永久への願い

しき

第1話

 永遠に残り続け、多くの人の心に残る話は何だろうか?またその様な話を自分は書くことはできるのだろうか?

 シェイクスピアの様な人の感情の本質を揺さぶる名作を書くことができれば後世まで語られてある種の永遠を手に入れることができるのだろう。


 だが、残念なことに私にはそこまでの才能はない。ないのだが、傲慢ごうまんにも残る物語を作りたいと思ってしまった。乾くほどに焦がれてしまった。私は悩み、考えた。


 持論ではあるが、恐怖という感情は冷めにくく、残りやすいと思っている。恐れるという感情はそれだけ生きるのに重要な感情なのではないかと考える。

 だから私はホラーが好きだ。特に昔から現代にも語られ続けている怪談には敬意を持っている。


 しかしだ。その怪談でさえも私はそこまでの血を与えれる作品を書くことが出来なかった。古くから語られる。九尾の狐。酒呑童子などの妖怪。はたまたメリーさんやトイレの花子さんなどの都市伝説。それらを死ぬほど羨んだ。それらに私は成りたいのだ。永遠にこの世界全てを呪い続け語られる存在に成るのだ。


 私はありとあらゆる呪いの言葉をつづった。それを続けることしかできなくなっていた。届かない憧れは呪いに変わっていった。

 壊れ、そして狂った。私の怨念はやがて自身を完全にむしばんだ。

 私は耳を潰した。周りの雑音が嫌になったから…。私は鼻を潰した。執筆部屋の匂いが嫌になったから…。私は目を潰した。視かに入るもの全てが不快になったから…。

 私は心臓を潰した。…………嫌になったから。


 願わくば筆の才に恵まれなかった私のこの呪詛が永遠になりますように…

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永久への願い しき @7TUYA

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