うらめしあ
名無しのジンベエ
うらめしあ
チャイムが鳴る、みんな急いで外に飛び出す。
セミがミンミンと鳴く教室で、僕はひとりぼっちだった。
夏休みは一人でどうしようかなぁ。
僕はまだ知らなかった何が起きるのかを。
いや、知っていたのかも知れない。
「教祖様!今日の神貢です!」
「若いのに偉いですね、きっと幸楽苑に行けますよ。」
教祖様はニコリと笑い神貢を受けとる。
僕は気づいた側の人間なのだ、この
親が亡くなってから僕はここの人たちに良くして貰った。
いつもみんなで団結し、あらゆる難題を突破してきたんだ。
そうだ!今日は初めて友達に肝試しに誘われたんだ!
行かないと!
「遅いぞノケ山!」
言い忘れてたけど僕の名前は牛奥ノ
アダ名でノケ山って言われてるんだ、変なアダ名だよね。
って友達が五人も集まってる!待たせちゃったなぁ…
でも朝の宗会は絶対出ないとだし、しょうがないか…
「チッ…まぁいい、行くか…
割れた窓を鈍器で完全に割りきり、安全を確保してから病院の中に入った。
第一印象は完全なる灰色だった。
コミカルさの欠片もない荒廃した生々しい病院のガチ感がそこに現れていた。
ここは一階のベッドがある部屋だ。
ここから三階のオワリノヘヤと呼ばれるいわく付きの部屋に移動する。
しかし僕は知っている側の人間、幽霊などいない、これは教祖様が教えてくれた事だから間違いない。
この溢れる心の余裕でみんなとの心の距離を縮めるぞ!
そうして二階への階段をゆっくり上がっていくと、いきなり背中を押された。
僕は前に手をつこうとしたが、そこに床はなかった…
「よし!こいつまんまと穴に落ちたぞ!」
???
周りを見渡したが出口は無い、引っ掛かりが無いから落ちた所から出ることも出来ない。
階段下の空洞は埃まみれで僕の黒い服は真っ白になってしまった。
「ごめ~ん!ちょっと助けてくれない~!?」
降り仰いで友達の顔を見ると彼らは悪魔のような笑みを浮かべていた。
「お前を助ける奴なんかいねェよォォォォ~!」
え?僕は騙されたのか?
「俺達はおまえが大嫌いなんだよなぁ…変な宗教を信じてるし、いつも一人でぶつぶつ言っててキモいし、公園を燃やすし…」
彼は二階に上がって行くと、窓を開けて言った。
「俺達は事前に仕掛けておいたこのロープウェイに乗って家に帰るぜ、じゃあな除け者のノケ山君!」
ロープウェイに五人が乗り、行ってしまった。
窓が閉まった数秒後に5回大きな落下音が鳴った。
どうしよう、帰れない。
ハウスダストのアレルギーが反応したからか、涙も出てきた。
「誰か!助けて!誰でもいいから!救世主様!」
大きな病院に響く声は、ひどく不気味だった。
これじゃあ怖がって誰も来てくれない…
ふと床に目をやると、さっきまで見当たらなかった取っ手の様な物が月明かりに照らされ見えた。
最後の望みを掛けて取っ手を引っ張ると、そこにはさらに地下に繋がる下り階段があった。
ひどく不気味で湿気を感じる空間だったが僕は進んだ。
僕は信じてる神を…救世主を…何も出ないし何も怖くない。
きぃ。
と階段の下からドアが開くような音がした。
その時、僕の信仰心がどくりどくりと脈を打って崩れ堕ちかけた。
それでも進んだ。
不自然に空いているドアの中に入ると、そこには壁に敷き詰められた大量のペットボトルと、水溜まりの中心の謎の構造物。
僕はその光景にひどくショックを受けてがむしゃらに走った。
さっきまではなかった長い通路先に、"何か"いる。
白くて、薄い、何か。
いぎがなくなっている
「
うらめしあ」
目を覚ますと自分の部家にいた。朝だ。
体は埃だらけだが、友達が心配で助けてくれたのかもしれない。
それにしてもあの恐ろしい、恨めしい生き物はなんだ、怖くてしかたがなかった。
乾いたパンを水道水で流し込み、学校に向かう。
途中、松葉杖をムカデの様に突く五人組に追いかけられたが、どうにか撒けた。
そんな通学路の途中、教祖様に会った。
「あぁ勇気くん。ついに今日ですよ。」
微笑みを浮かべる神々しい顔に跪く。
「おはようございます、我が救世主、教祖様」
教祖様は僕の顔を上げさせて目を見て言った。
「これから学校ですか?あそこの
いま出せる元気を最大まで出して僕は言った。
「はい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
教祖様は少しビックリしてから
「それでは、言ってらっしゃい。学びは得ても良いですが、けして周りの
最後に僕は言った。
「本当に、僕の周りの人は悪魔なんですか?僕の両親も優しい八百屋さんも…」
教祖様は恐ろしい顔で僕をにらんだ。
ごめんなさい教祖様学校の人ともう喋りません。
心のなかで教祖様に深く謝り、学校へ行った。
五時間目の休み時間。
防犯チャイムが鳴る、みんな急いで外に飛び出す。
セミがミンミンと鳴く教室で、僕はひとりぼっちだった。
夏休みは一人でどうしようかなぁ。
僕はまだ知らなかった何が起きるのかを。
いや、知っていたのかも知れない。
すぐにアナウンスが鳴る。
『学校内で爆発が起きました!
被害者は現在確認されて居ません。
教師は生徒を連れて学校外に逃げてください。』
「みんな慌ててるなぁ。今日が
それにしてもみんなかわいそうだ、僕も必死に伝えたけど誰も信じてくれない。
教典に従えば何もかもうまく行くのに。
割れたガラスから外を見てみるとまだ町は崩壊してなかった。
遅いなぁ、ラグナロクってもっと一瞬だと思ったのに。
その時、僕の重心を押し上げるかのように強い衝撃と熱が襲った。
「教祖様!なぜか爆発を担当する25人の信者のほとんどがが理科室で大量に寝ていて、さらに魘されています!本来の学校爆破計画の5分の1しか達成されていません!ラグナロクは本当に起きるのですよね!!教祖様!!!!!」
「うるさいですよ!!!
クソ!いつから計画が狂った。
私が洗脳した信心深い信者が当日にバックレる事はありえない!何が起きている。
「教祖…様!」
「なんだ次は!」
目をやると躍山は床にうつぶせになって震えていた。
すこしの湿気と寒気が辺りを覆う。
まずい、会ってはいけないものが来る。
「教祖…様…いや、
バタりと倒れ、こいつも周りの信者と同様に魘されていた。
暗くなった学校を駆け抜け、理科室へ向かう。
しかし空き教室から伸びる手に長い服の裾を捕まれた。
白く、細く、ゴツゴツした栄養の行き届いて無い手が強い力で私の首を締める。
虚勢を吹き飛ばすほどの恐怖に飲まれながら教祖は苦し紛れに言った。
「私が!こんな目に!会うはずが!私は教祖だ…!
「
うらめシぁ」
「宗教団体による、爆発テロの行われた学校です。硝煙の臭いが強く吹き抜けています。」
その日に起きた事件はほとんどの生徒が避難し、爆発事件では異例の被害者数ゼロを観測した。
また唯一校舎の中に残った少年、Y君はこのような不思議な事を言い残した。
『おばけが助けてくれたんだ、おばけは僕を助けてから言ったよ。』
そう僕は生きていた。
「おばけさん…?だよね…ありがとう…」
「僕、ずっと実態の無い物に縋ってたことに気づいたよ…」
おばけさんは…なんで僕を助けてくれたの?
「
その世界一格好良い半透明の存在は今も地球の何処かを彷徨っている。
うらめしあ 名無しのジンベエ @nanashinozinbei
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