ゲーミングうんこを出すには才能が必要

南雲 皋

/.:° ╰(ˇωˇ )╯;。:*\

「俺のうんこさー、光るようになっちった」

「は?」


 保育園時代からの幼馴染であるユースケが、突然そんなことを言い出した。

 それは俺の家でだべりながら呑んでいる最中のことで、思わずユースケが呑み干したチューハイの缶を数える。

 普段のユースケはチューハイ十本空けてもほとんど素面しらふみたいな感じだったから、まだ七本しか空けてないのに酔っ払っているはずもなく。


「マジで言ってんの?」

「大マジ」


 ユースケの表情かおは、未だかつてないくらいに真剣だった。なんでやねん。


「いや、なんで?」

「ねーちゃんがさぁ」


 ユースケの姉は二つ上の新社会人で、モラトリアムを享受する俺たちとは比べ物にならないくらいに出来がいい。

 誰もが知っている大企業に、すんなり就職を決めた化け物だった。


「親父にゲーミングパソコン買ってもらってたんよ。俺が欲しいって言っても買ってくれなかったスペックのやつ」

「うん」

「それが届いたのがさ、単位足りなくなるぞって話された日でさ」

「ああ、はいはい」

「ムカついて、食ったの、周辺機器から何から全部」

「は?」

「そしたらその日からうんこ光んの、七色に」

「いやいやいやいや」

「マジなんだって! ちょっと今踏ん張ってくっから待ってろ」

「ちょ、ひとんちのトイレにゲーミングうんこすんじゃねぇ!」

「ナイスネーミング!」


 ユースケは俺の手をすり抜けてトイレに入り、中から鍵をかけた。

 鍵をぶっ壊してまでうんこを止める気にはならず、諦めてテレビを観ながら酒を呑むこと一時間。


「っしゃきた! カナタ〜〜出たぞ〜〜」


 重たい身体を持ち上げてトイレに向かう。

 鼻をつまんで廊下に出ると、もう異変は目の前にあった。扉をフルオープンにしたトイレから溢れ出た七色の光が、廊下を煌々と照らしていたからだ。

 一定の感覚で色を変えていくそれは、間違いなくゲーミングうんこ。便器の中で輝きを放つ、立派なゲーミングうんこだった。


「ギャハハハハハハハハハ!!!!!」


 俺は腹がよじれるほど笑った。笑って笑って、死ぬほど笑ってトイレを流した。


 ジャーゴポゴポゴポ…………


 見る間に吸い込まれていったうんこは、いつまで光り続けるのだろうか。近所の下水処理場は、ユースケのうんこで七色に彩られているのだろうか。


「俺も出してぇ!」


 自室にダッシュした俺は、自分のゲーミングパソコンを食った。マウスも、キーボードも食った。

 七色に光るもんを手当り次第に食って食って食いまくって、そして。

 ゲーミングゲロを吐いた。


「ギャハハハハハハハハハ!!!!!」

「オボロロロロロロロロロ」

「やっぱ才能なんよ! ゲーミングうんこ出す才能があったんよ俺には!」


 青に黄色にピンクに輝くゲロを吐きながら、明後日提出のレポートのデータも食っちまったなぁと思う。

 ゲロにUSBメモリぶっ刺したら、レポート、帰ってこないかなぁ。


 そんなことを思いながら、便器を七色に染めるのだった。

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ゲーミングうんこを出すには才能が必要 南雲 皋 @nagumo-satsuki

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