るなり
「うふ、愛の逃避行って感じですねえ」
やだもうとかいいながら、くねくねしている。
「ね、親父くさいって言われない? イチ」
「あー、イチって、好きな映像作品は愛憎劇描いた古風なやつらしいんだよね」
だからちょっと言い方が古いのかも、なんてぼやくサガミにふうんと返事する。
と、やっと妄想らしきものから戻ってきたらしいイチが、ふうと息を吐く。
「や、すみません。こう、目の前で見ちゃうと刺激がですねぇ。いやいや、こほんっ、ほら見えてきましたよ」
そう言って、イチが指差した先には
(うそ、うそうそ! なにこれ!)
一面濃紺の、その中で淡く光る小さな幾千の星星。合間に浮かぶ宇宙ステーション。
そして
(なに、あの青白い、銀の線が入った大きな乗り物?! 飛行船っていうのかしら。ううん、違うわ、テレビで見たのにあんな形はなかった。何より)
この濃紺の、先に広がる闇はきっと。
(宇宙!)
ふわりと体が持ち上げられたかと思うと、銀の地へ足を下ろされる。
アリアが興奮しながら忙しなく辺りを見回していると、ぐいっとその手を引かれてたたらを踏む。
「さ、サガミ?!」
そんな戸惑い声を構うことなく、サガミはアリアの手を引き、歩き出す。
そして、振り返り微笑んだ。
「ようこそ、アリア。ここがソラだよ」
cosmic blue 文月 想(ふみづき そう) @aon8312a7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。 cosmic blueの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます