日常

@kurageyoru

第1話

「人生だるない?」


「どうした、急に」


「いやなんかさぁわしの人生パッとせえへんなぁって」


「それは私も、同じ。」


「うそやん!はるちゃんはかわいいし、えっと、かわいいし!」


「それだけかい、やすちゃんもさあ、なんか恋愛してみたら良いんじゃない?」


「恋愛?なんやそれ、うえぇ、気持ち悪い。」


「そう言うところだよ。彼氏とかできたら人生変わるよ。」


「それ彼氏できてからずっといってへんか?

そんなに変わるんかえ。

お前さんの彼氏さんと一回食事したなあ、3人で

あいつソファ席譲らないわ、メニューの名前全部言うはで、あんなん短縮できるやろ、なんやあれ、春風の〜とかなんとか、いらんやろ!」


「やすちゃんは…なんと言うか、多分このままじゃ孤独死するね」


「え、いや、はるちゃんは居てくれやぁ

あーわしも気になる人できたらええのになあ」

そうこれは、まだ大人でもない子供でもない、大人になろうとする2人の少女の物語。

ただただ今を生きる、少女たちの日常だ。


「なんでガリガリくんは当たりあるんにガリガリプレミアムには無いんや?おかしいやろ?プレミアムがそんなにすごいかよぉ、」


「あるんじゃない?調べよ

んー、わからないね。

プレミアムを買わない小人ものに正解がわかるかって言われてるみたいだよ」


「うるさいのぉ、今度プレミアム買って証明しちゃるけんのぉ」

と、言うことでこのやすちゃんこと、安田 ともこはなけなしの500円で4本のガリガリくんプレミアムを買った。


「みやげあんでぇー」


「あら、めずらしい」


「じゃぁーん、買ってきたデェ、プレミアム、4本!」


「4本って食べられないでしょ?なんで一気に買っちゃうかな、溶けちゃうよ。」


「いいやんいいやん、買ってやったんだから、そんな文句言わんと、急いで1人2本食おうや」


「頼んでないけど、まぁいいや」


「じゃあ誰が早く2本食べ終わるか勝負や!

そやなぁ負けたらジュース一本奢りで」


「いいよ、じゃあスタート」


「ねぇまだぁー?はよ食べ終わってぇや、もう5分はたっとる。お前さん勝負する気はなから無かったやろう。

騙しよってぇ、最悪や。」


「あなたみたいに女捨ててないから。」


「なんやその嫌味!わしも女捨てたつもりないわ!」


「すごい顔だったよ」


「お前さんの前ならいいんだよ、流石のわしも彼氏の前ではできへんで」


「あぁそう」


「はいっ!てことでジュース一本奢りぃー!」

ということではるちゃんこと、春田ともみ、はジュースを奢ることになった。

なぜやすちゃんは勝ったのに結局損してることに気づかないのだろうと疑問を持ったがまぁいい。こういう奴だ。


「てかさ!当たりあった?はるちゃん」


「なかったよ」


「やっぱりないやん!わし合ってたやん!

うめぇ〜コーラ!」


「やすちゃんさ」


「なにぃー?」


「恋愛してみたら」


「恋愛!?

え、なんで急に」


「やっぱりそしたら少し変わるんじゃないかなって」


「なに、今が悪いみたいなぁ」


「あのね、あの、やすちゃんのこと気になってる男の子おって、私話しかけられたんやけど。」


「なんやそれ、直接堂々わしに立ち向かえや、なんやねん、そいつ」


「いいから、やすちゃんのこと気になるんやって、食事とかしてみたら?

だってほらもう私たち17歳になるんだよ高2」


「なにが言いたいんや」


「華のセブンティーンの時期を逃すわけにはいかないでしょ」


「なんや華もクソもないわ!ていうか、そうか、

なぁやっぱり17になろうとしてるのに恋愛経験0はやばいか!?」


「やばいね。やばい。すごく。孤独死するよ。」


「だからなんではるちゃんもおらんことなってんねん

彼氏さん持ちはいいですのぉ、余裕があって」


「彼氏持ってるからとかそういうんじゃなくて、キューピットになりたいの

私あの、やすちゃん好きな男の子に話しかけられた時使命が来たっておもったの。」


「なんの使命やねん、てか誰やねん」


「ほら同じクラスの杉田くん」


「杉田ー?そんな奴おったっけなあ」


「だから、だから、会わせたいの!2人を」


「え!そうゆうこと!え!」


「ずっとそういうことだよ!」


「でも、2人でとか無理だぞ、無理無理、無理ゲー」


「いいよ、3人で行こ。」


「てかずっとどこに行こ行こ言ってんの!?」


「ファミレス!ジョイラ行こうよ。」


「わしあのジョイラのなコーヒーゼリーパフェ好きやねん」


「なら、それ食べ行こう。奢ったげるから。」


「まじで!それなら話全然変わってくるわ、いく、いくいく!」

なんて単純な女なんだろう。そう春田は思った。

でも、そこも、自分にはなくて、いいとこやなって思う。


「なぁ、ここ座ってもええかあ?」


「あ、うん。」


「ここ自由席やろ、なんで自分一番前の席なん?しかも端やし。目立ちたいんか目立ちたくないんかわからんのぉ」

そう言って誰だかわからないけどなんかエセ関西弁っぽい人に絡まれた。


「美術、わし得意やねん、だからこの教科選択した。

お前さんは?えーと春田さん?じゃあーはるちゃん。」


「あ、えーと絵が好きだから。」


「おぉええなぁ」

それからというもの、私たちはずっと喋り倒していた。ずっと一緒にいるようになった。

やすちゃんは、はるちゃんといると居心地がいいって言ってたけど。

多分私もそう。

理由はそれだけで十分。


「あ、どうも杉田です。杉田かつひろです。」


「あ、どうも、えっと、なんやっけ、、あぁそう安田です。安田ともこです。」


「はい!ってことで2人ともなんか欲しいの選んでいいよ、今日は私の奢りだから。」


「なんでそんなに張り切ってんねん、まぁこの前のプレミアムの件もあるしな、ここは遠慮なく行くで。」


「プレミアム…?」


「あぁこの前やすちゃんガリガリくんプレミアムを4本も買ってきたのよ。」


「4本も!?どうして?」


「言及されるのは好きじゃないのぉ」


「ちょっとやすちゃん…」


「あ、そうだよね、ごめん、君に興味があって」


『っ!?』


「は、は、はっはあ!?どういうことやねん、それ、なんか言えよはるちゃん」


「あ、ごめんごめん、だから言ったじゃない、杉田くんはやすちゃんのことが好きなんだよ」


『っ!?』


「好きっちゅうんわ、どういう好きや」


「なんか安田さんのこと考えると胸がきゅっていやきゅんって」


『っ!?』


「なんや、わしのこと考えたら、きゅんってなるんか、えぇお、おもろぉ、じゃあわしコーヒーゼリーパフェで。」

なんやかんやあり、


「連絡先交換しませんか?」


「え?、連絡先?なにがあるんや、わしラインしか持ってへんで」


「じゃあ、ならラインで…あ、僕QRコード見せるんで」


「なんやねんわしが見せようとしてたわ、ええ、ええ、わしが読み込むわ」

なんやかんやあり、連絡先を交換できた。


「おかしな奴やったなぁ」


「どこら辺がよ」


「なんか終始おかしな奴やった」


「なんかなぁ不快感全くなかったなぁ」


「え!めちゃくちゃいいってことだよそれ!」


「あ?そうなんか?そんな気もしてきたな」

やっぱり単純だ。


「うわっなんかラインきた。」


「なんて?」


「今日はありがとう。また学校でね。

ほんでねこちゃんのまたねのハンコ」


「意外、あの子ラインだとタメ口なんだ。」


「そこはどうでもええけど、こいつスタンプのセンスあるなぁ。」


「そっちの方がどうでもいい気がするけど、まぁいいや」


「今日はご馳走さんでした。」


「いいよ、連絡先も交換できてよかったよかった。」


「これからどうなるんやわし、」


「どうなるんやろうね!わくわく!」


「なにがわくわくや、てか本人よりわくわくしてどうすんねん。」

そうして1日が終わった。


「あの子ずっと1人だよね」


「んー?誰の話ぃ?」


「あの子、春田さん、」


「あーあのかわいい子か」


「一人って笑ねぇよく一人で入れるよね笑恥ずかしくないのかな。」

なんやこいつ、前々から思ってたけど、噂とか、そういう人を悪く言うところとか、なんか気に食わないんだよな、


なんでこいつと仲良くしてんだろう…

「恥ずかしくないだろ、なんでそないなこと思う?」


「ん?ええどうしたの、ともちん…」

もうすぐ、美術の授業だった。春田さんは一番前の席なのに一番端の席に座っていた。それがやっぱり面白かった。前々から気になっていたこともあり、話しかけてみることにした。


「なぁ、ここ座ってもええかあ?」


「あ、うん。」

冷たい奴なのかな?どんな奴なんやろ?気になるなぁ


「美術、わし得意やねん、だからこの教科選択した。

お前さんは?えーと春田さん?じゃあーはるちゃん」

初めてだった、初めて話す人と、こうしてあだ名つけて話すの。

なんか話してるとすげぇー楽しい、なんか心地良い。

それからずっと話すようになった。本当にずっと。


「ねぇなんでやすちゃんは私と一緒に居てくれるの?」

そうはるちゃんは突然聞いてきた。


「んー?はるちゃんといると居心地がええねん。」


「なにそれ」

そう言ってはるちゃんは笑った。


「笑うのええな、いっぱい一緒に笑いたいなあ、一緒に笑い合おうな」


「なに、急に笑」

わしははるちゃんのことが好きやった。

やけどあいつ乙女やしかわいいしモテるし、しばらくして彼氏ができた。

最初はびっくりしたけど、まぁそうだわなと思ってそんなに深く考えなかった。


「ねぇ3人で一回食事してみない?」


「は?なんでぇ、お前さんの彼氏さんとぉ?」


「そうそう、」


「まあ、いいけど、なんでぇ」


「なんか親しくしてる友達がどんな人か知りたいって」


「なんやそれ、そんなとこまで触れてくるんか、こっわ、彼氏ってこっわ」


「いいから、食事行こ」


「はいはいはい、」


「こんにちは大友です。大友はるお。18です。」


「あー、こんにちは安田です。安田ともこ。16です。」

なんでこいつわざわざ最後に18付け加えた?なんか流れでわしも16って付け加えたわ

てか年上かよっ!


「安田さんって、なんかクールですね笑」

なぜ今笑った?いけすかねぇ、奴

なんか、僕は男です。春田の彼氏です感出してくるのほんま無理。

あぁはいはい、お前にはどこも勝てませんよぉだ


「あ、そうですかね。ありがとうございます。」


「褒めてはないけどなぁ笑」


「っ!?」

はるちゃんと目を見合わせた


(こいつなに様?どこのお偉いさんですかえ?)


(いいから、彼、こーゆー所あるの、いいから、今は我慢。)


(こーゆー所ある時点でダメだろっ!)

わしらは言葉を交わさないで目だけで会話できるみたいだ。


「今日はありがとうございました。安田さん。」


「あ、はい、こちらこそありがとうございました。」

そしてもう二度と会うことはないだろう男とおさらばした。

だがしかし、今、わしは


「安田さんって趣味とかないんですか?」

トイレに行こうとして、偶然杉田と遭遇、今、捕まっている。


「あぁ趣味?趣味な、わしは漫才の掴み集、みることかな…」

「相手の反応を見てみる」

目が輝いていた


「え!安田さんってお笑い好きなんですか?」


「あ、一応、好き、芸人、面白いよな」


「うん!おもしろい!

ねぇもっと話したい!」

わしももっと話したいと思った。だって芸人好きな奴なんてなかなかいないから。


「話したい所なんだけど、あいにく今トイレに行きたくてさ、」


「あ、そうなんだ、止めちゃってごめんね」


「うん、大丈夫。」


「電話とかどう?抵抗ある?」


「あ、無いでぇ、ほな夜電話で。」


「してくれるの?ヤッタァ!ありがとう。」


「うん、」

やばい、トイレ行きたすぎて、適当に約束してしまった。夜は一番好きな漫才を何回もループするって言うルーティンがあるのに…


「なぁ、なんではるちゃんはあの男と付き合ってるん?」


「んー、なんだろう、やすちゃんに似てるから、かな。」


「あの男とわしが?

どーゆー所が?」


「んーTPO弁えず言いたいこと言う所かな」


「痛、痛たたた、心が痛い」

まぁ、それは、そうか」


「でも、間違ってるわけじゃ無いんだよね、正論って言うか、正義感が強いって言うか。

興味ない振りしてるけど、案外人をほっとけ無い感じとか。すごい似てるよね。」


「ふーん、そないな奴なんや、意外」


「一回話しただけじゃわからないことってたくさんあるからねぇ」


「だけど、わしはもうあいつと会わんぞ。」


「わかってるよ、あの人もそう思ってる。」


「なんやそれ!」


あともう少しで夜だ、多分18時以降が夜だ。今の時刻、17時50分。

て言うか、夜電話するって言ったけど、夜って何時だよぉ、くそ

わざわざ何時にしますかなんて送れねぇしなぁ、まるでわしが楽しみにしているかのようじゃ。

今の時刻、21時。多分あれから3時間は経ってる。宿題とかしようと思ったけどなかなか集中できなかった。なんだこの感覚ずっとソワソワしちょる。もしかして…

ぷるるるる


「はい」


「わぁ、安田さんワンコールだよ、すごい」


「え、た、たまたまだよ」


「もしかして…楽しみにしてくれてたの?」


「ふぁ!?楽しみ!?なぜそんな、違うわい!」


「そっか笑でも嬉しいなぁ、電話断られるかと思ってた。」


「あのな、杉田、杉田さん?」


「んー?」


「遅ないか?」


「え、普通夜は、ご飯食べて、お風呂上がったらってことでしょ?」


「あー、そう言うことやったんかえ、ならそれ先言ってくれなぁ、ほんま困るわぁ」


「え?もしかしてずっと待っててくれてたの?」


「そら、待つに決まっとんじゃ、約束じゃけんのぉ」


「そう言うとこだよ、そう言うところ好きや」


「す、好き!?だ、まれぃ、」


「芸人誰好きなの?」


「んー、スクロットの中林とか」


「スクロット好きなん!?へぇ意外やねぇ。俺も大好きなんだ。」


「スクロット好きなん?え、そっちの方こそ、い、意外ではないか。」

スクロットという漫才コンビは、しゃべくり漫才をするコンビだった。奇抜でもないし、特段おもしろいってわけではない。

なんか日常会話を繰り広げてる感じ、賛否両論あるけどわしはこのコンビが好きだ。

こいつも好きなんだ、このコンビ。


「なぁ、イベントあるやん?今度」


「そうなの?」


「行かへん?」


「え!行く!」

約束までしてしまった。電話時間はなんと2時間。まもなく23時、まだお風呂も課題もご飯も終わっていない安田。


「なぁ、はるちゃん、わしとさ、付き合ってみるとか」


「…」


「ない、ないですよね、そーだよねぇ」

あれは、いつだったか、はるちゃんに彼氏ができるちょっと前。

ワンチャンいけるのでは?と思って冗談っぽく言ったつもりが空気がだいぶ悪くなってしまった。

あれからの会話はあまり覚えていない。

ただ一つ言えることは、あの冗談に対しての返事がなかったこと。


「まだ、わしは、待ってるのかも知れへんなぁ」

そう、杉田と電話したあとふと思ってしまう。


あの時、私は、返事が出来なかった。

なぜなら、やすちゃんのことが好きだから。

あそこで返事をしてしまったら、恋人関係になってしまう。周りの目は多分厳しいだろう。どっちも多分幸せにはなれない。嫌な気持ちになることの方が多いかも知れない。だから、私はなにも言わなかった。

やすちゃんは冗談のように言っていたけど、あれは多分本気だった。

私にはわかる、だって、誰よりもやすちゃんのこと知ってるのは私だもの。


「実は、好きだった、だから、付き合ってほしい。」

一個上の先輩大友はるおさんは、よく帰り道が一緒になって度々一緒に帰っていた仲だった。

ある日突然いつもの帰り道を歩いてる時不意に言われた。

そして私も不意に

「はい」

そう返事をしていた。

なんでかはわからない、けど突然言われたものだからびっくりして。

付き合ってからは、特別なにがあるとかは無くて、連絡先を交換したくらい。

でも話していくうちに、少しやすちゃんに似てるなぁって思って、それが、この今の私の心を満たしてくれるようだった。


「ねぇその、ともみがいつも話してるやすちゃんって子は何者?」


「何者?親友だよ。私の有一の親友。」

表情が乱れないようにそう、言った。


「なんか、気になるなぁ、だってずっと話してるじゃん笑」


「あ、会ってみる?」


「おぉいいね、どこかで食事しようよ。」

そういうことで食事をすることになったわけだ。

やすちゃんが彼の文句を言ってる時、確かにそうだなって思って、そこもやすちゃんらしくて面白かった。

やっぱり、3人で食事をして気づいたことは、やっぱり大友さんはやすちゃんに似てない。

私の心のどこかで、やすちゃんの代わり、やすちゃんとは付き合えないから、そんなこと思っていた。

でも代わりになんてやっぱりならないんだ。

大友さんと話す時はどこか上辺な自分で、居心地が悪かった。

私がずっとやすちゃんに恋愛を勧めているのは、やすちゃんにいい彼氏さんができたら、私はもう満足するのではないかと思っているからだ。


「なぁはるちゃん、わし杉田と二人でスクロットのイベント行くことなった」


「え!?すごいじゃん!どっちから?」


「わしから、」


「え!?それって、もう好きなんじゃないの?」


「いや、好きっていうか、なんていうか、」


「なにそんな晴れない顔してんの!シャキッとしないと!いつ行くの?」


「明後日、」


「いいじゃん!いいじゃん!」

なんで、そんなに喜んでんだよ、わしがお前さんのこと好きだってことも知らずにさ、


「着ていく服とか決めたの?」


「まだ…」


「明日の夕方さ、一緒に着ていく服決めない?私も服見たかったし!」


「はぁ?まぁ、悪くないかも、教えて、色々さ、先輩やもんなぁ」


「任せて!」

もう時期は夏だった、ミンミン、セミがうるさくて太陽も眩しい、日焼け止めは必須。


「ごめーん、遅れてしもうたわ、てか暑すぎへひん?」


「いいよ、さっき来たとこ」


「めっちゃ彼氏みたいなこと言いますやん、彼氏できたことないけど」


「暑いから、ほら、お店入ろ!」

わしはいかに店員さんに話しかけられないようにするか必死に作戦を練っていた。

存在を消す、ただそれだけだ。

「よしっ」


「あのすいません、この子に似合いそうなワンピースとかってありますかね?」


「っ!?」


「あ、はい、いくつか持ってきますねぇ」


「おい!」


「なに?」


「なにやってくれてんだよ、こっちは必死に作戦練ってたのに!」


「なに言ってんの?」


「店員さんに話しかけられないように頑張ろうと努力しようとしてたのに、お前さんっ!やってくれはったなぁ!」


「どうせ無駄だよ。どうせ話しかけられるんだから。だったらコソコソしてるよりこうやって、堂々と聞かないと。あと、プロの意見だからきっといい服見つかる!」


「なんで今日そんなに張り切ってんの?てかワンピースとか聞いてないんですけどっ、芸人のイベントでなんでワンピース着るんだよ!」


「デートなんだからいいじゃない。」


「っ!?デート??ちゃうわい!」


「あの、お客様…」


「あ、すいません、ありがとうございます。どんなのがありますかね」


「これとかどうでしょう青とかよくお似合いになりますよ。」


「青!?ワンピース!?」


「青!似合ってんじゃん!かわいいっ!」


「あ、そんなお姉さんもこれとかどうですか?同じ物の色違い、赤です!」


「赤!かわよ!はるちゃんめっちゃ似合ってるよ!」


「赤といっても少し淡い赤なのでナチュラルでとてもいいですよぉ」


「確かにかわいい…よし、これ買います!」


「買うの!?早くない!?」


「だから、やすちゃんもこれ買って!色違い!いいじゃん!」


「いや、いいねんけどさ、」

そんな目で見つめられると…ずるいだろぉ


『これ買います。』


「はぁ、買えたね、かわいいの、しかもお揃い!」


「初めてじゃ、お揃いの服…」


「私もだよっ!」

いつにも増してはるちゃん今日距離近いなぁ


「よし、明日早いし、もう帰るわ」


「わかった!いい報告待ってるよっ!」


「あ、はいはい、それは期待しないでもらってぇ」


明日かぁ、明日告られるのかな…でもやっぱりまだはるちゃんのこと好きなんよなぁ

困ったもんや、こんな中途半端な気持ちでデートとか行っていいんかぁ?、

こけこっこー

「こけこっこーってなんやねん!」

あかん朝になってもうた。全然寝れなかった最悪や。


「あ、安田さん!」


「あ、どうも」


「な、なんか、雰囲気違うね…かわいい」


「ん?最後なんて?」


「…か、かわいい」


「か、かわいい!?

ありがと、」


「うん!じゃあ行こう、結構並んでるみたい。暑いけど大丈夫?」


「うん、大丈夫や」


「よし!楽しみやね!イベント!」


「お、おう」

結局30分並んだ末、昨日寝れなかったのが響いたのかイベントの内容は全く覚えてない。


「でさ、あの時の中林がさぁー…

安田さん、体調大丈夫?」


「あ、なんでぇ、大丈夫やで」


「そっか、少し顔色が悪い?」


「やから大丈夫やって」


「ねぇ安田さん…」

そう言って杉田は立ち止まった。

…これは、来るのかも知れない、もう決心をつけないと、あの恋に終わりを告げないと、でも、やっぱりっっっ!


『あの!』


「へ?」


「え!」

プルルルル

携帯がなった。


「あ、ごめん、ちょっと、」


「あ、うん」


「もしもし、どしたはるちゃん?」


「やす、やす、やすちゃん、やすちゃん、」


「どないしたんや!なんで泣いとる!?」


「お、お、大友さんが、ち、ち、違う女の人と手繋いで歩いてたの、み、みた、」

やす、や、やすちゃん」


「大丈夫や!今どこや!返事しろ!ともみ!」


「プレミアム、プレミアム、の、こ、こ、公園」


「すぐ行くから大丈夫や!」


「何かあったの、」


「ごめん、杉田さん、わし行かないけんのよ、キリつけなきゃいけないことがある、だからごめん、わし、わし、行かな」

もう杉田の返事を待たず、すぐさま駆け出した。


「なぁ、はるちゃん、わしとさ、付き合ってみるとか」


「なぁどうなんだよぉ!!返事くらいしろよぉ!」

あの時のことはあまりもう思い出せない、ただ、ただ、走っていた。


「ともみ!とも、ともみ!」


「やすちゃん、やすちゃん、」

わしはともみを抱きしめた。


「大丈夫や!わしがいる!

ずっとわしと居てきただろ?あんな奴よりもずっとずっと居てきただろ!

あんな奴よりもわしはずっとずっとお前のことが好きなんや!」


「あの時の返事…」


「今はいいよ、もうちょっとゆっくり呼吸せぇ」


「あ、あの時の返事…」


「だから、」


「怖かったの。怖かった。周りからどう思われるかとか考えちゃって、やすちゃんのこと考えても…でもやっぱり、やっぱり!

私も!私も!私も、やすちゃんが好きだ!安田ともこが好きだ!」


「お前さんは…本当に、遅いよ!」

二人で泣きじゃくった。


「あれ?女捨てないって言ってなかったっけ。」


「ともこの前だからいいの」


「すごい顔してるぞっ」

お互い笑って見せた。


「なぁ、今から、海行かへん?」


「海?」


「そう!海!近いやん!近いんに全然行ってなかった」


「行こうや、たまにはらしくないことしよう」

もうあたりは暗く夜だった。


「うん、今日なら行ける気がする」


「この、ずっと止まってる錆びた自転車借りますかぁ」


「えぇいいのぉ?」


「いいだろ、今夜限りだし、ほら、後ろ乗れ!

わしが漕いだるわ!」


「わぁ動いたっ!

いけぇーーーー!」


『いけぇーーーーーー!』

「こーゆーのもええなあ!」


「いーねぇ!」

そう言ってまた君は笑った。


「笑うのええな、いっぱい一緒に笑いたいなあ、一緒に笑い合おうなー!」


「なに急に!」


「いっぱい笑おー!」


わしの思い出。

わしの思い出の一部。

これからも、また、君とのたくさんの思い出ができるんだろうな。

あぁ楽しみなことばっかりだ!


人生捨てたもんじゃないな!






















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