カチカチ山の綿貫と宇佐美

昔々あるところに、畑で作物を育てる60代前半の夫婦がいた。ある年、夫婦が管理する無人販売所で万引きが相次いだ。そこで翁は犯人を逮捕すべく隠れて見張ることに。するとそこへ運悪く若い男が現れた。男は野菜を手にしたが、財布を持ってきていないことに気付き野菜を戻し立ち去ろうとした。翁は男が犯人だと勝手に決めつけ問答無用で拉致監禁した。男は綿貫と名乗り、体が不自由な父と育ち盛りの妹たちのため普段から利用させてもらっていると説明したが、翁は全く聞く耳を持たない。綿貫に暴言を浴びせながら殴る蹴るの暴行を続けた。そんな翁を何とか止めようとする媼。夫婦が揉めている間に綿貫は逃走、畑の肥やしになる前に警察署に駆け込んだ。怒りに任せ媼を病院送りにしてしまった翁は、綿貫を監禁した容疑で逮捕された。それから数日後。翁の面会に来た姪の宇佐美は、偶然にも被害者が中学時代自らがイジメていた同級生の綿貫だったことを知り、中学時代の仕返しをされたと思い込み激しい怒りが込み上げてきた。


それから1週間後。不良仲間を集めた宇佐美は綿貫を拉致し激しく暴行。体の至る所の骨を折られてしまった綿貫はついに手足を縛られ泥舟に乗せられた。猿ぐつわまでされ無抵抗な綿貫に宇佐美たちが重りをつけていると、警官が偶然通りかかった。綿貫を残し、慌てて逃げる宇佐美と不良仲間。しかし何人かの不良仲間が捕まってしまったため、宇佐美は事件の首謀者として追われることに。


何日か知り合いの家を転々とした宇佐美は逃走資金を調達するため、超ハイレートポーカーの試合を主催する龍宮城へ向かった。この龍宮城で敗れた場合は無期限の強制労働など過酷な条件を飲まなければならない。しかし、ここで勝負しなければ逮捕されることはほぼ確実。刑務所には絶対に入りたくない宇佐美は腹をくくった。


試合には宇佐美の他に、龍宮城の主である乙姫、根暗でシャイなむっつり助兵衛、少年のように背が低く一寸法師の愛称で親しまれている男、侍が飼うヨウムの舌を切った媼、羽根つき界のエースと若きホープ、不漁にあえぐ故郷を救うために来た漁村の男の計8人が参加。試合はテキサスホールデムで行われ、チップがなくなった者から脱落し、残り3人になるまで退出することは出来ないというルールだ。


羽根つき界のエースと若きホープはここでの勝負は初めてらしいが、かなり大胆に賭ける。一方むっつり助兵衛のなんとか太郎はポーカー自体が初めてらしく空気のような存在だ。借金までして何故この場にいるのか謎でしかなかった。

まず羽根つき界のホープが乙姫に勝負を仕掛け脱落した。その後乙姫と一寸法師が順調にチップを増やしていく中、空気の媼が勝負に出た。よほど強いハンドなのか余裕が見える。乙姫らが降りる中、宇佐美と漁村の男がコール。ターンカードが追加されたところで漁村の男がフォールドしたが、宇佐美はオールインを選択。勝利した宇佐美は媼からかなりのチップを獲得した。窮地に追い込まれた媼は次のゲームで勝負せざるを得ず、あえなく敗退。残り6人。


そして何とか賞金を獲得できた宇佐美は良い逃走先がないか乙姫に尋ねた。すると鬼ヶ島を勧められた。鬼ヶ島とは恐ろしい海賊が支配する島で、この島なら逮捕される恐れはないという。


それから半月。乙姫が書いてくれた推薦状のお陰で無事鬼ヶ島に上陸できた宇佐美。犯罪者の楽園かと思いきや独裁者が支配するこの島は犯罪に極めて厳しく、たとえ軽微な犯罪でも無期懲役は免れない。ここでたくましく生きていくしかない宇佐美。めでたしめでたし。

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シン・桃太郎 近藤武蔵 @kondohmusashi

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